IS ゲッターを継ぐ者
[全1ページ]

〜光牙side〜

 

 

「チェェェェェェェンジ!!」

 

 

 澄み渡った青空。

 

 僕の叫び声が空へ吸い込まれていく。

 

 

「ゲッタァァァァ、ベェェェェェェオッ!!」

 

 

 その言葉がトリガーとなって、僕の体が緑の光に包まれ、固く力強い装甲が体を覆っていく。

 

 全身が装甲に覆われると同時に、目を開け光が拡散し、僕はゲッターロボベーオを纏っていた。

 

 

「やけに気合いが入っているな、滝沢」

 

『こういう日は気合いでどうにかするしかないでしょう』

 

「……そうかもしれんな」

 

 

 織斑先生が腕を組んだままそう呟く。共感できる部分があるんだろうね。以前ちょっと見たけど織斑先生の部屋と来たら……。

 

 断言する。あれは部屋じゃない。魔窟だ。いつか掃除しないとな……。

 

 今日はもう四月の終わり。

 

 入学してもうすぐ一ヶ月が経とうとしている。

 

 今日は月曜日、学生・社会人に問わず憂鬱な気分になるこの日。

 

 学校嫌いの僕の場合、それは朝起きたら漬物石が頭に乗っかってて体も精神も重い重い。隕石が降ってきて学校がぶっ飛んだりドワォってならないって位のレベルだ。

 

 

 −−ドワォ。

 

 

 ……あ、なんかどっかでドワォした気がする。 

 

 ぼ、僕は暗い考えを切り替える為に、ISの授業の今、叫んでベーオを纏ったというワケ。だから僕は悪くねえっ!(現実逃避)

 

 隣ではセシリアさんがブルー・ティアーズを纏い地面から約数十センチ滞空している。

 

 ベーオにはPICが無いから僕は地面に足をついて立っているけど。

 

 

「よし。では二人共、飛べ」

 

 

 今は飛行訓練だ。

 

 セシリアさんがすいっと飛んで行き、僕も身を少し屈める。

 

 

『ゲッターウイング! トゥッ!』

 

 

 ゲッターウイングを展開して飛翔する。

 

 先に飛んだセシリアさんを追い抜き、僕は空を駆けていく。

 

 こうして飛んでいると、ゲッターに乗っている時は操縦しているから分からなかったものがある。

 

 空を駆け抜ける感覚、身に当たる風、見下ろす光景。

 

 自分が鳥か風になったみたいな気分になり、気持ちいい。

 

 ゲッターロボも飛んでいる時はこんな感じだったのかな、と感じていると、

 

 

『光牙さん、お早いですわね』

 

 

 少し後方にまで追い付いたセシリアさんから通信が入ってきた。名前で呼んでいいと言われたので、名前で呼び合っている。

 

 箒さんとは同じ名前で呼び合う友達。隣の席の谷本さんやその友達の相川さんや布広さんとはよく話したりする感じで、他のクラスメイトとも似たり寄ったり。流石に他のクラスとはまだ関わりや友達はないけどね。後は更識さんがISについて教えてくれたり、先生では山田先生や織斑先生に勉強を教えてもらったりしてる。

 

 うーん。学校嫌いだけど、我ながらいいんじゃないかなと思う。まだ始まったばかりだけど、こんな滑り出しは初めてだ。こんな感じならいける……かな?

 

 

『ISに触れてまだ間もないのに、対したものですわ』

 

『いや、機体のお陰ですよ。ベーオの原型機は空を得意としてましたからね。空は十八番みたいなもんです』

 

『そんな謙遜をなさらない……原型機?』

 

『い、いや。こっちの話です』

 

『???』

 

 

 通信モニターにハテナマークを浮かべ首を傾げるセシリアさんが映る。

 

 危ない危ない、うっかりゲッターの事が出ちゃったよ……。以後気を付けなければ。

 

 

「そ、それより光牙さん」

 

 

 そのセシリアさんが僕の隣、声が聞こえるまで距離を詰めてきた。

 

 

「よければ、今度私とISの訓練に付き合っていただけませんか?」

 

『訓練ですか?』

 

「む、無理ならばよろしいのですか……」

 

『……大丈夫ですよ』

 

「ほ、本当にですか!(やりましたわ!)」

 

『はい(もう少しあのファンネル見たかったからな)』

 

 

 遠距離の対策を考えないとね。ベーオは格闘タイプだから。

 

 そう考えていると……。

 

 

 ――シュルルルル……スカァン!

