艦隊 真・恋姫無双 64話目 |
【 新皇帝の悩み の件 】
? 司隷 洛陽 都城内 皇帝の私室 にて ?
??「……………」フゥー!
都城内の一室、皇帝陛下の私室にて……現皇帝が嘆息を漏らす。
霊帝が使っていた遺品なる机に……両手で頬杖をつき、柳眉を顰めた(しかめた)顔を支えての行動。
《皇帝陛下ともあろう者が、何という不作法!》……と老臣に叱られそうな場面だが、皇帝の私室ゆえ誰も居なかった。
だからこそ、こうした事が出来たとも言えるが……
ーーー
そもそも……漢王朝の頂点に居る皇帝が、悩むべき事象など普通は無い。 最高権力者ゆえ、大概の意見は通るし、物理的幸福は上位に位置する為だ。
しかし、皇帝も《天の代理人》と定められているが……所詮は人の子。 様々な悩みを持っている。
現に『後漢王朝第十三代皇帝 劉辯陛下』は深刻な苦悩を抱えていた。
★☆☆
論功行賞の儀より次の日、洛陽に滞在していた一刀たち諸侯や洛陽の民に……漢王朝からの詔が発せられた。
『劉宏陛下が御崩御され、新しい皇帝陛下に劉辯皇女が御即位された。 《第十三代皇帝 劉辯陛下》である。 更なる漢王朝の発展、大陸の平穏無事を願うと共に、新たな皇帝陛下を敬い従うが良い!』
……と言う要旨の御触れである。
文武百官に迎えられ、皇帝即位を誓う劉辯は、胸中に宿る想いを繰り返して皇帝宣誓を行う。
劉辯「奉天承運,皇帝詔曰………」
★ーー★ーー★
宣誓の詔を読み上げる劉辯には、脳裏に蘇る父の姿!
『劉辯ッ! 劉協─ッ!』
自分たちを人質にする十常侍を……天命僅かな身であるに関わらず、掴み掛からんとする劉宏!
ーー
『お情けに……縋れるのなら……何卒……皇女の事も……お頼み……を!』
最後の最後まで……二人の異母姉妹の幸せを願った父!
劉辯は願う……大好きだった父の冥福を。
そして──目指すべき目標を!
『自分が皇帝になれば……前皇帝だった父『霊帝』のように、十常侍のような宦官を余り近付かせらない!』
『皇帝の権威を回復させ、《文景の治》のような政策を目指す! 御父上様の願い事を叶えて差し上げるのだ!!』
★ーー★ーー★
劉辯「………布告天下,咸使聞知!」
亡き父劉宏……いや諡(おくりな)を奉じられ霊帝に、そう……何度も心密かに誓っていた。
★★☆
ところが……あれから1ヶ月経た……現在。
ーーー
『今日も陛下は、お美しいですわ!』
『髪の艶、肌の張りも……何時にも増して輝いておいでで───』
ーー
『陛下! ご機嫌麗しく! 陛下の治世に民衆は、平和を謳歌しておりますぞ! 陛下が健在の限り──曇る事など御座りますまい!!』
『おぉ──ッ! 陛下の御尊顔を拝謁できて光栄至極! 漢王朝に更なる繁栄が訪れん事を!!』
ーーー
毎日毎日、女官たちより……御機嫌伺いの為に紡ぎ出された、美麗美句の賞賛を浴びせられる。 臣下からは……まともな報告は上がらず、自分へと媚び諂う者が増えた。
それは当然……十常侍に代わる者が政権を実質掌握し、皇帝陛下を飾りとして戴いているばかり。
劉辯も、流石に言いなりばかりではと考え、抗議をすれば………
『政治をよく知らぬ者が、口を挟めば国事に支障をきたします! それに、陛下の身はアノ一件で疲労が残っているご様子、今一度英気を養って頂くよう……臣は申し上げるのです!』と伝える『司徒 王允』である。
確かに……劉辯に信頼できる臣下は少ない。
信頼できる何進は、黄巾賊討伐を行うために洛陽を離れている。
妹も政治に関しては、自分よりも劣る事は否めない。 そのような帝王学を学ぶ機会をも許されなかったから。
他には………
劉辯(───天の御遣い様! い、いえっ! あの方も慣れぬ州牧の仕事で大変な筈! 私達の為に苦労されたのに……更に御迷惑を……!)
