エブリデイえーゆー譚!〜恋姫達とのドタバタ生活!〜 番外編・前
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――――冷たい…暗い…ここはどこでしょう…?

 

 

 

暗く、光の届かない…温かさのない鉄で囲まれた場所…

数ある生体ポッドの内の一つの中に存在する“それ”が、目覚めて初めて思考した事がそれだ。

そして次の思考は現在の状況…周りに誰がいるのか。

特殊な液体に浸されて、温かさなど微塵もない殺風景な場所には自分と、ポッドのガラス越しに自分を見る白衣の男達。

なにやら男達は話をしているようだが、“それ”にその内容を理解する程の知識などなかった。

いや、正確には目覚めたばかりで意識がはっきりしていないだけなのだ。

 

「D-087が目覚めたぞ」

「脳波に異常なし。身体にも影響なし。…あとは培養液から出してから様子を見るぞ」

「しかし、依頼と言えども造るのに手間がかかったな。これでやっと終わりだ」

 

目の前の男達は持っている紙に何か書いている。

レポートのようだ……ビッシリと、様々な用語、結果を書き留めている。

そのうちの一人が自分で肩を揉み、一息つきながら口を開いた。

 

「おいおい。チェックも無しに言うな。また前みたいに((溶けたら|・・・・))どうするんだ?」

「悪い悪い。その後は知能チェックだな。低かったら低かったでまた処理をせねば…」

「これが成功したらスポンサーに引き渡すのか。…一回遊んでみたかったものだ」

 

男達は口々にそういって作業に取りかかる。

”それ”は彼らの行動を見つつ、考えていた。

それは誰だって思うこと。

それは、目覚めたばかりの”それ”が疑問に思うには当然なこと。

 

 

――――私は、誰なのでしょう…?

 

 

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「依頼?」

「ああ。そうだ」

 

何処かの研究室…機器や画面で多い尽くされた場所で平沢梨斗と一人の赤ん坊、ヴェルデは話していた。

ただ、ヴェルデは機器を操作しながら会話しているのでリトに見向きもしない。

リトはそんな事は馴れていると言わんばかりの表情をしていたので、この事がしょっちゅう起こっていると考えられる。

 

「政府から連絡があった。他の星との交流が出始めてからとある組織…財団Xと言うべき組織が最近活動を始めているらしい」

「らしい?えらく不確定だな」

「その財団は痕跡を徹底的に隠しているようでな。この前、その財団の一人の存在が確認された」

 

画面の一つが変わる。

そこに映っているのは頭部を撃たれた白い服の男。

血で白い服が汚れ、横たわる姿はみていていい気分はしない。

 

「その男はとあるマフィアとの取り引きの現場にいた。…が、そこで張り込みをしていた警察に捕まったがな」

「マフィア?その財団と何の取り引きを?」

「そこまでは知らない。なにせ、財団の男は射殺されたから聞こうにも聞けない。おそらく、尋問で情報を洩らすことによ対処だろう。あらかじめスナイパーライフルを用意した別の人物がいたのだ」

「…口封じか」

「おそらくな。マフィアの方は尋問の前に自決した。それと、これはそのマフィアの所有していた物だ」

 

リトは目を細めながら聞いていると、別の画面に変わった。

それは地図…ただし、それは血で汚れほとんど分からない。

辛うじて字が見える程だが。

 

「汚ぇ字だな」

「文字と残った地図の土地、それにマフィアの服装、所有物から考えるといつくかのファミリーが絞られた」

 

ヴェルデは初めてリトの方を向き、一枚の写真を手渡す。

そこには脂っぽい顔をした茶髪の中年が写っている。

 

「コイツがそのファミリーの?」

「ペンタファミリーのボス、ジクロロだ。変癖があると噂でな」

「変癖?…SMプレイとか?」

「興味が無いから調べていない。…ペンタファミリーはマフィア界で屈指の資金を保有している。その反面、ファミリーの規模はそれほど大きくは無いが」

「なるほど。…まさか財団の援助でここまでの資産を?」

「逆だ。ファミリーの方が提供している。ハッキングしてみたところ、アジトの中に研究所を発見した」

「研究所、ね。それで?俺にそれを潰せって?」

「物騒だな。依頼はファミリーのアジトの内部に潜入して研究に関しての資料を調べ、回収。その後アジトの警備を薄くし、政府の部隊が突入する準備をすることだ」

 

