艦隊 真・恋姫無双 66話目
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【 事前準備 の件 】

 

 

───時は少し戻り、皇帝選択の儀式に入る前。

 

 

? 洛陽 都城内 とある部屋 にて ?

 

一刀「アリゾナ……話があるんだ……」

 

アリゾナ「えッ!? 何、何ぃ!?」

 

一刀より二人で話したいと言われ、顔を赤らめて付いて行くアリゾナ。

 

部屋の中で誰も居ない事を確認すると……開口一番に話したのは……符丁の事だった。 急に『あの言葉』を言われたら……艦娘の中で直接の被害艦『アリゾナ』が、動揺するのは見えていたから。 

 

その為、この符丁を使用する事を説明するために呼び寄せたのだ! 

 

ーーー

 

アリゾナ「───そ、その符丁でぇ攻撃合図ッ!? どうして……変更しなかったの!? 私に対してTerribly rude(とても失礼)で、私や亡き乗組員たちに対して侮辱じゃない!? 幾ら提督の考えでも……酷い、酷いよ!!」

 

一刀「……アリゾナも大変だったけど……その苦しみ、痛みは、大空襲等で本土に倍返しで返された。 戦後の道程も……生半可では復興できないほど。 だから、この言葉には……辛い後悔と戒めの意味も込められている!」

 

アリゾナ「…………じゃあ、何で……双方忌み嫌う符丁を使うの……?」

 

一刀「これは、国や亡くなった者や遺族にとっては、重い……悔恨の言葉だと思う。 出来れば……二度と使って欲しくない言葉だと………!」

 

アリゾナ「……うん」

 

一刀「だが、俺は、この言葉を敢えて使用したい!」

 

アリゾナ「────!」

 

一刀「双方に忌まわしい言葉である『新高山登れ』を、ただ封印しても忘却されてしまう! だから、この世界で……敵国同士だった艦が、手を取り合い開戦した……意義深い言葉へ変換して……この世界に残したいと思うんだ!」

 

アリゾナ「…………」

 

一刀「これが……俺の考えなんだよ。 しかし、アリゾナが反対するなら、別の符丁に変える! これは、俺の我が儘に過ぎ『了解したわ!』──!?」

 

アリゾナ「はぁ〜! 全く……提督は人が良すぎるわよ? サラが聞けば喜びそうだけど……ビッグEやスチュワートがなんて言い出すか……。 本当に困った事……考える提督よね? でもね……私は賛成……ふふふっ!」

 

一刀「……良いのか? 本当に……?」

 

アリゾナ「提督……ぅ? 私の事を甘く見てない? 私だって……軍艦だし乗組員の皆も軍人だから、こうなる結果も覚悟していたわ。 ただ、その『言葉』を面白がって使われるのが嫌なの! それだから……ね?」

 

一刀「───しっかり、肝に銘じる! 忘れない事を!!」

 

アリゾナ「………だけど……悔しいわね……。 あぁあああ───ッ! ものすごくぅぅ……悔しいぃいいいッッ!!」

 

一刀「な、何がだぁ……?」

 

アリゾナ「私や提督の国に……当時、提督のような人が……上に居てくれたら、互いの国が戦じゃなくて、別の何かで……競えたかも知れないのに!」

 

一刀「そう……なのか?」

 

アリゾナ「そうよ! そうなっていればね? 私も……亡くなった皆も。 冷たい海の中で眠る事なんて……なかったのかも知れない。 多くの者たちを犠牲にしなくて……良かったのかも。 そう思わずには……居られないのよ!」

 

一刀「……………」

 

アリゾナ「スチュワートたちには、私から話しておくわ! 提督が話すより、被害艦の私が話した方……が納得すると思うの!」

 

一刀「あぁ……何から何まで……すまないな」

 

アリゾナ「心配しないで……提督。 私は大丈夫だから。 (うふっ……提督に負い目を負わせれば……必ず私へと意識が行く! そこを上手くattackすれば……!)」

 

★☆☆

 

雷「………響、ちょっといい? これって……私の聞き間違い?」

 

響「いや……間違いない! これが司令官より渡された『物』だ……」

 

暁「だ、だけど……本当に? これが暁たちの艤装……というか武器!?」

 