 

 

「へぐっ!?」

 

『!?』

 

 

 奇声が聞こえ思わずギョッと振り向く。

 

 セシリアさんが頭を押さえていて、なんか黒い物体が回転しながら下の方へ飛んで行くのが見えた。

 

 センサーで確認すると……それは出席簿。

 

 それをキャッチしたのは言うまでもなく、織斑先生。……なんなんだあの出席簿。

 

 セシリアさんの様子と出席簿から、僕はとある武装を連想せずにはいられなかった……。

 

 

『オルコット、滝沢。そろそろ降りてこい。急降下でだ。目標は地上から十センチだ』

 

 

 対し何事もなかったかの様にインコムで指示を伝えてくる織斑先生。切り替えが早い事で。

 

 

「は、はい……。それでは光牙さん、お先に」

 

「あ、はい」

 

 

 相当痛かったのか、直前まで頭に当たったとこを押さえ、涙目のままオルコットさんは急降下していった。

 

 地上寸前で止まり、成功したと見える。

 

 よし、僕も。

 

 

『行くか!』

 

 

 体を傾け、地上へ向けて急降下。

 

 スピードがぐんぐん加速し、ほんの数秒で地上が目いっぱいに映った。

 

 そこで体を戻し、全開で逆噴射をかけ速度を緩和。

 

 衝撃で土煙が立ち、体に振動が伝わる。地面スレスレで急停止に成功した。

 

 

「……五センチか」

 

 

 だけど織斑先生の言葉に失敗だと理解する。

 

 ちょいと減速が遅れたかな? もっと精進しないと。実戦ではほんの小さなミスが死に繋がる事もあるからな。

 

 

「次は武装の展開だ。射撃武装を展開しろ」

 

「『はい』」

 

 

 射撃武装か。ならマシンガンだ。

 

 

『ゲッターマシンガン!』

 

 

 緑色の光の粒子が右手から発せられ、ゲッターマシンガンとなる。

 

 

「……滝沢。焔火を展開しろ。“ISの方法”で、だ」

 

『……分かりました』

 

 

 マシンガンを収納し、意識を集中して銃をイメージする。

 

 敵を撃ち抜く武器。弾丸を放ち、遠くの相手を倒すもの。

 

 右手から発せられた粒子の奔流が形になっていき、光るとアサルトライフル、焔火が展開されていた。

 

 

「遅いぞ。0.5秒以内に展開出来る様にしろ」

 

『は、はい』

 

 

 それを見た先生から注意を受ける。やっぱりか……。今まで音声認識、叫んでばっかりだったからイメージでの展開はどうも慣れない。

 

 対し、横のセシリアさんは瞬時にライフルーースターライトmkVを展開していた。流石は代表候補性といったところか。

 

 そのセシリアさんへ織斑先生は僕から顔を向け言う。

 

 

「オルコットは流石代表候補生と言った所だな。だが、その妙な構えは止めろ。横にいる者を撃つ気か?」

 

「で、ですがこれは私のイメージに最適でして」

 

「直せ。普通に展開出来る様にしろ、良いな?」

 

「……は、はい」

 

 

 有無を言わせない強い指摘に、セシリアさんは肩を落とし、横向きに展開していたスターライトmkVを仕舞う。

 

 

「次は近接武装だ。滝沢はトマホークと葵の両方、出来るな?」

 

『はい』

 

 

 次の指示を受け、焔火を収納し叫ぶ。

 

 

『ゲッタートマホーク!』

 

 

 右の突起が飛び出しトマホークへ変形して右手でキャッチ。まず一つはクリアだ。

 

 トマホークを地面に置き、再度武装をイメージする。

 

 今度は刀。物体を斬るもの、固く、鋭く、閃く武器。

 

 構えた両手に粒子が集まり光となって葵が展開された。けど焔火と同じ様に時間がかかってしまった。これじゃダメだな……。

 

 展開した葵を収納しトマホークを拾い上げ、隣のセシリアさんを見ると、

 

