真・恋姫†無双 裏√SG 第50話 |
一刀視点
猪々子「アニキ、急ごう!」
一刀「あぁ!」
囚われていた俺たちは皆、無事に救出されたが、それで安心するのはまだ早かった
今もなお、徐福の思惑通りに戦っている、戦う必要が全くない二つの勢力が戦っている
しかも、二つとも、俺たちを助ける為に戦っている
この戦、俺が止めないといけない
洛陽の外までの道程がこんなにも遠く感じたのは初めてだった
速く、もっと速く走ろうとしても、ゴールがずいぶんと先に見えた気がする
こうしている間にも、犠牲者は尚も増え続ける
走れ、走れ走れ!
絶対に走る事を止めるな!
「おい!あれは北郷一刀だ!脱走だ!捕らえろ!」
蓮鏡「ッ!?徐福の手下?まだ居たの!?」
目の前に徐福の兵士を確認すると、蓮鏡ちゃんがわかりやすく舌打ちをした。
俺も、内心で舌打ちした。
こんなところまで来て、まだ邪魔が入るのか!?
俺は走りながら、刀を抜いた
猪々子は翠を背負っているから戦闘に参加出来ない。
高順と悠香ちゃんもボロボロで、あまり無理はさせられない。
蓮鏡「行くわよ、一刀おじさん!目の前の敵をぶち抜く!」
一刀「あぁ!」
だから、この場は俺と蓮鏡ちゃんが何とかしないといけないのだ
そう、思っていたが…
宋江「ハァァッ!」
俺と蓮鏡ちゃんより先に、宋江が前を走り、そのまま剣を構えて敵兵のど真ん中に突っ込んで行った。
そして次の瞬間には、爆音と共に宋江を中心に周りにいた敵兵を全て吹き飛ばしていた
宋江「はぁ…はぁ…片付きました…後はお願いします!」
何が起こったのかはわからない。だけど、宋江が自身の体を張ってくれたのは理解出来た
俺たちは立ち止まらず、そのまま片膝をつく宋江の横を通り過ぎる。
その時、頭を下げ、ありがとうと言うと、宋江はニッコリと笑って見送ってくれた
一刀「急ごう!」
刀を仕舞い、走るスピードを更に上げる。
この中で一番遅いのは俺なんだ、死ぬ気で走らなきゃ、周りに迷惑を掛けてしまう
秋菜「来たか!」
凪紗「みなさーん!こっちでーす!」
少し走った先で、秋菜ちゃんと蓮鏡ちゃんがボロボロの状態で待っていた。
その直ぐ近くには、高台がある
悠香「秋姉!凪紗ちゃん!友紀ちゃんはどうしたの?」
凪紗「友紀さんなら兄さんが対応してくれたよ。それよりも北郷さん!この高台の上に行ってください!そして、この戦いを終わらせてください!」
雪蓮視点
雪蓮「ヤァ!」
思春「チッ!」
息が上がる。汗が流れる。体がどんどん重くなる。
たった数時間の戦闘が、こんなにも苦しくなるなんて…
ホント歳よね…
でも…
雪蓮「もう、終わりかなー」
思春「なにを…?」
まだ状況がわかっていない思春に、後ろを見るように促した。そこには、高台の上に登る1人の男の姿があった
作戦、成功ね
思春「あれは!……そうか、ようやく終わるのか」
思春はその姿を確認して、武器を下ろし、深いため息をついた
雪蓮「ふふ、安心した?」
思春「えぇ、それもありますが、私個人としては、これ以上雪蓮様と戦うなんて、ごめんこうむるところなので」
雪蓮「ちょっとー!それどういう意味よ!」
思春「……ふぅ…それは、この周りの惨状を見て言ってはどうですか?」
そう言われ、周りを見てみる。
地面は抉れ、緑だったところは更地になり、至る所に兵士がボロボロで倒れている
何も不思議なところはない
雪蓮「見たけど、何かあるの?」
思春「……はぁ。わからないのなら、いいですよ」
なんか呆れられた!?
