英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 戦争回避成功ルート
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〜ザクセン山道〜

 

「…………ッ……!」

「サラさん……」

唇を噛みしめて無残な死体となった猟兵達を見つめるサラ教官をセレーネは辛そうな表情で見つめた。

「皆さん、ご無事でしたか?」

エイリークは武器を鞘に収めた後馬から降りてリィン達に話しかけ

「…………はい。危ない所を助けて頂き、本当にありがとうございます。エイリーク皇女殿下、ゼト将軍閣下。」

リィンは複雑そうな表情で答えて会釈をした。

 

「先程の見事な騎馬術と戦い……お見事でした、殿下。」

「フフ、ありがとうございます、リグレ候。―――あら?貴女は確かレンの秘書を務めているアンゼリカさん、でしたよね?」

パントの称賛の言葉に微笑んだエイリークはアンゼリカに気付くと目を丸くし

「お久しぶりでございます、エイリーク皇女殿下。麗しの皇女殿下に顔を覚えて頂いて恐悦至極でございます。」

「クスクス、相変わらずお上手な方ですね。行方不明と聞いておりましたが、ご無事で何よりです。機会があればレンにも連絡してあげてください。何だかんだ言って、あの子は貴女の事を気に入っていますから。」

恭しく会釈をしたアンゼリカにエイリークは微笑んだ。

「はい、機会があれば必ず連絡するつもりです。」

「………エイリーク様、よろしいでしょうか?」

アンゼリカがエイリークを見つめて頭を下げた時誰かとの通信を終えたゼトがエイリークに話しかけた。

 

「何でしょうか、ゼト?」

「今回襲撃して来た貴族連合軍並びに猟兵達の”全滅”を確認したとの事です。」

「ぜ、”全滅”って……!」

「………これで貴族連合軍は更に戦死者を増やしてしまった……と言う事になるな。」

「………ッ………!」

ゼトの報告を聞いたアリサは信じられない表情をし、ラウラは重々しい様子を纏って呟き、リィンは辛そうな表情で唇を噛みしめて黙り込んでいた。

 

「そうですか……今回の襲撃で貴族連合軍が雇っている残りの猟兵達も全て殲滅しましたから、ユミルを含めたメンフィル帝国領への襲撃が少しは収まるといいのですけどね…………」

「その可能性は恐らく低いと思われます。カイエン公はウォレス准将の反対を無視して、メンフィル帝国領に何度も襲撃を繰り返し行わせていますから、カイエン公をどうにかしない限りメンフィル帝国領への襲撃は収まらないと思います。」

重々しい様子を纏っているエイリークにゼトは静かな表情で助言し

「え…………」

「ウォレス准将がメンフィル帝国領への襲撃を反対しているとはどういう事でしょうか?」

二人の会話が気になったアリサは呆け、ラウラは真剣な表情で尋ねた。

 

「諜報部隊の報告ではどうやらウォレス准将は何度もメンフィル帝国領への襲撃を止めるようにカイエン公に進言しているそうだが、カイエン公は耳に貸さず、”主宰”の権限で貴族連合軍にシュバルツァー男爵夫妻の拘束を含めたユミル襲撃、オルディスの奪還やユーゲント皇帝の救出を命じているとの事だ。」

「……つまりはカイエン公の暴走という事ね……ルーファス卿や”黄金の羅刹”がいなくなった事で領邦軍の中で唯一頼れる存在である”黒旋風”の進言も無視するという事は、相当追い詰められているようね。」

「愚かな……!何故差し向けた兵達を何度も殲滅されながらも、メンフィル帝国領への襲撃を止めないのだ!?」

「メンフィル帝国領への襲撃によって出た貴族連合軍の戦死者はどのくらいの数に膨れ上がっているのでしょうね……」

「………………」

パントの説明を聞いたサラ教官は重々しい様子を纏って推測し、ラウラは厳しい表情をし、セレーネは辛そうな表情をし、アンゼリカは重々しい様子を纏って黙り込んでいた。

 

「……エイリーク皇女殿下、一つだけ訊ねたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」

「え……私にですか?ええ、構いませんよ。一体何が聞きたいのですか?」

「何故撤退する猟兵達まで追撃して、殲滅したのですか……?彼らは貴族連合に雇われただけの存在で、多くの仲間達が殺され、既に戦意を折られて撤退していたのですから、殺す必要はなかったはずです……!」

「リィン……あんた……」

「リィン…………」

唇を噛みしめて悲痛そうな表情でエイリークを見つめて問いかけるリィンをサラ教官は驚きの表情で見つめ、アリサは心配そうな表情で見つめていた。

 

「……この世界―――ゼムリア大陸の”猟兵”という存在は逃がせばいつか”猟兵崩れ”となって、犯罪を犯す事が多いと聞いています。後の災厄となる”種”を刈り取る事も”皇族の義務”です。」

