Woker・side 超次元の外れ者・リメイク 外伝
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「((証|シルベ))」

 

それは遠い記憶……でもないか。これは……そう、私がまだ教会に所属していたころの事だ。

仕事をひと段落終え、雇い主に長期休暇をもらったある日、私は都市から離れ、草原の上で寝転がっていた。

穏やかな春の日差しと、緩やかに吹く風が心地よく、モンスターも人もあまり来ない、私のお気に入りの場所だ。

暇さえあればここにいて、日が暮れるまで、若しくは夜が明けるまで、辺りを眺めるか眠りについている。

その日、この場所に珍しく来客が訪れた。

狙われる心当たりが多い私は、来客者の気配を感じると、様子をうかがう為に、悟られない為に、動かず寝たふりをして耳を澄ませた。

音を聞くに足取りはやや重く、ため息も聞こえる、何か思い詰めているようだ。

花の香り……整髪剤か香水によるものか……ため息の声の質感と照らし合わせると、どうやら女性……しかも歳もまだ若いようだ

……どうやら狙ってここに来てたわけでも無く、ただただ通りかかっただけの様子、このままやり過ごして……

 

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「……あ」

 

その時、少女の足音が聞こえなくなった。どうやら近くで立ち止まったようだ。

 

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「………………」

 

……どうやらこの少女、初めて此処にきた私と同じく、この静寂と安穏の景色に見惚れているようだ。

気持ちは分かる、私が初めてここにきたのも、彼女と同じように悩みを抱え、答えも出ずに歩いていた時だったから。

そしてここの景色を眺めていた少女は私の元に歩き出した。一応警戒はしたが、隣に座った程度で何もなかった。

どうやら相当思い詰めていて、隣の私にも気付いていないみたいだ。

 

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「みんな頑張ってるのに、いつも私は何も……何も変わってなくて……」

 

此処にいると、抱えている悩みもついつい呟いてしまうものだ、私もそうだった。

どうやらこの少女(どんな少女かまだ見ていないが)、現状に行き詰っているようだ。

皆が皆、己を磨けているのに対し、自分は変わっていない、成長していない、あと個性もない(若しくは実感が無い)事を悩んでいた

そして何より、このまま友達にも姉達にも置いて行かれるのではないか……と、そう思っているようだ。

私はちらりと少女の姿を見た。

紫色の長髪、セーラー服、十字キーの髪飾り、リングの首飾り、まるで人ではないかのような整った容姿の可憐な少女だった。

 

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「私、どうすれば良いのかな……どうすれば皆に……お姉ちゃんに追いつけるかな」

ワーカー

「そうだなぁ……はっきり言わせてもらうと、君のその姿勢に問題があると思うのだがね」

????

「……え?」

ワーカー

「話からして君は優し過ぎる、誰かに合わせる事に慣れ過ぎている。己の個性を考える以前に、君に必要なのは……」

 

あ、しまった、つい雰囲気に流されて思ったことが……今さら言葉を止めても後の祭り、少女は完全に私の存在に気付いたようだ

マズいなぁ……どうもここだと気が緩んでいけない、ここにいる時に狙われたら確実に死ぬな、私。

今の声で気付かれたようで、少女は隣にいる私に戸惑っていた。

「何時から」と震え声で聞いて来た。誤魔化しが効かない状況なので、ここははっきり「君が来る随分前から」と答えた

すると呟いてた事を聞かれたからか、「あわわあわわ」と顔を真っ赤にして、一目散に逃げた……が、慌てていたのか自分の足に躓いて転んでしまった。

 

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「うぅ……」

ワーカー

「あーえっと……私と特訓しようか。」

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「えっ、それは……」

ワーカー

「ここで会ったのも何かの縁だ、悩みを聞いてしまった手前、放っておけないしね」

????

「う……でも、その……良いんですか?こう見えても私、普通じゃないのですが……」

ワーカー

「その手の相手にも慣れていてね、まぁ試しに掛かってきなさい」

 

こうして私は暫くの間、名も知れぬ少女の特訓に付き合った。

その内少女は私の事を「パパ」と呼び親しむようになった。暫く会ってないが、今、元気にしているかな……

 

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……夢を、見ていたようだ。

腹からドクドクと脈打って血が流れ出るのを感じる……これはもう助からないかな。

女神に負け、間もなく死に((逝|ユ))く((現実|イマ))、何故こんな夢をこの今になって見るのだろうか。

最後に娘の顔を……無意識ながらに見たかったのだろうか。

 

「パパ……パパ!」

「……あ」

 

あの少女の声が聞こえる、姿はぼやけているが間違いない、あの少女だ。

何故、あの頃のままの声と姿なのだろうか?あれから数年は経った筈なのに、なぜ今になって……視界がはっきりした瞬間、全てが分かった。

 

ワーカー

「そうか……君が……お前が……そうだったのか……」

 

目の前にいた少女は、私に止めをさしたあの女神だった。となると、あの時の少女は……彼女だったのか!

