真・恋姫†無双 〜双天の御使い〜 プロローグ
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                              真・恋姫†無双

                              〜双天の御使い〜

 

 

                                『史実』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 飛行機でおよそ4時間、電車でおよそ7時間半、バスでおよそ2時間。

 

 実時間にして半日以上。

 

 私ももう若くはない。しかしこれからのことを思えば、この程度の疲労など軽く鼻で笑えるというものだ。

 

 とはいえ、実際にそれで疲労がなくなるわけではないのだから、昨日はホテルでぐっすりと休ませてもらった。

 

 日本からおよそ2400kmという遠く離れた場所に、世界最大の大国の魂の拠り所とされる山がある。

 

 中華王国の霊峰『泰山』。

 

 正確なところ、地学の分野ではもう山とされてはいないが、かつては日本の富士山すらも霞むほどの、立派な霊山があったとされている。

 

 かつては。そう、かつては、だ。今からおよそ1800年前まで、そこは霊山として確かにあった。

 

 しかし、今から1800年前、三国時代と呼ばれる時代に((何か|・・))があったのだ。

 

 ((なぜか|・・・))どこの記録を探しても、一体何が起きたのかわからないが、かつて人類史上最大の異端児、北郷一刀が最期を迎えた戦地であったとされている。

 

 もっとも、それは記録としては何も残っていない。ただの民間伝承でしかないものだが、今のところ過去から裏付けられている唯一の、そして最も有力な可能性と歴史家たちの間で考えられている。ちなみに、私もそう思っている。彼の最期の戦地だと言うなら、泰山の現状も納得というものだ。

 

 今現在の泰山は中華王国の地質上、最もイレギュラーな形状をしている。

 

 中華王国の山は、基本的に険しい。

 

 全てとまでは言わないが、基本的には柱や塔のような円柱形をしている。

 

 かつては泰山もそんな形状をしていたらしい。

 

 だが今は違う。

 

 現状、泰山はまるで日本の山々のように、なだらかな斜面と一面に広がる森で形成されている。標高は以前とそう変わらないと言われている。確かに1520mもあれば、多少変わっていても常人にはまずわからない。

 

 まあそれ以前に、そもそも『元の泰山』を知っている人間は1800年以上前の人間ということになるし、当時の立場に立ってみれば、多少高くなっていようが低くなっていようが、山の形状が変化したという事実のインパクトが強すぎて、高さの変化には気付けまい。

 

 私は今、泰山の麓の『ある施設』に向かっていた。

 

 まさか私のようなものの為に、ホテルにリムジンで迎えに来てくださるとは…本当に太っ腹な国だ。

 

 ともあれ私も遊びで来ている訳ではない。

 

 れっきとした仕事だ。

 

 業界の裏では頭のイカレタ異端児だと言われている私も、今日ばかりはその蔭口に感謝したい。

 

 おそらくそう言われていたおかげで、私は今日、歴史的な場面に立ち会うことを許されたのだろうから。

 

 方々からいただいた妬みの言葉は、軽く鼻で笑い飛ばしてやった。

 

 なんせ、日本人でこのプラチナチケットを手に入れたのは、私だけなのだ。

 

 どんな言葉でも痛くも痒くもない。

 

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 ある施設…王立歴史研究所に到着すると、妙齢の女性が出迎えてくれた。

 

「ようこそいらっしゃいました。北郷優刀様でいらっしゃいますね?」

 

「はい。私が北郷優刀です。」

 

 私は懐から中華王国国主、習遠氏より届いた招待状を取り出す。

 

 私の手元に届いてから、何度も何度も見返し、まるで真珠でも扱うように大事に大事に保管してきたそれを、妙齢の女性はなんだかよくわからない投票箱のような見かけの無骨な機械に挿入した。

 

ピコーンッ♪

 

 軽い音がして招待状が再び出てくる。どうやら偽札を確認する機械の派生機のようだ。

 

 妙齢の女性は笑顔で招待状を戻し、「こちらへどうぞ」と私を中へ招き入れてくれた。

 

「綺麗な研究所ですね。」

 

 中に入った私は思わず呟いた。

 

 仕事柄、世界中の歴史研究施設に行くことがあるから言える。

 

 間違いなく、世界一綺麗な歴史研究施設だ。

 

 基本的に、歴史研究に国力を割く国などほとんどない。その金で道路を増設したり、兵の一人でも育て上げる方がよほど有意義だと考えられている。

 

 私も『今』に金をかけることは否定しない。だが、個人的にはもう少しこちらに資金を回してくれてもいいと思うのだ。

 

 私の知っている歴史研究施設は、どれもこれも老朽化が進んでいたり、国立なのに部屋一つ分のスペースしかなかったり、果ては資金の大半が寄付金である所すらもあるのだ。

 

