艦隊 真・恋姫無双 70話目 |
【 手を替え品を替え の件 】
? 洛陽 都城内 大広場 高台 にて ?
何皇后「ーーーーー!!!! ーー!! ーーー!!!! ーーー!!!」バタバタッ!
楊奉「しっかり! しっかりなさいませ!! お前たち! 何皇后を抑えつけろ! 舌を噛むぞ! 布を噛ませろ!!」
兵「は───はいっ!!」
大将軍何進の剣技を受け、痛みに悶え苦しむ何皇后!
口から血の泡を吹き出し、地面を転げまくる!
楊奉は、近くの兵を呼び何皇后を押さえつけさせ、手首の止血処理を行う!
大の男三人掛かりで、動きを封じ込めようとするが、それでも抑えきれずに応援を呼ぶ! この細い女の身で、どこに力があるのか分からない!
苦悶に浮かぶ何皇后の顔には、何進と一刀を呪い殺さんとばかりに……強烈な視線を送る! その業の深さ故か……端正の顔が醜く歪み、鬼女のように目がつり上がり、口許より血を吐き出して唇を朱に染め上げる!
何皇后「カ、何……進! 天ノ御……ツカイィィィ───ッッッ!! ユ、許サヌ……許サヌッ! カ、カノ恨ミ……必ズヤ──晴ラサ………ッッ!!!」
そして、血を吐き恨み言を述べた後……静かになった。
★☆☆
ブロロロロォォォォォォ───!!
ギュルンギュルンーーーギュルルルルッッ!!
ーーー
重装歩兵「 Σ(゚Д゚;≡;゚д゚) 」オロオロッ!
重装歩兵「うひょおぉぉぉぉぉ!!」
重装歩兵「────コワイッ!」バタバタッ!
ーーー
配下の重装歩兵が、右往左往と蠢き色を失い逃げ惑う!
艦載機の編隊飛翔が、『横の集合、散開運動』だけだった動きが、『縦の運動』も取り入れて観る者を魅了……もしくは恐怖を抱かせた!
近付いて急に左上、右上に回避運動をする……『シャンデル』
同じく近付いて、上方に回避。 そのままUターンして戻る……『インメルマンターン』
エルロン(補助翼)を利用して回転しながら飛行する……『エルロン・ロール』
普通に宙返りを行う……『ループ』
あまりにも異常な動き、急接近からの転回、もはや動物的動きを超え過ぎているのだ。 この時代の者に……理解が追い付かない状態である。
ーーー
金剛「Wow! 見事なAerobatics(エアロバティックス 曲芸飛行)ネ!」
榛名「金剛姉様! 見とれている場合じゃありません! 私たちも!」
比叡「これを見れば、みんな驚いてくれますよぉ! 私たちが空に、パァーッと華を咲かせればぁ! 気合! 入れて! 行きます!!」
金剛「Yeah! 比叡も榛名も準備OKデスカァ!? それではァ───撃ちますネ! Fire〜!!!」
シュ───ッ!
シュ──ッ!
シュ────ッ!
──────ドンッ!!
───ドンッ! ドンッ!
…………パラパラッッ!
満天な空の上に、龍が天へ昇るが如く勢いで、翔け上がる物が三つ。 その内の二つは、上空で盛大な破裂音を発すると、赤と黄の色鮮やかな煙を発する!
ーーー
蓮華「──あっ! 綺麗……」
冥琳「蓮華さま、此処は戦場! 油断は禁物です!」
蓮華「ご、ごめんなさい。 あまりにも目を引く物だったから……」
冥琳「衆人に注目を集めさせ、その隙を突く。 正に兵法『声東撃西』を体現した物です。 私たちが引っ掛かってしまうと、北郷を再度不利な戦いを強いる事になりますぞ? ………特に、小蓮さまは……」
小蓮「─────ハッ! わ、わわわ、分かってるわよッ! シャオだって一刀の足を引っ張りたくないもん!!」
ーーー
最後の一つは、もう少し上で破裂。 『ドーン!』と雷音が響き、それと同時に姿を現した物に、その場にいた者は目を見開き驚愕する!
