魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第百四十三話 ピンチ!(勇紀&ツインファントム編)
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 どもどもー。

 ビルの上階からツインファントムと共に強制転移させられた長谷川勇紀です。

 現在俺達3人は地球とは別の次元世界にいます。

 見渡す限り、地平線しか見えない荒野にポツンと佇む俺達3人。

 

 「……ここ、どこ?」

 

 「私達、ビルの中にいましたよね?」

 

 困惑と動揺が入り混じったヴァイオレット姉妹を他所に、俺はこの世界が何処なのか調べる。

 

 「……って、言っても手掛かりになる物が何も無いしなぁ……」

 

 ここが管理世界なのか管理外世界なのかすら分からない。

 

 「ユウ君、半径5キロメートル以内に他の人の反応は無いよ」

 

 「そっか…」

 

 ダイダロスには広域探知をしてもらっていたが、反応は無いらしい。

 荒野が広くて人間が住んでいる範囲までまだ距離があるのか、そもそも無人世界なのか…。

 いずれにせよ…

 

 「ダイダロス、今すぐ地球に戻るのは無理か?」

 

 「この世界の座標が正確に把握できないと無理かな」

 

 やっぱりねぇ…。

 今回の転移がランダム転移なのか指定転移なのか知らんが、少なくとも((7つの聖遺物|セブンアミュレット))を俺達に取り返されたらマズいと思う奴が仕掛けたって事ぐらいは分かる。

 フェイトと戦ってるであろう魔導師の仕業だろうか?

 …その可能性は低いか。もしあの女魔導師の仕業ならあそこで足止めなんてする必要が無い。フェイトも俺達と一緒に飛ばした方が一気に邪魔者を排除できて効率が良いのだから。

 …ならあの女魔導師とも違う新たな勢力と考えるのが妥当だな。

 

 「…あの状況で遥達を先に進ませたのは正解だったな」

 

 でなければあの場にいた全員が巻き込まれて、ここに飛ばされていただろう。

 そうなりゃ((7つの聖遺物|セブンアミュレット))を奪い返すのも無理かもしれないし、何よりフェイトが孤立する。

 流石にフェイト1人っていうのは厳しいだろう。

 

 「(美由希さん辺りは呼んでおいた方が良かったかな…)」

 

 後悔した所で今更だけどな。

 

 クイクイ

 

 「ん?」

 

 バリアジャケットの裾を引っ張られたので振り返ったら、ナインがいた。

 

 「長谷川は何が起きたのか分かってるの?」

 

 「んー…俺達が強制転移で何処かに飛ばされたって事ぐらいはな。ここが何処かは見当もつかん」

 

 「強制転移?」

 

 「うむ」

 

 2人に現状を説明しながら、これからの行動について考える。

 ジッとこの辺で動かずにするべきか、2人を連れて移動するか…。

 ……って、考えるまでも無いか。

 今、最優先ですべき事は…

 

 「((いい加減出て来たらどうなんだ|・・・・・・・・・・・・・・))?」

 

 ダイダロスの探知で引っ掛からなかったのは気になるが、俺は確かに視線を感じていた。テスラともナインとも違う第三者の視線を。

 

 「カカカカカカ…」

 

 「「っ!?」」

 

 姿は見えども、笑い声が周囲に響く。

 

 「コイツぁ驚いたぜ。俺様が潜んでいる事に気付きやがるとはなぁ」

 

 ビキッ!

 

 俺とヴァイオレット姉妹の位置から少し離れた場所の地面に亀裂が入り

 

 ボコボコボコ

 

 ((何かが這い上がってきた|・・・・・・・・・・・))。

 

 「クカカカカカカ。不意を突いてテメエ等を始末してやろうかと思っていたが上手くいかねえもんだなぁ」

 

 「……………………」

 

 声の主が姿を現したのだが、ソイツがあまりにも予想外過ぎた。

 俺は声を出せず、口をパクパクとさせていた。

 

 「な……何なんですかアレ……」

 

 「((炎と氷がくっ付いてる|・・・・・・・・・・))」

 

 テスラとナインも相手の威圧感にやや圧され気味なのが声色から窺える。

 そ・れ・よ・り・も・だ!!

