恋姫†無双?私だけを見てください? 幕間 |
零里拠点 『労働と膝枕と……』
〜一刀SIDE〜
「うぅ〜〜〜む…………」
俺は今、目の前の書類と戦っている。
量はそれほど多いと言う程ではなく、内容的にも何とか自分で処理出来る物ばかりである……らしい。……しかし、俺はつい、この間まではごく普通の学生をやっていたのだ。そんな俺にいきなり、街の未来の命運を左右するかもしれない書簡の処理をしろって難題を突き付けられたのに加え……
「…………読めん。」
元々日本人だった俺が、中国の漢文の原文を理解出来るはずも無く、書かれている内容も分からずで、さっぱりである。
ぐぅ〜〜……
おぉ、俺の腹の虫も食料を求めていやがる。このままじゃ、永久に空腹と対面したままこの書簡を相手にしなくちゃいけないぞ。……それだけは、なんとしてでも避けなくては。
「…………!そうだ、零里に相談をしよう。」
そうだ、どうして今まで彼女の存在に気付かなかったんだ。
俺が一番信頼している仲間であり、俺が愛している女の子の零里こと、『司馬懿仲達』だ。
賊の襲撃の際に、零里は別の世界で俺と会って、俺に愛されずに、姿を変えてこの世界に現れた『諸葛亮孔明』である事を教えてもらった。
その事実を教えてもらった俺は、零里が味わった悲しみの分、零里の事を愛する事を決めた。
そんな存在を俺はどうして忘れていたんだろう。初めから彼女に相談をしていれば良かったんじゃないか。
何せ彼女は……『諸葛孔明』であり、『司馬仲達』なんだからな。きっと……と言うか必ず、俺の相談相手になってくれるだろう。
良し!!そうと決まったら、ある程度の書簡を持って、俺の救いの女神様に会いに行こう!!
……今思ったけど、『孔明』だった頃の零里ってどんな風なんだろう。……もしかしたら、何時の日か会えるかもしれないな。
…………………………
……………
………
「さて……着いたぞ。」
零里の部屋へとやって来た俺は、入る用意をしていた。……その時
「……〜♪……〜♪」
扉越しから零里のご機嫌そうな鼻歌が聞こえてきた。
とりあえず部屋には居るみたいだけど、何か良い事があったんだろうか?鼻歌が外まで聞こえて来るなんて…て言うかそんな音だったら、鼻歌とは言わないんじゃ無いだろうか。
「零里、俺だけど……今、良いかな?」
俺は扉をノックして、零里に確認を取る。すると……
「へっ?……か、一刀様!!??」
ご機嫌だった声が一転、俺の声だと確認すると零里が慌て出した。……うむ、声だけで十分分かるな。
「……零里、入るぞ〜」
そう言って俺はドアノブに手を掛ける。その時……
「だ、駄目です!?……わわわぁぁぁぁ!!?」
ドサドサドサ………
零里の叫び声と何かが崩れる音が、部屋の中に響いた。
「!?零里、どうしたんだ!?」
俺は先程の音と声から只事ではないと判断して、すぐさまドアノブを回して扉を開ける。
そこには……
ドサドサドサ……
「う、うわあああああぁぁぁぁぁ!!??」
視界一杯の書簡の雪崩が襲い掛かって来た。
…………………………
……………
………
「………て……さい………様……」
あ、れ……何処からか、声が……聞こえてくる……
「…きて……ださい……ず……様」
この声って……
「起きてください、一刀様。」
「……んっ、零里……」
うん、間違いない零里の声だ。でも目を開けて見ると零里の顔は無く、代わりに何かのやや楕円形の突起物が瞳に映った。
その前に、何だか頭の感触が体の感触と違うぞ……体の感触は間違いなく布団の感触だろう。俺も実際感じた事がある感触だし……
しかし、頭の感触は柔らかさに加えて、少々の硬さが感じられる。……俺が何の感触か考えていると……
「……あ、あの、一刀様……起きたのでしたら、起き上がってくれませんか?……もう脚が疲れちゃいました。」
……はい?……脚?
…………………………えっ?
