ヴァールケントニス起動 |
CC211年1月某日
ヨーロッパ連合防衛機構側基地
ハンガーに紅色の防衛機構側では見慣れない機体が鎮座して居る。
整備員『其れにしてもこの機体ってさ?一体誰が乗れんのよ?確か選抜したパイロット全滅だったって聞いたんだけど?』
警備兵『お前其れ何処で聞いたんだよ?一応軍事機密情報じゃあ無いのか?』
整備員の言葉に警備兵が何処で聞いたんだ?と言いながら呆れ顔で返事する。
整備員『いやいや、この間って言っても昨日だけどね私達整備の人間も適性試験受ける様に言われたのよ、だから全滅だったんじゃ無いかって班長が……』
オイオイ人事課、幾ら切羽詰まったからって整備の人間まで借りだそうとするんじゃねえよ。と思いながら警備兵は胸ポケットから煙草を取り出し火を付けた。
???『ねぇ、貴方達基地の司令部って何処かご存知かしら?』
2人が会話しているとこの基地では見慣れない女性兵が声を掛けて来た。
警備兵『?あんたは?……!た、大尉!失礼しました!何か御用でしょうか!』
適性試験の為見慣れない兵士が多く訪れる為にどうせまた少尉クラスの新兵だろうと振り向くと其処には大尉階級を付けた女性兵が立っていた。
霞『あぁそんな固くならなくて大丈夫ですよ…あっ、申し遅れました、私は沙霧霞と申します、先程のお話に有りました適性試験を受けに来たのですが司令部の場所が分からなくて宜しければ教えていただけませんか?』
整備員『大尉、司令部でしたら右の高い建物の最上階ですよ!此処からでしたら3番ゲートを通れば早く行けますよ。』
整備員は、物腰の柔らかな女性兵だなぁなどと考えながら司令部への最短距離を教えてあげる。
霞『右の……あぁ彼方の最上階ですね?分かりました、ありがとうございます。』
お仕事頑張って下さい、と一礼して3番ゲートに向かって去って行く霞を見送る2人
警備兵『凄い綺麗な人だったな?俺はあんな美人初めて見たよ。』
整備員『あんたは!結婚相手を目の前に良く他の女を褒められるわね!』
どうやら結婚相手だった2人が痴話喧嘩を始めるのを遠くに聴きながら霞と名乗った女性は歩いて行った。
同時刻
基地司令執務室
基地司令『あー中佐?例の機体のパイロットの件はどうなってるかね?』
中佐『はっ!各方面の基地から腕の良いパイロットを派遣する様に要請しておりますが激戦区のエースパイロットまでは流石に断られましたが…』
基地司令『まぁ気長に行こう幸いにもこの基地は激戦区から離れているわけだしな確実に運用できる人間に与えて更にDATAを得て量産出来ればなお良いがね。』
中佐『ですが司令、あのヴァイスハイトのDATAはプロテクトが堅くて殆どがブラックボックスですし、あのラピエールゼファー?でしたっけあの機体が持っていた小型レールガンも弾数と威力の向上位しかできず未だ量産の見込みは立ちませんし……』
ービービービービービーー
この基地では未だかつて聞いたことの無いけたたましいアラーム音が響き渡る。
基地司令『!!!何事だ!!』
基地司令部
観測兵『何!高速で接近する機体有り……コレは?!少佐!この反応は最近確認されたNSG-X1です、後5分いや4分で当基地に入られます!』
少佐「何だと!急ぎ全体放送スクランブルだ!第一種戦闘配備!司令と中佐に連絡を!」
現場責任者の少佐が矢継ぎ早に指示を飛ばすと同時に基地にサイレンの音が鳴り響いた。
3番ゲート付近検問所
霞『……………!もう来たか、うーん予定とは違うけどしょうがない、この気を逃すと時間がかかりそうですしね。』
基地職員が慌ただしく動く中、沙霧霞と名乗った女性は其の名の通り霞の如く歩き去った。
警備兵『チッ、こんなど田舎までワザワザ来るんじゃねぇよ!おい!お前も持ち場に戻れ!死ぬんじゃねぇぞ。』
整備員『あんたこそ、警備兵何だから前に出過ぎて流れ弾当たるんじゃ無いよ?お腹の子供1人で育てるのはやだからね!』
警備兵『勿論ん?って子供?聞いてねぇぞ!』
整備員『はっ?今言ったでしょ?』
ードーーーン!!!!ー
そんな会話のさなか2人の近くの壁が爆音と共に崩れ、見慣れない青い機体が輝きを放ちながら此方側を覗き込んでいた。
少し前
機体管理室
基地職員『うっ!………………。』
霞『ごめんなさい、少し寝てて下さいね。』
FAの起動用ディスクを回収する為に待機している職員を気絶させ目当てのディスクを回収する。
霞『あら?コレは……ふふ、ついでに頂いて行きましょう。』
パソコン画面に映っているDATAを確認した霞は不敵な笑みを浮かべながら呟いた。
霞は部屋を出ると少し遠くに見える紅い機体に向かって全力で走り出した。
警備兵『クソッ!お前と子供だけは何が何でも助けるからな!』
整備員『駄目!脚が挟まって動けない!あんただけでも逃げて!』
警備兵『馬鹿野郎!お前を置いて行くぐらいなら一緒に死んでやる!』
夫婦の感動的な場面をよそに、無慈悲な青い悪魔は夫婦の目の前にある紅い機体に銃口を向けた
紅い機体越しに輝きを増す光景を目の当たりにした2人はもう駄目だと思い手を強く握って最後の時を迎えようとしていた。
ーグゥォーーン!!……バシュゥゥゥ…ー
夫婦の目の前で動かない筈の紅い機体が動き眼前の青い悪魔を手に持った小型レールガンで吹き飛ばした。
スミカ『私の名前は今朝霧スミカ!このヴァールケントニス?頂いて行きます!代わりと言ってはなんですが、この青いの追い払いますので御安心を!』
言うが早いか動きが速いか、もう既に2機共に格納庫から外に出ていた。
その光景を正に目の前で見て居た夫婦は自分達が助かった事に気づくと声を上げて泣きだした。