 

 「(こ…コイツまでこの世界に存在してたのか!?)」

 

 未だに高笑いしてる相手を見て、俺は内心ゴネていた。

 

 「そーそー、テメエの事は知ってるぜ。管理局でも有名なエース様の1人らしいじゃねえか」

 

 相手は突然俺に指先を指してきた。

 

 「て事は、だ。テメエの首をここで取りゃあ俺様の名と人生に箔が付くってもんだぜ。ドクターの命令で((7つの聖遺物|セブンアミュレット))を手に入れる前に邪魔な奴等をここへ転移させ、消してやろうと思って罠を仕掛けた訳だが、掛かったのがたった3人っていうのが残念でならんがなぁ」

 

 「(何だと)?」

 

 ここへ俺達を転移させたのはコイツだってのか?

 

 「まあ、他の連中も後で呼び寄せて始末すれば問題無いけどなぁ、ギャハハハハ」

 

 「む……」

 

 それは聞き逃せん事だな。

 正直、地球にいるツインエンジェルやフェイトではコイツの相手をするのには荷が重いと思われる。

 傍に居るツインファントムもだ。

 俺は静かにクリュサオルを発現させ構えを取る。

 

 「おーおーおーおー!やる気満々じゃねえか。良いねえ良いねえ。活きの良い獲物は嫌いじゃねえぜ」

 

 「……やるしか選択肢無いだろ?どう見てもタダで見逃してくれそうにないし」

 

 「そりゃそうだ」

 

 「それに……」

 

 さっきのコイツの台詞に問い詰めなきゃいけなかったのもあった。

 『ドクター』とやらが((7つの聖遺物|セブンアミュレット))を狙ってる理由とかな。

 

 「テスラ、ナイン。お前等下がってろ」

 

 「下がってろって…お1人で戦うつもりですか?」

 

 だって、君等ああいう怪物なんかと戦った経験って無いでしょ?

 俺はあるんだよ。ホテルベイシティでのブラド戦とかね。

 

 「カカカカカ。この俺を1人で相手するたぁ、言ってくれるじゃねーか」

 

 「一応((地上|おか))の((エース|・・・))の1人なんでね。これぐらいの事は言っておかないと示しがつかないんだ」

 

 既にお互いが臨戦態勢の中、俺の左右に人影が並ぶ。

 確認するまでもない。テスラとナインだ。

 何故に参戦しようとしてるべさ?

 

 「3人で協力すれば早く倒せる」

 

 「怪物と戦った事は確かに無いですから、ここで経験しておこうかと」

 

 2人共戦意は充分ある様だ。

 さっきまでは威圧感の前にやや萎縮気味だったのに……。

 俺の中でツインファントムへの評価がちょい変わった。

 

 「…本当にアイツと戦う気?」

 

 念のため確認しておく。

 分かりきってはいた事だが、2人共迷う素振りを見せずハッキリと頷いた。

 

 「(…これ以上、言っても引かないだろうなぁ)」

 

 なら俺が2人をサポートしつつ攻撃するっていうのが基本戦術になるのかねぇ。

 本当は俺が1人で戦って、テスラとナインには自分の身を守る事のみに集中してくれる方が良かったんだが。

 

 「何だ何だぁ?結局3人で俺様と戦うってかぁ?」

 

 「ま、そういう事だ。悪く思わんでくれよ」

 

 「思う訳ねえよ。1人で来ようが3人で来ようがテメエ等が俺様に殺される事に変わりは無えからなぁ」

 

 うわー……。

 コッチを見る目が完全に獲物を捉えた狩人の様になっている。

 明らかに『逃げる』という選択肢を選んでも逃がしてくれないのが丸分かりだ。逃げるつもりなんざ無いけどさ。

 テスラはパチパチと帯電し始め、ナインも剣を構える。

 