 

「い、インターセプター!」

 

 

 半ばヤケクソ気味で叫び、レイピア型の武装を召喚していた。

 

 それを見た織斑先生は少し呆れた様子。

 

 

「代表候補生が初心者用の手段を使ってどうする。敵は待ってはくれんぞ」

 

「そ、それは接近されなければいい訳でして……。それに、それを言うなら光牙さんも叫んでるではありませんの?」

 

「滝沢の一部の武装は例外だ、ああしなければ展開出来ん。責任を転化するな」

 

「うぅ……」

 

 

 織斑先生に注意を受けるも、こちらに火の粉をかけるセシリアさん。それを先生は切り返し黙らせる。

 

 ……あの先生。何気にゲッターが他のISと違うのバラしてません?

 

 バラさないで下さいよ、マジで。

 

 

「でも、滝沢君のIS。本当に変わってるよね」

 

「うん。全身装甲のなんて見た事ないし」

 

「一体何処が作ったんだろう?」

 

 

 ほら、そのせいで皆さんがベーオに注目してるじゃないですか。

 

 いや扱う僕が一番気を付けなきゃいけないんですけど、織斑先生も気を付けて下さいよ。

 

 バレたら色々厄介なんですから……。

 

 思わず心配する僕だったけど、山田先生が授業を進めてくれたのでなんとか大丈夫だった。山田先生、ナイスです。

 

 授業中ずっとセシリアさんに睨まれたりしたけどね。

 

 ……何故に?

 

 

 

 

 ※キングキリムゾンッ!! なんやかんやで夕食後〜。

 

 おい作者、なんだそのテキトーな時間経過描写は。

 

 いや作者がどんな奴か知ってるからあまり気にはしないけどな……。

 

 

「滝沢君!」

 

「「「「「クラス代表、おめでとー!」」」」」

 

 

 女子の皆さんが言うなり、持っているクラッカーがパン、パーンと特有の音を立て、紙テープ射出。同時に僅かな火薬な匂い。

 

 何故だろう、この火薬の匂いで妙に気分が良くなる僕はおかしいだろうか? ……アブねえな、僕って。

 

 自分に危機感を感じつつも、周りに目をやる。

 

 今開かれているのは、曰く『滝沢君クラス代表就任パーティ』だそうだ。壁にでかでかと書かれた紙が貼ってある。

 

 食堂の片隅を陣取り、テーブルには大量のお菓子や飲み物が置かれ、一組の皆を中心にワイワイ騒いでいる。

 

 ゲッターの世界ではこんな事あまり無かったからちょっと新鮮に感じる。お菓子とか甘いものなんて滅多に食べれなかったし。

 

 楽しそうな皆の表情から、ここは本当に平和なんだな……と思わず感じてしまう。

 

 

「――光牙。どうしたのだ?」

 

「え?」

 

「遠い顔をしていましたけど、何処がお体の具合でも悪いのですか?」

 

 

 両隣の二人に声をかけられ、思考に没頭していたと気付く。

 

 

「すみません、何でもないですよ」

 

「そうか」「そうでしたか」

 

 

 お決まりの台詞だったが左隣の箒さん、右隣のセシリアさんは納得してくれた。パーティが始まったら直ぐにこの二人が隣を陣取ったんだ。

 

 そうだ、今は皆さんが開いてくれたパーティの最中なんだ。水を差す様な真似や考えはよそう。

 

 そう考え、コップにコーラを半分注いでカルピスで割った僕特製MKジュース(僕命名)を作り、ポッキーを頬張る。

 

 甘くて美味しい。渓さん達にも食べさせてあげたいな。

 

 

「はいはいはーい。お楽しみのとこ失礼しますねー。新聞部でーす、噂の滝沢光牙君の取材に来ましたー」

 

 

 するといきなり、カメラを携え眼鏡をかけた女子が何処からともなく現れる。

 

 

「はい、これ名刺ね」

 

「あ、どうも」

 

 

 ご丁寧に渡された名刺を受け取り確認。

 

 えー、二年の黛薫子さん。……なんだってこんなめんどっちい漢字の名前にしたんだ、黛さんの両親。

 

 と言うか黛と見ると篁という漢字を連想しある人を思い出すのは僕だけだろうか。

 

