真・恋姫†夢想 妖魔伝  7
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并州西地方 昼頃

 

張文「これが噂の山か?」

 

張文は噂がたっている山の麓まで来ていた。何人もの人が通った後が残されているのを見て、賊が潜んでいるのは間違いないだろうと確信した。賊がいるという噂があるにも関わらず、山を登るバカはさすがにいないだろう

 

張文「さて、足跡から察するに今のところ皆さんお出かけ中か・・・」

 

地面をよく観察すると山に入る足跡と、山を出る足跡があった。沢山ある新しい足跡の中でも、山を出ている方が多いことから、賊の一団がここを出たことが分かる

 

張文「んー、山は広いから自分で探すのは骨が折れるなぁ。仕方がない、帰って来るのを待つと「おい!」・・・ん?」

 

ヒゲ「てめぇ、ここで何してやがる!」

 

チビ「この山を泣く子も黙る俺たち白狼賊の根城だって知ってて来やがったのか!」

 

デク「い、命が、惜しければ、金目の物を、お、置いていけ!なんだな!」

 

張文「おや、ここのお仲間さんに見つかったか・・・それにしても、なんとまぁ、滑稽な組み合わせの三人だこと・・・」

 

ヒゲ「あぁん?なんだその態度は!?死にてぇならお望み通りにしてやろうじゃねぇか!チビ!デク!やっちまえ!」

 

二人「「おう(なんだな)!」」

 

まず張文に向かって動いたのは動きの速さに自信があるチビだった。右手に剣を持って間合いを詰め、頭上から張文の脳天めがけて振り下ろす

 

チビ「死ねぇ!」ブォン!

 

張文「おっと」パシッ

 

チビ「な!?」

 

張文は向かってくるチビに対して左に足を出し、次に右足を引くようにして身体を右回転させ、チビが剣を持つ右手の手首を左手で掴み、地面まで勢いよく振り下ろさせる

 

ガスッ

 

チビの剣は思い切り地面に突き刺さり、それを上から踏みつけることで抜けなくなった

 

チビ「クソッ抜けねえ!?」

 

張文「残念だったな」ストッ

 

チビ「ガハッ」ドスン

 

張文が首筋に放った手刀で、チビは意識を失った

 

デク「このやろぉ〜、なんだな!」ブンッ

 

張文「遅い遅い♪」スッ

 

今度はデクの横薙ぎを一歩下がって躱し、デクが振り切ったのを見計らって右前に右足を踏み込む。左腕を前からデクの首に回して、大外刈りの要領でデクを後ろに倒しながら後頭部を強打させ、彼の意識を刈り取った

 

デク「ぐぎゃ!」ズズン

 

あっという間に二人を倒され、残った男は腰が砕け、立てなくなってしまった

 

ヒゲ「ち、ちくしょう!何もんだてめぇ!?」

 

張文「ふん!貴様ら害獣共に名乗るほどでもないが、この字くらい聞いたことがあるはずだ。固蛇って字をな!」

 

ヒゲ「并州の隠密頭!?ちくしょう、厄介な奴に会っちまった!」

 

張文「さて、お前らの根城がこの山のどこら辺にあるのか教えてもらえねぇかなぁ?二度と山賊やらねぇってんなら今回はそれを教えてくれたら許してやるぞ?」

 

ヒゲ「ひぃっ、し、知らねぇ!知らねぇんだ!あのチビは白狼賊って言ったけど、俺たちは本当はただの三人組の空き巣みたいなことしかできねぇ盗賊なんだよ!」

 

張文「はぁ!?」

 

ヒゲ「白狼賊って言やぁビビッて言うこと聞いて逃げ出すかと思ってたんだよ!でもあんた向かってくるから、もうどうしようも・・なく・・・なっ・・て・・」

 

張文「てめぇ・・・騙しやがったのか・・・」ゴゴゴゴ・・・

 

ヒゲ「す、すまねぇ!何でもするから許してくれぇ!!」

 

張文「ほう、今何でもするって言ったな?」

 

ヒゲ「あ、ああ、何でもするよ!だから見逃してくれぇ!」

 

張文「・・・いいだろう、ならそこの二人を起こして連れてこい。それからやってもらうことを指示する」

 

ヒゲ「はいぃ!」

 

 

たたき起こされ、張文の正体と、これからのことをヒゲから聞いた二人とヒゲは、張文の前に整列した

 

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張文「いいか、これからお前たちには、もうしばらくしたら戻って来るであろう白狼賊のやつらに、仲間に入れてほしいと言って、賊の中に潜入してもらう。そしたら、噂を流してもらう」

 

チビ「噂・・・ですかい?」

 

デク「ど、どんな噂なんだな?」

 

張文「俺が白狼賊を探っている。それだけだ」

 

ヒゲ「それ・・・だけ?」

 