道理で似てると思ったら……私もまだまだ未熟だなぁ……【娘】に敗れてしまうとは、【娘】を泣かせてしまうとは。

しかし物凄く顔ゆがめてるなぁ……涙どころか鼻水垂れてるぞ?

……まぁ、娘の栄誉を笑ってやらないで何が親か。

 

パープルシスター

「どうして……どうしてパパが……いや……死なないで、死なないで!」

ワーカー

「それは……無理な……話かな……というか……例、え親しい間、柄とはい、え……人間の死に……一々そんなだ、と……キリがな、いぞ……」

パープルシスター

「だって……だって……!」

ワーカー

「希望の担い手が……酷い顔だ……」

パープルシスター

「バカ……ッ!パパのせいだよ!パパがリンク・ワーカーじゃなかったら!パパが私達の前に立たなければ!パパが私達の生みの親だったら……!」

ワーカー

「……ハハ(……我が娘ながら無茶苦茶いうなぁ……)」

 

けど、「私のせい」というのはごもっともだなぁ……私が娘を手にかけようとしたその時点で、私は己を曲げてしまったのやも知れない。

……((暗殺者|ヒトゴロシ))がそう言うのも、可笑しい気がするがね。

 

パープルシスター

「大丈夫!何とかするから!皆がいるから!生きられるから!」

ワーカー

「そうは……いかないなぁ……」

パープルシスター

「皆を説得して刑を軽くするから!今度は何があっても私が護るから!国も世界もパパも!護りたいモノを護る為に私……私、強くなったから!」

ワーカー

「人の話を……」

パープルシスター

「一緒に行きたい場所もあるの!見せたい物もあるの!いっぱいいっぱい!これから沢山思い出を作って……作って……だから……っ」

ワーカー

「もういい……もういいんだよ……」

パープルシスター

「よくないもん……親子らしい事……何一つしてないのに……そのままお別れなんて!」

 

そうだ……特訓に付き合っても、相談に乗っても、一緒に遊んだりとか、出かけたりとかしてなかった。

親らしい事、何一つしていなかった。それどころか、あの頃以降、一切会ってもいなかった。

けど……それでも、この子は私の為に泣いてくれている、……この流れた涙は、私を親として見ていた証なんだと、心が理解した。

もうすぐ、私は死ぬ……けどその前にせめて……せめて、私の中に在る想いは伝えておかなければ……

 

ワーカー

「……リラ」

パープルシスター

「…………!」

 

あの頃この子が自らを名乗った名前を呼び、死にかけながらも娘を抱きしめ、頭を撫でる。

本当はネプギアだという事は知っている、けど敢えて……敢えてこの名で呼んだ

 

ワーカー

「お前は……私の……リンク・ワーカーの……自慢の娘だ……」

パープルシスター

「……いや」

ワーカー

「お前が女神なら……お前が希望を担うなら……この世界は大丈夫だ」

パープルシスター

「そんな事……言わないで……お願い」

ワーカー

「強くなった……本当に、本当に……」

パープルシスター

「そんな……そんな最後みたいな事……」

ワーカー

「本当に……強くなったなぁ……」

 

間もなく、この中央街全体を利用して張った術式、【ハードロック】によって、此処にいる女神は全員封印される。

これはもしも私がここで死んだら発動するように仕込んでおいた最終手段だ。

これで数年は時間稼ぎが出来る……と信じたい。

インターセンターの皆、私が死んでも、己の意志を持ち続けてくれ。

源、ユウザを頼んだ。せめて普通の日常を送らせてやってくれ。私の代わりに私ような危ない橋を渡る人生を歩ませないようにしてくれ。

それとユウザ……ごめんなぁ……遊園地、一緒に行けそうにな……

 

 

                                                             Worker・side……End

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コメント
空「こうして一つの物語が終わって、人の心に戦禍と新たな災厄の種が残る。それが人の業、どれだけ技術が進歩しようとも人の清濁併せ持つ変わらない心は続いていく」レイス「俺が女神なら自殺するわ、身を削ってま顔も知らない他人に尽くすなんてないない」空「そうだとしても、女神は戦うよ。己を友を家族を犠牲にして・・」レイス「一生理解できそうにねぇな」(燐)
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