Dear My Friends!ルカの受難 第12話 怒りの学歩 |
(アフス城内・開発武器試験場・バトルアリーナ)
レンとソニカ、両名の連敗のため、テル達は、勝敗だけだとしても、もう後が無くなってしまったのだった。更に、敗因の恐ろしさや、レン、ソニカ、シユの負傷退場、レンの看護のためにリンまで、バトルアリーナからいなくなってしまい、最初の沸き立った盛り上がりは、一カ所を除いて、かなり無くなってしまっていた。
そう、その一カ所とは、レンの敗戦理由に怒りを感じ、レンの対戦相手だったローラを睨み付けて、闘志を燃やしている“学歩”だった。
テル「学歩、アペンドも言っていたように、君の太刀筋に、熱血はいらない。相手への憎しみで心を曇らせたら、君は負けるぞ?」
テルもアペンドも、頭に血が上っているように見える“学歩”にクールダウンするようにアドバイスした。テルもアペンドも、学歩に対しては、自分たちからの“戦術面のアドバイス”は必要ないと判断していたが、戦闘のベースになるメンタルな面は言っておかないと行けないと判断したので、一応、声をかけたのである。
学歩「………、良し、これでいい…」
テル、アペンド「?」
その時、アリーナのスピーカーから声が聞こえてきた。
アル「テル側よ、いい加減、試合を続行したいのだが?」
ユキ「連敗で後が無くなった故の、長い作戦会議の気持ちは分かる。だが、もういいだろう。第3試合を始めるぞ?」
アリーナの外側から、腕をバキバキ言わせながら、ミキ側の3人目の相手、“剣士レオン”、が、ブロードソードを携えて歩いてきて、アリーナに到着した。
レオン「さて、私の相手は、そこの“異国の剣士”である、学歩のようだが、そろそろ出てきて欲しいものだな」
学歩「言われなくても、すぐ行く」
ザッ!
学歩はアリーナ外のテル達がいる場所から、試合スペースの所まで、1回のジャンプで到達してしまった。
レオン「ほぉ、さすがの跳躍力だな。立派なものだ」
その時、試合を終えたローラはアリーナの試合スペースからそれほど離れていない場所に陣取って、あぐらをかいて観戦していた。
ローラ「イコク気取りのサムライさんよ、まぁせいぜい頑張りな! うちのレオンは強え―ぞ!?」
学歩「…位置、最終確認、良し!」
レオン「はぁ? お前、ローラの方見て、なに頷いてやがる、ローラが気になるのか?」
ローラ「あ? イケメンだけど、私のターゲット年齢層からはずれているから、パス」
学歩はローラへの視線を外して、今度はレオンの方へ向き直った。
レオン「そーだよ、お前の対戦相手は俺だ」
学歩「…武器確認、良し。これより作戦開始だ」
レオン「はぁぁ?」
ユキ「いい加減始めるぞ!」
カーン!
テル側に取っては、土俵際の対戦が始まったのだった。
レオンはなんか小馬鹿にされたように感じたのか、剣を振りかぶって学歩に向かって襲ってきたのだった。
レオン「おらおら! よそ見してると、やけどするぞ!」
学歩「…まだだ…」
ひょい
学歩は刀に一切触れずに、レオンの攻撃を交わして、レオンの後ろに回り込んだ。
レオン「! しまった! 背後をとられ…」
しかし、学歩はバックステップして、レオンとの距離を取ってしまった。明らかに“背後からの攻撃”のチャンスだったはずだ。
レオン「な…な…、なんだてめぇ! まだ俺を馬鹿にするのか!!!!」
学歩「…もうちょっと横か…」
レオン「ふざけるな!!」
レオンは、顔を真っ赤にして怒り心頭で、学歩に襲いかかってきた。しかし学歩は表情1つ変えずに、サイドステップしてレオンの剣の攻撃範囲からはずれてしまった。
学歩「…よし、これでいいか」
そう呟くと、遂に学歩も刀の柄を握って、抜刀する姿勢をとった。
レオン「なんだ、こけおどしか。そうだよ、最初からそうやって、戦闘態勢になってりゃいいんだよ! いくぞ!」
レオンは、またもや頭上で剣を振りかぶって、学歩に襲いかかってきた。学歩はどうやら“居合い抜き”をするつもりなのか、微動だにせず、レオンの攻撃を待っていた。
レオン「ほぉ? イアイヌキか? 良いだろう! 斬れるものなら、斬ってみな! その前に粉剤してやる!」
ブンッ!
走り込んできたレオンが学歩の前で、思いっきりの力で剣を振り下ろした! 予想通り、学歩は居合い抜きの姿勢から、抜刀して斬りかかった。しかし、
『斬る目標物』
が違っていたのだった。
パキーーーーーーーン!!!!!
学歩の刀はレオンの剣の刀身の中央に“横から”侵入し、剣を真っ二つに斬ってしまったのだった!