電「《手拭い》と《竹筒に入った水》……なのです………」

 

雪風「まさか、素手で攻撃した後のアフターケア用なんですか? 血で汚れたら手を洗いなさいって意味とかぁ?」

 

スチュワート「こんな物で、どうやって戦えばいいのよ!?」

 

響「投擲、打撃、射撃、防御、格闘兵器代わりと色々と………」

 

「「「「 ─────!? 」」」」

 

★★☆

 

天龍「今回は……皇帝の前だから艤装を外せと言うのは分かる。 オレの刀だって武器だから当然だ。 だけどよ……この《棒きれ》ってなんだ?」

 

龍田「それは〜棒じゃなくて〜《杖》なのよ?」

 

天龍「ハァ!? ぶっちゃけありえねぇ! ガキの戦争ゴッコじゃあるまいし、なんで棒きれ振り回して戦わなきゃいけねぇんだよ!?」

 

木曾「俺は構わない! どちらにしても、艤装に頼ってばかりじゃ腕が鈍るぜ! 戦いってモンは、敵の懐に飛び込んでやるもんさ。 ………なあ?」

 

天龍「くうぅぅぅ! 分かったような口いいやがって! しょうがねぇ! 一丁やってやるっ!!」

 

龍田「ふふふ……っ」

 

 

◆◇◆

 

 

【 艦娘たちの意気込み の件 】

 

? 洛陽 都城内 別室 にて ?

 

 

霧島「…………『ニイタカヤマノボレ』の符丁が入り次第! 全艦隊──作戦を開始します! 皆さん、準備は大丈夫ですか!?」

 

ーーー

 

金剛《HEY、霧島ぁ! 第一艦隊、何時でも命じられてもOKデース!》

 

ーー

 

天龍《第二艦隊だ! 既に準備は出来てるぜぇ! 早くオレを攻撃に参加させろよ!》

 

ーー

 

瑞鶴《第三艦隊! 大丈夫、何時でも抜錨できるわ! 一航戦が居ない今、私たち『新五航戦』の力を見せ付けるチャンスだからね!!》

 

ーー

 

暁《第四艦隊! え〜と……ハンカチ……チリガミと、うん! 準備万端! 何時でも命じてもらって大丈夫よ!!》

 

ーー

 

霧島「それでは、司令からの命令があれば……作戦通りに動いて下さい! 但し……今回も《不殺を貫くよう》にと! 如何に敵兵といえど、皇帝陛下の膝元での殺害は、民から私たちの支持を下げる結果になりますので!」

 

ーー

 

天龍《ちっ! またかよ! いい加減に全力でヤりてぇんだがな!?》

 

龍田《全力で私たちが当てれば〜ものの数分で壊滅よ〜? だけど〜それじゃ駄目! 並み外れた力を〜如何に注目させるかで……私たちに信頼を寄せて貰うようにしなくちゃいけないの! 分かった〜天龍ちゃん?》

 

ーー

 

サラ《私たちが普通に使う『艦娘の力』……ここでは、異神の力を操る怪しい者としか映りません! ですから、迫害を受ける前に予防策をしておく。 これが、一刀提督のお考えではないかと……思われるのですが?》

 

ーー

 

天龍《………わかってるよ! ただ……アイツら! オレの耳にも入ったが……胸糞が悪くて反吐が出るぜぇ!》

 

ーー

 

雷《その意見は賛成! だけど殺すのは………》

 

電《………なのです………》

 

ーー

 

霧島「言いたい事は分かりますが……この一戦で私たちは……大陸の要である洛陽で、『天の御遣い』として認められるかの瀬戸際! 後に後悔するような行動は慎んで下さい!」

 

「「「 ───────! 」」」 

 

霧島「では、司令の命令あり次第、行動に移って下さい! ──以上!!」

 

───プッ!

 

ーーー

 

霧島「…………ふぅ〜!」

 

霧島は、そう言って口からインカムを離す。

 

霧島「あのような常識的発言をしましたが。 ……今回……いくら温厚な私でも……!」──ボキッ!

 

霧島は、都城内の別室で……一刀の命令を受信していた。

 

具体的には、一刀の軍服に集音マイクがセットしてあり、全ての会話を艦娘たちで傍受。 指揮権だけを霧島に任せて、突撃の準備を整えていたのだ!