蓮華視点
雷蓮「アレって、父様!?」
蓮華「一刀!?」
直ぐ近くの、洛陽内にある高台の一番上に、両膝に手をつき、荒々しく息を吐いては吸っている一刀の姿があった
よかった、無事だったのね…
雷蓮「ふぅ…親越えるのは、また次の機会かなー」
そう言って剣を下ろす雷蓮を見て、内心ホッと胸を灘下ろした
あ、危なかったー…
一刀が来るのがもう少し遅かったら、多分越えられていた…
風香「ふえぇぇぇぇん!」
桃香「よかったよぉぉ!」
あっちはあっちで、抱き合いながら泣きあってるし…
氷華「チッ!いい加減歳なのだから、諦めたらどうですか?」
華琳「あら、言うじゃない氷華。いつからあなたは、そんなにも偉くなったのかしら?」
あっちはまだ戦ってるの!?親子ゲンカも程々にしなさいよ!?
雷蓮「なんか、私達って結構普通よね」
蓮華「違うわ雷蓮。周りが異常なのよ」
なんにしても、これでもう戦わずに済む。後は、一刀に締めてもらおう
星視点
星「これで!終わりだな」
虎牢関に迫ってきていた徐福の兵士、その最後の一人を斬り捨てる。
目の前に広がるのは無数の屍と、血の海と化した大地だった
星「クッ!はぁ…はぁ…」
敵兵がいない事を確認した私は、糸が切れたかのように大地に腰を下ろし、槍を刺して空を見上げた
流石に…きつかった。
体は既にボロボロで、気力も体力も底を尽き、腕ももう上がらない。
歳とは言え、五虎将が聞いて呆れるザマだ
しかし、達成感はある。
久しく戦うという感覚を忘れていたが、今回の防衛戦で熱が蘇り、年甲斐もなく暴れ回った。そしてやり切った。
この感覚を満たす心地良さは、やはり良い
星「とは言え、もう二度とはごめんだがな」
あぁ、こんな面倒な仕事、もう二度としない。
私は武人ではあるが、今さら戦う事が好きだという歳でもないし、体力も昔程はない。
これからは、若い奴らの時代だろう
「ふふ…」
「あはは…」
そんな私の呟きが聞こえたのか、背後から力無く笑う女の声が聞こえた
星「む、何か可笑しかったか?花栄、林冲」
今回、最後まで共に戦ってくれた梁山泊の英傑、花栄と林冲。
その二人は、やはり私同様ボロボロで、大の字になって寝転がっていた
花栄「いえいえ、全くもって、趙雲さんの言う通りだなと思って。私も面倒事は嫌いなタチなんですよー」
林冲「そうなのか?私はあれだけ動いていた趙雲殿が、まさかそんな事を言うとは信じられなくてな。人は見掛けによらないなと思い、不意を突かれて笑ってしまったのだ」
二人は二人で、笑った理由は違ったが、どこか誇らしげな、達成感に満ちた表情だった
林冲「洛陽は、どうなっているのだろうな」
星「フッ、何も問題はあるまい。何せ、大陸最強の守護者が向かったのだからな」
そう、【晋】は強い。強過ぎる程に。
それが家族の為とあらば、通常の三倍の力を発揮しても過言ではないだろう。
とても、一介の料理人が持つ戦力ではない。
だが、今回はその力を得たのだ。解決出来ないものはないだろう
星「それよりも、私としては五胡との問題の方が気にかかる。あそこと戦争だなどと…」
花栄「あー、その心配は大丈夫ですよー」
私が言い切る前に、花栄がその言葉を遮った
星「大丈夫とは?」
花栄「それはですねー。私達、代表の拉致失敗したんですよー」
小蓮視点
美羽「ッ!?」
小蓮「美羽!?」
五胡との戦況はずいぶんと混沌としており、今もなお、乱戦状態が続いている。
そんな中、私の相棒である美羽が敵の攻撃を食らっていた。
右腕を斬られたようで、ダラダラと血が流れている
美羽「阿呆!余所見をするでない!妾なら問題はない!目の前に意識を集中するのじゃ!」
しかし美羽は、そんな傷を気にもせず、あろう事か私を心配してくれた
小蓮「わかってるわよ!だからあんたは下がりなさい!」
こんな言い方しか出来ない自分が少し恨めしい。
本当はとても心配だから、後方に下がって治療して欲しいのだけど…
美羽「誰かが下がるなど、そんな余裕こちらにはないのはわかっているじゃろ!却下じゃ!最期の最期まで、お主に付き合うてやる!」
なんで、こんな時に意地はんのよ!