ふと閃く一人の男の名。
劉宏から──皇女たちの行く末を頼まれた──天の御遣い!
────北郷一刀の事を!
◆◇◆
【 他の将たち の件 】
? 洛陽 都城内 大広場 にて ?
話は《一月前》へと……戻る。
論功行賞の儀の後、何皇后は再び諸侯を都城へと呼び集める。
場所は、前回と違い……都城内にある大きな庭に、諸侯の将が全員参列した!
ここは、近衛兵の閲兵式に度々使用される場所であり、多人数を集めるのは好都合。 諸侯で昇殿出来ない者でも、ここなら拝謁も可能だ!
例えば、曹操の軍勢ならば……この昨日参列出来なかった秋蘭、季衣、流琉、真桜、沙和。
ーーー
沙和「真桜ちゃん……凪ちゃんに城内で会ったけど、とても嬉しそうだったなの!」
真桜「ウチらは、笑って見送ろうや! でもな……アレが天の御遣い……? 何となく……誰かの面影あるんのやけど……誰やったか?」
ーー
季衣「……兄ちゃんだよ。 絶対、兄ちゃんだよ!」
流琉「………うん!」
ーー
秋蘭「………あの男か………」
ーーー
孫家なら……思春、明命、星、風、稟も。
ーーー
思春「明命……仕掛けるのか?」
明命「はいっ! 私は……私なりに一刀さまを確かめてみます! お話だけしても……何とも判断が付きません! やはり、実際に戦えば……その本質を掴めると思うんですッ!」
小蓮「か、一刀ッ!?」
ーー
星「あれが──主か! 益々と精悍な顔付きになっておられる!」
風「でもでもぉ〜相変わらず、傍に女の子たちを多数従えていると報告が〜? まったく〜! あの百戦錬磨のチ●コ野郎はよぉ〜〜!」
稟「………しかし、そんな一刀殿に惚れた、私たちも私たちですからね……」
星「フッ! 主の偉大さが良く解る!」
ーーー
董卓軍でも……
ーーー
恋「………ご主人様………!」
ねね「ふ、ふん! 恋殿やねねを……さ、寂しがらせたボンクラが……やっと出て来たのですよ。 まったく……まったく……ッ!」
華雄「………………」
霞「どないしたぁん? 華雄……むっちゃ落ち込んでぇるが? おっ! ほれほれぇ! 天の御遣いが出て来よったぜ! ちゃんと見ってかんってな! どないな強者かよぉ〜く目ぇを見開おって確認せなや!!」
ーーー
勿論……白蓮も美羽、七乃もいる。
そして………この人も。
ーーー
麗羽「斗詩さん! 猪々子さん! この髪型、おかしくありません? せっかく……この私、袁本初の華麗で美麗で、更に神々しい美しさを……皆さんに見て頂く絶好の機会じゃ……ありませんこと?」
猪々子「麗羽さまぁ! いつもと、全然、寸分とも変わってなんかいませんから! それに、注目になるのは、どう考えたって皇女さま方を選ぶ御遣いじゃないですか! 心配なんて無駄な事しないで警備を手伝って下さぁいよ!」
麗羽「なぁ、なぁんと言う暴言ッッ! アナタと言う人はぁぁぁッ!!」
猪々子「う、うわぁ〜! と、斗詩ぃ! 助けてぇえええッ!!」
斗詩「麗羽さま! そんなに騒がれますと、何時もより綺麗に整える事が出来ました髪型を、御自分で崩す結果になりますよ!? 文ちゃんには、私からしっかり言っておきますのでぇ!!」
麗羽「そ、そうでしたわねッ! オーッホッホッホッホッ!! では、斗詩さん! そしてぇ猪々子さん!」
「「 はっ! はいっ! 」」
麗羽「貴女たちは兵を率いて周辺の警戒を! 私は高台周辺の警戒へ行きますので! 以上──宜しくてぇ?」
「「 ───了解しましたッ!! 」」
ーーー
そんな期待と熱気、緊張と様々な思惑の中、皇帝選抜の儀が始まった。
◆◇◆
【 何皇后の脅迫 の件 】
? 洛陽 都城内 大広場 にて ?