そう言ってヴェルデは再び前を向く。

…正直政府からの依頼は面倒だ。

できるなら断りたいのだが…そう言う訳にはいかない。

超直感が騒いでいるのだ、行かなければ、と。

実際、財団Xと名乗る組織は別の世界で確認している。

その規模と危険性を…知っているからこそ、何をしでかすか分からないからこそ止めたい。

 

「いいぜ。受けてやるよ」

「そう言うと思って既に了承は得ている。出発は今から三十五分四十三秒後だ」

「もうやってたのかよ!?気が早いわ!?…あ、そう言えばさ…お前何で今回乗り気なの?」

 

一回シリアスを壊して…リトはふと思ったことを言う。

ヴェルデと言う赤ん坊は研究のことしか考えていない。

他者は実験動物、研究は三大意欲遥かに上回るものと思っている程だ。

なのに何故…?

ヴェルデは表情を変えずリトの方を向き、そして清々しいほどはっきりと伝えた。

 

「新しい研究の資金集めだ」

「…お前の小遣い稼ぎかぁぁぁぁぁぁぁぁー!!」

「ぎゃぁぁあああああああああああ!?」

「何を言うかと思えば小遣い稼ぎかよぉぉおおおお!!」

「回る回る目が回るから止めろ今考えた事がぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!?」

 

リトはヴェルデの頭を掴み、そのまま振り回す。

遠目から見ればハンマー投げをしようとしているようだが実際は違う。

児童虐待と言いたいが、ヴェルデは一応大人なのでノーカン。

とまぁ、こんな感じで出発まで振り回していた。

 

 

−−−−−−−−−−。

 

 

「………あれか」

 

某国の森の奥…日本との時差があるが、あと一時間程で日が昇る時間帯、リトは木の上に登り、豪邸とも思えるペンタファミリーのアジトを遠くから眺めていた。

ちなみに格好はサバイバルスーツ(自前)を着用…理由は動きやすいからだ。

そして服の中にはUSBメモリだけ所持している。

あまりごちゃごちゃしているのは良くないと思い、この装備(?)なのだろう。

とりあえずどうするか…リトは考えていると、アジトに向かっている一台のトラックが近づいて来る。

それを見ると、少しだけ笑い木を降り始めた。

 

「さて、行きますか」

 

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今日も花は咲かない。

それどころか、芽も出ていない…。

面白味もない白い部屋…植木ばちを見て、少女は目を伏せる。

 

 

自分がここに居てどれくらい経ったのだろうか…

そう考える彼女の意識が覚醒したのは少なくとも一ヶ月前。

ガラス張りの培養液の入ったポットから出て、彼女は幾度と検査された。

知能、運動能力、人格、身体チェック……何時間もそれをされ、彼女は服を押し付けられ、この部屋に閉じ込められた。

 

 

初めは出してくれと悲願したが、その度に見張りに罵倒され、時に手をあげられそうになった事もある。

だが結局は罵倒だけ…いつも思うが何故なのだろうか?

…だがそんな事はどうだっていい。

今はこの植木ばちを見守っていたい…それが彼女の願いだった。

 

 

 

 

「よっ…と」

 

リトはトラックの後ろにこっそりと乗り、アジトの中に侵入した。

見張りが二人とも居たが、気付かれずに絞め落としたのでしばらく気絶したままだろう。

リトは監視カメラに気をつけ、写らないように移動していた。

 

(ヴェルデの情報だと…この奥か)

 

余計な物は持ってこられないので前に言われたことを思い出して進む。

一つ、また一つと扉を開けて進むと…あった。

アジトに似使わない厳重なセキュリティのある扉。

おそらく指紋認証なのだろう、ここはリトではどうにもならない。

さてどうしたものか…と考えていると、声が近づいて来る。

近くの柱の影に隠れ、リトは様子を見た。

来たのは二人の白衣の男。

 

「あと三十分でドン・ジクロロが帰ってくる。そこで“アレ”を引き渡すぞ」

「ああ。でも一発ヤりたかったな」

「やってみろ。支援は打ち切り。上から何を言われるか」

「分かってる…。言ってみただけさ」

 