小蓮「うっさい!怪我人は黙って下がれ!足手まといなのよ!」
美羽「なんじゃと!?これくらいの傷は余裕じゃ!むしろ、これでようやっと実力はお主と同等じゃ!」
小蓮「はぁ!?あんたと私、これまでどんだけ引き分けて来たと思ってるのよ!?普段で対等よ!むしろ私の方が手加減してるんだから、私の方が上よ!」
美羽「はぁ!?手加減してやっておるのはむしろ妾じゃぞ!?それこそ、妾が本気になれば、お主なんぞ一瞬じゃ!」
白蓮「おいお前ら!何こんな時にケンカしてんだ!?」
小蓮・美羽「うっさい!黙れ!」
チッ!ホントにこいつは頭にくる!
ああ言えばこう言って!人がせっかく心配してあげてんのに!
小蓮「なら、証明してもらおうじゃない!これからどれだけ多くの敵を倒せるか、勝負よ!」
美羽「ふん!そんな事で良いのか?お主に勝ち目なんてないぞ?」
小蓮「言うじゃない、このバカ!なら行くわよ!せぇーのっ!」
「この戦争、ちょっと待つのー!」
私と美羽が勝負を始めようとすると同時に、どこかで聞き覚えのある声が響いた。
その声に誰もが手を止め、声のする方へと向いた。
そこには、行方不明になっていた沙和と、そして五胡の代表・劉淵殿の姿があった
沙和視点
洛陽襲撃の数週間前
沙和「劉淵様!お会い出来て光栄なのー!」
劉淵「こちらこそ、大陸で今流行りの服を取り揃えている于禁さんに会えて、とても嬉しく思います」
私こと沙和は、商談で五胡を訪れ、その代表である劉淵様と会談をしていたの。
そしたら…
パリーン!
と、窓の割れる音と共に、3つの影が入ってきたの
友紀「五胡の代表、劉淵!悪いがお前には、大人しく捕まって…沙和さん!?」
沙和「ゆ、友紀ちゃん!?ど、どうしたのこんなところで?ていうか今、捕まってって言ったけど…」
友紀「………沙和さん、すみません。そこを退いてください。我々は代表を拉致しないといけませんから」
そう言って小太刀を構える友紀ちゃんにゾクッとしたの。
あぁ、本気なんだなって
この場には、護衛の兵士も、誰もいない。
劉淵様のお側には、沙和しかいない
沙和「ごめんなさい、劉淵様。少し手荒く行くの」
劉淵「私の方こそ、何やら巻き込んでしまい、申し訳ありません。私は大丈夫ですから、お願いしていいですか?」
私はこくりと頷いて、劉淵様を連れて、友紀ちゃんとは反対方向にある窓に向かって飛び込んだ
花栄「あー、逃がしませんよー」
後ろから矢が飛んで来る。
しかも、着弾と同時に爆発する、そんな厄介な矢だ
劉淵「!?皆さん…」
少し走ると、そこには屍の海が広がっていた。
道理でこの騒ぎでも、人が来ない訳なの!