空をユックリと浮揚する傘状の物。 その下には三色の煙が、己の存在を誇示するかのように、風に棚引かせながらもハッキリ確認できる!
ーーー
重装歩兵「………瑞祥だ」
重装歩兵の一人が呟く。
その言葉を聞きつけた者が、数人慌ただしく尋ねてきた。
重装歩兵「お、おいっ! 『瑞祥』ってなんだよ!?」
重装歩兵「あぁ……俺詳しいんだ。 『瑞祥』ってはな、聖君が現れる前兆を示す事。 天が起こす奇跡なんだが……」
重装歩兵「じゃあ、あれは奇跡じゃないのか!? 空飛ぶワケの分からない物、あの轟く雷を操る使者! 執金吾さまは、偽者と断じておられていたがよぉ? 実際は……ほ、本物じゃないのか!?」
重装歩兵「大将軍さまも、御遣いさまの味方に加担された。 これはもしかして……もしかすると───!?」
重装歩兵「めったな事を口にするんじゃない! 聞かれたら俺らは、斬首で終わりだぞ!? ………今は様子を伺んだ。 ……折りを見て………」
ーー
比叡「うんっ! 上出来!!」
榛名「敵味方も驚いていますね………」
金剛「私たち第一艦隊の注目度Upデース! 比叡や榛名たちのお陰ダヨ!」
比叡「そ、そんな〜! 金剛お姉さまの活躍だって!」
榛名「そうですよ!」
金剛「………良い妹たちばかりで……私は幸せ者デース!」
ーーー
比叡、榛名が撃った物は、『彩煙雷』という昼花火。 一発派手に音が鳴り、煙に赤色や黄色などの色が付く。
金剛が撃ったのは、同じく昼花火の『彩煙竜』なるもの。 破裂と共に落下傘が開き、落下傘の下には、煙を噴き出す火薬が吊り下げているのだ。
ーーー
金剛「これでFinish!? な訳無いデショ! 英国の『Guy Fawkes Day』のようにィ、華やかにドンドンと撃つネッ!」
比叡「はいっ! まっかせて下さいっ!!」
榛名「榛名! 全力で砲撃致します!」
ーーー
艦載機と花火の奇妙なコラボ。 現代なら完全にお祭りの様子だが、火薬も発明されているのか不明確な時代。 重装歩兵たちの心理負担もピークに達し、不満が少しずつ……露わになっていた。
◆◇◆
【 四面楚歌 の件 】
? 都城内 大広場 高台 にて ?
楊奉「皇后を背負え。 いいか……必ず最後まで俺に付いてこい!」
重装歩兵「────はっ!」
楊奉は……何皇后を配下の者に背負わせる。 楊奉に付き従う者は、僅か二人だけ。 一人は何皇后を背負い、一人は楊奉の指図に従うのみ。
何皇后の命は……どのみち既に無いだろう。 片手を斬られたショック、大量の流血……輸血や近代医術が全く確立していない時代に、天へ召される命を繋ぎ止める事など不可能。 それとも、救う術でもあるのだろうか?