張文「あぁそうだ。ただし、ちゃんと仕切ってるやつらの耳に入るようにだ」

 

チビ「りょ、了解しやした」

 

デク「ま、任せてほしいんだな!」

 

張文「ん、それじゃ、やつらが帰って来るまで待機だ」

 

三人「「「おう!」」」

 

数刻後、白狼賊の一団が帰ってきた。手に入れた物をお互いに自慢し合いながら上機嫌で帰って来る

 

張文「・・・来たな。お前ら、しっかりやれよ?」

 

ヒゲ「任せてくれ!」

 

チビ「絶対成功させるぜ」

 

デク「が、頑張るんだな!」

 

三人は賊に近づいていき、自分たちを仲間に入れてほしいことを伝えた

 

頭「ほう、俺たちの仲間になりてぇのか、何か土産はあるんだろうなぁ?」

 

ヒゲ「あんたたちに情報をやる、というのはどうだ?」

 

頭「情報だと?」

 

ヒゲ「あの固蛇があんたたちを探してるって話だ」

 

頭「ほう・・・それは良い情報が聞けた。いいだろう、ついてこい」

 

三人は白狼賊に取り入ることに成功し、山を拠点まで案内されていった

 

張文「やるじゃねえか、それじゃ案内してもらいましょうかね」スッ

 

張文は拠点までの道のりを、ばれないように距離をあけてついていった

 

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山の中腹付近まで登って来ると、賊達は突然右の茂みに入っていった。それについていき、しばらくすると高い木々に囲まれて麓から巧妙に隠されている開けた場所に出た。山の斜面には洞窟と思われる大きな穴があり、賊達は見張りの二人と何かを話した後、中に入っていった

 

 

張文「ほ〜、よくこんな場所を見つけたもんだ。それに随分と広そうな洞窟だし、この中を見つからずに進むのは少し骨が折れるな」

 

張文はどう潜入するかを考えながらあたりを見回した

 

張文「ん?あれは・・・木箱?」

 

視界の中で一際存在感を放っていたもの、それは木箱・・・

 

しかも人一人が入れるほどの

 

張文「なぜだろう、俺の魂があの中に入れと叫んでいる・・・なんとも言えない使命感を感じる・・・」

 

張文は自分の魂の叫びに従って木箱の中に入ってみた。すると安心感に似たようなものを感じる。彼は後にこう語っていたという

 

「木箱をいかに使いこなすかが任務の成否を決定すると言っても過言ではないだろう」と・・・

 

張文は木箱をかぶり、見張りが別方向を向いている隙に近寄っていく

 

見張り1「おい、頭が言ってた固蛇って何者なんだ?」

 

見張り2「お前知らねえのか?この并州太守、丁原の懐刀で、隠密の天才だ。どんなところだろうと必ず潜入して情報を持ち帰る。しかも必ず単独でだぞ?武器も装備もほとんど持たず、現地調達で任務を成功させているらしい」

 

見張り1「とんでもない奴だな・・・だが隠密ならなんでそんなに有名になったんだ?」

 

見張り2「住民から何度も城に依頼がされていた任務があってな。それを調べるために女主人の屋敷に忍び込んだんだと。そこで情報を集めようと本を開いたら、そこには男同士の(自主規制)が描かれていたそうで、それを見て発狂したらしい。それで潜入がばれて危険な目にあったが、どうにか脱出したそうだ。その後数か月寝込み、仕事も事務ばかりしていたと聞くが、とうとう本業再開したようだな・・・」

 

張文(あの野郎せっかく忘れかけていたことを丁寧に説明して思い出させやがって・・・あとで石を括り付けて長江に沈めてやる・・・!!)

 

見張り1「そいつ・・・大変だったんだな」

 

張文(お前良い奴だな、聞いたからには同罪だが、殺るのは最後にしてy)

 

見張り1「でもざまぁねぇな、たかが本読んだくらいで(笑)」

 

張文(最後に殺ると言ったな、あれは嘘だ)

 

見張りは木箱が移動していることに気付かないまま話を終えて周りの巡回を始めた。張文は二人が別れた隙に入口までたどり着き、内部への潜入を開始した

 

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張文が入り込んだ洞窟の中は、意外に天井も高く、人が五人横に並んでも通れるほどだった。いくつにも分かれている道は、一定の間隔で篝火が焚かれている。

 

 

 

張文「さて、支道が多いがどう行けばいいのやら・・・お?」

 

入り組んだ道をどう進むか考えながらふと視線を下に落とすと、いくつも残されている足跡の中から、一つだけはっきりした足跡が目に留まった

 

張文「これは・・・まさかデクの足跡じゃないだろうな?」

 

比較的新しくて、さらにここまでくっきり残る足跡といえば、デクのもの以外に見当がつかない

 

張文「デクのやついい仕事するじゃないか。これを辿って行けばいいだろう」

 

