魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第百四十二話 ピンチ!(フェイト編)
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 〜〜まえがき〜〜

 

 勇紀&ツインエンジェルと別れて少ししか時間が経ってない展開からの内容のため、まだ勇紀達はツインファントムと合流しておらず結界も消えてない状態です。

 

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 〜〜フェイト視点〜〜

 

 「はあぁぁぁっっ!!!」

 

 「ちいっ!!」

 

 私が振るうバルディッシュの一撃を魔力刃で切り払い、距離を取る魔導師。

 

 「食らいな!!」

 

 距離を詰めようとする私に対し、相手は魔力弾を複数放ってくる。

 身を翻してソレを回避する。誘導性のある追尾弾じゃなくそのまま魔力弾は壁に当たる。

 

 「プラズマランサー、ファイア!!」

 

 電撃を帯びた射撃魔法を使って相手の動きを制限。

 すかさず追撃するが今度は障壁を張られ、またも阻まれる。

 勇紀達が上に向かってからの攻防は先程からこの状態が続いている。

 

 「やれやれ……埒が明かないねぇ」

 

 距離を取りながら魔導師が言う。

 

 「こちとら上に向かった連中を追い掛けなきゃいけないんだ。アンタとじゃれ合ってるヒマは……」

 

 今度は喋りながら魔力をチャージし始め

 

 「無いんだよ!!」

 

 放たれる砲撃魔法。

 それを避けて反撃に移ろうとするが、相手は砲撃魔法を放った直後だというのに大量の魔力弾を展開し、一気に追撃で撃ってくる。

 

 「くっ……!」

 

 障壁を前方に張り、弾幕攻撃をやり過ごす。

 この魔導師、戦闘パターンを見た感じなのはやシュテルみたいな砲撃魔法と射撃魔法を軸にした攻め方で先程から来ている。

 ただ、なのはやシュテルの様な防御力は無いのかもしれない。

 その証拠にコチラの攻撃は障壁で防ぐより回避に重点を置いているから、もし一撃を入れられればかなりのダメージを与えられる筈。

 

 「ふーん…防御力が低いタイプの魔導師の割に、障壁の強度は中々じゃないか」

 

 …私の防御力の低さにも気付いてるみたいだね。こっちも回避優先で攻撃をやり過ごしてるから気付かれるのは当然か。

 

 「それにこんな狭い廊下での戦闘だっていうのに、上手く攻撃をいなせるなんてね。本局の有能な執務官さまは伊達じゃないって事か」

 

 「…私が執務官だって知ってるという事は貴女はミッドの人間?」

 

 というよりも管理世界の出身者なのだろうか?

 

 「さあねぇ。ただ管理局のデータベースのセキュリティはザルだから覗き放題っていうところかねぇ」

 

 …目の前の魔導師は堂々と私に対して『データベースをハッキングしてる』と言う。

 これなら逮捕状を準備しなくても目の前の魔導師を管理局に連行出来る。

 

 「《先程の言葉は動かぬ証拠として録音済みです》」

 

 バルディッシュが念話で伝えてくれた。

 流石だね。後は彼女を無力化させるだけ。一筋縄じゃいかないだろうけど、負けられない。

 

 「…………せいっ!!」

 

 思案しながら相手の出方を窺っていたのだが、向こうは動く気配が無かったので私から仕掛ける。

 

 「そう簡単に近付けると思わない事だね」

 

 「簡単にいくとは思っていない。けど、近付けないとも思わない」

 

 バルディッシュが『Sonic Move』と発声すると同時に私は高速移動で相手の懐に飛び込む。

 相手の射撃魔法が放たれる前に肉薄出来た私はバルディッシュを横薙ぎに一閃!!

 

 「っ!!!」

 

 今度は彼女の脇腹を捕え、一撃を決める事が出来た………((かに見えた|・・・・・))。

 

 フッ…

 

 「っ!?」

 

 バルディッシュの魔力刃が彼女に触れた瞬間、彼女の姿はまるで最初からそこにいなかった様に消えてしまった。

 手応えも無かった。……ていう事は……

 

 「幻影魔法!?」

 

 いつの間に……ううん、それよりも本物の彼女は何処に!?

