英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 戦争回避成功ルート |
その後各地を回って依頼の消化や学院生との合流を果たしていたリィン達はトワから来た連絡―――カレイジャスに待機しているパント達がリィン達に知らせたい緊急の情報が手に入った為、その情報を知る為にカレイジャスに戻り、待機メンバーと共にブリーフィングルームに集まった。
〜カレイジャス・ブリーフィングルーム〜
「それでパント卿。俺達に知らせたい緊急の情報とは何なのでしょうか?」
「……実は先程貴族連合に潜入している諜報部隊から緊急の報告が来たんだ。」
「”緊急の報告”、ですか?」
リィンの問いかけに対して答えたパントの言葉が気になったエリスは不思議そうな表情で首を傾げた。
「まず一つは貴族連合に潜入していたメンフィル軍の諜報部隊は全員自分達がメンフィル軍の諜報部隊だと貴族連合軍に悟られた為、貴族連合から撤退したとの事だ。」
「ええっ!?今までずっと潜入していたのに、どうしてバレたんですか!?」
「しかも全員正体が判明するなんて、普通なら考えられないわよ。」
「そうだよね〜。貴族連合に情報局(ボク達)みたいな存在はいないはずだし、さすがにボク達でも潜入している工作員全員の正体を判明させるには相当な日数がかかるよ?少なくても数週間程度じゃ、ボク達では無理だよ。」
パントの説明を聞いたアリサは驚き、セリーヌは目を細め、ミリアムは真剣な表情で呟いた。
「……実は貴族連合に”ある協力者”の姿が遠目だが確認されていてね。恐らくはその者の仕業だと思われる。」
「き、貴族連合の”ある協力者”ですか……?」
「その者は一体何者なのでしょうか?」
パントの話を聞いたエリオットは不安そうな表情をし、ガイウスは真剣な表情で尋ね
「―――私やパント様達が”紅き翼”の皆さんの”協力者”として協力する事になった理由となった人物と言えば、おわかりになるかと。」
「パント卿達が僕達の”協力者になった理由となる人物”ですか……?」
「確かパント卿が僕達の協力者になった一番の理由は……」
ルイーズの話を聞いたセドリック皇太子とジョルジュは考え込んだ。
「亡霊となった”D∴G教団”の司祭を討伐する為だよね……?――――あ。」
「まさか……ついにヨアヒム・ギュンターが貴族連合の協力者になったって言うの!?」
ある事に気付いたトワが呆けている中、サラ教官は厳しい表情で尋ねた。
「ええ、その通りですわ。」
「クッ……!ついに再び姿を現したか……!」
「……まあ、ノルティア州が脱退してから以降の貴族連合の状況を考えればそろそろ現れるような気はしていたけどね。」
「フン、ようやくか。待ちくたびれていたぞ。」
「何で君はそんなに自信満々なんだよ……」
シグルーンの答えを聞いたラウラは厳しい表情をし、フィーは真剣な表情で呟き、鼻を鳴らして呟いたユーシスの言葉を聞いたマキアスは疲れた表情をした。
「で、ですが……どうしてかの”教団”の司祭が貴族連合の協力者になっただけで、貴族連合に潜入していたメンフィル軍の諜報部隊の正体が判明してしまったのでしょう?」
「相手は亡霊ですから、もしかして亡霊である事を利用して貴族連合の兵士がメンフィル軍の諜報部隊かどうかを確かめていたのでしょうか?」
「亡霊ですから当然姿を消すと言った芸当はできるでしょうけど……貴族連合に潜入していたメンフィル軍の諜報部隊の数は恐らく相当な数でしょうから、僅か2週間足らずで全員の正体を知るには時間が足りないと思うのですが……」
一方アルフィン皇女やセレーネ、エマはそれぞれ戸惑いの表情で考え込んだ。
「……恐らく諜報部隊の正体が悟られた原因は”グノーシス”かと思われます。」
「え……そこでどうして”教団”が開発したという薬が出て来るのでしょうか?」