 

無論、一刀からの命令が無ければ……準備だけで済ます筈だったのだが。

 

しかし……この備えは無駄にならず……実行に移す事に!

 

霧島は、時刻を確認する。

 

多少のイザコザがあったが、時間的には問題はない。 寧ろ、これくらいの間を開けたかった。 敵が油断する間を作り出すため………

 

霧島「───私も急ぎ準備して……あ、あれっ? 手に持っていたマイクが折れているわ。 もぅ、近頃のマイクは直ぐに故障し易くて困っちゃう! 早く替えのマイクも用意しなきゃ………」

 

霧島は、そう言って……《真っ二つにへし折れたマイク》を置いて、部屋を出ていたのだ。

 

 

◆◇◆

 

【 第一次攻撃 開始 の件 】

 

? 洛陽 都城内 大広場 にて ?

 

────ガチャガチャ!

 

───ドカッドカッドカッドカッ!

 

───『こっちだ! 周りを囲めッ!!』

 

───『包囲完了! 何時でも攻撃できます!』

 

────『抜剣の許可も下りている! 全員、剣を抜けッ!!』

 

──バッ! バッ! バッ!

 

ーーー  ーーーー

 

大広場に向かう出入り口は、東西南北四カ所ある。 どちらも、隊列を整えた軍勢が通行できるぐらい広がっている。

 

そして……『四方向より各六百の兵士』が、雪崩れ込んで来た! しかも、長剣を帯び鎧を着用した完全な戦闘態勢!

 

恋姫たちも円陣を組んで対抗するが……数と得物の有無の差を、埋める事が出きなくて……ジリジリと包囲網を縮められて行く!!

 

ーーー

 

春蘭「華琳さまだけは、何としても護れ! 私や秋蘭が前に出る! 季衣たちは、私たちの後ろに居ろ!」

 

季衣「春蘭さま! ボクも前に!」

 

流琉「秋蘭さま!!」

 

春蘭「馬鹿者! 季衣たちのような年端の行かない者を前に出せるかぁ! もし……先にでも死なれては、私は自分を許せんッ!」 

 

秋蘭「ここは、私たちが優先だ! お前たちは、お前たちの役目を果たしてくれ! 華琳さまや桂花を……頼むぞ!!」

 

ーーー

 

思春「蓮華さま……申し訳ありません! 私は、蓮華さまを守る事に専念します! 後は……アイツ……北郷が何とかしてくれる筈です!」

 

蓮華「思春──!」

 

明命「───私も孫呉の将です! 主君を護らず……誰を護れましょう!」

 

小蓮「………明命!」

 

ーー

 

華雄「得意の得物が無くてもな……音に聞こえし、この華雄! 最後の一戦に華麗な徒花を咲かしてやるッ!!」

 

ーーー

 

恋姫たちの徹底抗戦の意志は強い! 

 

しかし……多勢に無勢! 何時まで耐えれるか分からない状態だった!

 

★☆☆

 

楊奉「………準備は……整ったな!」

 

諸侯を完全に包囲網で取り囲み、楊奉は満足そうに頷く!

 

楊奉「(これで……御遣いの付加不思議な技は封じた! もし……それでも、何かしてくれば……此方には人質が居るんだ! 何も心配する事は──無い!!)」

 

ーーー

 

楊奉は、今でこそは何皇后に仕えし執金吾であるが、元は……大陸を荒らし廻っていた『白波賊』の首領。

 

盗人は、盗み目的地に入る前に下調べが欠かさない。 孫子の兵法では無いが、自分を知り相手を知れば……失敗はかなり減る。

 

だから……天の御遣いの戦い方も……事前に調べ上げていた。

 

具体的には、益州に人を派遣して……艦娘たちの攻撃手順を調査したのだ。

 

ーーー

 

すると……特に浮かび上がったのは……二つ。

 

 

『黒い筒より放たれる破裂する弾』

 

『空を自由に飛び回る鳥のような物』

 

 

他にも策略や戦闘能力も恐怖を覚える物があったが、それぐらいなら人数や人質を取れば対処もできると判断。 

 

これは、益州の戦いで、敵味方両方を殺害しなかった事を考慮。 命が失われる事を、極端に恐れている傾向があるからだった。 

 

 

問題は……未知なる兵器の対処。

 

 

熟慮断行の末………この『広場』を利用する事を思い付いた。 

 

敵味方が動く事が制限されるこの場所を!