 

 「ふふふ…私はコッチだよ♪」

 

 声は私が斬った彼女の幻影の更に後方……。

 そこには既にコチラに照準を定めている本物の彼女の姿が…。

 

 「消し飛びな!!」

 

 放たれる砲撃魔法。

 攻撃の直後で僅かに身体が硬直していた私だが、身体に強引に捻って攻撃を躱す。

 間一髪で攻撃を躱せたが、完全に避ける事は出来ず左肩に砲撃魔法が掠る。

 

 「((痛|つ))っ!!」

 

 肩に感じる鈍い痛み。

 バリアジャケットの一部が焼け爛れ、掠った場所からは血が滲み出ていた。

 間違い無い。

 彼女は((非殺傷設定を解除している|・・・・・・・・・・・・))。

 

 「へぇ、あのタイミングで避けるなんてデータ以上に優秀な魔導師じゃないか」

 

 「……………………」

 

 私は無言のままバルディッシュを中段で構える。

 バリアジャケットの焼け爛れた部分はすぐさま修復したけど痛みまで引く事は無い。

 けど表情には出さず、ただ目の前の彼女を睨みつける。

 

 「それに今の一撃はそれ程効いてないのかねぇ?掠っただけとはいえ、それなりに威力はある筈なんだけど…」

 

 向こうにはコチラの虚勢を見抜かれてはいないみたいだ。

 

 「やれやれ……コレだと先に行った連中が屋上に辿り着いちまうよ。((あの方|・・・))の邪魔になる様な事をされたら困るってのに」

 

 あの方?

 今回の事件の首謀者の事?

 

 「仕方ないか。次は((数の暴力|・・・・))で攻めさせて貰おうかねぇ」

 

 ニヤリと笑う魔導師の足元と周囲に魔法陣が浮かび上がり、出て来るのは文化祭真っ最中の学園を襲撃してきたロボット群だった。

 

 「やはり貴女があの召喚魔法を!?」

 

 「だ〜いせぇ〜かぁ〜い♪」

 

 魔法陣から出現したロボットは10数体。

 

 「分かってると思うけど、コイツ等にも非殺傷なんて便利な機能は搭載されてないからねぇ。死なない様に頑張るこった」

 

 ロボット群は私に狙いを定め一斉に攻撃を仕掛けてくる。

 ミサイルやレーザーといった攻撃を問答無用で放つロボット群に、私は攻撃を避けながら少しずつ近付いていく。

 勇紀が結界を張って無かったら間違い無く外にも影響が出てるよね。

 結界の効力なのか建物自体はそこそこ頑強になっており、思ったほどの被害が出ていない。

 だからこそあの魔導師もこんな屋内で威力のある砲撃魔法を撃てる訳だけど。

 

 「ハーケンセイバー!!」

 

 バルディッシュから放つ魔力の斬撃はロボット群の内の1体に向かい、鉄の装甲を苦も無く真っ二つに斬り裂いて更に後方の魔導師へ迫る。

 

 「おっと、危ないねぇ」

 

 けどハーケンセイバーも余裕でいなされる。

 ロボット群が再攻撃を仕掛けて来る前に1体を斬り伏せ、新たな1体に向かうが

 

 「ソイツと一緒に逝っちまいな!!」

 

 複数の魔力弾がロボットの胴体を貫いて私の眼前に現れた。

 

 「ディフェンサー、ラウンドシールド」

 

 私が行動するよりもバルディッシュが防御魔法を二重に発動させた。

 私自身を包む様に半球状の防御膜と、私が使用出来る防御魔法の中でそれなりの強度を誇る円形のシールドが私の正面に展開された。

 ロボットを貫いてきた複数の魔力弾は貫通性に特化していたものでラウンドシールドと接触し、10秒程経つとシールドを貫いて再び私の方に迫り来るが、ディフェンサーを貫くまでには至らなかった。

 ロボットの胴体を貫いた時だけじゃなくラウンドシールドとぶつかった時にもある程度威力が削ぎ落とされたおかげだ。もし防御魔法がどちらか片方しか発動していなかったら私は今頃あの魔力弾を食らい、大怪我を負っていただろうから。

 胴体を貫かれ、爆散したロボットの爆風もディフェンサーで遮る事が出来た。

 

 「チッ…私の魔力弾の威力を見抜いた上、防御魔法の複数展開で凌ぐなんて中々優秀なデバイスじゃないか」

 