その前に……楊奉の状態は『前門のタイガー、後門のバッファロー』の状態。
楊奉の目の前には、一刀と何進、そして長門、霧島、凪。
後方には、雷、電、アリゾナ、ビッグEの艦娘。 そして春蘭、恋、明命の恋姫が逃亡を許さぬと待ち構える。
皇女や桃香たちは桔梗や白蓮が護衛。 人質の手は……完全に封じられた。
絶対絶命の窮地……これは、今まで行った何皇后と楊奉の業の結果。 まさに───インガオホー
広場や高台周辺を見渡せば、楊奉の軍勢は殆ど劣勢。
艦載機や花火による士気の低下もあったが、恋姫たちの実力、艦娘の戦闘力の高さも兵士よりも遥かに上。 これらの相乗効果と人質解放、何進の味方表明により、急速に重装歩兵たちを鎮圧して行く。
ーーー
ーーー
秋蘭「フッ、如何に固い鎧に覆われようが、関節部分はどうしようもないだろう! 肩の関節を外し、私たちを敵に回した事を後悔させてやる!」
重装歩兵「う、うわぁぁぁ──『ゴキッ!』──ぎゃあああああっ!!」
ーーー
響「………タワーブリッジ!」ガキッ
重装歩兵「ぐ、ぐるしぃぃぃぃ───ッ!!」
暁「ちょっと、それって技が違うじゃない! 金剛さんが使うならまだしも……ハッ!?」
………
………
金剛「HEY、誰かぁ──呼びましたカァ!? ───あれェ?」
比叡「どうされたんですか……金剛お姉さま?」
榛名「誰も、金剛姉さまをお呼び立てしない筈ですが?」
金剛「………………誰かに呼ばれた気がするのデース?」
ーーー
霞「そないなヒョロヒョロでぇ、うちを斬れるって思ってんのか? あまい、あまいわ! そりゃあ────ッ!!」
重装歩兵「な、何だ!? 動け───ウワァアアアッッ!!」グルグルッ!
霞「オラオラオラァ──ッ! 華雄、そっちに飛ばすでぇ!!」
華雄「いつでも来い! 此方で捕まえている奴で迎え撃とう! ほらほらぁ、きびきびと走れぇ───ッ!」
重装歩兵「や、やめぇ────ッ!」グルグルッ!
霞が兵の片腕を取り、自分を中心に走らせ右回りの渦を描く。 華雄が左回りに動き、徐々に近付いて行く。 勿論、兵たちが抵抗しようが無理。
右回り、左回りに振り回されて、近付けば当然───衝突は必至。
重装歩兵「や、止めぇ!」
重装歩兵「うわぁぁぁ───ッ!」
──────ドゴォオオオンン!!
─────ぐわぁあああぁぁぁぁぁ!!
鎧姿の兵は、車の衝突の如きぶつかり……双方ともはじき飛ばされ気絶した。
華雄「鎧を着ている者同士がぶつかれば、幾ら外が固くても中の奴は痛めつけれる! これが、幾多の戦場を渡り歩いた百戦錬磨の私たち、洛陽で働くお前たちとの違いの差だ!」
霞「よしゃ! 次行くでぇ! 次ぃいいいッ!!」
華雄「………霞、途中で兵の腕を引いたな?」
霞「う〜ん? 華雄もなぁ! 月に泣かれたくないんやろ?」
華雄「当然だ。 如何なる時も君主の願いを優先とする。 それが武人だ!」
霞「にひひひぃ! 分かっとるやないか!」
ーーー
ーーー
現在……十数人の集団が散発的に抵抗しているのに過ぎない。 しかし、この様子なら直に鎮圧できるだろう。 第四艦隊も活躍している事だし。
第二艦隊は捕虜になった兵を監視。
捕縛された兵たちは、武器を捨て手を上げ、敵意が無い事を示して、一カ所に集合させられている。 その数、凡そ三千人。
しかし、第二艦隊(天龍、龍田)だけでは、さすがに監視は無理だ。
第一艦隊も合流して監視に入る予定だが、砲身がまだ熱いため、少し冷やしてからと。 第三艦隊も、艦載機の着艦を行った後に合流するとのこと。
そんな困った状態を見て、西涼勢が手伝いを申し込む!