城内広場にある数段盛り上がった高台がある。
広場は、その時折で色々と使用される……年中行事の追儺、元宵節、流觴曲水の宴等を開く重大な予定の空間。
また……閲兵式等なる急務で必要儀式を執り行う……場所。
その広場の北側になる場所に、一里四方(約410b)の高台が設置され、儀式の時には、皇帝陛下や皇族方が臨席を賜る場所である。 ここで、様々な儀式を見学される事になるのだが……今回は違う。
この高台には、何皇后、何進、皇女たちの4人。
そして、対面には北郷一刀だけ……その場に佇んでいる。
他の艦娘や恋姫たちは、一刀の指揮下と言うことで、本来は高台に付かなければならない。 しかし、場所に比べて人数が多く全員が並ばない。
ならば、数人選べとなると不公平だと言う理由で、纏め役の一刀が高台に上がている。 他の者たちは、城内で『待機中』である。
ーーー
ーーー
一刀「……………」
何皇后「ほんに……はばかりさん(ご苦労様)え、御遣いさま?」
一刀「これが……私の役目であれば………」
何皇后「天ん御遣いさまに問いまひょか。 どちらん皇女を皇帝に指名しはるか……決まったんやかえ?」
一刀「─────?」
ーーー
不意に……何皇后が、一刀に近寄り声を掛けて来た。
翡翠やら紅玉など……色鮮やかな貴石を散りばめた艶やかな衣装。 化粧も貝粉を利用した白粉を付け、赤い紅を引いている。
かなり厚く塗布されている為、元の素材が台無しの感があるのだが。
しかし、化粧も一定のステータスを示す重要な物、一刀の居た世界に比べれば遥かに高級品である。 ……本人が良ければいいのだろう。
一刀は威儀を正し、何皇后へと向き直り説明をする。
ーーー
一刀「その答えは、皇女のお二方へ先に伝えてからだと……!」
何皇后「ふふっ! 御遣いさまに、ちと御相談を申し上げたいのどすよ? あんたさまの御返事次第で、こん者たちの処分が変わるさかいに……!」クイッ!
執金吾「はっ! 此方へ連れて参れ!!」
一刀「───────!?」
ーーー
桃香「うぅ〜、ご主人さまぁ……! 私はただ、自分の出自を証明したくて! 皆に迷惑かけるつもりなんてぇ!!」
愛紗「………ふ、不覚……!」
鈴々「…………お兄ちゃん……ごめんなのだ……」
ーーー
そこには、桃香、愛紗、鈴々の三姉妹が、縄に縛られ連れて来られた! その傍には『執金吾 楊奉』が、数人の配下たちで包囲。
楊奉は特別に『剣履上殿の権』を許可されているのか、抜き身の剣を桃香たちに向けて……何皇后の指示を待っている。
ーーー
一刀「─────何を!」
何皇后「こん娘たちは、ホンマ難儀な者共どしてな〜? 天ん御遣いさまの臣下にならはった事を良き事に、劉一族の末裔やらなんやらと大法螺吹き訴えてきたんやわ!」
桃香「嘘なんかじゃありませんッ! 私は中山靖王劉勝の──」
何皇后「黙りよし! こないな粗忽モン、皇帝陛下ん儀が決まれば……処刑しはるつもりどすえ?」
一刀「勝手な真似をッ! この者たちは……俺の臣下に降った身! それを────っ!?」
何皇后「なんぼ、天の御遣いさんかて……『郷に入れば郷に従え』どすえ? 地の法には……地の罰則あり。 やから、天子の一族を語るやらなんやらと恐れおーい事。 無論……罰則は一番重たい……処刑どすやな!」
ーーー
桃香「嘘じゃない! 嘘なんか『黙れぇ!』……ヒッ!」
愛紗「桃香さ───グッ!」
楊奉「黙っていろ! 黙らねば……痛い目を見ることになる! この剣で、お前たちの綺麗な顔に、取り返しのきかない傷を負わすぞ!?」
鈴々「うぅぅぅぅ…………!」
ーーー
突然現れた桃香たちを見て、記憶ある将たちは叫ぶ!