 苛立たしげに舌を打つ魔導師。

 魔導師が放つ魔法には最大限警戒しながら1体ずつロボットを仕留めていく。

 

 「あらら…やっぱこの世界のロボット程度じゃあ、魔導師を止めるのは難しいのかねぇ…もっとも」

 

 彼女が一旦言葉を切ると、再び魔法陣が展開され、魔法陣の中から新たなロボット群が召喚される。

 

 「いくら高ランクで優秀な魔導師といえども、人間である事に変わりはないさね。数の暴力で攻め続ければいずれは疲弊する」

 

 「……………………」

 

 「アンタの体力と魔力が後どれぐらいもつのか、見ものだねぇ」

 

 ……確かに物量で攻められると辛い。

 このロボット群の個々の戦力は脅威とは言えないけど、コチラの魔力は無尽蔵じゃないし、動けば体力も少しずつ落ちていく。

 疲弊した所や魔力が尽きた所を狙われると対処の仕様が無いし、あの魔導師はかなりの強敵だ。私が見せた隙なんかは見逃さない筈。

 

 「お前達、あの女を殺っちまいな!」

 

 魔導師の指示で新しく現れたロボット達が攻撃を仕掛けてくる。

 早くあの魔導師を何とかしないと、またロボット群を召喚される。

 ロボットの数も無限じゃないだろうけど、何体いるのか分からない。

 

 「…だからと言って諦めるつもりは毛頭無いけど」

 

 新たに現れたロボット群に対しても、接近戦で斬り伏せたり、魔法で攻撃して破壊する。

 執務官として相対する相手にはこういった自律兵器だった時も何度かあった。ただその時の自律兵器と違いAMFを使ってこないだけ楽に戦える。

 

 「はあ……折角増援を出したってのに、また全滅しそうだねこりゃあ。という訳で増援追加〜♪」

 

 くっ!!

 残り2体という所で再び追加されるロボット群。

 

 「ついでにコイツもくれてやるよ」

 

 ボフンッ

 

 私の視界が煙に覆われてロボット群も魔導師の姿も見えなくなる。

 煙幕か…。

 

 「ディフェンサー」

 

 バルディッシュの発声と共に私自身を魔力の障壁で包み込み、同時に見えない視界の先から飛んできたミサイルやレーザーが障壁にぶつかる。

 

 「(出来れば反撃したいけど…)」

 

 間髪入れずに向こう側から攻撃を仕掛けてくるものだから反撃する間が無い。

 

 「《正面から巨大な魔力を感知しました。おそらく砲撃魔法のための魔力をチャージしてるものかと思われます》」

 

 「っ!!」

 

 バルディッシュからの念話で私はロボットの攻撃を受けるのを覚悟の上で障壁を解き、左に移動する。

 直後に太い魔力砲撃が私の横を通り過ぎ、奥の壁に当たり爆発した。

 その後、正面からもいくつかの爆発が起きる。多分ロボットの巻き添えも気にせずに攻撃してきたのだろう。

 穴の開いた壁から煙が流出し、視界が晴れてくる。

 幸いにもロボットの攻撃が当たる事は無く、肩の傷以外に私への被害は無かった。

 

 「ちっ!避けられてたか」

 

 正直、バルディッシュが魔力の感知をしてくれていなかったら私は攻撃を避けられなかっただろうけど。

 

 「今度はコチラの番…」

 

 私は左手の手のひらを相手の方へ向け、真っ直ぐと伸ばす。

 傷を負っている左肩の部分がズキンと痛むが、今は気にしていられない。

 左手の前に展開した魔法陣。

 

 「トライデント……スマッシャーーーー!!!!!」

 

 魔法陣の中央部から1本、更に中央部分から上下に1本ずつ、枝分かれする様に伸びる合計3本の魔力砲撃が射出される。

 

 「砲撃魔法かい!!」

 

 目を見開き驚いていた魔導師だが、キチンと障壁を展開して防御の姿勢を取っていた。

 トライデントスマッシャーは私の使用する魔法の中でも、なのはのエクセリオンバスターに匹敵する高威力の砲撃魔法だ。

 

 「ぐううぅぅぅっっ!!!」

 