 それに対し、中華王国は歴史研究に金をかけていると言える。内装がしっかりしているだけでも十分なのに、どう見ても高価な計測機器や、見たこともない機械、詰めている人間の数…今日という日が特別だとはいえ、この施設にどれだけの金をかけているのやら。

 

「ありがとうございます。ここは中華でも屈指の研究所ですので、色々と行き届いているんですよ。」

 

 妙齢の女性は笑顔で言うと

 

「ご説明が必要なところはありますか?よろしければ、可能な限りご説明させていただきますが…。」

 

 と、大変親切に言われた。

 

「いえ、大丈夫です。…あ、そういえば一つお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

 

「はいなんでしょう?」

 

 妙齢の女性は優しい笑顔で応えてくれる。おそらく人の役に立つのが好きなのだろう。頼られて嬉しそうだ。

 

「あなたのお名前をお尋ねしてもよろしいでしょうか?そういえばまだお聞きしていなかったので…。」

 

 そう言うと妙齢の女性はうっかりしていたという風に目を見開いていた。

 

「これは大変失礼いたしました。私はここの研究員の一人で、名前は((顔了|がんりょう))と申します。三国時代の袁本初に仕えた顔良の子孫です。」

 

 彼女は、顔了さんはとても衝撃的な事実と共に、名乗ってくださった。

 

「が、顔良!?あの猛将の!?」

 

「はい、お恥ずかしながら顔良から数えて五十二代目の子孫に当たります。」

 

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 顔良と言えば、三国時代袁紹に仕えた猛将で、剛将・文醜と並んで袁家の二枚看板と呼ばれる人物だ。

 

 ただ文醜は、武一辺倒の人物だったのに対して、顔良は袁紹軍の筆頭文官としても活躍していたという。

 

 『この文武両道さこそが、顔良と北郷一刀を同一人物である証左だ』と主張する歴史家一派を形成するに至っている。

 

 もっとも、顔良は北郷一刀ほど革新的な政策を行っていなかったとされているため、少数意見として衰退の一途をたどっているが。

 

「本日お集まりの方の中にも、三国時代の偉人の子孫の方がそれなりにいらっしゃいますから、機会があればお話しされるのもいいかもしれませんね。」

 

 これには流石に唖然とせずにはいられない。

 

 三国時代の偉人の子孫がいる?それも多人数だという。

 

 何かの意図を感じずにはいられない。

 

「ちなみに…たとえば、どなたがいらっしゃいますか?」

 

「劉備の子孫である劉衣さんと、あと公孫賛の子孫の公孫否さんは以前からの付き合いだったのでわかっているのですが…他の方に関しては、聞かされておりません。」

 

 顔良に、劉備に…公孫賛?一つのところに三国時代の偉人の子孫が三人もいるだけで十分すぎるじゃないか。

 

 …いや?今日のセレモニーの趣旨を考えれば、ある意味正しい参列者だと言えるかもしれない。

 

 2010年4月2日。

 

 歴代の中華王朝の王族たちが、その威信を賭けて守り通してきた『北郷の書』の第1巻の公開セレモニー。

 

 彼の家臣の子孫たちには、聞く権利がある内容なのだろう。

 

 となると、考えられるのは技術的な内容ではない((特別な内容|・・・・・))。

 

 心臓が、今稼働限界を迎えかねないほどに加速する。

 

 これは予想を遥かに超えた((何か|・・))が待っているようだ。

 

 会場に着いた私はあまりのことに言葉を失った。

 

 予想ではとてつもなく広い部屋に広々と何百人もの参列者が並び、取材に来たマスコミやら、政府の重鎮やらが何十人も並んでいるのを想像していた。

 

 だが蓋を開けてみれば、人数はそれほどでもないし、会場としても手狭な方だ。一応内装は豪華だが、それ以前の問題だろう。

 

 予想を遥かに下回る………いやいやいや。これは、それ以前にいくらなんでも狭すぎるし、出席者は百人前後しかいないように見える。マスコミなど影も形も見えない。

 

 本当にこれが、あの世界最大の大国、中華王国の主催した式典なのか?

 

 わざわざホテルまでリムジンで迎えに来たのに?