沙和「あぁもう!せっかくの商談が台無しなの!劉淵様!お気持ちはわかるけど、今はとにかく逃げるの!」
劉淵「……はい!」
逃げ足には自信のあった私は、そのまま五胡を離れ、友紀ちゃん達を巻く事に成功したの。
でも、逃げるのに必死で森に迷い込んじゃって…
現在
沙和「今に至るの!」
誤算だったのは、劉淵様が極度の方向音痴だった事なの。
沙和も土地勘ないから、森の中で同じところグルグル何度も回ったの。
おかげで体がずいぶんと引き締まったの!
劉淵「私はこちらの沙和さんに助けられ、今があるのです。つまり、三国の方に助けられました。だから、あなた達が戦う理由は何一つありません。兵(つわもの)達よ、武器を下ろしなさい。この戦、この劉淵が預かります!」
そう言うと、五胡のみんなが武器を下ろして行ったの。
すると、それを見た三国側の人も武器を下ろして行ったの
沙和「ふぅ…とりあえず、これにて一件落着なの!」
零士視点
零士「やぁ、お疲れ様、一刀君」
一刀「はぁ…はぁ…零士…さん…」
先に月ちゃんにお願いして、高台な上で待っていると、程なくして一刀君が登ってきた。
息は絶え絶えで、汗まみれだ。
きっと、ここまで休み無しで全力で走ってきたのだろう。
今は両膝に手を付いて休んでいる
零士「災難だったね、一刀君。疲れているところ悪いけど、状況はわかっているよね?さぁ、もう一仕事だ。休んでいる暇はないぞ」
自分でも冷めているとは思っている。だけど、そんな個人の甘えでこのくだらない戦の犠牲者を増やす方が馬鹿馬鹿しい。
なので一刀君にはムチを打つ事にした。
さっさと終わらせる為に
一刀「はぁはぁ…はい!」
一刀君は無理矢理息を整え、ガバッと上を向いて元気良く応えた。
こういう、物分かりの良いところは、一刀君の良いところだよな
一刀「みんな!止まってくれ!この戦、もう戦う必要はない!」
砂塵が晴れると同時に、一刀君の声が戦場一帯に響き渡った。
一刀君の声を聞いた者は争う手を止め、その手を止めた兵士を何事かと、さらにその手が止まっていく。
やがて戦場は、先程までの喧騒が嘘のように静かになり、誰もが一刀君を見ていた。
その眼からは、様々な感情が読み取れた。
安堵、歓喜、疲れ、そして達成感。そういった感情の様に見えた
一刀「今回、不甲斐なくこうして捕まって、そして【晋】の皆さんの力で助けてもらった。不幸なすれ違いも、もう無くなったんだ!だけど、この場にいる皆、そして大陸全土にいる人々全てに迷惑を掛けてしまった。だから、だから俺は、この借りを一生掛けて返していこうと思う!今回のこの一件をしっかり受け止め、また一からみんなと一緒にやっていきたいと思う!みんなは、これからも俺について来てくれるだろうか?力を貸してくれるか?」
これも、一刀君の美点の一つだろう。
彼は己の力量をしっかり見極め、一人で抱え込まずに誰かに弱さを見せ、協力を仰ぐ事が出来る。
王、もしくは指導者として、その姿を笑う者がいるかもしれない。頼りないと蔑む者がいるかもしれない。
しかし、僕はそうは思わない。
僕は人として、一刀君のこの姿を尊敬し、好ましく思うから
そしてこの場にいる者も、やはりそんな一刀君の姿に惚れているのだろう
ワァァァァァ!!