 砲撃と障壁がぶつかり、せめぎ合う。

 この一撃が通らない様じゃ、私の手持ちで残された高威力の魔法はジェットザンバーかプラズマザンバー位しか無い。

 どちらも使用すれば結界内とはいえビルが倒壊する可能性が高いから使いたくても使えないけども。

 このトライデントスマッシャーだって結構ギリギリなんだよね。下手したらこの階層は完全に崩れちゃうし。

 そんな障壁とトライデントスマッシャーのせめぎ合いにも決着がつく。

 

 「ぐうっ……しまっ……!?」

 

 そのまま障壁を破り、魔導師を私の魔力砲撃が呑み込む。

 ようやく一撃を入れる事が出来た。

 

 「ハア……ハア……」

 

 私は息を乱す。

 これまでの攻防でもそこそこ魔法を行使してたのに加え、トライデントスマッシャーを放ったものだから自分が思っていた以上に魔力を消費してたみたい。

 

 「「「「「「「「「「…………………………」」」」」」」」」」

 

 先程まで私の攻撃を仕掛けていたロボット群だが、今は不気味な程に静まり返っている。

 攻撃はおろか動く事すらしない。

 

 「(このロボット達は彼女の遠隔操作で動いていたって事か…)」

 

 心の中で自問し、すぐに思い至った答え。

 これなら彼女の意識も奪い取れたと思いたいけど…

 

 「やれやれ……予想以上の威力で驚いたさね。ロボットの制御に回していた魔力を咄嗟に防御に回さなかったら意識も持っていかれてたしねぇ」

 

 そうは問屋が卸さないよね。

 

 「こりゃ、((遊ぶのは止めにして本気でいった方が良いかもねぇ|・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・))」

 

 本気!?今までの私との戦闘では本気じゃ無かったって事!?

 内心で驚愕してる私を余所に、魔導師は何やら小声で詠唱を始める。

 パリン、と小さく何かが割れる音を聞き取った次の瞬間、彼女から凄まじい魔力の奔流が溢れ出す。

 

 「(凄い魔力量!)」

 

 先程までとは比べ物にならない魔力による見えない重圧が私に圧し掛かる。

 普通なら腰が引けていても仕方ないと思える程の重圧感。

 けど…

 

 「(これ以上の魔力による重圧を受けた事だってあるんだ。この程度で怯えたりはしない!)」

 

 椿姫……西条……。

 管理局……ううん、次元世界中でも間違い無く最高クラスの魔力保有者が知り合いにいるんだ。

 西条はともかく、椿姫に模擬戦を挑んだ時に感じる圧力はこんなものじゃない。

 まさか重圧に関する経験がこんな所で役に立つなんてね。

 

 「ふーん…この魔力量を感じても怯まないとは、ホント嬲り甲斐のある獲物だねぇ」

 

 「魔力量だけが魔導師の実力を決めるものではない。魔力が多いと言うのはあくまで他の魔導師に対しアドバンテージがあるという事だけで、それを活かしきれるか否かは本人の努力次第だから」

 

 「違いないねぇ。アンタは魔力が多いだけで浮かれたり、他人を見下したりする様な輩じゃないって事かい」

 

 目の前の彼女は圧倒的な魔力を放出し、上から目線で私を見ている割には一切の隙や油断を感じさせない。

 

 「(……状況はますますヤバいかな)」

 

 本来の魔力を解放した彼女に加え、多数のロボット群。

 バルディッシュを握る手に力が込もる。

 

 「「っ!!」」

 

 しかしその時、私と目の前の彼女は同時に感じた。

 このビルと周囲一帯を覆っていた結界が((消失した|・・・・))のだ。

 

 「(結界を張ったのは勇紀の筈。何で勇紀は結界を解いたの!?)」

 

 結界を解けば現実空間に被害が出るのに。

 上の方で何かあったのかな?