 

 

 

『破裂する弾』に対しては、かなり広範囲で殺傷能力が確認された。 

 

だから、敵味方が乱闘し、尚且つ楊奉と何皇后、そして皇女たちが近くに居るように計算。 もし、放たれれば巻き沿いを食らうようにと───!

 

さすれば……味方を巻き込む事を嫌い、その兵器の使用は封じられる。

 

『空を飛ぶ鳥のような物』は、もっと簡単! 

 

この広場の付近は、広場を見渡す事が出来る高さの建物がある。 

 

調査した者の報告には、『空を飛ぶ鳥のような物』を操る者を見かけたという。 ならば、空を飛ばす物を操る者が、必ず近くに居るから、そいつを見つけだし射殺なりすればいいと考えた! 

 

その為の兵も六百……別に伏兵として配置!

 

ーーー

 

楊奉(どう足掻こうと……お前たちの反撃できる余地は無い!)

 

楊奉は、再度……一刀たちの攻撃に対する準備を……反芻したのだ。

 

これだけの兵力と策を持ってすれば……防げると。

 

ーーー

 

余談だが……『百人近い化け物に襲われた』という情報もあったが、洛陽に来ている天の御遣いたちと、容貌が余りに違い過ぎるので捨て置かれた。

 

 

★★☆

 

 

何皇后「どないした……天の御遣いよ? 先程、なんやらワケん分からん事を叫んでおったんやが……? あら天ん国で叫ぶ『絶叫』どす?」

 

一刀「………………」

 

楊奉「ふん! 言っておくが帯剣及び武具の装着は、全て何皇后から許可を得ている! 摂政ゆえ当然だからな! だから……貴様らが武器を持ち込みのは禁止だ! これは、天の御遣いと言えども同様!」

 

自信満々にして、自分たちの行為を棚に上げ……一刀に近付く。

 

楊奉「そんなに悔しければ……阻止してみろよ! 眼下の殺戮を! 人質たちの恨みを! お前の力で阻止して見せろ!! 天の御遣い──ッ!!」

 

しかし、一刀は………何皇后、楊奉を睨みつけ、静かに言い放つ!

 

一刀「……………命令は終わった! 俺たちは、何皇后……貴女の野望を砕く! 皆の力を───思い知れぇ!!」

 

楊奉「何をほざいていやが────」

 

 

━━━━━━━━!!

 

急に………一発の轟音が鳴り響いた───!!

 

 

◆◇◆

 

【 護衛戦艦 の件 】

 

? 大広場周辺 城壁上 にて ?

 

雷鳴にも似たるその音は、その場に居た者たちの……耳目を集めるには充分。

 

その場所とは、広場を囲み城壁に立つ───数人の艦娘!

 

ーーー

 

金剛「Wow! 全員に注目されてマース! 提督にもネッ!!」

 

金剛の艤装『35.6cm連装砲』から……白煙が棚引き、眼下の兵士や恋姫たちが驚愕の顔で、金剛たちの方に顔を向けていた!! 

 

比叡「さぁ〜すが、金剛お姉さまです!!」

 

榛名「金剛姉さま! 次の『空砲』の準備を!!」

 

ーーー

 

勿論の事だが、砲撃する砲には───実弾を込めていない! 

 

本当に放てば、着弾点はネギトロめいた大惨事になる事は確実だ! しかも、一刀たちも巻き添えになる可能性は……大いに高い! 

 

だから……空砲で砲撃したのだ。 

 

空砲と言っても、弾を飛ばすわけでは無いが、砲の中で火薬を破裂させる物。 

だから──当然、発射音も実際大きい! 

 

すると、どうなるか? 

 

読まれている提督諸氏も、よく御存知かと思われるが……人智を超える物を感じた時、身体の信号が止まる。 つまり……身体が硬直化を起こす。

 

それが……隙になる! 

 

しかも、第一艦隊は……火力が大きい『戦艦』の集まり。 空砲を撃てるのは金剛だけではないのだ! 比叡、榛名……そしてアリゾナ!

