おにむす!J |
「キャロル?アリスじゃないのか?」
「アリスはコードネームです、ルイスちゃんも言ってましたよね?」
矢崎は混乱する頭の中で強引に話を纏めた。
「ルイス・・・、キャロル、アリス」
アリスはコードネームと言うからにはルイスとキャロルが本名になる。
がらっと変わった印象、2つの名前。
「二重・・・人格?」
「有り体に言えばそうですね、厳密にはちょっと違いますが」
キャロルは落ち着いた様子で問いに答える。
「私も秋穂ちゃんと同じなんです」
『同じ』その言葉はキャロルの口調とは裏腹にとても重かった。
「鬼の力を植えつけられたんです、御堂・・・伸人に」
秋穂の言っていたもう一つの意思、目の前の二重人格、矢崎の頭の中で線が一本に繋がっていく。
「すまない、知らなかったとはいえ」
「いいんです、それより本題に入ります」
キャロルは改めて矢崎に向き直る。
「鬼の力というのは一種の比喩で、実際は人間が体や脳に無意識に掛けてるリミッターを外す事なんです、角は被験者を識別するためのシリアルなんです」
「そして、リミッターを外すということは、体に大きな負担を掛けることになります。それに耐えられる体を作りだす事が御堂の目的です」
「何でそんなことを?」
「高い新陳代謝能力、つまり不老不死です」
映画や漫画でしか聞いた事がなかった言葉に矢崎は言葉を失う。
「君が御堂とかいう奴に敵対する理由はそれか?」
「・・・私だって、望んでこうなったわけではありませんから」
キャロルは拳をぎゅっと握る。
「親しい友人、親、兄弟、皆が年老いていくなかでずっとこの容姿で死ぬことも許されない、地獄があるとするならまさにこれよ」
秋穂の不安な顔に気づき、キャロルは口をつぐんだ。
「1つ、気になる事がある」
「なんですか?」
「秋穂の話だと、自分の中に知らない誰かがいて、理性をのっとろうとするらしい」
「そのようですね」
「君はなぜ、理性を保っていられるのかだ」
「意思が理性を持ってしまったからです・・・、力を使わなければ、新陳代謝もなにもありませんから、御堂はそんな私を捨てたんです」
「死ねない体か・・・」
「はい・・・」
不意に秋穂が矢崎の腕にしがみつく。
「どうした?」
「来る・・・」
そう言った瞬間に部屋の窓が割れる、辺りが強い光に包まれる。
「閃光弾か!」
矢崎は反射的に秋穂を守るように抱きかかえた。
やがて光が収まり、矢崎はゆっくりと目を開ける。
そこには長身を黒いコートで包んだ男とアリスが銃を向け合っていた。
「喋りすぎだな」
「お喋りは女の子の得意技だ、あんたが出てくるとは思わなかったよ」
「アリス」「バグ」
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