 

 「結界が消えた…か。こりゃ迂闊に暴れられないねぇ。困ったもんだ」

 

 「困った?」

 

 彼女の言葉に疑問が湧く。

 

 「正直思いきり暴れたいけど、あの方が((7つの聖遺物|セブンアミュレット))を手に入れるまでは迂闊にビルを破壊する様な真似は出来ないのさ。アンタにとっては嬉しい誤算かもしれないがねぇ」

 

 面倒臭いと言わんばかりに表情を歪めている魔導師。

 確かに先程までの様なロボット達の攻撃や彼女の魔法が著しく制限されるのは嬉しい誤算だけど、それは私も同じだ。

 ただでさえリミッターを外し、魔力が上昇した彼女の障壁を破るのが困難になっただろうと思われるのに

コチラの高威力魔法も粗方使えないのだから。

 

 「(なら私が結界を張り直す?)」

 

 魔力の消費は致し方無いけど現実空間で被害を出し、ビルが倒壊するかもしれない事を考慮すれば…。

 

 「けど、その誤算も私にとっちゃ大した問題にはならないさね。既に((アンタへの仕込みは済んでいるからねぇ|・・・・・・・・・・・・・・・・・・))」

 

 仕込み?

 私にはその単語の意味が何だか分からないけど、警戒心だけは跳ね上げる。

 

 「そうだねぇ……後10秒ってトコか。……9……8……」

 

 彼女はゆっくりとカウントを取り始める。

 一体何が起きるというのか……。

 

 「7……6……5……4……」

 

 念のためプラズマランサーを即座に放てる様、4つ程自分の周囲に展開しておく。

 

 「3……2……1…………0!!」

 

 カウントを数え終える。

 同時に、私に異変が起きる。

 

 「っ!?何で!?プラズマランサーが!!」

 

 突然私の周囲に浮いていたプラズマランサーが((消滅した|・・・・))。

 それだけじゃない。

 

 「バリアジャケットまで!?」

 

 私の服装はバリアジャケット姿が解除され、私服に戻されていた。

 どうして!?私の魔力は消費こそしてるものの、まだ空じゃない。

 

 「コレでアンタの身を守る鎧は無くなったって訳だ」

 

 「…一体何をしたの?」

 

 いきなりの魔力弾消滅とバリアジャケットの解除。まるで魔力そのものを打ち消したかの様な。

 こういった理由を尋ねつつ、自分でも推察する。彼女が教えてくれるとは思わないし、教えてくれたとしても本当の事を言うとは限らないから。

 

 「(…………もしかしてAMF?)」

 

 真っ先に思い至ったのは魔導師にとって脅威になり得るフィールド系の防御魔法。

 もしかしてあのロボット群にはAMFが発生出来る様に改造を施されてる?

 

 「(…………ソレは無いよね)」

 

 AMFが使えるならロボット群を召喚した当初から私の魔力をもっと制限してる筈だし。

 何より彼女もAMFの影響下に入ってしまう。魔導師である以上はそんな事態は可能な限り避けたいだろう。

 

 「ひょっとしたらAMFだと推察してるかもしれないけど、答えとしては不正解だと言っておいてやるよ」

 

 「……………………」

 

 「それにAMFは魔導師にとって厄介な魔法だけど、魔力結合をしにくくするだけで魔法そのものを完全に封じる訳じゃ無い。AMF内でも時間を掛ければ魔法を発動する事も出来るってのはアンタも知ってるだろう?」

 

 彼女の言う通り、AMFでは魔法の発動をしにくくさせるだけであり、熟練した魔導師ならば魔法の発動自体は出来る。

 ただし、魔力の消費は通常時よりも多くなるけど。

 

 「けど、アンタに仕込んだ((モノ|・・))はリンカーコアの活動を完全に停止させる事で、大気中の魔力素を取り込んでも一切の魔力発動を阻止するのさ」

 

 リンカーコアの活動停止…。

 信じたくはないけど認めざるを得ない。リンカーコアが機能しないとなると周囲に展開した魔力弾の消滅、バリアジャケットの形成維持が出来ず、服装が私服に戻ったという事実にも説明がつくから。

 

 「…どうやって私のリンカーコアを?」

 

 何か特別な術式を使っている様子は無かったし、最初から何らかの仕掛けを施していたとも思えない。

 私との戦いの最中に何かをした……何故かそう確信は出来る。

 

 「答えは((コイツ|・・・))さね」

 

 魔導新の彼女がポケットから取り出したのは先程煙幕を発生させた煙玉だ。

 

 「先程、私がコレで視界を封じた際、アンタこの((煙を吸い込んだだろ|・・・・・・・・・))?」

 

 「…………まさか」

 