ーーー
星「───ん? と、桃香様!? 愛紗! 鈴々まで──ッ!!」
風「稟ちゃん! あれをぉ〜!」
稟「これは───!?」
ーーー
蓮華「───冥琳!」
冥琳「────くっ!」
ーーー
月「─────!?」
詠「な、何をやってるのよッ!?」
恋「────危険っ! 恋が行くっ!!!」
ねね「恋殿ッ! お、お止め下さい! 今、皇后に刃向かえば、董卓軍全員が同じ末路を辿る事になるのですッ!!! 」
ーーー
一刀「ぐぅ───ッ!」
何皇后「天の御遣い様は公平無うちな方や。 妾や大将軍……皇女のどちらを推したはるか御理解しいやいらっしゃる。 されど……こん新参ん者共は、どへんやろな? わらわとしいやは、そん心根が分からず……心配どすえ……」
一刀「───桃香たちが、俺と組み……漢王朝を乗っ取るとでも……?」
何皇后「人ん子は……なんぼちっさい欲やて、幾星霜も過ぎれば巨大な強欲になってます。 わらわが……特に存じて………」
何進「…………何皇后よ! 私が劉協皇女を推すのも……貴女に原因があるのだが? 何故、十常侍を操り……私や一刀を殺害しようとした!」
何皇后「何進……わらわん目を誤魔化せると思ったかえ? そなたと御遣いさんが手を組めば漢王朝やらなんやら……思いんままほなからん! それにな、殺害を試みたんは何進のみ! 後は、十常侍どもの悪知恵ほな!」
何進「一刀は利用価値があると……見出したからか………」
何皇后「それにな? 実ん娘を案じるんは母としいや当然。 それにな……? 憎き劉協がおるんは……しんぼならんのや! 出来れば……遠い国へ飛ばしい、洛陽に来られへんようにしはるんが望ましい。 しかしかて、一番に懸念しはるんは……!」
何進「それは…………?」
何皇后「こん御遣いさまが、劉協と婚儀をくくることや!」
一刀「──────!」
劉協「─────///////!」
何皇后「さすれば……劉辯ん皇帝ん地位は脅かされ、わらわも力を失い路傍を漂う末路! それやけは、外さねばなるまい! そないな愚かいな火種やらなんやら……残しとうへん!! 邪魔モンは……即消さねば!!!」
ーーー
劉協「そ、そんな事───ッ!?」
劉辯「御母様! 即中止!!(お母様! 止めてぇ!!)」
ーーー
何皇后「天ん御遣いさまが、劉辯を指名すればな! ほんで一つの縁が生まれへるんや。 それに、州牧と皇帝なら地位もさほど変わりまへん! ほんで既成事実を積めば……我が娘が天ん御遣いさまと婚儀を果たせるわ!」
一刀「その為に──他の者の命を、蔑ろにする気だと!?」
何皇后「天ん御遣い……アンタはんに、どないな力がおますか知らん。 しかしかて、人しちを取られて顔色変えるんなら……こん策は有効や! 諸侯が目撃しよけが構わへん! 大事なんは、民衆自身に流れる片言の『事実』のみ!」
何進「ならば……諸侯に命令して、貴様を!」
何皇后「無駄ほな! こん広場はとーに、洛陽執金吾『楊奉』配下ん兵に、包囲されておる! 儀式場ほな帯剣やらなんやら許可されたモンしか出来ず! 丸腰んモンたちやらなんやら、何を恐れようか!?」
一刀「『楊奉』………!?」
何進「……何皇后! もしや……黄巾賊と……!?」
何皇后「オーッホッホッホッ! このまんま儀式は続行や! 劉辯ん名を……しっかり選んでおくれやす! ならば、恩赦で命やけは助けてやれますわな!! たや、どうなるんかは……知らんどすえ!?」
一刀「……………」
何皇后「……劉辯が皇帝となれば……大将軍ん座、楊奉にすげ替えてやるわ! ほんで何進よ! あんたは、劉協と仲よう処刑しはるがええ!!」
何進「………愚かな………」
◆◇◆
【 皇女たちの願い の件 】
? 洛陽 都城内 大広場 にて ?