張文はデクの足跡を頼りに支道を進んでいくと二つに分かれた道の一方から微かな足音が聞こえてきた。張文は急いで道の隅に寄り、木箱を被った

 

賊1「おい、聞いたか?最近并州の間者が俺たちのことを嗅ぎまわってるそうだ」

 

賊2「ああ、俺も聞いたよ。今日仲間になったあの三人からの話だろ?やばいやつに目をつけられちまったが、来るとわかってりゃ何も問題ないさ。道を固めて蟻一匹通さないようにしとけば大丈夫だろ」

 

賊1「それもそうだな。入り口で見張ってるやつらがしっかりしてりゃ大丈夫だな」

 

二人は話に夢中だったため、木箱に気付かず、そのまま横を通り過ぎようとする。渦中の侵入者がすぐそばにいるとも知らずに・・・

 

あまり敵を素通りさせておいては帰る際に面倒になると考えた張文は、音を出さずに素早く木箱から出て二人の背後に忍び寄る。

 

張文「間者ってのは見張りに気付かれず忍び込めるやつが名乗るものなんだぜ?」

 

賊1・2「!?」

 

まず一人目は首筋に手刀を叩き込んで意識を刈り取り地面に倒れさせる。もう一人は、左手で右襟を、右手で左袖をつかむ。左足を右前に出して敵の右足が前に出せなくしたところで自身の右側に引き倒し、頭から地面に叩きつけて気絶させた。

 

張文「さてこいつらを隠さなきゃならんが・・・こいつらが来た道に行ってみるか」

 

張文は二人が来た方向に二人を引きずりながら歩いていくと、広めの場所に出て中央に机があり、その上には丸められた地図と一冊の本が置かれていた

 

張文「地図の方は・・・ここら辺の地形と村の位置か。もう一冊の本は・・・これ艶本じゃねえか(ペラッ)・・・・・・・・・はっ!?いかんいかん、任務に集中しなければ!(一応持って行こう・・・)」

 

意識のない二人を部屋に捨て置き、張文は元の道へと戻った。足跡を追いながら道を進んでいくと他より質のいい扉を見つけ中を調べると、そこには大量の食料が置かれていた

 

張文「食料か・・・それじゃ、殲滅戦の前に盛大にお腹壊してもらおうか(ニヤリ)」

 

張文は食料庫内の3分の1ほどの食べ物にちょっとした細工を施し、食料庫をあとにした。これで任務は達成のはずだが、まだやることが残っていた。今回協力してくれたあの三人をここから連れ出してやらねばならない

 

 

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それからは足跡をたどりながら奥へ進み、敵を見つければやり過ごすか気絶させたり眠らせたりして物陰に隠しておくかしながら、ついに一つの扉に突き当たった。耳をひそめてみると、中から聞こえるのは四人の声、どうやらあの三人ともう一人は頭の声のようだが、酒を飲みながらで宴会でもしているのか、呂律が回っていない

 

張文「三人とも無事みたいだな・・・賊の頭が一人でいるならとっとと眠らせてしまおうか」

 

張文は吹き矢を持ち、睡眠針を中に押し込む。声の聞こえる方向から大体の位置を割り出し、一気に扉を開けて狙いをつけ、渾身の力で吹いた

 

バタン!

 

頭「なんd(ドスッ)ぐ・・・」バタン

 

頭「zzzzzz」

 

三人「「「アニキ!」」」

 

張文「よーしお前ら、よくやってくれたな。ここから出るぞ」

 

三人「「「はい!」」」

 

この後、三人は仲間だと思われていることを活かして堂々と外に逃げ、張文は終始木箱をかぶった状態で後を付いていくことで外に出た。もちろん、見張りの二人への制裁は忘れずに・・・

 

 

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あとがき

 

脱出するとこバッサリカットです、はい。

張文には固蛇という字を付けました。えぇ、元が誰なのかはすぐに分かると思いますw

最初は真名にしようかとも考えたんですが自分の真名が知れ渡ってると大変ですから無理やり字と言うことに。いつもの三人組に名乗るシーンは下手な時代劇みたいになってますが自分にはこの演出が限界でしたw

 

次回は張文と三人が脱出したあとの話と、家に戻ってからの話になると思います。

それではまた次回でノシ

 

 

 

 

説明
もはや半年周期の投稿なんじゃないかと思われてる気もしますが違うんです
ただの不定期投稿なんですw
今回は潜入のお話ですが、うまく書けてないのが自分でもよく分かりますw
それでもよければどうぞ
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コメント
アーマイルさん>ちょくちょく入っていきますよ。そういえばタグにメタルギア入れ忘れたけどまぁいいかw(スネーク)
黒鉄 刃さん>ほら、商隊襲って奪ったりとかさ(震え声)(スネーク)
メタルギアが入ってる?(アーマイル)
この外史では紙は比較的手に入りやすいのか(震え声)(黒鉄 刃)
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