「!!なるほどね……確かに”グノーシス”を使えば、貴族連合に潜入していたメンフィル軍の諜報部隊がわかってもおかしくないでしょうね。」
リアンヌの推測を聞いたエリスが不思議そうな表情で首を傾げている中、サラ教官は血相を変えて厳しい表情で呟き
「サラ教官?それはどういう事なのですか?確か話によると”グノーシス”は大幅な身体能力の上昇や”魔人化(デモナイズ)”の効果があるとの事ですが……」
サラ教官の言葉が気になったアンゼリカは真剣な表情で問いかけた。
「…………かつてヨアヒム・ギュンターと対峙した”特務支援課”やエステル達はヨアヒムに自分達の”記憶”を読み取られたそうよ。恐らくヨアヒムや”グノーシス”を投与された領邦軍の兵士達によって、潜入していたメンフィル軍の諜報部隊の”記憶”が読み取られて、それで正体がバレたのだと思うわ。」
「ええっ!?他人の記憶を読み取る!?」
「ひ、非常識な……」
サラ教官の説明を聞いたエリオットは驚き、マキアスは疲れた表情で呟いた。
「問題となる”グノーシス”についてなのだが……エリゼの報告によるとヨアヒム・ギュンターは新型の”グノーシス”を開発したそうだ。」
「”新型のグノーシス”ですって!?」
「し、しかもどうして姉様がその事を……!」
「まさか……エリゼはクロスベルでヨアヒム・ギュンターと会ったのですか!?」
パントの話を聞いたサラ教官は厳しい表情をし、エリスは信じられない表情をし、ある事に気付いたリィンは血相を変えて尋ねた。
「ええ。エリゼさんの報告によると彼女が特務支援課の方々と共にディーター・クロイスを追い詰めた際にヨアヒム・ギュンターが現れ、ディーター・クロイスにその”新型のグノーシス”を投与して撤退したとの事です。」
「ええっ!?ディ、ディーター・クロイスって言ったら……!」
「”教団”の真の黒幕――――”クロイス家”の者にして、”大統領”としてクロスベル独立国を支配していた愚か者だな。」
「それで投与されたディーター・クロイスはどうなったの〜?」
ルイーズの話を聞いたアリサは驚き、ユーシスは真剣な表情で呟き、ある事が気になったミリアムは真剣な表情で尋ねた。
「特務支援課の方々から話を聞いたエリゼの報告によるとかつて紅い”グノーシス”によって魔人化(デモナイズ)したヨアヒム・ギュンターやアーネスト・ライズと似たような姿―――巨大な魔人へと変化したとの事ですわ。」
「巨大な”魔人”……ですか……」
「どのレベルの魔人か気になるけど、最低でも上級悪魔クラスの強さになるのでしょうね……」
シグルーンの説明を聞いたエマは不安そうな表情をし、セリーヌは目を細めて考え込み
「ちょ、ちょっと待ってください!そうなると、その”新型のグノーシス”とやらを貴族連合軍が服用している可能性がある事になるじゃないですか!」
「……そうね。最悪もう貴族連合軍は悪魔の軍団と化しているかもしれないわね……」
ある事に気付いたマキアスは表情を青褪めさせて推測し、マキアスの推測にサラ教官は真剣な表情で頷いた。
「そ、そんな……」
「その……巨大な魔人へと変化した人達は元に戻るのでしょうか?」
話を聞いていたアルフィン皇女は表情を青褪めさせ、ある事が気になったセドリック皇太子は不安そうな表情で尋ね
「……”グノーシス”によって巨大な魔人化した事例はヨアヒム・ギュンターと”マクダエル市長暗殺未遂事件”の犯人であるアーネスト・ライズなのですが……その内ヨアヒム・ギュンターは特務支援課との激闘の末、肉体が崩壊し、最後は消滅したとの事です。」
「しょ、”消滅”…………」
「……サラ教官。もう一人の方はどうなったのですか?」
サラ教官の話を聞いたトワは信じられない表情をし、アンゼリカはサラ教官に尋ねた。
「アーネスト・ライズも消滅寸前だったけど、その際に駆け付けた”星杯騎士”の”法術”によって元の人間の姿に戻って、命は助かったそうよ。」
「”星杯騎士”……!」
「……七耀教会の裏組織に所属している騎士達の事だな。」