月「御遣いさま方ばがりに、御手数を掛けられません。 私たちにもどうか……」
龍田「まぁ〜ありがとう! 本当に助かるわ〜!」
そんな訳で、月、詠、翠、蒲公英も参加して監視している。
ーーー
もう少し粘られるかと予想していたが、戦闘中に投降する者が多数現れたため、意外に早く収束できたからだったのが要因だった。
ーーー
楊奉「…………………」
一刀「楊奉………これで逃げる道は無い! 大人しく罪を償え!」
楊奉「……何進、あの女に言付けはないか? あれば伝えておいてやるぞ? まあ……お前の裏切りは確定だから、どんな言い訳も通じはしないがな」
何進「───『後の事は任せる。 私は私の責を果たすのみ』と。 元々の鬼灯の加わる集団を作り上げたのは私だ。 意見が合わなければ離反するのは当然。 誰か別の者が頭になるだろうが、弱体化は免れないだろうがな」
楊奉「ほう……これは驚いた。 お前も俺と似た関係か? 『同じ穴のラクーン』だったとはな………」
何進「ふん! 何皇后に味方する貴様とアイツ、皇女さまに力添えする私と一刀。 この時に別の関係へと変わったのだ!」
一刀「雷華……」
何進(雷華)「──言っておくが、今の言葉は貴様から伝えて貰うために語ったのではない。 お前は捕縛される身だ!」
楊奉「……………」
何進「だから、鬼灯は私の一挙一動、文字通り読唇術まで使い、その真意を測る筈だから語ったまでの事! 後は、何皇后の左手首を落とした事が、確実な証拠になるだろう。 これも……覚悟の上さ……」
楊奉「………くっくっくっ……流石だよ、北郷! どういう理由だか知らないが、あの何進までも誑すとは!」
一刀「……なんだか腑に落ちない言い草だな……」
楊奉「フッ……それ抜きにしても、俺を此処まで苦しめた男は初めてだよ。 褒めてもやるし、貴様が天の御遣いだという事も認めてやる。 だがな、俺は捕まる事なんて無理だぜ。 この……白波賊の楊奉はな………」
一刀「───貴様に逃れる術なんて無いんだぞ!? 現状を見てから物を言えよ! 配下の兵は、殆ど降参か捕縛。 仲間が高台を包囲している。 人質など卑怯な真似は、すべて封じ込めたんだ! それでも抵抗するのか?」
一刀の信頼する仲間が、分厚い包囲網を構築する。 相手が水鬼並の強さがある化け物なら確かに無理だろう。 しかし、楊奉は幾ら秀でていても人間は人間。 この包囲網から抜けられる訳は無い。
そう考えながら、用心深く対応する一刀であったが、楊奉の顔より笑みが消える事はなかった。
◆◇◆
【 一難去ってまた…… の件 】
? 洛陽 都城内 大広場 高台 にて ?
─────ザッ!
華琳「天の御遣い、北郷一刀よ! この広場の出入り口は、私たちが封鎖した! 猫の子一匹たりとも通らせなどしない!」
ーーー
春蘭「華琳さま!!」
明命「あう〜。 子猫さまだけは、通行許可して欲しいのです〜」
恋「………子犬も……」
ねね「だ、大丈夫です! 恋殿が迎えに行けば、通行許可ですぞ! まあ……こんな騒々しい場所に入り込むなんて……まず無いでしょうが……」
ーーー
一刀「君は………」
華琳「改めて紹介させて頂く……陳留刺史 曹孟徳。 荀文若、夏侯元譲の主と言えば分かると思われるが……」
一刀「──かり……」
華琳「────!」
一刀「いや、失敬。 貴女と似た人物を思い出して……つい呼び掛けそうになった。 貴女とは違うのだ、非礼をお詫びさせて頂く!」
華琳「……そう。 以後は気を付けて頂きたいわね。 その方や私に対しても、対象を間違えられるのは不快に感じるもの。 天の御遣いと言えど……礼をわきまえて貰わなければ………」
一刀「あぁ……肝に命じるよ。 申し訳ない……夢に出る女の子に……よく似ていたから………」
華琳「…………。 それよりも、何皇后と執金吾を速やかに処罰する事を願う! この私、曹孟徳が立会人を承ろう!」
劉辯「─────!」
劉協「姉上…………」
一刀「皇女さまの前で罪人を斬るか? 五倫に反するんじゃ……」
華琳「儒教の五倫の内、第一に尊ぶ物は君臣の義。 ここに居る諸侯が納得する事を行わなければ、漢王朝は見捨てられ落ちぶれるのみ。 国家体系を照らし合わせれば、どちらを優先するか分からない貴方ではない筈よ!」
一刀「しかし───」
何進「一刀……確かに曹孟徳の判断が正しい! このまま二人を残せば、後の禍根となる可能性もある。 一刀たちは手を出すな! この何進自ら、この罪人たちの首をはねて処刑してやろう!!」
楊奉「………………」
★☆☆
何進が剣を取り、例のイアイドウの構えを取る。 恐るべし殺気が楊奉に向けられた。 普通の者なら気絶しそうになりかねない。
これで楊奉の運命は定まってしまったのだ。 このまま何進がイアイドウを発すれば、楊奉の命など……風前の灯火!
