命一家 2話
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命一家2話

 

【みき】

 

 命ママが近所の用事で忙しいみたいで一緒に連れてこられたわたしは

一人でママの様子を眺めてるのがつまらなくなったからそっと抜け出して

どこへ向かうのかもわからないで歩き始めた。

 

「ちょこっとだけ。すぐにもどってくればいいよね」」

 

 そんな軽い気持ちでわたしはどんどん歩いていく。

最初はちょっとした景色が見れればいいなと思っていたんだけど

気付いて周りを見ていたらぜんぜん知らない場所に来ていて

わたしの顔から一筋の汗が流れて首を傾げて呟いた。

 

「あれ・・・?」

 

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***

 

 ちょっと不安を感じながら、知らないところで木がいっぱい生えてる場所を

歩いていると急に目の前の景色が変わってしまってわたしは驚いた。

それまで木がたくさんあって狭いところだったのに今目の前には木に囲まれてる中

丸くなっているお花畑があってその真ん中に切り株があった。

 

 少し足が疲れていたわたしはそこにちょこんと座って周りを見ると私が来た方向から

見た更に奥の方にある岩場に大きく穴の空いた場所を見つけたからちょっとだけ

入ってみることにしたの。

 

 中は涼しくて暗くて何だかちょっと怖い感じだった。

しばらく歩いていると少し疲れちゃってわたしは近くにあった大きな石の上に

座った。気のせいか少し海の匂いがするような気がした。

 

 わたしがさっきまでいたところには海なんてなかったのに。

 

 そう考えているといつの間にか誰かがわたしの手に触れる感覚があって

びっくりして飛び上がってしまった。その手はとても冷たかった。

 

「きゃあ!」

「あ・・・ごめんなさい・・・」

 

 冷たい場所に冷たいような声が耳に届く。でもごめんなさいの声が本当のように

聞こえてわたしは声のしたほうに目を向けるとすごく細くてフリフリのついた

ワンピースに纏った長い髪の白い色の髪の女の子が不安そうにわたしを

見つめているのがわかった。

 

「おばけさんですか・・・?」

 

 目をとじながらこわごわと聞いてみると目の前にいる子は首を横に振っていた。

暗いけど奥の方からちょっとだけしかないあかるいのが入ってきてそれのおかげで

相手の動き何とかわかることができた。

 

「じゃあ、だれ?」

「あ、わたし・・・ゆきの・・・」

 

「ゆきのちゃんって言うんだ!お人形さんみたいに綺麗だね!」

「あの・・・」

 

「わたしはね、みきって言うんだよ〜」

「みき・・・ちゃん・・・」

 

 暗くてゆきのちゃんがどんな顔をしているかよく見えないけれど、握る手は

少しずつ暖かくなって気持ちが何となく伝わってきたような気がした。

 

 ゆきのちゃんは怖がってないってそんなふうに感じられた。

 

「みきちゃんって・・・まるで・・・」

「うん?」

 

「天使みたいだね・・・」

「え!?」

 

 言われた後、目が慣れてきたからなのかゆきのちゃんのちょっと難しそうに

しているような顔が見えた。けどそれ以上に照れてるようにもわたしには見えた。

 

「ありがとう!」

 

 ゆきのちゃんもかわいいよって続けて言ったらゆきのちゃんは思い切り顔を横に振った。

 

「そんなことないけど・・・でも・・・ありがとう・・・」

「うん」

 

 見えにくい中で二人でなるべく視線を合わせてお話をしていると私が来た方向から

知らない声が聞こえてきた。

 

「あ・・・」

「どうしたの?」

 

「お母さんの声だ・・・」

「そっか。じゃあここまでだね」

 

「うん・・・」

「またどこかで会えるといいね」

 

「うん・・・」

 

 ついさっきまで慣れてたおかげか口が軽くなってきた気がしたけどまた重く言葉が

少なくなってしまった。

 

 わたしはここまでかな、少し残念だなって思いながらゆきのちゃんの手を繋いだまま

立ち上がらせた。そしてゆきのちゃんのとまどってる顔を見ながら少し笑って

わたしはゆきのちゃんの手を握りながら入り口まで歩いていった。

 

 すぐに明るい光が見える入り口に着いて外に出た瞬間。

 

「あれ?」

 

 確かに手を握っていたはずのわたしの手には何も握られていなかった。

握っている形をしているだけだった。

 

「あれ? あれ?」

 

 何度手を見ても何度後ろを見てもわたし以外には何もそこにはいなかった。

入り口からした方の声の人もわたしのいる場所にはいなかった。

 