 彼女の言わんとする事を理解するのと同時に、彼女は笑みを浮かべていた。

 

 「視界を封じるなんて事はどうでも良かったのさ。この煙……『((魔封煙|まふうえん))』を((吸わせる事|・・・・・))が本命だったんだからねぇ」

 

 コレは完全にしてやられた。

 煙を吸わせてリンカーコアを封じてくる策を用いて来るなんて思いもしなかった。

 勇紀が警戒した上で言ってくれた隠し玉……それをまんまと受けてしまった事を悔やんでしまう。

 

 「本来なら魔力を封じた後、砲撃魔法で跡形も無く消し飛ばしてやろうと思ってたんだけど、結界が消えちまったせいでコチラの魔法に制限が掛かっちまったよ」

 

 一呼吸置いて『けど…』と彼女は言葉を続ける。

 

 「今なら魔力弾だけでも、アンタを殺すのは容易なんだ。少し痛みと苦しみを感じさせることになるが……勘弁しておくれよ」

 

 周囲に10個の魔力弾を形成した彼女を前に、私は今何が出来るのかを考える。

 バリアジャケットも纏えず、障壁も張れない。魔法で身体強化を施しての回避行動も取る事が出来ない以上、自分が行えるアクションは限られる。

 

 「(逃げる事も出来ないだろうから、出来る事と言えば………時間稼ぎ位………)」

 

 こうなれば上の階に向かった皆……勇紀や遥達が戻って来るまでの間、何としても粘らないと…。

 

 「(情けないなあ、私ってば…)」

 

 『私が引き受ける』って言っておきながら助けを求める羽目になるなんて。

 けど勇紀も『何かあったら駆け付ける』って言ってくれてたし、今はその言葉に甘えるとしよう。

 私はバルディッシュに勇紀に連絡を取る様に頼んだ。今は念話すら使えない状態なので小声で指示をした……のだが……

 

 「彼の反応が上階から感じられません」

 

 っ!?

 感じられないってどういう事!?

 

 「上階の状況は不明ですが、おそらく結界が解かれたのは彼がこのビルからいなくなったためだと思われます」

 

 ビルからいなくなった……別の場所へ移動もしくは転移したって事?

 一体何故?

 上階の状況について思考しようとするが、新たに聞こえた第三者の声によって、私の思考は中断を余儀無くされる。

 

 「ふーん、リアラと戦り合って未だ生きているのか。随分と優秀な者のようだな」

 

 「っ!?」

 

 一体何時からそこにいたのか……。

 正面玄関のある方角に1人の人物が立っていた。

 私達より少し年上と思われる容姿の男性が。

 

 「でぃ…ディオス様!?何故こちらに!?もしかしてもう((7つの聖遺物|セブンアミュレット))を手中に?」

 

 「いや…((7つの聖遺物|セブンアミュレット))の解放にはまだ時間が掛かるみたいでな。退屈しのぎに他の連中と遊ぼうと思ったのだが、二手に分かれた侵入者の片方はどこかに強制転移させられたみたいでな。ここに来るしか無かったんだよ」

 

 強制転移させられた侵入者というのは勇紀達の事だろう。片方って事は上で更に勇紀達はメンバーを分け、その内の勇紀がいる方が強制転移させられたって事か。

 

 「(……最悪だ)」

 

 勇紀がすぐに戻って来れない状況に陥っているのなら、援軍に来てくれる可能性は皆無と考えて良いかもしれない。

 逆に向こうには1人とはいえ、厄介そうな敵が増えてしまった。

 

 「……ふむ。リアラがリミッターを外している様子から察するに、中々楽しめそうな相手だが…」

 

 「ディオス様、御身の御手を煩わせるまでも有りません。あの女は既に私の魔封煙によって魔法の行使を封じている状態ですので」

 

 「みたいだな。これでは退屈しのぎすら出来なさそうでつまらんな」

 

 ディオスと呼ばれた男性の言葉にリアラと呼ばれた女性が答える。

 彼、彼女の名前なんだろう。偽名かもしれないけど…。

 

 「(もし生きてこの場を凌ぎ切れたのなら、この2人の事について調べないと)」

 

 管理局に補足されている次元犯罪者なのか否か……。

 生きて凌ぎ切れたらの話だけど……。

 

 「むっ!」

 

 「どうかされましたか?」

 

 「新たな魔力反応を感知してな。物凄いスピードでコチラへ向かって来ているな」

 

 「えっ?…………あ……」

 

 魔力反応?