何進「──何も言うことなど無いだろう。 潔く刑を受け入れろ──楊奉! キリステ───」
何進のイアイドウが発する間際、楊奉が呟く。
楊奉「格言に曰わく『泥棒がばれたら、家に火をつけろ』……良いコトワザだと思わないか? ………何進よ」
何進「何を──っ!?」
ボオッ!
ボオッ──────!
ボオッ────────!
ボオッボオッ──────!
急に広場の周囲の建物が燃え上がる! 広場の壁もまた然り! 火災が──突然に発生してのだ!
周囲の建物は木造だが、壁は石造。 しかも、かなりの速さで火が回り込み、全体に炎が包み込まれた!
一刀「油でも撒いて着火させたか! 早く何とかしないと!!」
ーーー
「どうしてぇ!?」
「ばかな──ッ!」
「「「 きゃあ──ッ!! 」」」
「なんだぁ!?」
「「「 うわぁぁぁぁ───ッ! 」」」
ーーー
周囲の恋姫、艦娘、兵士たちより悲鳴や絶叫が乱れ飛ぶ!!
何進「──貴様の仕業か!?」
楊奉「今頃分かったのか? 俺が漢王朝の執金吾だが、白波賊にも関与している。 密かに白波賊の配下を呼び入れ、イザという時に事を起こす。 少しの間でも目を欺ければ脱出する事など日常茶飯事! しかも、この火災───」
何進「────逃がさん!」
楊奉「………おっと、コレも食らっておきな!」シュッ!
──────ボンッ!!
楊奉が手に密かに隠していた『煙玉』を叩きつけた。 辺りは急速に白い煙に包まれて判断がつかない!
何進「────ちょこざいな!!」
一刀「雷華! 楊奉はどこに!?」
楊奉「───この火災、新皇帝への土産だ。 洛陽の民が、諸侯が……どう思うだろうかね? ───さて、ひとまずサラバだ! また会おう北郷、何進! それまで生きていてくれよ!! ハッハッハッハッ!!」
ーーー
白煙が晴れれば──楊奉と何皇后の姿は無い!
しかし、よく見ると……祭壇だった物が地面に散らばっている! そこには、隠され抜け道が開いていた! 何という用心深さ! 何という策!!
何進「────逃がしたか!」
何進が嘆くが無理もない。 逃がした魚はクジラ並みにでかいからである。
しかし、逃がした魚を追い掛ける暇もなかった。
ーーーーーー!!
ーーーーー!!
ーーーーーー!!
石壁に発生した炎は全体を覆い尽くす。 どうやら、石壁には油壺が幾つか仕込んであったらしい。 覆い尽くす前に、何かが割れる音、立ち上る炎が確認できた。 そもそも、石壁が焼けるワケがないのだから。
更に火勢は付近にある小屋等の建物、回りの樹木が燃やし始める。 これは、石は燃えないが熱を吸収し易く放出し易い。
つまり、四方から熱で焼かれる『石焼き芋状態』にされている。
三千人も広場に居る状況では、鎮火を待つ前に脱水症状、火傷等の熱に因る被害が増える事にもなる。 また、灼熱に晒されるため、苦痛や恐怖で混乱状態になりやすく、被害が拡大する可能性も高い!
一刀「───仕方がない! 今は命を救う方が大事だ! 曹孟徳殿、直ぐに中央付近に皆を集めて! 火勢より身を守るようにして下さい!」
華琳「───承知! それで、貴方はどうするの?」
一刀「………俺に考えがある!」
一刀より命じられた華琳は、直ぐに配下や諸侯に命じて、熱より身を守るための具体的な案を命じる。
・皇女、負傷者を優先的に中央へ移動。
・高台に置かれた祭祀道具を利用して灼熱より身を守らせる。
・将が前面に出て、率先して管理を行う。
しかし、これは応急処置!