予想外の存在の名前が出るとラウラは目を見開き、ガイウスは静かな表情で呟いた。
「それで……その”新型のグノーシス”を投与されて巨大な魔人化したディーター・クロイスはどうなったのでしょうか?」
「彼の者も”特務支援課”との戦いによって消滅寸前でしたが、その場に駆け付けた”空の女神”の術によって元の姿に戻り、命を取り留めたとの事です。」
「ええっ!?エイドス様が!?」
「まあ、”あんなの”でも”空の女神”だからね。そのくらいの事もできるだろうね。」
「え、ええ……(どうして皆さん、女神様の事をそんなぞんざいな扱いにするのでしょう……?)」
ジョルジュの質問に答えたリアンヌの話を聞いたセレーネは驚き、静かな表情で呟いたフィーの言葉にエリスは内心戸惑いながら頷いた。
「ちなみに”空の女神”が駆け付けてくるまでに”特務支援課”と共にいた”星杯騎士”に加えて後から駆け付けて来た”守護騎士(ドミニオン)”がかつてアーネスト・ライズを救ったように同じ”法術”をかけたそうだが、元の姿に戻らなかったとの事だ。――――以上の事から、”新型のグノーシス”を投与された者達はどうなるか、わかるだろう?」
「……つまり”新型のグノーシス”によって巨大な魔人へと変化した連中を現状助けられるのは”空の女神”だけって事になるわね……」
「そ、そんな………!それじゃあ最悪その”新型のグノーシス”を投与された領邦軍の方々は全員助からないという事になりますわよね……!?」
「あのふざけた女神がいれば、解呪も可能だとの事ですが……」
「エイドスさんはクロスベルにいるから無理だよね……」
パントの話を聞いてある結論が出たサラ教官は重々しい様子を纏って呟き、アルフィン皇女は悲痛そうな表情をし、ユーシスは複雑そうな表情で呟き、エリオットは暗い雰囲気を纏って呟き
「あ、あの………でしたら女神様に事情を説明して、いざという時の為に私達に協力して頂く事はできないでしょうか?」
エリスは不安そうな表情で提案した。
「―――確かに良い案だが、少なくても”碧の大樹”をどうにかしない限りは”空の女神”は君達に力を貸さないだろう。彼女がゼムリアに降り立った理由はクロイス家の暴走を止める為だからね。ディーター・クロイスは拘束されたが、まだマリアベル・クロイスが残っていて、あの碧の大樹にいる。その事から考えるとクロイス家の真の目的は”碧の大樹”だろう。」
「そ、そんな……」
「クロイス家の暴走を止める為という事は”碧の大樹”をどうにかした後なら交渉の余地はあるって事よね?こうなったらもう、”特務支援課”やエイドス達が”碧の大樹”をさっさと何とかする事を祈るしかないわね……」
「まあ”碧の大樹”に挑むメンバーを考えたら、そんなに長くかからないと思うけど。」
パントの話を聞いたトワは辛そうな表情をし、重々しい様子を纏って呟いたサラ教官の言葉を聞いたフィーは静かな表情で推測した。
「もし”新型のグノーシス”によって大型の魔人へと変化した者達と相対する事があれば、滅しなさい。―――それが私達ができるその者達を”救う”唯一の方法です。」
「………………」
リアンヌの助言を聞いたその場にいる全員は何も言葉を口にできず、重苦しい空気を纏って黙り込んでいた。
「……パント卿。俺達に教える情報は以上でしょうか?」
「いや……まだ最悪の情報が一つ残っている。」
そしてリィンに訊ねられたパントは重々しい様子を纏って答えた。
細かい事ですがこのルートではリィン達は星杯騎士団の存在を知っている事にしてあります。ちなみにこのルートでトマス教官が自身の正体をリィン達に教える予定はありません(オイッ!)
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第59話 | ||
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