 よし、ここは意を決して。

 

 

「あのー、黛先輩?」

 

「何?」

 

「もしかしたらなんですが……親戚の人とかで篁って人、居たりします?」

 

「居るけど、それがどうかした? 私の親戚で剣の道場やってるよ」

 

 

 ……居たよ、オイ。

 

 

「あいや。ちょいと気になりやしただけで……すみません」

 

「? そう。じゃあ取材に入ってもいい?」

 

「はい、どうぞ」

 

 

 黛と篁は置いといて、取材に答える。

 

 

「ずはり滝沢君、一組のクラス代表になった感想は?」

 

「感想……ですか」

 

 

 率直に言えば色々仕事があったりして面倒くさい。真っ先にそう思ったけどそれじゃ素っ気ない。パーティに集まったメンバーも気になるのかこちらに視線を向けている。

 

 ならば……思いきりますか。

 

 ――俺モード起動。

 

 ゆっくりと立ち上がり、黛先輩の押し付けるボイスレコーダーを拝借。

 

 その様に呆気に取られる黛先輩ら一同。

 

 俺はボイスレコーダーをマイクに見立て、決意を語る。

 

 

「なっちまった以上は全力でやる。……だが、俺の前に立ち塞がるもんがいるなら、それが誰であろうと俺は全力でぶっ壊す。それだけだ」

 

『………………』

 

「以上」

 

 

 俺は言い切り、ボイスレコーダーを返して座ってMKジュースを啜り、俺モードを解除した。僕もボイスレコーダーとかは持っとこうかな。

 

 

『……き』

 

「ん?」

 

『きゃああああ〜〜ッ!!』

 

「ドワォッ!?」

 

 

 するといきなり女子の大絶叫。衝撃でひっくり返りそうになったぞ、なんだなんだ、ゴキブリでも出ましたか?

 

 

「滝沢君凄い! あんな事言うなんて!」

 

「もしかして……意外と肉食系なのかも!」

 

「ひょっとしたら、隙があったらパクって……」

 

『いや〜ん!!』

 

 

 女子の皆さん、顔赤くしてクネクネクネクネ。

 

 ……これは何を想像しながらの儀式?

 

 

「こ、光牙、お前という奴は……」

 

「皆さんの前なのに……もう」

 

「や、やだ。こんな事なんて捏造すればいいの……!?」

 

 

 って箒さん、セシリアさん、黛先輩もですか。

 

 黛先輩、捏造なんてしないで下さい。そんな事したらマスゴミの始まりですよ?

 

 カオスになったパーティーは、黛先輩がセシリアさんに取材したり(長そうだったので強制終了)、僕のMKジュースについて聞かれたりした。

 

 

「じゃあ最後に写真撮るからね。滝沢君とオルコットさん、真ん中に来て」

 

 

 言われた通り動くと黛先輩はオルコットさんの手を取り僕と握手させる。ポージングか? それにしてはオルコットさんが頬を赤くしてるけど。

 

 

「じゃあ撮るね〜。5135+2285÷2は?」

 

「3712」

 

「正解!」

 

 

 黛先輩がデジカメでパシャッとな。

 

 ただし直前で女子の皆さんや箒さんが入り込み、全員写真となっちゃったけど。

 

 セシリアさんが黛先輩に抗議したり皆が宥めたり、撮った写真はくれるのかと聞いたりしてる。

 

 にしても黛先輩、3712……スマイルとは。やりますね。

 

 こんなノリでパーティーは続いていったけど、明日の為に九時半に終わりを迎えたのだった。

 

 

 

 

〜学園・通路〜

 

 

 パーティーとその片付けを終え、僕は通路を歩いていた。

 

 今の僕の部屋である予備の教員部屋に向かって。

 

 明日も嫌な学校だ、時間もそこそこ遅いから早く戻らないと。

 

 

「――ちょっと! まだなの!?」

 

 

 ん? なんだ?