あの時……私は……御母様に……唖然とした。
幾ら……自分の娘が可愛いからと言って……異母妹である銀糸(劉協の真名)を邪魔者扱いにしようとしている心根を!
私の為と……口では語りながら、本当の目的は………!!
ーーー
私は、銀糸の母『王皇后』を、御母様が毒殺した事を知っている。
優しく、何時も私と銀糸と分け隔てなく接してくれる……王皇后が大好きだった。 温かい手で、何度も何度も……頭を撫でて頂いた。
決して……御母様を恐れてではなく、慈愛の目で見守って下さり、悪い事をすれば……二人揃って叱られた。 どちらかと言えば……諭されたけど。
それなのに───御母様は『私の為』と言って王皇后を暗殺した。
王皇后の実家の家格が高いため、次期皇帝候補には不利になる……そんな理由。
だけど……私は知っている。
本当は……自分より若い皇后の美を……妬んでの行いだったと……言う事を!
御母様……貴女の真の目的は、私を傀儡した漢王朝の掌握!
つまり……『愛している』と口では言いながら、私も貴女の『駒の一つ』としか……見てない証拠なのよ!
ーーー
だから、私は目を閉じて……向かいに見えるアノ方に頭を垂れ、真摯に祈りを捧げる!
益州の乱曰わく!
十常侍の変曰わく!
貴方なら、どんな窮地でも───必ず救って下さる!!
そして、この御母様『何皇后』の陰謀を!!
───お願いします!
───『天の御遣い 北郷一刀様』
貴方の力は、必ず御母様の野望を絶ち、この大陸を平和に導いて下さる!
────どうか!
────どうか!!
★☆☆
何進「これより、皇帝陛下採択の儀を始める! 劉辯皇女、劉協皇女──天の御遣い様……ご準備を!!」
『─────!』
一刀「……………」
数段高くなった中央部分には、せいぜい十人が乗れるぐらいの場所があり、そこには、数々の御供えが台の上に乗せられ準備を整えている。
そんな場所に皇女二人が……ユックリと歩を進める。
ーーー
ーーー
《 劉辯 視点 》
私は、銀糸の手を取り……高台への階段を一歩一歩登る。
緊張と怯えで、私の手が痛くなる程……握り締める我が妹。
貴女の母『王皇后』を殺した者の娘なのに……貴女は私を実の姉のように慕ってくれた。 共に笑い、共に泣き、共に今……皇帝の位へと向かっている!
だけどね……安心して。
貴女には、誰からも害など与えなどさせない!
『天の御遣い』様が、貴女を救って下さる!
万が一……『天の御遣い』様がダメなら……私が守る!