「おわああぁぁぁぁぁぁ!!??」
「ひゃわ!?」
俺は驚いて起き上がると、零里が驚いていたがそんな事には、かまっていられなかった。
零里が俺に……『膝枕』をしていたんだから……
「な、何で零里が……俺に膝枕を!?」
俺が慌てて零里に聞き出すと……
「え、えっと……一刀様が、入り口の前に置いてあった書簡に頭をぶつけて気を失ってしまったんです。……それで、私が一刀様の事を看病していました。」
零里が、事の事情を詳しく話してくれた。だが……
「じゃ、じゃあ……何で膝枕を?」
そう……看病をするのは別に良いんだが、膝枕をする理由が見つからない。
俺が聞き出すと、零里は恥ずかしそうにしながら……
「え、えっと……その……わ、私自身が、やりたいと思って///……あ、あの、お嫌でしたか?」
と、言ってきた。
「い、嫌……そんな事は思ってないよ///」
寧ろ、こっちからお願いしたかったぐらいだから。
「ふぅ〜……良かったです。……ところで、一刀様はどうして私の所に?」
零里は俺が、自分の所に来た理由を聞き出してきた。
「ああ、実は……」
俺は、此処まで言って口を閉じた。
「(……入り口の所まで、書簡を置いていたって事は、零里もかなり忙しいはずだ。……そんな彼女に、『俺の事まで面倒を見てくれ。』なんて言えないよな。)」
仕事をしていた零里に、俺の個人的なお願いをしても聞き入れてはくれないだろうしな。……と言うか、零里の仕事の量……半端無く多いんだろ!?……あんな量で梃子摺っているような俺は、何なんだろう……
「??……あの、一刀様……どうなされたんですか?」
零里が急に黙った俺を気になって、聞き出してきた。……一度プライドを捨てて頼み込んでみるか。
「……あっ、嫌……実は、書簡を見たんだけど……字が読めないから、書いてある内容が分からなくて、仕事が出来ないんだ。……だから、忙しい中悪いけど……一緒に仕事をしてくれないか?」
こんな事を言ってる自分が本当に情けないよ。実際、こんな情けない俺の願いを、忙しい零里だって引き受けてくれる訳が……
「は、はい。喜んで!!」
……引き受けてくれた。
「えっ?……で、でも零里……こんなにたくさんの書簡があるのに、俺の願いを聞いてくれるのか?」
俺が聞いて見ると、零里は笑顔を作りながら……
「はい♪私にとっては、こんな数は無いに等しいくらいですから……それに、何より一刀様直々のお願いです。私が断る理由なんて無いじゃないですか。」
と、言ってきた。……この量が無いに等しいって、やっぱり凄いんだな……零里は。
とにかく、一緒に仕事が出来るんだったら嬉しい限りだ。一人の時よりも断然、楽しいだろうし。
「ありがとうな、零里。このお返しはいつか必ずするから。」
「そ、そんな///お返しなんて良いですよ。……私も好きでやってるんですから。」
顔を俯かせながら返事をする零里。……よく見ると、顔がほんのりと赤くなっている感じがした。……もしかして風邪なのかな?
「それじゃあ俺は一旦、自分の分の仕事を取ってくるから待っててくれ。」
そう言って俺が部屋を出ようとすると……
「あ、待ってください……私も一緒にお付き合いします。」
零里がそう言って付いて来た。
「いや、大丈夫だよ。自分一人で持って来れる量だから。」
「いいえ、絶対に私も行きます!!廊下で刺客に襲われる可能性だってありますし!!」
俺が零里に待っているように言うと、零里は凄い剣幕で俺の服の袖を引っ張りながら言った。
「い、いや……俺、そこまで有名にはなって無いし、第一……執務室までは、ほんの少しの距離だしさ……」
俺がそんなに心配をする必要が無い事を、零里に伝えると……
「いいえ、一刀様は気を抜きすぎなんです!!この世界ではどんな事が起こるか分からないんですから!!」
零里は袖を引っ張る力を強くした。
「(…それに……一刀様ともっと居たいですし///)」
ん?何だか今、零里が小さく呟いたような……
「……零里、今何か言ったか?」
俺がそう聞いたら零里は、即座に顔を赤くして……
「へっ///!?な、何も言ってないでしゅよ!!?」
と、噛みながら言ってきた。……噛んでいる零里、可愛いな///
…………………………
……………
………
結局その後、零里と共に仕事を取りに部屋に戻った俺は、零里に文字を教わりながらも、何とか仕事を片付けて行った。
……因みに仕事を取りに行ってる間は、零里は俺の手をギュッと握っていた。
「……ふぅ、ありがとう零里。おかげで仕事がはかどったし、文字も覚える事が出来たよ。」
「いえいえ、これも一刀様の為ですから。……お役に立てたのでしたら、嬉しいです。」
俺がお礼の言葉を言うと、零里も言葉を返してきた。
「けど、俺の勝手な都合で忙しい中、手伝いまでしてくれたんだから。何か俺にも出来そうな事で恩を返せないかな。」
俺がそれでも言葉を続けると、零里が少しだけ顔を赤く染めて……
「///……そ、それじゃあ……お願いしてもいいですか?」
と、お願いをしてきた。
「ああ、いいとも。」
俺は、零里の言葉にすぐに答えた。
「……え、えっと……も、もう一度……私に、膝枕をさせてください!!」
………………え?