 

 正門の方から何やら大声が聞こえてきた。

 

 ……何か気になった僕は、正門へ進路を変え向かった。

 

 何だろう、今の声。どっかで聞いた事のある様な気がする……。

 

 

 

 

〜正門・総合事務受付〜

 

 

 

「だーかーら! 鳳じゃなくて凰! 鳳凰の後ろの方よ、何で何回も間違えんのよ!?」

 

「す、すみません。よく似てるもので……ええと、これで良いですよね?」

 

「……そうよ。やっと終わったわ、ったく。何で受付だけでこんなに疲れなきゃならないのよ」

 

 

 声を便りに進むと、総合事務受にて、メガネをかけた事務員の人を怒鳴りつけるIS学園の制服を着た女子の姿――という光景が目に入ってきた。

 

 

「ごめんなさい、時間をかけてしまって……。改めてIS学園にようこそ、凰鈴音さん」

 

 

 事務員の人が謝り、女子に愛想笑いで歓迎する言葉を送る。

 

 けど女子の方は、その当たり前な言葉に鼻を鳴らす素振りを見せた。相当怒ってるみたいだ。事務員の人は顔を落としてションボリ。

 

 名前が聞こえたけど、聞こえからして中国系の人かな。

 

 その人はクルッと方向転換し――声を便りに来ていた僕と丁度目があう。

 

 そこで女子の全体像を把握した。スレンダーな体系で、金色の髪止めをした茶髪のツインテール。肩からは荷物だろうボストンバックを下げている。

 

 転入生か誰かかな?

 

 そう考えていると、その女子の方は目を見開き、こちらに向かって走り寄ってきた。

 

 

「一夏ッ!」

 

「うわっ!?」

 

 

 そんでなんと! いきなり僕に抱き付いてきた。

 

 衝撃で倒れそうになるけど堪える。

 

 

「ちょ……なんですか一体!?」

 

「一夏、ようやく会えたー!」

 

 

 話聞いてない!

 

 と言うか一夏!? この人も一夏さんの関係者ですか!

 

 僕とそんなに変わらない背丈の女子は抱き付いたまま離れない。

 

 不味い、こんなのを誰かに見られたら……。

 

 

「………………」

 

 

 見られとったー!

 

 さっきの事務員の人にバッチリ見られてますやんか!

 

 目が点になってるよ!

 

 不味い、本当に不味い……。

 

 

「いーちか♪ もう、何処で何してたのよ。なんで名前違うの? どうしてIS動かしたの?」

 

 だが関係なしにこの抱き付き女子は自らの疑問、一夏さんについてををぶつけてくる。

 

 

「いや、僕は一夏じゃ……」

 

 

 バシィン!

 

 

「アイェ!?」

 

 

 するといきなり謎の影が僕の側に出現、一撃が入る様な音がし抱き付いている女子が崩れ落ちた。

 

 この間の時間、僅か0.1秒の神業。

 

 そんな事をやってのけたのは……。

 

 

 

 

「大丈夫か、滝沢?」

 

「織斑先生ェ……」

 

 

 言わずもかな。元ブリュンヒルデで最近凄い担任教師。

 ただし、何故か背中には一降りの忍者刀を背負っている。汚い忍者とかスレイヤーで有名な飛影のだなありゃ。

 

 

「滝沢がピンチだと私のUO(アルティメット・お姉ちゃん)センサーが反応したのだ」

 

「なんですかいその理由とセンサー……」

 

「ともかく、こいつを運ぶぞ。お前共々説明が必要だろう」

 

「はあ……」

 

 

 それはそうだし、とりあえず先生に従う。

 

 ただ先生は気絶させた女子を引きずっていったけど。雑だね。

 

 というか受付の事務員の人も気絶してましたが、……何故に?

 

 

 

?職員室・隣の個室?

 

 

 さてさて場所は移り変わりましてあの個室。

 

 すっごいどうでもいいですが血の痕(第九話)が残ってて不気味です、ハイ。

 

 

「……うーん」

 

 

 呻き声が聞こえ、椅子で作った簡易ベッドに寝かせてられていた女子が体を起こす。

 

 

「起きたか、凰」

 

「はい……えっ」

 

 

 女子に声をかける織斑先生。けど何故か飛影のお面つけて。

 

 ああ……そんな事したら……。

 

 

「――アイエエエエ!? ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」

 

「ドーモ、ファン=サン。ニンジャです」

 

「イヤーッ! 死にたくなぃぃぃぃ!!」

 

「はあ……」

 

 

 やはりこうなる。

 