 

ーーー

 

アリゾナ「じゃあ……私がやるわ! 行くわよ!」

 

アリゾナが叫び、自分の艤装『45口径35.6cm砲』を上に向ける!

 

そして、操作の手順を早口にまくし立て……砲口を向けた!! 

 

アリゾナ「───エネルギー弁閉鎖!  エネルギー充填開始! 電影クロスゲージ明度20! セイフティーロック、解除! ターゲットスコープ、オープン!」

 

 

『 ( ゚д゚)゚д゚)゚д゚)ポカーン… 』 

 

 

金剛「Oh!? ナンデスカァッッ! その近未来的な砲撃操作はァ!!?」

 

比叡「ひえぇ───ッ!!」

 

榛名「う、宇宙………戦艦……」

 

金剛姉妹三人が、顔をひきつらせて……アリゾナを注視する! アリゾナは、その様子を見ながら……軽く説明して狙いを定める!!

 

アリゾナ「気分的によ、気分的に! そんな装備が、実際にあるわけないじゃないッ!! さて……エネルギー充填120%! 仰角10度! 拡散波動砲───放てぇえええッ!!!!」

 

 

「「「 ーーーーーー!!! 」」」

 

 

 

━━━━━━━━!!

 

…………

…………

………?

 

金剛「……………ア、アレッ!?」

 

比叡「……ふ、普通の空砲……?」

 

榛名「………えぇ…」

 

思わず目を瞑り、強烈な炸裂音が響き渡ると思い、耳を押さえて縮こまる三人だが……聞こえてきたのは、金剛と同じ砲撃音!

 

アリゾナ「〜〜ふぅ。 やっぱり──気分が高揚するわね! 『なりきり』でやるとストレス解消って……どうしたの?」

 

やりきった顔で笑うアリゾナに、金剛たちは口々に文句を言う。

 

金剛「うぅぅ………とんでもないNewfaceデース!」

 

比叡「ち、力が……抜けました〜!」

 

榛名「はぁ〜〜〜〜!」

 

アリゾナ「ちょっと………普通に言ったでしょう! そんな装備持ってるワケないって!! まさか……信じてなかったの!?!? それで、文句なんて言われても知らないわよッ!!!」

 

アリゾナはお冠だが、本気で怒ってはいなそうだ。 口元がニヤついているのが……その証拠。 余程、三人の状態が面白かったようだ。

 

そんなアリゾナに、榛名が声を掛ける。 

 

一つ、頭に浮かんだ疑問を問い質したい……と思った故にだ。

 

榛名「どうして……宇宙戦艦アリ○ナを知っているんてすか!?」

 

アリゾナ「うん……提督が教えてくれたよ? 私を模した宇宙を飛ぶ戦艦が登場する漫画があるって!」

 

金剛「提督ぅぅぅぅ──! 何を教えているのデスカァアアアッ!!? それにィ〜浮気なんてェ……私がPermission(許可)しないデェース!!」

 

金剛が横で嫉妬混じりの絶叫をするが、素知らぬ顔でアリゾナが呟いた。

 

アリゾナ「あはっ……戦艦がね……宇宙にだよ? いつも……いつ敵機が飛来するのか恐れて眺めていた……あの大空を。 もし、飛べれば……私も轟沈せずに……済んだのかな? 怯えなくても……済んだのかな……ねぇ?」

 

アリゾナの顔が……泣き出しそうに歪んでいく。

 

アリゾナ「……本当……アレから幾十年も過ぎたんだ……ね。 アノ日……私が海に沈んだ……時から……」

 

比叡「………………」

 

アリゾナを眺める比叡は、当時を思い出す。

 

かの──戦いの時を。

 

アリゾナに向かう加賀や赤城の艦載機を……昨日の事のように。

 

★☆☆

 

兵「な、何だぁ!?」

 

兵「雷鳴!? しかも───続けてかぁ?」

 

楊奉の兵たちが……ざわめき、攻撃の手が止まる!