「えっと、零里?……それって、お願いって言うのか……な?」
俺は、零里のお願いに困惑していた。だって……さっきのは俺が気絶をしていたからって訳だし、零里自身は自主的にお願いをする事では無いと思うんだけど……
「あ、あの……その……変な言い方になっちゃいますけど一刀様に膝枕をしていた時に、一刀様が気絶をなさっていた時のお顔が、その……すっごく気持ち良さそうなお顔をしていて、見ていた私も何だか幸せな気持ちになってしまって///……だから、また膝枕をしたいなぁ〜と思って……あっ!?で、でも、一刀様がもし嫌でしたら、私も他の事を考えますから///」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ零里!?」
俺が考えている最中に、零里が早口で話していたのを俺が止める。
「その……零里が膝枕をしてくれるんだったら、俺としてもかなり嬉しいからいいけど///」
「………………へっ?」
俺の言った言葉に、零里は固まる。
……うぅ、自分で言っていて恥ずかしいぞ///
「そ、そそそそれってつまり///あ、あああの、良いって事でいいんですよね///」
零里が顔を真っ赤に染めながらも、確認をしてきた。
「う、うん///」
俺も、力無く頷いた。
「え、えっと……それじゃあ、ここにどうぞ///」
俺の返答を聞いた零里が早速俺の寝台に移動をし、座り込み、掌で自分の膝を叩いた。
「あ、うん……でも本当にこんな事で良かったのか?零里には何の得も無いのに……」
「良いんです!!私は本当に、膝枕が純粋にしたいだけなんです!!」
れ、零里の奴……凄い剣幕だな。そんなに膝枕をしたいのか?
「わ、分かったよ……それじゃあ、改めて……」
俺は寝台で座っている零里の傍に行って、自分の頭を零里の膝の上に置く。
「あ、あの……どうでしょうか、一刀様?」
零里が俺に心地よさを聞いてくるが、正直俺の心の中は穏やかではない。
零里の甘い匂いが、頭の後ろから俺の鼻腔をくすぐって頭の中はフラフラするし、前の方でも零里の豊かな胸が俺の顔に当たりそうで、もうドキドキなんだ。
「……あ、あのぉ……一刀様?」
豊かな胸の向こうから、零里の心配そうな声が聞こえてくる。
「う、うん。すっごく……気持ちいいよ。」
俺は声がひっくり返りそうになるのを、何とかして堪える。
「そうですか。……良かったです。」
零里の安心しきった声が聞こえてきた。俺の心は全然安心しきってないけど……
「あ、あのさ零里……どうして、急にこんな事を言い出したの?」
お礼だったら他の方法があるだろうに……気になった俺は零里に聞いてみた。
「え、えっとですね……私が孔明であった頃に一刀様を膝枕をした事があって、恐れながらその時の一刀様の寝顔が凄く素敵で、膝枕をしている私も幸せになってきてしまって、それで膝枕を終えた後に『またあの幸せを、味わいたいな。』って思っていたんです。」
零里は自分が体験した話を、俺に打ち明けてくれた。
「……えっと、それじゃあ零里は今は幸せなのかい?」
俺は答えが分かりきっている質問を、わざとしてみた。
「は、はい!!勿論です。こうやって一刀様の近くで見る事が出来て、すっごく幸せですよ。」
胸越しで見えてないけど、今の零里は満面の笑みを浮かべているだろう。
……見れないのがちょっと残念だ。
「……ふわぁ〜〜〜〜……」
おっと、いけない……段々と気持ち良くなって、眠くなってきた。
「……フフッ、お休みになられても結構ですよ。」
零里の優しい声が聞こえてきた。
「……ああ。……それじゃあ、ちょっとだけ……おや……す…み…………」
そこで俺の意識は途切れた。
………………
…………
……
〜零里SIDE〜
「……それじゃあ、ちょっとだけ……おや……す…み…………」
そう言って、一刀様は眠りにつきました。
ああ、これで一刀様の素敵な寝顔がまた見れちゃいます!!……いえ、起きている一刀様も、もちろん素敵ですよ。……でも、寝顔となったらそこに『可愛さ』と言う物も足されるんですから、素敵度は十倍増しなんです!!