何かを話しているが、これだけでは情報は集まらない。

白衣の男達…おそらく財団Xの手の者が指紋認証を終えた直後、リトはすぐに二人の意識を奪った。

幸い監視カメラはここには無く、リトは二人を背負って研究所の中に入る。

そして手頃なロッカーに口と手足を縛った研究者を入れた。

その際、護身用の拳銃を二丁盗って。

 

(さて、どこにあるかな…)

 

真っ白な壁に包まれた空間には意外と扉は少ない。

さらに言えば、監視カメラはどこにもついていない。

ここには財団関係者しか入れないのか…

とりあえず超直感で選んだ扉を開くと…ビンゴだ。

資料室…と言うより、研究レポートと一台のパソコンが部屋の中にあった。

リトは気付かれないように中に入り、パソコンを起動。

さらに持っていたUSBを指し、もとからあった解析プログラムでパソコンのデータをコピーしていく。

三分ほど時間がかかるだろう…リトは近くのレポートを手に取り、中身を見た。

 

(人間をベースにした多種の生物との融合生命体の研究…突然変異した超進化生命体………おいおいマジか?これ、ミュータミットだろ。財団Xもだけど何でこの世界に…)

 

書かれていたのはかつてリトが訪れた世界にいた怪人のこと。

とはいっても、たった一度しか知らないので、詳しいことは分かっていないのだが…何故この世界に…?

疑問に思うがリトは別のレポートを見る。

だがそれはレポートと言うより日記のようなものだ。

そこにはここ最近の事が記録されている。

 

 

“我々はペンタファミリーと接触し、契約した。まだ試作段階のこの研究は本部からの十分な援助が出して貰えないのでちょうどいい。この研究の成果を本部に送れば時期にファミリーは用済みになるだろう”

“ジクロロが我々の研究に興味を示した。たいした理解能力もない癖に、妙に食いついてくる。そして交渉条件を新たに要求してきた”

“変癖があると聞いていたが我々から見ても狂っていると思う。だが材料はファミリー側から要求されているし、我々としてはいい実験になりそうだ”

“ここまで繰り返すのにウンザリしていたがそれも今日で終わりだ。八十七体目の個体が完成した。知性、身体に異常なし。拒絶反応もない完璧の個体だ。後は旅行から帰ってくるジクロロを待つだけ――――。

 

 

「…………」

 

資料を読むのを止めた。

いや、正確には資料を握り潰した。

それと同時にコピーが完了する。

リトはUSBを抜き取り、部屋から出た。

次にいく場所はすでに決まっている。

 

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白い壁に囲まれて、彼女は今も植木ばちを見続ける。

それしかやることが無いから、それしか自分にはできないから。

たまたま手に入れた種を植えたのに、捨ててあった植木ばちを使っているのに、何も変化が起きない。

花が咲くことも、ましてや芽が出ることも。

まるで自分がこれからずっと変化がない毎日を送るかのように。

 

 

「――――失礼しまーす」

「……え…?」

 

 

だけどそれは間違いだった。

現に、今目の前で…変化が訪れたのだから。

 

 

「どったの、そんなビックリして?泥棒見たわけじゃあるまいし」

 

 

声をかけるのは、いつも自分を見張る者でも、白衣の男でもない。

自分が初めて見る男。

これまでとはまるで違う雰囲気の男。

…変わらない毎日は破られる。

この出会いが、彼女の始まりだった。

 

 

 

 

 

後書きは後半で。

 

説明
XXX「前後編にしたはいいものの、後編の方が長くなっちった」
一刀「お前…そういうところちゃんとしとけよ」
XXX「うっさいやい!きりがよさそうなとこで切ったんだよ!」
一刀「あっそ。と言うわけで『前編:それは土の中の種の如く』。ちなみに三日連続で投稿するつもりらしいです」
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コメント
刃さん いえいえ。紛らわしい書き方してた自分に責任があるんで(XXX)
あっすいません、ふと浮かんだ言葉にお答え頂き(=ω=;)(黒鉄 刃)
刃さん 説明不足でした。番外編の前後編と通常ので三日連続と言う意味です。(XXX)
三日連続なのに、前後編・・・これ如何に?(黒鉄 刃)
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恋姫英雄譚 作者の悪い病気 オリ主 恋姫†無双 

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