 

ーーー

 

冥琳「………蓮華さま! あの者たちを!!」

 

蓮華「───金剛! 比叡……榛名も………!」

 

ーー

 

星「───! この声は!? 稟、風! どうやら風向きが変わったぞ!」

 

風「………でもでも、まだですよー! もっと大きく変える『流れの起点』が必要なんですー!」

 

稟「今はまだ……何皇后の勢力が優勢! ですが……必ず流れが逆転する時が来ます! その時まで耐えなければ……!!」

 

ーーー

 

敵兵は騒ぎたてるが……人質もあり、劣勢は変わらず! 

 

『連合艦隊』の攻撃は……まだまだ続いた!

 

 

◆◇◆

 

【 第二次攻撃 開始! の件 】

 

? 大広場周辺 城壁上 にて ?

 

金剛たち第一艦隊とは別の城壁に、翔鶴たちが準備していた。

 

 

翔鶴「全航空隊、発艦始め!」

 

瑞鶴「第一次攻撃隊! 発艦始め!」

 

 

二人が、弓に矢を番え(つがえ)前方を射る! 

 

矢は、少し飛翔した後に『零式艦戦21型』に数機に変化し、上空を飛び交う!

 

これが……代表的な日本海軍空母の発艦方法である。

 

だが、某国空母の発艦は……やはり違う。 

 

外史だからという名分もあるが、あくまで……ここ限定の話。 いいね?

 

ーー

 

サラ「我が新しき提督『北郷一刀』の御名において……汝らに命ず!」

 

瑞鶴「───えっ? 何を……!?」

 

サラが普段持ち歩く、少し厚めの本を開き、ページを捲りながら詠唱をし出す。 その度に本は、光輝きながら……一筋の道を前方に作りだした。

 

ビッグE「……心配しなくて大丈夫だ。 あれは、艦載機発進の命令詠唱だ。 サラの発艦は少し特殊でな。 持ち歩いている本の中から飛び出すんだよ!」

 

翔鶴「そういう貴女は、他の方より自分の発艦を……完了させるのが先決ではないですか──ビッグE?」

 

ビッグE「………了解だ! あたしは、腰に付けた愛銃『コルト・パイソン』を撃てば、それで仕舞いだよ!! ─────Shot!!」

 

翔鶴に促され、左右の二丁拳銃を両手で操作して、前方に数発撃ち込む!

 

サラ「───動けぬ汝らに空を翔る翼を与えたもう! その恩に報い……敵の攻撃を阻み、味方を勇気付け───救出せよ!!!」

 

サラの詠唱も丁度終わった。

 

ビッグEの弾丸は、数機の艦上戦闘機に別れ、サラの本より発し出された光のロードからも、別の艦上戦闘機が数機発進した!

 

 

──────バッ!

 

───────バッ!!

 

 

瑞鶴「あれは! ───F6F (ヘルキャット)!!」

 

翔鶴「F4F( ワイルドキャット)まで……あの時の悪夢を見ている気分だわ!」

 

瑞鶴は目を見開き、翔鶴は溜め息を吐く。 

 

前の戦いにおいて……自分たちと交戦してきた仇なす敵!

 

ビッグE「それを言うなら……あたしだってそうさ……。 あの零戦を眺めると……特攻された事を思いだし……寒気がする。 だがな……今は別だ!」

 

ビッグEの顔も青ざめている。 柳眉を顰め(しかめ)ながら……あの『神風』を受けた恐怖を思い起こしているようだ。 

 

しかし、それでも……視線を外さず翔鶴たちに語り掛ける。 己の心情より任務達成を憂うのは、さすが歴戦の武勲艦と言えよう。

 

サラ「ビッグE……無理をしなくてもいいわ。 私にも説明させて」

 

ビッグE「…………頼む!」

 

サラが、ビッグEの心情を察して……変わりに言葉を紡いだ。

 

サラ「互いが強敵として認めつつ、矛を交わるしかなかった私たちが……。 北郷一刀という提督の下に、こうして着任して手を取り合い戦える! こんな奇跡は………他には無い筈です!」

 

「「 ───────! 」」

 

考えて見れば……その通り!

 

双国間で、お互い手強い敵と認めてきた相手が、新たな指揮官を迎え、一つの目標に向かう。 これほど心強い事は無いだろう!!