 「準備は万端のようだなぁ。なら始めようぜぇ!!!」

 

 仕掛けてきたのは向こうからだった。

 火球を複数発放ってきたのでテスラ、ナインは左右に回避し、俺は正面からクリュサオルで火球を叩き落す。

 

 「カカカ。挨拶程度の攻撃が当たる訳ねえか」

 

 「当たり前だろ!」

 

 「ま、こんな攻撃をまともに食らう様な雑魚にゃ、用は無えからな」

 

 続いて、奴は魔力で作り上げた氷柱を先程の火球同様に複数発放つ。今度は俺だけに攻撃を集中させて。

 

 「炎戒……そして火柱!!」

 

 

 自身の周囲に炎を展開する『炎戒』。その炎戒の火力を更に高めて垂直上に炎の柱を作る『火柱』。

 氷柱による攻撃は俺に届く前に俺が展開した炎にぶつかり、一瞬で蒸発した。

 

 「クカカ、中々活きの良い炎を扱うじゃねえか」

 

 「このぐらい、俺にとっては((挨拶程度|・・・・))の威力なんだがな」

 

 「なら見せてみろよ。テメエの扱う炎の本当の威力ってヤツをよぉ」

 

 「見せても良いけど…」

 

 コイツから目を逸らさず告げる。

 

 「((俺だけ|・・・))に気を取られていて良いのか?」

 

 俺と怪物の僅かな攻防の合間に

 

 「やあああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 

 ナインが怪物の真横から接近し、剣で一閃!!

 

 「クカアアアァァァァッッッッ!!!!!」

 

 ナインの一撃は怪物を両断し、上半身と下半身がお別れしていた。

 普通の生物ならこれで血がブシュー、と噴き出して生命活動を停止させていただろう。そう……((普通の生物なら|・・・・・・・))。

 

 ガガガガガガガガガガ!!!!!

 

 だが、目の前の怪物はひとりでに立ち上がった下半身と、分断された上半身を合わせ再生していく。

 

 「っ!!」

 

 この光景にはナインも目を見開いていた。

 

 「クカカカ、残念だったなぁ。並の生物ならコレで片がついたんだろうが、生憎と俺様は例外でなぁ」

 

 ま、両断して倒せるなら苦労は無いわな。

 

 「この程度で死ぬようじゃあ、アルハザードの禁呪法で俺様を生み出してくれたドクターに申し訳が立たねえんだ……よっ!!!」

 

 ナインに向けて拳を振り下ろそうとする怪物だが、怪物の背後へ電撃が迫る。

 

 「グウウゥゥゥ!!!」

 

 無防備な背中へ電撃を叩き込まれ、呻く怪物。

 

 「なっちゃん!!」

 

 「……ん……」

 

 テスラの呼び掛けに反応したナインは小さく頷いて怪物と距離を取る。

 流石双子。あれだけで相方の意思を理解出来るんだねぇ。

 

 「…やってくれるじゃねえか。クソ((女|アマ))共が」

 

 「だから言ってやったのに」

 

 『俺だけに気を取られていて良いのか?』って。

 もっとも、テスラの電撃もコイツには大して効いてないみたいだが。

 

 「(うーむ…)」

 

 亮太やルーテシアの((自然|ロギア))系の身体とは違い、ダメージは通るものの致命傷には至らないってのがコイツの多少の強みだな。

 コイツの心臓とも言える『((核|コア))』に攻撃を叩き込まないとコッチが疲弊していくだけだ。

 

 「(ていうかさっきアイツ、『アルハザードの禁呪法』とか言ってなかったか?)」

 

 マジか、としか言い様が無い。

 

 「俺様を前にして考え事とは余裕だなオラァ!」

 

 俺の眼前まで接近し、蹴りを放ってくるが楽々躱し

 

 「ふっ!!」

 

 クリュサオルで斬り上げる様に下から一太刀!!