歓声が上がり、皆が一様に武器を捨て、先程まで敵味方で戦い合っていた者たちが抱きしめ合って喜びを表していた
零士「はは、君は本当に、皆に好かれているんだね」
そう言うと、一刀君は乾いた笑みを浮かべていた
一刀「ですが、俺のやり方をよく思わない人もいる。今回のこの事件は、そんな、俺に対して反対的な人間が起こしたものです。もちろん、焚き付けたのは徐福ですが、その焚き付けるに必要な材料があったのも事実。今回のこの事件は、今までやってきたことを振り返るのに、ちょうど良かったのかもしれません」
そう言う一刀君の表情は、とても疲れていながらも、しっかりと前を向いていて、決意に満ち溢れていた様に見えた
本当に、この男は良く出来ているな
零士「そうか。なら、僕もこれからも、しっかり応援しないとね。僕は何も出来ないけど、応援くらいは出来るからね」
そう言って、僕は手を差し出した。
一刀は少し驚いた表情をして、すぐ様笑顔になった
一刀「ふふ、十分過ぎる程です。今回の件も踏まえて、また改めてお礼に参ります。その時は…」
「北郷様!」
一刀君と握手をしようとするその直後、この高台の入り口から甲高い女の声が聞こえた
劉協「貴様!鍾会!」
劉協こと桜ちゃんが鍾会と呼んだ女性は、ゆっくりとこちらに近付いてきた。
その目からは輝きを失って濁りきっており、別に武力的に強く見える訳でもないのに、その狂気的な笑みは悪寒を与えるに十分だった
蓮鏡「あっちゃー、もう起きちゃったか」
蓮鏡ちゃんが頭をポリポリとかきながら言った。
どうやら彼女が対処した様だが、詰めが甘かったようだ
鍾会「ふふふ…北郷様…みぃつけた…もう…逃がしませんよ…あなたはずっと…私のお側に…私のモノに…」
訳のわからない事をブツブツと言いながら、ゆっくり、ゆっくりと近付いてくる。
その手には…
零士「!?」
包丁が握られていた
彼女は包丁を見せたと同時に、急に速度を上げて近付いてきた。
僕は咄嗟の出来事に、迎撃ではなく、一刀君を守ろうと、自分の身を盾にしようと彼の身を覆い被さった
これではまるで、咲夜を守った時と同じだ
全く、本当に僕は学ばないな
そんな事を思いながら、僕は彼を抱きしめ、自分の背に刃が貫く瞬間を待った
グサッ
刃が肉に刺さる嫌な音が聞こえる。
だけど不思議な事に痛みはなかった。
それどころか、何も感じなかった。
零士「…ん?ッ!?翠ちゃん!」
背後の光景を確認すると、そこには鍾会の包丁を掌で受け止めた翠ちゃんの姿があった
翠「ッツー!?起きた瞬間これかよ」
鍾会「な!?死に損ないが!私の邪魔をするな!私は、私は北郷様と一つになるのです!そして私は…ッ!?」
鍾会が言い切る前に、翠ちゃんの手刀が鍾会の首に入った。
鍾会はその衝撃に目をぐるりとさせ、静かに倒れていった
翠「悪いな。あんたみてぇな危ねえ奴に、ご主人様は任せらんねぇわ」
翠ちゃんはそう言いつつ、掌に刺さった包丁を抜いて、それを棄てた
零士「……殺さないのかい?」
僕なら、その包丁で心臓を刺していただろう。
彼女は国や主人に楯突いた。
その罪はあまりに重いし、同様にこれ以降その人物を信用できない。
生きていてもメリットなんてない。
だから、僕なら殺していただろうが…
翠「……ここで殺したら、あたしは、武人は結局、王異が言ったように殺人鬼でしかないって思っちまったからな。甘いかもしんねぇけど、人の一生を、そんな簡単に奪っちまったらいけねぇんだ。どんな奴にだって、悲しむ奴の一人や二人、いるもんだからな」
なんか、武人である彼女より、料理人である僕の方が、よっぽど発想がシビアだったな。
生かすも殺すもその人の自由だが、どちらにしろ鍾会には重い罰が下るだろう。
それこそ、死んだ方がマシだと思うくらいに…
猪々子「ま、何にしてもこれにて一件落着だな!零士!早く帰ろうぜ!あたい腹減っちまってよー!」