 

瑞鶴「そうだね! よぉくー考えてみれば……そうなんだ! 翔鶴姉、私たちは味方なんだよ! 味方ぁ! だ・か・ら……怖がらなくても、嫌がらなくても平気! 私たちと同じ提督さんを慕う仲間なんだから!」

 

翔鶴「ず、瑞鶴───/////////」

 

ビッグE「まっ……そ、そうだな……」

 

サラ「───はいッ!」

 

対象的な態度を見せる二人だが……提督を嫌っていないのは明白。

 

しかし、翔鶴の心の内は……半分晴れで半分曇り。

 

瑞鶴の言葉で励まされ、自分の恐怖は薄れた。 だが、それと引き換えに……うやむやになっていた恋敵関係が、明確になってしまったのだから。

 

翔鶴「(やはり………私って不幸艦なのかしら………)」

 

そんな事を考えていると……瑞鶴の呼び掛けで我に返る!

 

瑞鶴「──翔鶴姉、翔鶴姉ぇ! ほらっ! 艦載機に命令を!」

 

翔鶴「わ、私──!?」

 

ビッグE「おいおい! 旗艦は貴女だろ?」

 

翔鶴「だけど……私は……運が無い艦だから……」 

 

ビッグE「それは問題ないだろう! 『偉大なる』と言われるあたしこと『ビッグE』、空母着艦記録を誇る『サラトガ』が貴女の指揮下に付く! しかも、二隻とも先の大戦を生き抜いた『幸運艦』だ!」

 

瑞鶴「翔鶴姉ぇ……私も私も!」ニッ!

 

サラ「あらあらっ? これなら……不幸なんて吹き飛んでしまいますね?」

 

三隻の『幸運艦』対一隻の『不幸艦』……どちらが有利か? 

 

翔鶴「…………分かりました! この『第三艦隊 旗艦 翔鶴』が命じます! 各隊で編隊を組み──第三艦隊、第四艦隊が到着するまで、時間を稼ぎなさい!! あくまで、私たちは陽動ですので……攻撃は無用!」

 

翔鶴は、そう号令を発し──まだ響く空砲に……恐怖で動けぬ敵兵や困惑する恋姫たちに見せつける! 

 

第二次世界大戦……

 

かの広大な太平洋の大空で、互いの制空権を掛けて争った艦上戦闘機たちが……

 

異界の空の上で協力して戦う瞬間であった───!

 

 

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

『皇帝が劉辯に変わったよ』……その事を説明するのに、何故か長文の小説を書いている作者です。 

 

二話続けても終わらず……あと一話作るはめになるとは。

 

それでも宜しければ……どうぞお楽しみ下さい!

 

 

 

説明
結局、今回で収まりきれず……次回へ。
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コメント
天龍焔提督 コメントありがとうございます! 更なる活躍をご覧下さい……。 っても次の話は、二日後を予定しております。(いた)
スネーク提督 コメントありがとうございます! 龍田「……って、ご意見貰ったから、天龍ちゃんは特別に〜百均のスポンジ剣で〜w」 天龍「流石に無理ありすぎるだろうがぁー!」(いた)
天龍さん、たとえただの棒切れでもアナタたち艦娘が振るえば余裕で人死にますからw(スネーク)
雪風提督 コメントありがとうございます! 『若葉』というと駆逐艦『梨』の事でいいんですかね? 何隻かの艦娘とは同じ道を歩み始めましたが、中には敵対する者も……(いた)
憎しみ合うのは止めて、互いに手を取り合う。なかなか出来ない事・・。感情等様々な要因で手を取り合う事が出来ない場合もありけり・・。そしてこの外史では同じ志を持った友だなby若葉(雪風)
hokuhin提督 コメントありがとうございます! 空中と水中の違い……出てくる物も違いますが、仲良くなれるでしょう。 問題は、この作品に出てくるのか……(いた)
サラの発艦は8ちゃんの魚雷召喚と似ているから、お互い気が合いそうw(hokuhin)
mokiti1976-2010提督 コメントありがとうございます! 次回で終了させないと……次の新しい艦娘が出せないw  ………何皇后たちの運命は如何に!?(いた)
ああーっ!またもや続きが気になるーっ!!とりあえず次こそ何皇后と楊奉に御遣いの裁きを!!(mokiti1976-2010)
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