英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 戦争回避成功ルート |
〜カレイジャス・ブリーフィングルーム〜
「え…………」
「フム……」
「に、兄様……?」
「リィン、一体何を……?」
リィンの問いかけを聞いたマルギレッタは呆け、リ・アネスは試すような視線でリィンを見つめ、エリスとアリサは戸惑いの表情で尋ねた。
「フフ、それは何故かしら?」
一方ルイーネはリィンが自分達にどう問いかけるかを面白がるかのように微笑みを浮かべてリィンを見つめた。
「―――まず、クロスベル政府によるIBCの資産凍結によって世界各地で起きた経済恐慌……その件に対する”詫び”もせずに、二大国に戦争を仕掛けるのは間違っていると思うのですが。」
「あれは”IBC総裁”であるディーター・クロイスを始めとした”IBC”の独断。”IBC”はクロスベル独立国崩壊後、クロスベル帝国が”管理”する事になっているわ。勿論その際に資産凍結は即座に解放させるわ。それで資産凍結の件は”解決”よ」
「なッ!?資産凍結によって出た損害も賠償しないのですか!?」
リィンの指摘に対して答えたルイーネの話を聞いたレーグニッツ知事は驚いた後すぐに反論した。
「賠償するも何も”IBCが存在しない”のですから賠償のしようがないでしょう?」
「あ、”IBCが存在しない”って……!?」
「……クロスベルが管理する事になっている”IBC”を別の似たような組織に変える事で、”IBC自身は消滅した”事になりますわ……」
レーグニッツ知事の反論に対して答えたルイーネの説明を聞いたアリサは信じられない表情をし、シャロンは真剣な表情で推測した。
「ッ……!じゃ、じゃあガレリア要塞消滅の件はどうなのですか!?」
「あれはエレボニア帝国並びにカルバード共和国が”宣戦布告”をしてクロスベル領地内に侵攻してきた為、”現クロスベル政権”が”クロスベル領内を護る為に迎撃した”だけの事。――それのどこがおかしいのかしら?」
「!!」
「うわっ、そう答えるんだ〜。」
「ッ!クロスベルが資産凍結を行わなければ、宣戦布告やクロスベル侵攻も行わなかったと思うのですが!?」
ルイーネの言葉に対して反論できないリィンは目を見開き、ミリアムは真剣な表情をし、クレア大尉は厳しい表情で問いかけた。
「ですからさっきも答えた通りあれは”IBC”の”独断”ですよ。」
「……だが、現クロスベル市長―――いや、クロスベル大統領でもあるディーター・クロイス氏の”判断”でもある。大統領の判断は彼を元クロスベル市長に選んだ”クロスベルの民達の総意”と見て取れるのだが?」
クレア大尉の反論にルイーネが答えたその時オリヴァルト皇子が指摘した。
「オリヴァルト殿下もご存知のようにクロスベル政府代表は『クロスベル市の市長』と『自治州議会の議長』です。これは自治州法で定められています。」
「!!…………なるほど。マクダエル議長は資産凍結の件に反対していた為、『クロスベル独立国』の宣言も含めて全て議長達の意見を無視して実行した為、ディーター・クロイス氏の行動はあくまでも”IBC総裁”としての”独断”だと言いたいのだね?」
「ええ。それどころかディーター・クロイスはマクダエル議長を含めたクロスベル政府の役人を”オルキスタワー”、”ミシュラム”にそれぞれ監禁し、その上犯罪も犯していない私達を不当に”逮捕”する為に国防軍を動かした挙句クロスベル市の民達を街から出さないように監禁して、まさに”クロスベルの独裁者”としてクロスベルを”支配”しています。数々の”犯罪行為”を命じたり実行した時点でディーター・クロイスはもはやただの”重犯罪者”です。重犯罪を犯せば政治家としての権限も消滅する……先程の自治州法も含めた私が口にした自治州法は、クロスベルが自治州として独立した当初に”宗主国”であるエレボニア帝国とカルバード共和国によって決められた自治州法である事をエレボニア皇家の方々は当然ご存知ですよね?」
「そ、それは…………」
「………………」
「………くっ………」
「陛下……」
「ディーター・クロイスに全てを押し付けるつもりか…………」
オリヴァルト皇子の話の後に答えたルイーネはユーゲント三世達に視線を向けて問いかけ、ルイーネの正論に対して反論ができないセドリック皇太子とアルフィン皇女は辛そうな表情をし、唇を噛みしめて無念そうな様子で身体を震わせているユーゲント三世をプリシラ皇妃は心配そうな表情で見つめ、アルゼイド子爵は厳しい表情をした。
「―――なお、ディーター・クロイス並びにマリアベル・クロイスはクロスベル帝国建国の際もしくは、建国後に”処刑”される事になっています。」
「な……っ!?」
「”処刑”ですって!?」
「一体何故……」
「……資産凍結や独立国の宣言等を”独断”で行ったにしても、さすがに処刑はやりすぎだと思うんだけど。」