レオン「な!?!? なんで俺の剣を!?」
学歩「これでいい…」
折れた剣先はもの凄い速さで、“ある場所”、に向かっていったのだった。
シューーーーン!
ローラ「え?」
グサッ!
剣先は見事、ローラの眉間に突き刺さったのだった。
ローラ「がっ・・・」
ゴトン…
一瞬で気絶したのか、自慢の圧殺ローラーが手元から離れて、床に落ち、ローラ自身も前のめりに倒れてしまった。強化された戦士だけあって、死亡する事は無かったが、その一歩手前、“死線を彷徨う”、ようなダメージを受けてしまった。
呆気にとられていたのは、レオンだけではない。テルもアペンドもアルもユキも、その場の全員が、この光景を見て青ざめてしまったのだった。
そして、なんとか正気を取り戻したユキが、すぐにマイクを握りしめて、学歩に怒号を投げかけた!
ユキ「き、き、貴様! 何をしただー!」
学歩「…反則ではないぞ。試合中に生まれた周りへ飛んでいくモノは、観覧席の各自が自己責任で回避すること。これは“お前達が決めてこちらも納得したルール”だ。今回の場合、ローラは、折れた剣先も避けられない程の弱い戦士だった、それだけだが?」
ユキ「ぐっ・・・・・・・・きゅ・・・救護班を向かわせろ、すぐにだ!!!!!」
学歩「この剣先、“たまたま”あそこへ飛んでいっただけであって、ローラは、運が悪かった、それだけだ」
レオン「お、お、お前! 戦闘前に、なんかブツブツ言っていたし、ローラの方、見ていたし、これは“策略”だ!!」
学歩「さぁ、何の事だか?」
レオン「ふざけるな!!!!!!」
レオンは怒り心頭で、折れた剣を振りかぶって、学歩に猛然と襲いかかってきた!
学歩「…お前なんぞ、最初から相手にしてない…」
ブンッ!!!!!!
学歩は居合い斬りの抜刀モーションすらしないで、片手で刀を円月のように回すと、レオンの握り手二つ共に、刀を峰打ちして刀を落とさせ、武器を奪ってしまった。
学歩「…次はお前の脳天だが、次に私が言いたいことはわかるな?」
レオン「は・・・・はい、負けを認めます」
学歩「賢明な判断だ」
カーンカーンカーン!!!!
試合はあっという間に終わってしまった。テル側、ようやっとの1勝である。ミキ側のスタッフが、気絶したローラだけでなく、跪いて呆然としているレオンの救護に向かった。学歩はゆっくりとテル側の席に戻り、床にスラッっと座ったのだった。
学歩「レン、敵は討ったぞ」
テル(…こやつ、剣術だけではない。恐ろしい策略家だ…)
アペンド(…怒らせないようにしよっと)
仲間のテル達ですら、学歩の事を見る目が変わったのだった。
これで、テル側、1勝2敗。それでも、崖っぷちである事に代わりはなかったのだった。
(続く)
CAST
ルカ姫、巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ
初音ミク(ミク):初音ミク
<クリプトン(Cripton)王国サイド>
魔導師アペンド:初音ミクAppend
僧侶リン(リン):鏡音リン
勇者レン(レン):鏡音レン
<インタネ(Interne)共和国サイド>
異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
<アフス(A-Hu-Su)帝国サイド>
魔導師テル:氷山キヨテル
皇帝イロハ:猫村いろは
神官ユキ:歌愛ユキ
クグツロボット(コードネーム)“ミキ”の外観:miki
(ミキの中身=ミリアム:Miliam)
<フォーリナー(Foriner)軍政国家サイド>
変身兵士 ソニカ:SONiKA
皇帝アル:Big-AL
重機動兵器アン:Sweet Ann
剣士レオン:Leon
圧殺兵士ローラ:Lola
導士オリバー:Oliver
拳闘士シユ:SeeU
その他:エキストラの皆さん
***
<バトルアリーナの対戦カードまとめ>
第1回戦 : ×ソニカ vs ○拳闘士シユ
第2回戦 : ×レン vs ○圧殺兵士ローラ
第3回戦 : ○学歩 vs ×剣士レオン
第4回戦 : アペンド vs 重機動兵器アン
最終戦 : テル vs ミキ(ミリアム)
回復担当 : リン & 導士オリバー (非戦闘員)
約束事項での非戦闘員 ミク
説明 | ||
☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第15作目の第8話です。 ☆今回は1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。 ☆当時は2期を意識してなかったのですが、本作は最新シリーズ“Dear My Friends!第2期”の第1期という作品になり、第2期のシナリオやカラクリに、第1期となる“本作”の話も出てきますので、これから長い長いお話になりますが、長編“Dear My Friends!”として、お楽しみくださいませ。 ☆この作品はナンバリング的には“第1期”となります。 ☆主役はルカさんなんですが…。 ☆今回は、学歩vsレオンでしたが、前回の最後をちゃんと受け継いだ戦闘でした。学歩さん、怖い…。 |
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