私の膝の上で一刀様が眠っている……そんな経験は、朱里の時に初体験をして以来ですもん。もう胸の高鳴りが収まりません。
「………ZZZ」
一刀様が寝息を立てながら、ぐっすりと眠っています。よっぽどお疲れだったんですね……今度から一刀様の分のお仕事を少し減らそうかな……
「……んんっ」
あっ、一刀様今、夢を見ていらっしゃる様です。……その夢にはもちろん私も出ているはずですよね……
「……んっ……零里」
!!?お、思っていましたけど、ほ、本当に夢で私が出てくるなんて……う、嬉しいです///だって、それだけ一刀様が私の事を印象的に思っているんですから。
はっ!?一刀様は……どんな夢を見ていらしゃるんでしょう……も、ももももしかしたら、私と夫婦になった夢でも見ていらしゃるんでしょうか!?
「…………零里」
「……はっ、はい。」
一刀様に呼ばれて、私は(小声で)返事をしました。さ、さぁ……夢の続きはなんですか?
「……零里……ずっ…と………いっ………しょ…だ……」
「…………へっ?」
一刀様の言った寝言に、キョトンとしてしまいました。
「これ…からも………ずっ…と……俺と……いっ……しょ……だ………えへへ……」
一刀様がそう言うと、笑い始めました。
「……はい、勿論。何処までも……ご一緒しますよ。『離れてくれ』って言われても、付いて行きますからね。」
私も微笑みながらそう答えました。その際、ふと気が付きました。
「(い、今だったら一刀様とキスが出来るかも!?///)」
そう……今、一刀様は私の膝の上で眠っています。それも、夢を見るくらい深い眠りに……つまり、大抵の事を行っても起きない、無防備情態。これこそまさに、千載一遇の機会ですよね!?
「(…し、ししし失礼します///)」
私は心の中で、そう思いながら一刀様のお顔にゆっくりと唇を近付ける……
グゥゥゥゥゥ〜〜〜
「!!??」
……事はありませんでした。いきなり鳴った一刀様のお腹の音に私は驚いて、急いで首を引っ込めてしまいました。
「……んぅむ。」
さらに一刀様も起きてしまいました。……うぅ……これで千載一遇の機会を失っちゃいました……
「あ、零里……おはよう。」
「お、おはようございます……」
一刀様は、そう言って私に挨拶をしてきたので、私も返事をしました。……『おはよう』言う程、長く眠ってはいないんですけど……
「あのぉ……お腹が鳴りましたけど、もしかしてお食事をなさっていないんですか?」
「あぁ、今までずっと仕事に明け暮れていたから、ご飯の事は全然気が回っていなかったからな……」
一刀様はずっと、お仕事に悩んでいらっしゃっていた様です。……ご飯の事も考えずにお仕事を行っていたなんて……そんなのは絶対にいけません!!これからは、一刀様に回すお仕事の量を考え直さないと。
「そんなのは、体に良くありませんよ。……今すぐにお食事を取ってください!!」
私が、一刀様に早く食事をするように薦めると……
「……そうだ、だったら零里も一緒にご飯を食べないか?一人より二人で食べたほうが美味しいだろうしさ。」
一刀様は都合が良いように私もお食事に誘われました。その不意な言葉に私は……
「…えっ?」
と声を漏らしました。戸惑っている私に一刀様が続けました。
「いや……俺もお腹が空いたから、もし良ければって誘ったんだけど……仕事が忙しかったら別に無理をしなくてもいいよ。」
「は、はい!!も、もちろん……ごごごご一緒します!!」
一刀様からのお誘いを無下にするなんて事、私には絶対にありえません!!
「そ、そう……じゃあ、一緒に行こうか?」
「はい♪」
私は一刀様の後を付いて行って、街へと向かいました。
「あ、それと零里……いいかな?」
「はい、何でしょうか?」
一刀様と……
「……また膝枕をしてくれないか?」
「♪……はい。」
そんな会話を挟みながら……
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皆さん、お久しぶりです。 長い間更新を休んでいてすいませんでした。 今回は、載せるかどうか迷った拠点回です。 僕の文章力で拠点なんて作っても良いのか悩んでこんな日になりました。 拠点って……難しい…… |
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↓成長した一刀と共に歩んでいった道の先がアレですよ?一刀が成長すると外史が終わる……考え過ぎかな?(Jack Tlam) 零里が過保護すぎるw仕事減らされたら成長もしなそうだが零里的には別に一刀に成長してほしいとは思ってないのかな?(nao) |
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