月「ふふ、そうですね!帰ったら飛びっきりのご馳走を用意しないといけませんね」
蓮鏡「あたし、へろへろだから手伝わなくてもいいよねー?」
悠香「えー、みんなでやったらあっという間だよー!」
凪紗「ですね、私も手伝いますよ」
秋菜「なら、そろそろ帰りましょうか。なんだか冷えて…ん?これは…」
戦が終わる。
先程まで絶望に満ちていた戦場には歓喜が広がり、皆の血を洗い流す様に…
季節外れの雪が空を舞い、そして堕ちていった
友紀視点
友紀「………」
季節外れの雪が降る中、私は今、許昌城にある墓場に来ている
いつの間にか、士希に眠らされ、そしていつの間にか許昌に戻って来ていた。
しかも、私が以前使っていた、士希と霰と私の家に…
気付いた時には、周りには誰もいなかった。
監視も特別感じない。と言うより、許昌全体が怪我人ばかりで、そんな余裕もないと言った様子だった
だから、私が城に浸入し、家族の墓の前にやって来れたのは、案外楽だった
友紀「ごめん、父さん、母さん、姉さん。私、みんなを生き返らせれなかったよ」
士希が来たのだ。きっと今頃、咲希と士希が徐福をボコボコにしているところだろう。
あの二人が本気で手を組んだら、勝てる奴なんたいないのだから。
結局私は、何も出来なかった。
罪ばかりを重ねるだけで、仇すらも討てず、何も出来なかった。
何のために、ここまでやったのだろう
何のために、全てを裏切ったのだろう
何のために、私は生きているのだ
鞘に収まっていた小太刀を引き抜く。
秋菜と凪紗によって折られた小太刀だが、自害するには十分だった
友紀「ほんと…何やってんだろうなぁ…」
いつの間にか流れていた涙
掠れる声
未練、後悔、罪…
そんな後ろめたい言葉しか出て来ない
私の人生は結局、何一つ良い事がなかった
何一つ成せなかった
だから、さっさとこうすれば良かったんだ
無理に生にしがみ付く理由がなかったんだ
死んだら、みんなに会えるかな…
「ほんと、何やってんだよ、お前」
目を瞑り、喉に刃を当てる。
それと同時に聞こえる聞きなれた声。
私は一度刃を下ろし、振り向いた
友紀「士希…みんなも…」
士希を筆頭に集まった司馬昭隊の面々。全員、私を取り囲むように並んだ
あぁ、そりゃそうだよな。
私は罪を犯したのだ。それに報いなきゃいけねぇよな…
士希「徐福は死んだよ。咲希がきっちり殺した。お前にはお前の事情があったようだが、それももう終わりだ」
そうか、やはり徐福は死んだか。当然だよな。
こいつらに掛かれば、何百年生きていようが関係ない。殺せない奴なんていないのだ
士希「お前に事情があった事は理解している。だが、だからと言って、お前がやった事は許されない事だ。例え俺やこの場にいる皆が許しても、世間は許してくれない。間違いなく、罰せられるだろう」
友紀「あぁ、覚悟している」
士希「そうか。ならせめて、俺が裁くよ。それが、隊長の責務だからな」
士希は懐から銃を引き抜き、それを私に向けて安全装置を外した
私はそれを確認して、ゆっくりと瞼を閉じた
友紀「ありがとう…最後にみんなに送られて、良かったよ…」
こいつに殺されるのなら、本望だ
士希「あぁ。さようならだ、王異…」
ダァン
季節外れの雪が降る空に、乾いた銃声が鳴り響く
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こんにちは! Second Generations 複数視点 洛陽決戦終幕 次回で最終回でございます。 |
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王異を殺したのかな?士希はそんなことしないと信じたいが……(ohatiyo) | ||
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