 

 「コイツは……とてつもない魔力だな。フフ、楽しめそうじゃないか」

 

 ディオスと呼ばれた男性は一瞬眉を顰めたが、次の瞬間にはその顔は笑みに変わっていた。

 

 ドゴオオォォォォォンンンンンン!!!!!!!

 

 突如壁の一部が破壊された。

 おそらく新たな魔力反応の持ち主が来たんだろうけど…

 

 「(味方なの?それとも敵?)」

 

 私と彼等の視線が集まった先には

 

 「嫁えええぇぇぇぇっっっっ!!!!!!無事かあああああぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!」

 

 私の見知った人物…西条が乱入してきた………。

 

 〜〜フェイト視点終了〜〜

 

 〜〜貴志視点〜〜

 

 ヒャッハーーーーーーッッッッ!!!!!

 俺様は高速で空を飛びながら((嫁|フェイト))のいる場所をギルに探知させていた。

 そして高層ビルのとある場所で((嫁|フェイト))の反応があったため、寄り道せずにソコへ急行した。

 ビルの上の方で何やら反応があるらしいが俺様が優先するのは((嫁|フェイト))の安否だ。

 ビルの壁を破壊して中に入るとそこにはちゃんと((嫁|フェイト))の姿があった。

 

 「おお、嫁よ大丈夫か?オリ主の俺様が助太刀するぞ」

 

 勿論ニコッと微笑んでおくのも忘れない。

 

 「……………………」

 

 コチラに((嫁|フェイト))の視線が注がれている。

 フッ、俺様に見惚れているのだな。当然の事だが。

 後は((嫁|フェイト))と戦っていた雑魚を最強オリ主の俺様が叩き潰せばただでさえMAXな((嫁|フェイト))の好感度は天元突破間違い無しだぜヒャハハ。

 

 「中々楽しめそうな奴が来たじゃないか」

 

 「あの男の情報も管理局員のデータベースに載ってましたよ。確か本局に所属する魔導師の中で最高の魔力量を保有してる男だった筈です」

 

 俺様と嫁以外の声。

 見たら一組の男女がいるじゃないか。

 

 「(うほおおおぉぉぉぉっっっ!!!!!)」

 

 俺様は女の方に視線が釘付けになった。

 あの女、中々エロい恰好してるじゃねーか。スタイルもよく出る所は出てやがる。

 

 「………随分と不快な視線を向けてくれるじゃないか」

 

 俺様を睨みつけている女の様子から察するに性格は強気ってことか。

 コイツはどう考えてもアレだな。俺様が活躍した後でハーレムメンバーに加わる展開だ。

 原作には出てこなかったキャラだから位置的にはモブなんだろうが…

 

 「(あんな良い女、手に入れておかない方がどうかしてるぜヒャハハ)」

 

 俺様は目の前の女をハーレム要員に加える方法について思考する。

 

 「(まずはあの隣にいるモブ((男|お))をソッコーで叩き潰す。そうすればあの女は俺様の凄過ぎる戦闘力に怯えるかもしれんが問題無い。優しくノックアウトした後で介抱し、介抱中に俺様のニコポで…)」

 

 ……完璧だ、完璧過ぎる。

 ((嫁|フェイト))が不機嫌になるかもしれんが、それもナデポを使えば万事解決。

 へへへ、俺様はこんな素晴らしい策が思い付く自分の頭脳が恐ろしく感じてしまうぜ。

 方針が決まった以上、善は急げだ。

 俺様は投影でお馴染みの夫婦剣を出すと、しっかり握りしめ

 

 「ヒャハハーーー!!!俺様の((輝く未来|ハーレムエンド))のため、さっさと俺様に倒されやがれモブ((男|お))ーーーーーーー!!!!!!!!」

 

 モブ((男|お))に向かって突撃する。

 

 「ふっ、僕に狙いを定めたか。リアラ、決して手を出すなよ。あの男の相手は僕がする」

 

 「ですがディオス様…」

 

 「何度も言わせるな。退屈しのぎの((獲物|オモチャ))を奪う事は許さん」

 

 「……御意です」

 

 モブ((男|お))の分際で!!!!