「……ッ………!」

「実際その通りですから反論できませんけど、さっき殲滅したこいつら――――”北の猟兵”達は自分たちの評判を落とすような真似はしない事はそちらの調べでわかっている筈ですよね!?」

エイリークの正論にリィンが反論できない中、サラ教官は厳しい表情で問いかけた。

「戦場で猟兵達を見分ける等余程特別な事情がない限り普通ならそのような事はしない。元故郷の同胞達を庇う貴女の言動は当然と言えば当然だが、実際先程その猟兵達は貴女達に危害を加えようとした。恐らくリィン・シュバルツァーの拘束が目的だったのではないか?」

「……ッ……!それは……ッ!」

しかしゼトの指摘に反論できないサラ教官は唇を噛みしめた。

「貴方達”紅き翼”の活躍はリグレ候達からの報告で存じています。”双龍橋”では自分達の”敵”である領邦軍の命を奪わず、無力化で済ませたとの事ですが……一つ忠告をしておきましょう。例え敵であろうと命を奪わず、生かして罪を償わせるという方法は理想的な方法ですが、そんな”甘い考え”では”戦争”を終結させる事は”不可能”です。”戦争回避条約”によって設けられる猶予期間を守り、エレボニアを存続させたいのであればそのような甘い考えは捨て去るべきです。それに貴方達は士官学院生―――つまりは”兵の見習い”です。しかも貴方達はユーゲント皇帝達を救出する為にリフィア殿下達の部隊に同行する為には私が近衛兵達を殺す覚悟が必要と口にした時、オリヴァルト皇子達は貴方達にその覚悟はあると仰っていました。ですから当然今も”敵を殺す覚悟”も持っている筈ですよね?」

「それは…………」

「………………」

「そのくらいの事は私達もわかっています!でも他のやり方で内戦を終結させる事を探るのが私達―――”第三の風”なんです!」

「アリサさん……」

エイリークの忠告にラウラは複雑そうな表情をし、アンゼリカは重々しい様子を纏って黙り込み、辛そうな表情で身体を震わせながら反論するアリサをセレーネは心配そうな表情で見つめていた。

「自覚をしているのならば結構です。ですが”戦争”に関わる限り、いずれ自分達の身や大切な存在を守る為、そして目的を果たす為に”敵を殺す必要がある事”が訪れる可能性がある事を頭の片隅に留めて置いて下さい。」

「……はい。それでは俺達はこれで失礼します。」

エイリークの言葉にリィンは複雑そうな表情で会釈をした後、仲間達と共にその場から離れた。

 

「ふふ……どうやら秘密もバレちゃったわね。」

エイリーク達が見えなくなった後サラ教官は寂しげな笑みを浮かべた。

「……何となく、察してはいました。やはり教官はフィーと同じ……?」

「ええ―――元猟兵よ。6年前、遊撃士になる前に”北の猟兵”に所属していた。ある一件でベアトリクス大佐に助けられてようやく抜け出せるまでね。」

「なるほど……だからサラ教官はベアトリクス教官に頭が上がらないんですね。」

サラ教官の答えを聞いたアンゼリカは静かな表情で答え

「……もしかしてフィーはサラ教官が元猟兵であった事を知っていたのですか?」

ラウラは複雑そうな表情でサラ教官を見つめて尋ねた。

 

「ええ。あの子には士官学院に来る前に話していたからね。」

「……やっぱり教官も色々と抱えていたんですね。」

「ふふ、昔の話ではあるんだけどね……さ、そんな事よりもザクセン鉄鉱山に急ぎましょう。」

アリサの言葉に答えたサラ教官は無理矢理話を終わらせてリィン達に先を進むように促した。

 

今起こり続けている事が紛れもなく人が互いの命を奪い合う”本物の戦争”である事をその目で見てしまい、現実を突きつけられたリィン達は内戦終結を早める事を改めて決意し、ザクセン鉄鉱山に急いで向かった。

 

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ちなみにこっちのルートではリィン達が領邦軍の兵士達を殺すか、作戦成功の為にベルフェゴール達が領邦軍の兵士達を殺す事を容認する話を考えています(黒笑)

説明
第44話
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コメント
K'様 まあ今まで不殺で済ませていたから現実を受け入れるのが難しいのでしょうね、リィン達にとっては(sorano)
そもそも殺すための武器で不殺というのに無理を感じる今日この頃。遊撃士になる際に剣を捨てたカシウスは正しかった?(K')
本郷 刃様 まあ殺さない覚悟の場合だと自分達がその殺さなかった相手にしっぺ返しを喰らう覚悟をする必要がありますけどね(sorano)
殺すことも覚悟ですが殺さないことも覚悟ですよね・・・ま、どうするかはリィン達次第ということで(本郷 刃)
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