時間が経てば───全員が命を失う最悪の事態になる!
つまり───早急な判断、決定的な打開策が必要!
ーーー
ーーー
華琳「───命じてきたわ!」
一刀「うん、ありがとう!」
華琳「───でも、この広場の門は、楊奉が逃走しないように、内側から鍵を閉ざしてあるわ。 火勢があのような状態では、近付くことさえ出来ない。いったいどうする───」
華琳が一刀に尋ねようとすると、一刀は自分の配下の装備を確認している。
ーーー
一刀「金剛! ────あの石壁を破壊できるか!?」
金剛「う〜ん、手元にFireworks(花火)しかないから……自信ないネ……」
ーーー
一刀「翔鶴、艦載機の発艦は?」
翔鶴「そうですね……火勢が収まれば可能かと………」
ーーー
一刀「天龍……って、何だ、その格好はぁ────!?」
天龍「好きでやってんじゃねぇ!」
ーーー
一刀「暁……その手拭いと水は………」
暁「う、うん。 誰かが勝手に使ったらしくて、一本に繋がっていたわよ。 水も少しは残っているし……」
ーーー
一刀「劉協皇女……お尋ねしたいが、この石壁の向こうに何か?」
劉協「そ、そちらは、近衛が鍛錬する練兵場があります! 広さもここと同じくらいに!」
ーーー
一刀「そうか……後、外に誰か居れば──『司令ぃ〜! 大丈夫ですか!? こちら雪風ですー!』──雪風か!? 今どこに居るんだ?」
雪風『この広場の外ですー! 暁さんに頼まれ、港湾棲姫さんに状況報告に出てたんですよー! いったい、これはどうしたんですか!?』
一刀「それなら、至急に頼みたい事がある! 広場の西側の壁へ水を掛けてくれ! 命じる箇所に集中して! そして、掛け終われば、俺の合図と共に、その場所へ砲弾を撃ち込んで貰いたいんだ!」
雪風『はい、わかりました!!』
ーーー
話が終わった後、華琳は慌てて問い掛ける!
諸侯の動きは、自分の采配に任されているようなもの。
これにより……自分の名声が高まるか地に墜ちるかの境目だ。
それに、御遣い『北郷一刀』が、この難局をどう導くか見てみたい。
今後……敵になるか味方になるか……見極めるため。
華琳「な、何をする気なの!?」
一刀「────城壁を破壊する! 破壊して皆で脱出するんだ!!」
ーーーーーーーー
ーーーーーー
あとがき
最後まで読んでいただき……ありがとうございます!
話が……また続いちゃった。
きりの良い数字で終わらせる予定だったのに。
今回……オマケである文章を作成しました。 内容は本文の一部分、飛ばしても支障は全くありません。
では、何故載せるのか?
それは……文体を他の言葉に変えたからです。
次回の更新は、一週間以上になるかも………予定では。
義輝記を待っている方、すいません! 8月になりますが、8月には必ず出しますのでね! ごめんなさい!
◆◇◆
【 オマケ 忍殺語変換? の件 】
? 洛陽 都城内 大広場 高台 にて ?
何進が剣を取り、例のイアイドウの構えを取る。 恐るべし殺気が楊奉に向けられた。 普通の者なら失禁もやむを得ず……実際コワイ。
これで楊奉の運命は定まってしまったのだ。 このまま何進がイアイドウを発すれば、楊奉の命など……ロウソク・ビフォア・ザ・ウィンド! おおっ、ナムアミダブツ! 何進の剣に──慈悲は無い!!
何進「──ハイクを詠む必要も無し! 潔く刑を受け入れろ! 楊奉=サン! キリステ───」
サツバツ! 何進のイアイドウが発する間際、楊奉が呟く。
楊奉「格言に曰わく『泥棒がばれたら、家に火をつけろ』……良いコトワザだと思わないか? ………何進=サン」
何進「ヌウゥ──ッ!?」
───────!
