神次元の外れ者(52)
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「((嵐斧|ランブ))の一撃、空を絶つ」(デバッカ視点)

 

クラトスのパワーは以前戦った時よりも増している。身体も刃が通らないくらいに硬くて動きも素早いとなると、こちらが圧倒的に不利だ。ならば……

 

「ふぅぅっ……」

「ほぅ」

 

魔力を両手の剣に集中させてその刃に火を灯す、斬るつもりではない、焼くつもりだ。

物理で歯が立たないなら魔法でどうにかすればいい(本当はライフルがあれば良かったけど仕方ない)

あの斧をこのまま距離を保ちつつ、炎斬飛ばして、

 

ザッ

 

「え」

 

ずっと見ていた、睨んでいた。

油断せず構えていた、気配だって張っていた。

けど、なのに、どうして……

 

「……捉えたぞ」

 

【どうして目の前にこいつがいるんだ!?】

 

ゴッ

 

クラトスの斧が、俺を両断せんがために振り下ろされる。

ゆっくりと、されど確実に、俺の命に迫って来るのに、この身体は石のように動かない……と言うか物凄く遅い。

……そうか、本当はゆっくり迫っているんじゃない!寧ろものすごく速い!

いきなり来た恐怖による思考のオーバーロードで【全て】を遅く感じてるだけだ!(※所謂走馬灯)

 

(動け……動け……)

 

このままでは真っ二つだ、このままでは死んでしまう。

それじゃあ此処にきた意味が無い、生きて帰らなきゃならない!

 

(動け動け動け動け動け動け動け)

 

まだ全てを思いだしちゃいないのに、まだ自分が何なのか分かってないのに、死んでいる暇なんて無い!

それでも身体は動かない、恐怖で硬直しているのか?そんな暇ないだろ?俺が俺である((意味|コタエ))がまだわかってないだろ?

 

(動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け)

 

力を入れる、身体が動き出す、けれどきしむ歯車のようにゆっくりだ。

それでも構わない、それでも事足りる、それだけあれば十分だ、多くを求めるな、さもなくば……ここで死ぬだけだ!!

 

(動けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!)

 

ギギギィィィィィィ

 

剣を十字に構えて斧を受け止めてから流すように軌道をずらし、それに合わせて身体もずらす。

その間一撃の重みがのしかかり、一時も力を緩められない。

火花が散る、ギリギリとした低い金属音が耳に響く、互いの得物がこすれ合う

力を入れろ、力づくで捻じ曲げろ、力の限り((死|ウンメイ))に抗え、この身の力、その全てを振り絞れ!!

 

「すぅえええええああああああああ!!」

 

ズンッ!!

 

クラトスの斧の刃は、俺を割らずに地面を割った。

そこから俺は揺らめく炎のように、いなした姿勢のまま振り下ろす。

振り下ろした刃の先には、斧を振り下ろし切ったクラトスの目!

 

ギィィンッ!

 

「……え?」

 

今一瞬、耳を疑った、目を斬った筈なのに金属音がした。目を狙ったはずがうっかり外したのか?

そんな事を考える暇もなく払いが来たので跳んできりもみ回転をして流しつつも再び目を攻撃した。

だがまた金属音が響くだけで、ダメージが入ったような感じがしなかった、【目蓋が開いた瞬間を狙って斬ったのに】

そして薙いでくるクラトスの刃をしゃがんでかわしつつ、またまた目を狙って斬り上げた……が、その目は傷一つ負ってない所を見るとまさか……

 

「残念だが、我が目も硬いのだよ」

 

まさかここまで硬いとは……では鱗のない部分、人間の素肌が出ている部分を焼き切って……

 

「それと言って置くが、我に小細工は効かぬぞ?」

「……!」

 

行動に移そうと思っていた瞬間、素振りもなにもしていないのに、まるで心を読んだかのように、クラトスは静かに言った。

そしてまたもや奴は、俺の目の前にいた。

 

「我は生前から、人間だった時から戦いに明け暮れておった、相手はモンスターだけではなく、人間も含まれた……それがどういう意味か、分かるであろう?」

「……まさか!!」

「……そう、【只一人】を除き、我はこれまで無敗だったという事だ。」

 

それはどういう意味か普通の人ならピンとも来ないだろう、けど俺は分かった。

アイツは生前、様々な人と戦ったことがあるという事になる

武闘家、剣士、魔導士、傭兵、暗殺者、狙撃手、ガンマン、騎兵……兎に角コイツは様々な((戦士|ツワモノ))と戦って来たという事は……

目つぶしも、金的も、通しも、毒も、幻覚も、兎に角ありとあらゆる戦術が【経験済み】という事!!

……だが!

 

ゴォォッ

 

いかに打つ手が無いように見えても、息をしている限り、大気の中に在る限り、なくならない弱点がある……【真空】だ。

真空には気圧が無い、空気が無い、息が出来る要素は【何処にもない】!

更に気圧が無いという事は、内側からの圧による膨張破裂は免れないという事、いかにその身が丈夫でも……

 

「真空には敵う者か!【シレットストーム】!」

「ほう……」

 

これはベールの見様見真似、そして本来俺には使えない((術|モノ))だった。

人それぞれに得手不得手はある、魔法や技に付加出来る属性……適正属性というのもその一つだ。

俺のは本来火だけだったけど、何らかの影響で風属性も加わった。

何の影響かは不明だが、これで奴を倒すことが出来る!

いかに奴が強力でも、周囲を風で囲い、内側の空気を風で抜いて真空状態にすれば……

 

「……え」

 

それは、一瞬で起こった。

奴が斧を高く掲げたまま、振り下ろした瞬間、周囲の風が両断されていた。

 

「この闘技場は我が作り上げたモノ、この程度の猿真似など」

「……あ」

「貴様ごと容易く切れるぞ」

 

それと同時に浅はかな手を講じた俺も、その刃の一振りに斬り裂かれていた。

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