マルギレッタの説明を聞いたラウラは驚き、サラ教官は厳しい表情をし、エマは不安そうな表情をし、セリーヌは目を細めた。
「”クロイス家”はかの”D∴G教団”という非道な集団の黒幕。そのような集団の黒幕ならば処刑も当然かと思われますが。」
「!!」
「チッ、よりにもよってその件を持ってくるのか……!」
「”D∴G教団”ですって!?」
「ほえっ!?じゃあ、”教団”の大元の資金源ってIBC――――クロイス家だったの!?」
「”D∴G教団”……確か空の女神(エイドス)を否定する集団で、レン姫にとっては……」
「なるほど…………確かにかの”教団”の黒幕ならば、処刑の判決がでてもおかしくありませんわね。」
リ・アネスの言葉を聞いたサラ教官は目を見開き、トヴァルは舌打ちをし、クレア大尉とミリアムは信じられない表情で声を上げ、ガイウスは静かな表情で考え込み、シャロンは真剣な表情で考え込んだ。
「…………それは本当なのかい?」
「ええ。レン達―――メンフィルが”D∴G教団”司祭―――ヨアヒム・ギュンターによるクロスベル襲撃後の復興をしていた事は知っているでしょう?その時にレンが部下の兵士さん達にクロスベルの遺跡―――”星見の塔”にある膨大な古文書を写しとってね。で、本国で解析したらその事実が判明したのよ。」
オリヴァルト皇子の疑問にレンは静かな表情で答えた。
「し、信じられない……あのクロイス家が”教団”の黒幕だったなんて……」
「そ、そんな……」
「僕達は夢物語でも聞いているのか……?」
「けどそれならある意味納得かも。莫大な財産を持つクロイス家がバックにいるから、研究とか色々できただろうし。」
「クッ……外道の集団の資金源に俺達の資産を今まで預けていたと言う事か……!」
アリサは信じられない表情をし、エリオットとマキアスは表情を青褪めさせ、フィーは真剣な表情で呟き、ユーシスは唇を噛みしめた。
「うふふ、話が別の方向に逸れていますわよ?―――それでリィン・シュバルツァー君。他にもまだあるのかしら?他の質問をする前に先に答えておくけど、クロスベルが二大国に戦争を仕掛ける理由は”宣戦布告”をされて領地内に侵攻されたからよ?」
「メンフィルの場合はエレボニアを滅ぼす為にクロスベルが手を貸してくれる事とメンフィル全体に様々な恩恵を与える技術提供をしてくれたクロスベルへの”報酬”としてクロスベルと一緒になってカルバードを滅ぼすのよ。―――それで”筋は通る”し、そもそも戦争は”勝った方が正義”なのだから、”筋を通す必要はない”でしょう?」
その時ルイーネが手を叩いて自分に注目させて話を戻した後微笑みながらリィンに問いかけ、レンは不敵な笑みを浮かべて問いかけた。
「あ………………」
「お兄様…………」
「兄様……」
「リィン…………」
「………………」
(……論破をするべき相手がよりにもよって謀略を得意とするルイーネ様だと分が悪すぎですわ……)
(外交関係の学習もせずにあの年齢であそこまで指摘しただけでも、むしろよく頑張ったほうね。)
反論が見つからず、肩を落として黙り込んだリィンの様子をセレーネやエリス、アリサは心配そうな表情で見つめ、エリゼは複雑そうな表情をし、メサイアは疲れた表情をし、シグルーンは感心した様子でリィンを見つめた。
「うふふ、悲観する事はないわよ?その歳で政治や外交関係に特化した勉強もせずにそこまで指摘できる子なんて、中々いないわ。むしろ私は感心しているくらいよ♪」
「そうね♪これならクロイツェン州の統括領主を務める事になっているレン達がお役御免になる日も案外早くくるかもね♪―――それにしても、”敵国”の留学生が何とか頑張って反論を見つけてレン達に指摘したのに、肝心のエレボニア帝国の皇帝が留学生よりも気付くのが遅いのは、”皇”としてちょっとどうかと思うのだけど?」
「レン姫!失礼ですがさすがにお言葉が過ぎます……!」
不敵な笑みを浮かべてユーゲント三世に視線を向けたレンにラウラは厳しい表情で反論し
「…………返す言葉もない……」
「父上…………」
肩を落とした様子でいるユーゲント三世をセドリック皇太子は辛そうな表情で見つめていた。
「―――それにしてもアリサさんもよかったわね?彼と恋仲の関係だから、貴女の実家も無事でいられるのだし。」
するとその時ルイーネはアリサを見つめて予想外の言葉を口にした。
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第26話 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
1275 | 1157 | 2 |
コメント | ||
本郷 刃様 そうですね。軌跡シリーズは甘すぎる証拠ですね(sorano) 勝者こそが絶対、強引な言葉かもしれませんがこれこそが戦争の筋の通し方ですからね・・・(本郷 刃) |
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