 

 「ぬぐあっ!!」

 

 怪物の片腕を切断する事に成功するが

 

 「カアアアァァァァ!!!」

 

 当然ながらすぐに腕は再生される。

 

 「クカカカ。無駄だ無駄だぁ!!」

 

 「んじゃコイツはどうだ?」

 

 ゼロ距離からのヘパイストスによる砲撃。

 ヘパイストスは瞬く間に怪物を呑み込んでいく。

 避ける暇すら与えなかったが、

 

 「残念だったなぁ」

 

 怪物は健在だった。

 『((核|コア))』ごと消し飛ばす威力には至らなかったって事か。

 

 「一瞬ヒヤリとしたが、このフレイザード様を倒すには威力不足だぜ」

 

 ……ようやく自分の名を名乗った怪物。

 その招待は知る人ぞ知る『ダイの大冒険』でお馴染みの氷炎将軍さんだ。

 そんなモンスターとこの『リリカルなのは』の世界で出会うとは誰が想像出来ようか。

 てかアルハザードって実は『ダイの大冒険』の世界じゃないだろうな?

 もしそうなら嘗てプレシアさんが求めた死者を甦らせる秘術ってザオラル、ザオリク、メガザルみたいな呪文の事だったりして。

 

 「(…帰ったらジェレミアに聞いてみよう)」

 

 出来れば魔法、呪法関連について。

 

 「テメエ、確か名前は長谷川勇紀とか言ったっけなぁ?」

 

 「あん?」

 

 「コイツァ確かテメエの技の1つだったよなぁ?」

 

 フレイザードの5本の指先に小さな火が灯る。

 違います。それ、元々は原作のアンタの技です。俺が編み出した技じゃないんです。

 ……って、呆けてる場合じゃねえ!!今の俺とフレイザードの距離はほぼゼロ距離だ。

 

 「テメエ自身の技であの世に逝きやがれ!!((五指爆炎弾|フィンガー・フレア・ボムズ))!!!」

 

 「うおおぉぉぉっっ!!!」

 

 攻撃を避ける事叶わず、全ての火球が俺に直撃する。

 命中した直後、火球は業火へと変わり、俺の全身を包み込む。

 

 「ぬわーーーーーーっ!!!!」

 

 火が、火がああぁぁぁ〜〜〜〜〜っっ!!!!

 俺は全く姿勢を変えず、声を大きく上げる。

 

 「「長谷川君!?(長谷川!?)」」

 

 テスラとナインの悲鳴染みた叫び声と

 

 「ギャハハハハ!!!どうよ?ゼロ距離から自分の技でやられた気分はよぉ!」

 

 フレイザードの嘲笑が耳に届く。

 火達磨になりつつも俺は一歩も動かず、火が消え去るのを待つ。

 徐々に火が勢いを弱め、消えていく。

 

 「ぬわーーーーー……って、効いてへんわーーーーーーーーい!!!!!!」

 

 「何いっ!?」

 

 大きく目を見開いたフレイザードの顔が目に映る。

 そりゃそうだろう。悲鳴を上げていた((対象|ターゲット))が実は無傷だったのだ。

 

 「(ま、相手が攻撃してくるまで時間があったからな)」

 

 ((鋼鉄乙女|アイアンメイデン))を使う余裕は充分だった訳だ。

 ちなみにいかにもって感じで叫んだのは単にパパスごっこがしたかったという理由である。

 

 「ちっ!」

 

 舌打ちして俺から距離を取ろうとするフレイザードだが、奴の両足にバインドを掛けて動きを封じる。

 クリュサオルを仕舞い、フレイザードの懐に飛び込んで屈む。

 拳を握って腰元にまで引き、強化の魔法と武装色の覇気を纏わせて

 

 「昇竜拳!!!」

 

 拳を上げるのと同時に飛び上がる。

 

 「がはっ!」

 

 俺の拳は正確にフレイザードの顎を捉え、そのままヤツを真上に吹き飛ばす。

 地面に着地する俺と、重力に引かれて落下し地面に背中を強く打ちつけるフレイザード。

 すぐに起き上がって攻撃してくるかもしれないので、ヤツの様子を窺っているとテスラとナインが側に寄って来た。

 