私が……命を絶てば……後継者は貴女だけ………
ーーー
ーーー
《 劉協 視点 》
姉上の手は……温かい。
いつも……いつも……温かい。
私が、義母上から叱られても……直ぐに来てくれて、抱きしめてくれた。
『貴女は悪くない!』
『悪いのは、銀糸を守れない私だ!』
『弱い姉を……見守る事しかできない……姉を、どうか許して………』
姉上……貴女は、私の『お日さま』です。
貴女は、私の母上を殺した娘だと……日々落ち込まれますが、私は貴女が姉である運命に感謝しております。
ですが……今日の姉上は……怖くて、儚くて……!
まるで……幻想のように消えてしまいそう………!!
だけど……姉上……心配なされぬように……
あの方が……私たち姉妹を導いてくれます!
『天の御遣い 北郷一刀様』……数々の危機から漢を救ってくれた英雄。
必ず……父上の願い通り……私たちを助けてくれます!
だけど………もし………御遣い様でもダメなら………
姉上……貴女は……その温かさを、今度は大陸に向けて下さい!
大陸を民たちを……私だと思い……慈しんで下さい!
ーーー
ーーー
高台までは、僅か数段。
されど……皇女二人の想いは……広く深く……互いを心配する事に終始する。
そして、気付けば……目の前に立つ……北郷一刀!
太陽の光を反射した白い軍服が……眩しく輝いている!
ーーー
一刀「…………………………」
ーーー
何進「『天の御遣い 北郷一刀』よ! 汝が定めし次期皇帝陛下は!?」
何皇后「─────────」
ーーー
衛兵「執金吾様! 処刑の準備が終わりました! 御命令があれば何時でも……!!」
執金吾(楊奉)「よしっ! それじゃ、俺からの訓告だ! よおぉく……聞いておけよッ! 後で話を聞いていないなんてぇ馬鹿チンな事をほざくなよぉ!?」
衛兵「───────!」
執金吾(楊奉)「……もし、どんな奴でも変な素振りを見せたら、牢にぶち込んでおけ! 例え……天の御遣いでも諸侯だろうとな!! 命令を拒否した者は同罪と処す!! ────分かったかぁ!?」
『─────はっ!』
執金吾(楊奉)「(コイツが……噂の天の御遣いか? さて……この状況、どう対応するか手並みを見せて貰うぜ!)」
ーーー
二人の皇女が揃って、一刀の前に……足を踏み出した。
ーーーーーー
ーーーーーー
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
本当は……皇帝継承……数行で終わらせるつもりだったんです。
それで黄巾賊討伐戦へ─!
と、思っていたのですが……ね。
恋姫ばかり活躍してるのもな……と考えて、途中まで仕上がったのを止めて、新たに書き直しました。
途中のも残してありますよ?
次回か、その次に使えるかと思ってますので。
また、よろしければ読んで下さい。
説明 | ||
何皇后の台詞は、京都弁をベースにしてます。 | ||
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コメント | ||
雪風提督 コメントありがとうございます! 御指摘の通りの懸念がありますが……それでも人の欲とは際限は無いのでしょう。 『者』から『物』へ見えなくなってしまった時に。(いた) 駒・傀儡・・利用され・利用する間は良い蜜が取れるやもしれません・・。ただ、駒(独楽)は、回転(動き:恭順)が止まった時・傀儡(人形)は、糸(興味)が切れた時はてさてどうなるやら・・・。(雪風) スネーク提督 コメントありがとうございます! 楊奉は……無理そうですが、何皇后は実現可能な案ですねwww(いた) あぁ、今すぐ何皇后を爆撃して楊奉は魚雷に括りつけて太平洋をグルグル回遊させてあげたいww(スネーク) mokiti1976-2010提督 コメントありがとうございます! 作者としては感無量の誉め言葉。 御期待に応えられるか心配ですが……。 楊奉はどうなるか決めてませんが、何皇后は……結構しぶといですよ?(いた) ああーっ、続きが気になるーっ!とりあえず楊奉と何皇后は苦しみのたうち回りながら死んでくれる事を希望。(mokiti1976-2010) |
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