──────!
────────!
──────!
おおっ……ゴウランガ! 広場の周囲のタカイトウが燃え上がる! 広場の壁もまた然り! 楊奉のカトン・ジツが、いつの間にか発動していた!
周囲の建物は木造だが、壁は石造。 しかも、キテレツ的速さで火が回り込み、全体に炎が包み込まれた!
一刀「油でも撒いて着火させたか! 早く何とかしないと!!」
「ワッザッ!?」
「バカナ──ッ!」
「「「 ンアァ──ッ!! 」」」
「アナヤ!?」
「「「 アイエエエエエッ!! 」」」
周囲の恋姫、艦娘、兵士たちより悲鳴や絶叫のコトダマが乱れ飛ぶ!!
楊奉「俺がカン・オウチョウ・クランの執金吾だが、シラナミ・クランにも属している。 密かにシラナミ・クランの配下を呼び入れ、イザという時に事を起こす。 これくらいチャメシ・インシデントだ! しかも、この火災──」
何進「────逃がさん!」
楊奉「………それと、コレも食らえ! イヤ──ッ!」シュッ!
──────ボンッ!!
楊奉が手に密かに隠していた『スモーク・ボール』を叩きつけた。 辺りは急速にホワイトスモークに包まれて判断がつかない! タツジン!
何進「────ブッダ!!」
一刀「何進! 楊奉はどこに!?」
楊奉「───この火災、新皇帝への土産だ。 洛陽の民が、諸侯が……どう思うだろうかね? ───ひとまずサラバだ! また会おう北郷、何進! それまでオタッシャデー!! ハッハッハッハッ!!」
ーーー
ホワイトスモークが晴れれば──楊奉と何皇后の姿は無い! フシギ!
しかし、よく見ると……祭壇めいた物が地面に散らばる! そこには、隠されゲートが開いていた! 何という用心深さ! 何というワザマエ!!
何進「────ヤンナルナ!」
何進が嘆くが無理もない。 実際逃がした魚はクジラ並みにでかいからである。
ーーーー
ニュービーが書いてると、やはり……おかしい。
説明 | ||
また……続いてしまった。 義輝記お待ちの方、8月に持ち越しになります。 ごめんなさいね。 | ||
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コメント | ||
雪風提督 コメントありがとうございます! 退路と兵站は必ず必要になります。 まあ……泥棒ですからね……(いた) いざと言う時の退路確保・・これ必須なり・・そして、若干の心理戦が得意かな・・。(雪風) 天龍焔提督 コメントありがとうございます! 武蔵「気持ちは分かるが……コイツに何かあれば、私の出番が更に遅れてしまう! 不本意だが、この大和型二番艦、武蔵が相手をしよう!! 撃ち方……始めっ!!!」(いた) スネーク提督 コメントありがとうございます! 一刀たちも何進の正体は知ってますし……真名重点なので。 それは多分……久秀に似た何かでしょう。 久秀ならばチャに一服盛る手口を使い……『ミ・ツ・ケ・タ・!』──ハッ!? (いた) 本編で既に楊奉が『同じ穴のラクーン』って言っちゃってるけどいいのか?ところでさっきから久秀が隣で刀研ぎながら怪しい笑い声出してるんだけどこれは止めなくても大丈夫なのかな?(スネーク) mokiti1976-2010提督 コメントありがとうございます! ダメですよ、地和ちゃん。 楊奉って結構重要ですよ? オリキャラで後ろから一番目! まぁ……冗談はさておき、本当に重要キャラですので逃がしましたw 『白波賊って黄巾だよ』とも言われていたそうです。 だから、当然……地和ちゃんにも関わりありますよ?(いた) 『オマケなんか書いてる暇があるだったらさっさとちぃ達の出番を書きなさいよ!!そんなにあの楊奉とかいうおっさんの方が大切なわけ!?』とかいうお言葉が私の脳内に響いてまいりました…こんな幻聴が聞こえるなんて私は何処か病んでしまったのか?とりあえず続きを楽しみにしています…義輝記もね。(mokiti1976-2010) |
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