 「長谷川君、だ、大丈夫なんですか!?」

 

 「俺っちはピンピンしてますが?」

 

 「でも火達磨になった時に悲鳴上げてた」

 

 「相手の油断を誘うための演技だよ演技」

 

 『パパスごっこをしたかったんだー』と馬鹿正直に言えば怒られそうなので誤魔化しておく。パパスごっこで通じるかは疑問だが。

 

 「クワアアァァァァッッッ!!!!!!!!」

 

 雄叫びと共に勢い良く立ち上がるフレイザード。

 

 「や、やってくれるじゃねえか!!!今の一撃は効いたぜ」

 

 昇竜拳は思いきり顎を捉えたからなぁ。ついでに脳をシェイクされた影響なのかフレイザードは直立出来ずにいる。

 

 「ヒャハハ。こりゃ力を出し惜しみしてたら負けちまうかもしれねぇ。少し早ぇが俺様は((切り札|・・・))を切らせて貰うぜ」

 

 切り札……。

 

 「(もしかしてもしかしなくても((アレ|・・))だよな…)」

 

 だとしたらマズいかもしれない。

 ヤツと対峙した当初から((核|コア))の位置は見聞色の覇気で把握している。あそこまで邪悪な意思が強いと間違い様が無い。

 だからこそ俺は空裂斬や虚空閃が使えなくても倒せる自信があるのだ。

 すかさず俺はアポロンを放つための魔力集束に入ろうとするが

 

 ガシイッ!!×3

 

 「んなっ!!?」

 

 「「きゃっ!!?」」

 

 構えを取ろうとした俺と、傍に居たテスラ、ナインが同時に拘束される。

 バインドだと!?

 

 「クカカカ。アルハザードの禁呪法で生み出された俺様が近代的な魔法を使えないと思っていたか?残念だったなぁ。なあに、すぐ済むから邪魔せずに見ていやがれ」

 

 クソ!!流石にバインドを使うなんて想定外も良い所だ。

 だけど

 

 「((唯我独尊|オンリーワンフラワー))」

 

 すぐに俺は自分とテスラ、ナインへのバインドを解除する。

 しかしこの一瞬でも時間を作れたのがフレイザードには充分だったのだろう。

 

 「見るがいい。これが俺様の必勝戦術よ!!」

 

 フレイザードがパチンと指を鳴らすと空間が僅かに歪み、次の瞬間には

 

 「アレ……何ですか?」

 

 「炎と氷の………柱?」

 

 フレイザードを中心にして、左右には燃え盛る炎の柱と凍てつく様な氷の柱が現れていた。

 ちょっと待て!!いくら何でも一瞬で作れるのか!?

 

 「ユウ君、あの2つの柱が現れる直前だけど未知の((術式|タイプ))の魔力の波長を感知したよ」

 

 未知の((術式|タイプ))だと?

 ダイダロスの報告に俺は眉を顰める。

 

 「カカカ。そのインテリジェントデバイスが知らねえのも無理は無え。テメエ等がこの世界に転移してくるよりも前にこの『炎魔塔』と『氷魔塔』に俺様がアルハザードの術式を用いた幻術魔法と認識阻害の複合式で今の今まで隠していたんだからなぁ」

 

 ちっ……そういう事か。

 ダイダロスにはミッド式、近代及び古代ベルカ式の魔法や術式に対してはそれなりの((記録|データ))があるが、アルハザードの術式となれば話は別だ。

 空間が歪んだのもその複合式魔法を解除したという意味の現れでもあるんだな。

 

 「(マジで帰ったらジェレミアにアルハザードについて教授して貰うか)」

 

 そう思いながらも、俺は現状について『時既に遅し』と認めざるを得なかった。

 

 「さあ!!!存分にその身で味わいな!!これが『氷炎結界呪法』だーーーーーーーーっっっ!!!!!」

 