「何で? どうして?」

 

 あまりにも急過ぎてわけがわからなくなって目の前がグルグル回るような

感じがして近くにあった切り株に座ってもう一度岩場を見ると今度は入り口らしい

穴も無くなっていた。

 

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***

 

「あ、みき!どこへ行ってたの!?」

 

 わたしは迷っていたはずなのに、ボ〜ッとしながら歩いていたらいつの間にか

おぼえのある場所に知らない内に辿り着いていた。

 

 何もかもが不思議で不思議で誰かに伝えたくてしかたなかった。

 

「命ママ、あのね・・・」

「知らないとこへ勝手に行かないで、どれだけ心配したと思ってるの」

 

「ごめんなさい・・・」

「うん・・・。それで、何か話がしたそうな顔をしてるけど・・・どうしたの?」

 

「えっとね、あのね。何だか不思議なことがあってね!聞いて欲しいなって!」

「わかったわ。その代わりあまり慣れてない場所でどこかへ一人で行っちゃうのは

やめてね。それだけ約束して」

 

「うん、わかった。約束〜」

 

 わたしがママにそう言って笑顔でゆびきりをするとママは怖い顔からいつもの

優しい顔に戻ってわたしはホッとした。

 

 そしてどこから話そうかと考えているうちに少しずつさっきあったことがもやもやが

かかるように忘れていきそうになったから覚えてることだけでも勢いでママに

伝えた。

 

「あのね、向こう行ったらね。お花畑と大きい木を切ったのがあってね。

でね、もっと向こうにおっきな岩におっきな穴があってね、中に入ったの。

でね、そこでね。綺麗なお人形さんみたいな女の子と会ったの」

「そう」

 

「その子とね、話いっぱいしたんだ」

「良かったわね、その子にもちゃんとお礼言えた?」

 

「うん・・・多分・・・。それでね、その女の子のお母さんが近くまで着てたみたいでね、

女の子と一緒にね外に出たの。それでね・・・あれ・・・それでね・・・」

 

 わたしが言葉に詰まった時にはすっかりその先のことをわすれてしまっていた。

急いで思い出そうとするけど、すっぽり抜けてしまっていて何だか悲しかった。

名前は何て言ってたっけ・・・。あれ・・・?

 

「みき?」

「なんだっけ・・・全然思い出せないよ・・・」

 

 よくわからないはずなのに涙が出てきて言葉も上手く出せなくなっていた。

そんなわたしにママがわたしを抱いてくれてよしよししてくれた。

 

「そう、楽しかったのね。またその女の子と会えるといいね」

「うん・・・!うん・・・!」

 

 泣きじゃくりながら鼻がつまって鼻水まで出そうでママの服に顔をこすりつけながら

ママの言葉にわたしは強く頷いていた。その気持ちだけはずっと持っていたから。

 

 わたしは確かにあの場所であの女の子と話していたのだから。

それだけはわすれないようにしていたかった。

 

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***

 

 泣くのをやめたわたしは気持ちがすっきりしてママと一緒に手を繋いで帰り道を

歩いていた。最初は暑いほど青いお空がいっぱいだったのに、今はすっかり赤っぽい

ようなオレンジ色っぽいような色をしていた。

 

 そんな風に考えながら見上げていたわたしにママが空に指を向けながら

わたしに教えてくれた。

 

「みき、あれはね。夕焼け空って言うのよ」

「ゆうやけ?」

 

「うん」

「へ〜」

 

 たぶん、けっこう時間が経っちゃったんだなぁって何となくわかっていた。

それだけママを待たせて心配させちゃったんだなって。

 

 帰ってきたときに見せたママの顔が頭から離れなかった。

もうあんな顔をさせないようにしないとってわたしはこころの中で思った。

 

 そして向こうに行っていたときのことやあの子のことも忘れないようにしよう。

あの時にあの子に言われた「天使みたいだね」っていう言葉だけはっきりと頭に残ってて。

ちょっとこころがくすぐったいのも覚えていて。

 

そんな風にいろいろと不思議なことがあった一日でした。

 

続。

 

説明
ふわふわっとした不思議な体験をするみき。そういえば双子序盤でもこういうことがあったような気がしないでもない、とてもある人に似た名前の子も!?ある話と交差するようなIFみたいな経験をするお話です。

ちなみに子供っぽい視点で書くのはかなり難しい。表現的にいつも通りにしなきゃいけないのと子供っぽくしなきゃっていうのが混じっています。少しでもそれっぽく見てもらえれば幸い。
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