 この作品ニンジャになっちゃうよ。僕は慌てて間に割って入る。

 

 

「ほらお面取ると」

 

「アイエエ……って、千冬さん?」

 

「コラ、勝手に外すな」

 

 

 いや外しましょう。普通に会話しましょうよ。

 

 コミュニケーション大事よ、社会とか出てからは大事になりますから。

 

 だから僕は女子に自己紹介。

 

 手をパム、と合わせ、軽くおじぎする様に。

 

 

「ドーモ、ファン=サン。タキザワコウガです」

 

「ドーモ、タキザワ=サン。ファンリンインです。ってなんでよ! 今ツッコンでおいてそれかい!」

 

 

 ……あれー?

 

 

「落ち着け、凰。説明してやる」

 

 

 飛影先生……じゃなくて織斑先生が騒ぐ女子を宥め、説明に入る。

 

 女子の名は凰鈴音さん。

 

 一夏さんが小四の終わりに中国から引っ越してきて、凰さんが外国人というのでいじめられているのを一夏さんが庇った事から知り合った。

 日本での凰さんの家が中華料理屋さんで、よく一夏さんは食べに行っていて縁があるらしい。

 

 それはまあ……なんと言いますか。

 

 中国の人とも幼馴染み。意外とインターナショナルですな、一夏さん。

 

 

「それで、こいつの名は滝沢光牙だ。似ているが一夏ではない」

 

 

 僕の事も織斑先生が説明した。

 

 それを聞いて、凰さんはをじっくり見つめてから、やはりというか、落ち込んでしまった。まあそうなるよね……。

 

 

「……確かにそうね。よく見ると、アンタ一夏とは違うし」

 

 

 前に一夏さんの写真を織斑先生から見せて貰ったけど、僕とは主に髪色や頬のキズなんかが違う。

 

 ただしパッと見だったり、昔の一夏さんを知っている人なら見間違えるかもしれない。

 

 と言うか、箒さんといい、凰さんといい、ここまで一夏さんを気にするの、一夏さんと聞いた時の態度。

 

 ……もしやかもしれないな。

 

 

「あの……ごめんなさい、凰さん。ぬか喜びさせてしまって……」

 

「謝らないでよ。余計惨めになるじゃない。……一夏じゃないのに」

 

 

 凰さんは聞こえないつもりで最後に呟いただろうけど、僕には聞こえていた。

 

 これが当然だ。似てる僕が側にいるだけで辛い。ましてや、それが思い人なら。

 

 誰もが箒さんみたいに割り切れる訳じゃない。いや、箒さんも心の中では僕と一夏さんの事を割り切れてるかどうか。

 

 

「……ともかく、だ。今日はもう遅い。もう寮に戻れ。明日遅刻するのは許さんぞ」

 

「「はい……」」

 

 

 織斑先生の言葉で話は終わったけど、今回はとても歯切れが悪い終わり方になってしまった……。

 

 

 

 

 ……かと思いきや。

 

 

「ちょっ、な、何コレ!? アンタが言ったワケ!」

 

 

 次の日。廊下にて腹を抱え爆笑している鈴さん。

 

 笑っているのは彼女だけでなく、他にも女子達が見とれてたり、メモしてたり、写真撮ったり、僕を見てクスクスと笑ったりとしている。

 

 彼女らの注目を集めているのは新聞部の新聞。

 

 ……それにでかでかと書かれた、昨日の僕の取材の内容だ……。

 

 いや、まさかそのまんま使われるとは思ってなかったワケで……。

 

 こうしてしばらくの間、僕はIS学園中の様々な注目を浴びる事になってしまった……。

説明
第十話です。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
1051 1025 2
コメント
剣聖龍です。……いつかはそうなりますね、ハイ。(剣聖龍・零)
初コメントです。…タグの「やらかす千冬さん」後何話かする頃には「安定の千冬さん」にクラスチェンジしてそうな…w(プロフェッサー.Y)
剣聖龍です。はい、UOセンサーは無敵です。(剣聖龍・零)
UOセンサー恐るべし。(mokiti1976-2010)
タグ
ニンジャスレイヤー アイエエエエ!?   セシリア 光牙 やらかす千冬さん ゲッター インフィニット・ストラトス 

剣聖龍・零さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com