 両手を大きく広げて、ヤツの((核|コア))から放出される魔力に作用して『炎魔塔』と『氷魔塔』が一際強く輝いた次の瞬間には辺り一帯を覆う結界が張られていた。

 

 「さあ、第2ラウンドの開始だぜぇ」

 

 ニタニタと笑いながら告げるフレイザード。

 

 「何をしたのか知らないけど…」

 

 グッと剣を強く握りしめたナインが再びフレイザードに仕掛ける。

 

 「ククク」

 

 攻撃を避ける素振りも防御する姿勢も見せず、棒立ちのままフレイザードはナインの一閃を受け入れる。

 上段から斬り付けられた結果

 

 ガンッ!!!

 

 フレイザードを斬れる事は無く、ただ鈍い音が周囲に響いただけだった。

 

 「え……?」

 

 先程とは違う結果、僅かに呆然とするナイン。

 その姿をフレイザードは見逃さず

 

 「オラアッ!!!!」

 

 ナインの腹部に重い一撃を叩き込む。

 

 「げほっ!」

 

 軽々と吹き飛ばされるナイン。

 当然この光景を見てテスラが黙っている訳が無い。

 

 「なっちゃん!?よくもなっちゃんを!!」

 

 両手のひらをフレイザードに向けて翳すが

 

 「電撃が……出ない!?」

 

 自分の能力が発現しない事に驚愕している。

 

 「何で?さっきまでは……まさか!?」

 

 「ククク、どうやらルールが呑み込めてきたみたいだなぁ」

 

 「この結界内にいる以上、俺達の能力が著しく制限される……って、トコなんだろ?」

 

 「そうよ。この『氷炎結界呪法』こそが俺様の切り札の1つにして必勝の戦術を担う結界よ。この結界内にいる奴は例外無く力を制限され、レアスキルの行使は完全に封じられるのよ」

 

 …ヤツの言ってる事は((本当|マジ))みたいだ。

 ((天火布武|テンマオウ))で炎を出そうとしてるのに、出てこない。

 レアスキルまで封じる氷炎結界呪法とか……。

 やってくれるねアイタタタ。

 

 「結界の外に出れたらこの束縛からも解放されるが、コイツァ広範囲に渡って展開されているからよ。結界の外まで逃げるなんて考えは捨てた方が良いと思うぜ」

 

 そう言うが素直に逃がしてくれるヤツじゃないだろう。

 フレイザードを警戒しながら視界に入っているナインの方を見る。

 丁度彼女は剣を杖代わりにしてゆっくりと立ち上がった所だった。

 

 「コホッ、コホッ…」

 

 腹部へのダメージが強烈だったのだろう。未だに咳き込んでいる。

 魔力も制限されてる現状でバリアジャケットが解除されていないのが幸いしてるな。生身であの一撃を受けてたらナインの体内の被害がヤバかったかもしれない。

 

 「(治療系の魔法も制限され、((修正天使|アップデイト))も封印されている以上、攻撃を受け続けたらキツいな)」

 

 極力攻撃は回避してどうしようも無いタイミングの場合は『鉄塊』でダメージの軽減を行う。ヴァイオレット姉妹は『鉄塊』が使える訳無いので回避のみという事になるが致し方無し。

 

 「(後はコチラの攻撃についてだが…)」

 

 どうしたもんかねぇ…。

 武装色の覇気で多少は攻撃力を上げられるけど、フレイザードの((核|コア))がある位置を貫けるまでには多分至らないな…。

 弾岩爆花散でも使ってくれたらなぁ。

 氷炎結界呪法が展開されてる以上、使ってくる事はないか。もっとフレイザードを追い詰めないと。

 

 「(てか炎魔塔と氷魔塔、どうやって壊すよ?)」

 

 『ダイの大冒険』原作ではヒュンケルとクロコダインの加勢によって2つの塔は壊され、結界は解けた。

 しかしここは地球とは違う世界のため、原作の様に『誰かが加勢に来て塔を破壊』なんて展開は期待出来ないだろう。

 せめて地球なら増援が来る可能性はあったのに。

 