 俺様の女(←断じて違います)に偉そうに命令してんじゃねえよ!!!

 

 

 

 〜〜貴志視点終了〜〜

 

 〜〜漢女視点〜〜

 

 「マスタァ〜」

 

 「どうしたのアナゴ」

 

 「目の前の信号が赤信号になったぞぉ」

 

 あらホント。

 私は足を止め、信号が青に変わるのを待つ。信号無視はイケない事よん。

 

 「それとマスターの想い人の反応がある地点で止まったかと思えば、魔力を解放したよだぁ。戦闘になってるかもしれんなぁ〜」

 

 ご主人様が戦闘中なの!?

 ああ、怪我とかしないか不安だわ。

 私が胸中でご主人様の身を案じていると

 

 ファンファンファンファンファン

 

 パトカーがサイレンを鳴らし

 

 キィィィ

 

 私のすぐ近くで停まったわ。

 事故か事件でもあったのかしら?

 疑問に思っていると((公務員|けいさつかん))がパトカーから降りてきてコッチに向かって来る。

そして…

 

 「こんばんわー、ちょっと良いかな?」

 

 私に声を掛けて来たわ。

 

 「ゴメンねー。通行人の何人かが『ビキニ一丁の巨漢が街を爆走してた』っていう通報があってねぇ」

 

 「何で服を着ていないのか事情を聞きたくてちょっと我々に同行してもらえるかな?」

 

 な、何て事!!

 急いでる私を余所に((公務員|けいさつかん))がナンパしてくるなんて!!

 

 「貴方達の気持ちは嬉しいけど私は急いでるのよん。そのお誘いは断らせていただくわ」

 

 それに今の私はご主人様一筋何だから浮気はいけないわよ。

 ちょうど信号が青に変わったので私は再び爆走し出す。

 

 「あっ!!?ちょ……!!!」

 

 「おい、急いで後を追うぞ。ついでに応援も頼むんだ」

 

 背後の((公務員|けいさつかん))の声を無視しながら私の視線は真っ直ぐに前だけを見る。

 それから程無くして沢山のパトカーと((公務員|けいさつかん))が現れて私の進路を阻むため、私は((公務員|けいさつかん))達と戦闘する羽目になったわ。

 ご主人様との合流時間がますます遅れちゃう。

 コレも愛故の試練なのね。

 私、この程度では決して挫けない。

 だから待っててご主人様。ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

 

 

 

 〜〜漢女視点終了〜〜

 

-3ページ-

 〜〜あとがき〜〜

 

 @フェイトが魔法使えなくなってピンチ!

 

 A安定の自称オリ主現地到着。

 

 B鉄先輩が((公務員|けいさつかん))と戦闘開始。

 

 

 

 以上が今回の話の内容でした。

 正直、鉄先輩が予想以上に早く現地到着しそうだったので時間稼ぎの意味も含めて((公務員|けいさつかん))に妨害させました。

 今追い付かれたら困るんで。

 さてさて、次回は勇紀&ツインファントム視点の内容です。

 コチラには((他作品からのあるキャラ|・・・・・・・・・・・))が敵として出てきます。

 『ようやくコイツ出せるなあ』と感無量なカルピスウォーターでした。

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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コメント
国家公務員の警察官はオエライさんだけデスヨ。例、指定署長・各部長・本部長 海鳴署の格次第じゃ全員地公。(道産子国士)
西条久々?の登場だが数秒でやられるのかな?(ガアット)
…役に立ったじゃないか、西条。多分最初で最後だろうけど。(プロフェッサー.Y)
次回の先輩の活躍に期待しとこう(XXX)
B応援を呼ばれた…彼女も登場かな(akieco)
フェイトがピンチ!?助け(?)に入った西条も巻き込んで敵が倒される展開が見える気がする・・・(海平?)
・・・フェイトの方はマジなピンチですね。この危機的状況を如何切り抜けるのか、楽しみです。(俊)
A、Bマジでトラブルメーカーwww サウザーとかは魔封煙関係なさそうだなぁ(青髭U世)
Bリアル逃走が始まった(唖然△茫然)(アサシン)
Bwww敵を増やすなwww(kaito)
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