 

 ………何かがおかしい。

 

「本日の式典は上の方から『人数を絞り、かつ報道関係者を一切入れるな』と命令が出たそうです。」

 

「それは…なぜ?あの北郷一刀の執筆した『北郷の書』ですよ?」

 

「言いたいことは私もわかるのですが、生憎と私にも知らされておりません。話を聞いたとき、私も同じことを思いましたから。」

 

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 私は色々考えながら、結局結論など出ない、と言うどうしようもない答えに辿り着き、小さく嘆息する。

 

 顔了さんの指定した席につくと、すぐに飲み物が運ばれてきた。サービスのいいことだ。何よりシャンパンが出てくるあたり、気が利いている。…当然、この後の時間が勿体ないから飲みすぎたりなどしないが。

 

 いくつか向こうの席で、顔了さんが女性二人と仲良く話しているのを見つけた。

 

 おそらく、どちらかが劉衣さんで、どちらかが公孫否さんなのだろう。顔了さんもそうだが、他の二人も随分な美人だ。

 

 もう少し正確に言うと、この会場内の女性はなぜか美人が多い。…なぜだ?会場でも間違えたか?

 

 などなどくだらないことを考えているうちに時は経ち、そして定刻通りに式典が開始された。

 

 なぜかはわからないが、今回は偉い人の長々しいお話は、特にないようだ。

 

 当然偉い人はいる。…なぜか人数が少ないが。

 

 その中にはちゃんと中華王国の国家主席、習遠氏の姿がある。…さっきから一言もしゃべっていないが、っと?彼が壇上に立つ番か。

 

「お集まりの皆様、実際にお会いするのは初めての方もいらっしゃいますので、まずは自己紹介をさせていただきます。私は習遠。現中華王国国王であります。」

 

 会場内に拍手の音が鳴り響く。私も当然拍手する。このセレモニーへ呼んでくださったのだから、感謝の念は堪えない。

 

 その音を軽く手で制して、彼は言葉を進めていった。

 

「本日は、『北郷の書』の第1巻を公開するに当たり、歴代中華の国主たちからの厳命を遵守した形でこのセレモニーを開催させていただきました。」

 

 ………なに?歴代中華の国主たちからの厳命?

 

 一体なんだ?簡素にしろとかそのあたりか?…違うはずだ。

 

「ここから私は、ただのメッセンジャーになります。『北郷の書』は、私が壇上から読み上げる形で本日、公開させていただきます。」

 

 そう言うと習遠氏は、部下に持ってこさせた一冊の古ぼけた本をスクリーンに映すように命じた。

 

 スクリーンに映ったそれを見て私は確信した。間違いない。あれは『北郷の書』だ。皇帝の玉璽が押されている。本物の、『北郷の書』の第1巻だ!

 

 どうやら習遠氏が読み上げるのに合わせて、スクリーンで『北郷の書』の内容を追う形で進めるようだ。

 

「『会場にお集まりの皆様、まずは今日という日が無事に迎えられたことを、1800年の時の彼方から、心よりお祝い申し上げます。』」

 

 それは時を越えた、生きた偉人の言葉だった。

 

「『今日は皆様に、真実を知っていただくため、遠路はるばる御足労いただきました。』」

 

 偉人は言う。今日という式典の開催が自身の指示によるものだと。

 

「『私は、北郷国国主、北郷一刀。かつてこの大陸を統一した……………………………………………………………………………………………』」

 

 そして偉人は告げる。

 

「『天の御使いと呼ばれていた男です。』」

 

 誰も想像できなかった、この世界の………歴史の真実を。

 

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あとがき

 

ども〜、心は永遠の中学二年生です。

 

いかがでしょう、長めの伏線でしたが、なんとか回収できした。

 

ごめんなさい、中国のみなさん・・・。

 

泰山、13mほど削っちゃいました♪

 

今回は遅くなったお詫びに二本立てで投稿してみました!

 

はっきり言います。

 

かなり無茶でした!もうしません!!!!

 

ではではみなさん、なんとか続き・・・待っていただけるとすごく嬉しいです。

 

説明
読者の皆様・・・
ごめんなさい!
超遅くなりました!!
m(__)m

今回は『外史書』を読んでない方は、そちらから読んでいただけた方が面白いかもです!

そしてごめんなさい・・・
『乗り越えなければならないもの』の執筆が非常に滞っています!!
難産じゃすまないレベルに達しつつあります!
でも何とか終わらせますので、はい・・・

先に書き溜めておいた双天の御使いの序章だけでもお楽しみください
いくらなんでも伏線が長すぎて、皆様に忘れ去られそうなんで・・・

最後にごめんなさい!
タイトル間違えて投降してました!!!!
m(__)m
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2001 1712 6
コメント
>>劉邦柾棟さま 遅くなりましたが、コメントありがとうございます!ワクワクしていただけて、私はもう嬉しくて涙出そうです!今しばらくお待ちください!(心は永遠の中学二年生)
>>睦月さま 遅くなりましたが、コメントありがとうございます!YES!歴史の真実です!でも史実が何を意味するかは秘密です!だって未定なんですもん!2パターン想定中ですが、どうするかはお楽しみに!(心は永遠の中学二年生)
ワクワクしながらお待ちしております。(劉邦柾棟)
歴史の真実だと……(睦月)
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