 「クックック。どうだ?優位的な立場から一気に突き落とされた気分てのはよぉ」

 

 …癪に障るヤツだわぁ。

 氷炎結界呪法の効果で自分が絶対負ける事は無いとでも思ってるんだろう。

 ムカつく…超ムカつくが…

 

 「困った…マジで困った……」

 

 現状を打破出来る方法……炎魔塔と氷魔塔を俺達だけで破壊する方法がマジで思い浮かばない。

 コレ……どう考えてもピンチだよね………。

 

 

 

-2ページ-

 〜〜???視点〜〜

 

 「よっしゃお前等、準備は出来たか?」

 

 ここは『バスカービル武偵事務所』。

 その事務所に務めている武偵の遠山キンジ、神埼・H・アリア、星伽白雪、峰理子、レキ、そして私ことジャンヌ・ダルクの6人とレキが飼っている一匹のオオカミ、ハイマキは突然舞い込んできた依頼を引き受けたため、準備を行っていたのだが…

 

 「何でこんな時間から仕事しなきゃなんないのよ」

 

 「それにわざわざ全員で行く必要無いじゃん」

 

 アリアと理子は明らかにやる気が出ていない様子。

 とはいえ私もこの時間からの仕事はあまり気が乗らない。

 残業手当が出る訳でも無いし…

 

 「第一、私は今から新しい武器の手入れをしたいのよ」

 

 「私もこの前かった新作のゲームしなきゃいけないしぃ〜」

 

 「遠山、私もこれから昼に届いた服の試着をせねばならんのだ」

 

 アリア、理子だけでなく私も個人的な私用があって忙しいのだ。

 

 「……………………」

 

 遠山は仁王立ちしたまま無言になり目を瞑っている。

 私達の意見を聞いて一考でもしてるのだろう。

 しばしの沈黙が続いた後

 

 「ふ…………ふざけんなああぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!!」

 

 事務所内に遠山の大きな怒声が飛び交った。

 

 「「ぴいぃっ!!!」」

 

 突然の怒声に驚いたアリアと理子は小さく悲鳴を上げた。

 くうぅっ……耳が痛い。

 

 「テメエ等、ウチの現在の懐事情がどうなってんのか分かってんのか!?あぁ!?」

 

 「知らないわよ。私、資金を管理してる担当じゃないんだし」

 

 「ウチの資金管理してるのって雪ちゃんだよね」

 

 理子の言葉を聞いて私達の視線は遠山から白雪へ。

 

 「ハッキリ言ってウチの資金はカツカツだよ」

 

 「あぁ……カツカツだな。以前白雪に帳簿見せて貰ったから間違い無い。それもこれも……」

 

 遠山がジロリとアリア、理子、そして私の順に睨んできた。

 

 「お前等3人が私用で次々と下らん物を買ってるからなんだよ!!((事務所|バスカービル))名義で領収書切ってな!!」

 

 「らしいわよ理子。アンタ少しは自粛しなさいよ」

 

 「もうジャンヌったら。服なんていつでも買えるんだから偶には我慢を覚えようよ」

 

 「アリアよ。訓練と称して無駄に銃弾や武器を仕入れるのは控えてやれ。おかげで遠山が激怒してるではないか」

 

 「……3人共、少しも自分が悪いという結論には至らないんだね」

 

 む?白雪が何かつぶやく様に言った気が…

 

 「少しは俺や白雪の苦労を知れお前等!!自分の欲しい物を買わず、事務所の運営費を必死に絞り出すためやりくりしてる俺と白雪の苦労をな!!」

 

 「待ちなさいよキンジ。さっきからレキの名前は出てこないけど、レキはどうなのよ?」

 

 「レキはハイマキの餌代ぐらいしか要求してこねぇ。武器の弾薬もキチンと節約して使ってくれてるしな」

 

 遠山の視線の先にいるレキは部屋の隅で体育座りをし、片手でハイマキを撫で、もう片手でVサインを作り、コチラに向けていた。

 

 「つー訳だ。白雪とレキはともかくアリア、理子、ジャンヌの3人は強制参加だ。これで断るなら来月からお前等の給料は半分カットだからな!」

 

 「ちょ!?ふざけんじゃないわよ!!」

 

 「おーぼーだ!!おーぼーだ!!」

 

 「遠山!!いくらなんでもそれは越権行為だぞ!!」

 

 「やかましい!!」

 

 私達の抗議も意に介さず、遠山は勝手に話を進めていく。

 ひたすら異論を唱えていたアリアと理子、それに私だが最終的に遠山の

 

 「これ以上グダグダ言うなら俺は心を鬼にしてお前等をクビにする。事務所の運営は俺、白雪、レキで何とかすっから」

 

 などと言うクビ宣告を前にして私達は屈さざるを得なかった。

 今ここでクビになると住む場所が無くなってしまうからな。

 貯金も然程無いし、路頭に迷うのだけは勘弁だ。

 

 「んじゃあ、依頼の内容話すぞ」

 

 アリアも理子も渋々ながら耳を傾ける。

 遠山が語った依頼とはとある街で暴れてる化け物を退治するという内容だった。

 化け物の容姿はとんでもない巨漢だとか。

 何でも警察官だけでは歯が立たず、機動隊の投入や激しい銃撃戦でも傷一つ負わせられず、負傷者が量産されてるらしい。

 現場はこの街から結構遠い場所だが、遠山が親友の武藤に頼み、車で現地まで運んで貰う様になっているので今は車待ちという訳だ。

 

 「(しかし化け物か…)」

 

 私達全員で挑まなければいけない程の存在なのだろうか?

 今回は唐突に飛び込んできた依頼である上、現場からの情報が少な過ぎるため、判断がし辛い。

 …………ここで推測してもあまり意味は無いか。

 

 「(現場で、自分の目で見て確かめた方が手っ取り早い)」

 

 そう判断し、私も戦闘に赴く準備をし始めるのだった………。

 

 

 

 〜〜???視点終了〜〜

 

-3ページ-

 〜〜あとがき〜〜

 

 あー……どんどん更新速度が遅くなってしまって申し訳ないッス。

 けど、こんだけ暑い日が続くと何かやる気でないんですよねぇ。

 自分は夏嫌いなのでさっさと涼しくなってくれたらいいのに。

 

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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コメント
幾らキンジ達が優秀でも、鉄先輩相手は無理でしょうね。一体何人が気絶しないで済むんだろうか?(俊)
おぉう遂にフレイザード様のご登場(・・;)レアスキル封じってことは魔法は使えるはず・・・いけるはず・・・たぶん・・・きっと・・・(海平?)
鉄先輩を目にしたバスカービルのSAN値はマイナス何桁まで落ち込むことやら?そして鉄がSTKしている西条のアレっぷりに鉄の何乗のペースでSAN値ピンチ!(道産子国士)
分かります。やらなきゃと思うことがあってもついのびのびになったり…ご自愛下さい。(プロフェッサー.Y)
↓いや、フレイザードの付けてたメダルはバーンからの授与品だからフレイザード自身には関係ないですよ。フレイザードが自滅するのは体内に存在する核を破壊された時です。(俊)
フレイザードってメダル?みたいなの壊せば自滅しませんでしたっけ?(人吉善吉)
・・・・・・あの人ですか(アサシン)
このタイミングで勇紀がアバン流刀殺法を開眼すれば勝機はあるんですけどね。(俊)
・・・化け物認定ですか、鉄先輩。まあ、納得しますけどね!! それはともかく勇紀の相手はフレイザードっすか。これは如何対処したもんだろうか? 勇紀の方の援軍としてはユニゾンデバイスの二人が適切っぽいけど、如何合流するんだか。(俊)
先輩に退治依頼かよww(XXX)
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