IS?英雄束ねし者? 5話『クラス代表決定』 |
「……カッコイイ……」
アリーナの観客席……その一角で一組の友達に誘われて観戦に来ていたとある少女が、四季のヴレイブの戦いを見てそう呟いていた。
そう遠くない未来に四季と会合する相手だが、彼女の運命と交わるまでまだ暫くの時間を要するのだった。
クラス代表決定戦……四季が全勝と言う結果を叩き出した試合の翌日、
「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あっ、一繋がりでいい感じですね!」
副担任の真耶の言葉に拍手が響く。当然ながら四季と秋八もその拍手に加わっている。
「先生、質問です」
一夏が挙手する。
「はい、一夏くん」
「オレは機能の試合で全敗したんですが、なんでクラス代表になっているんでしょうか?」
当然の疑問である。先日のクラス代表決定戦での一夏の結果は全勝の四季とは正反対の三戦三敗。どう考えてもクラス代表に選ばれる理由など浮かばないのである。
「オレは辞退した。DEMの仕事があるから、一兄を推薦して辞退した」
「ぼくも兄さんのサポートに廻ろうと思って兄さんを改めて推薦して辞退したんだ」
「私も一夏さんにクラス代表を譲る事にしましたわ」
他のクラス代表決定戦の参加者全員が辞退した為に最終的にクラス代表の座が一夏に廻ってきたわけだ。
「って、おい!」
まあ、明らかに面倒そうな顔をしてそんな事を言われれば当然怒るだろう。……普段は仲が悪いが、妙な所で息が合う様子の四季と秋八だった。
「オレの場合はDEMのテストパイロットの関係上、仕事が有るからな……一応給料まで貰っている以上、疎かにはできないからな」
「仕事って何やってるんだよ」
「一番最近のだと……近々発表されるオレの今の専用機の量産タイプの兄弟機のデモンストレーションだな」
『世界初の第三世代の量産機の』と付け加えるとクラスから歓声が沸きあがる。『第三世代機』と言うのは現行で存在しているのは専用機だけで有り、量産型である以上機会が有れば自分達も扱うことが出来るかもしれないのだ。
IS学園と言う、世界最高峰にして唯一のIS操縦者専門の学び舎……そんな看板のある場所が『量産型の第三世代』と言う代物を購入しないと言う選択肢は無いだろう。現在一年生の生徒達にしてみれば、在学中に扱える可能性がある。
(量産型……νガンダムのMSV!?)
「そんな訳でオレは無理。最悪仕事と被った場合不戦敗の危険もあるんで、将来性を考えて一兄を推薦した」
「IS操縦には実戦が何よりの糧。クラス代表ともなれば戦いには事欠きませんもの」
「ああ。クラス代表はクラスの成果を見せるべきだし、それには今一番劣っている一夏兄さんの成長を見せるのが良いと思ったからね」
四季の専用機の兄弟機と言う点で秋八が驚愕する中、セシリアと秋八がそれぞれの辞退の理由を述べる。
「最も実力の有る四季さんが辞退なされる以上、四季さんとあそこまで戦えた一夏さんを私も推薦させていただきました」
土壇場でイグニッション・ブーストを閃きだけで使って見せたのだから、才能面では十分だろう……。
「いやあ、セシリア分かってるね!」
「そうだよねー。折角世界で三人だけの男子が居るんだから、同じクラスになった以上持ち上げないとねー」
「私達は貴重な経験を積める、他のクラスに情報が売れる。一粒で二度美味しいね、一夏くんは」
大半の生徒は一夏の代表就任を喜んでいるが中には、
「四季君のほうが強いんだから、四季君がクラス代表になるべきなのに!」
と言う反対の声もある。……が、
「秋八くんは……その、ねぇ?」
「なんだか期待はずれって言うか……ねぇ」
秋八だけ僅かに納得……失望の混ざった声が出ている始末である。
(ちぃっ!)
そんなクラスの失望の声に機敏に反応しているが、それは表には出さず。
「ぼくもクラス代表の仕事は協力するし、ISの特訓にも協力するよ」
「そうか。悪いな、放課後はオレは暫く用事があるんだ」
「君もクラスの仲間なんだから、少しは協力したらどうだい?」
「……クラス代表決定戦の影響で、もう一機の専用機の開発が遅れててな……暫くそっちに参加する必要が有る」
本来なら、一週間遅れで渡される筈だったもう一機の専用機。Hi−νガンダム・ヴレイブとは違うタイプの機体であり、クラス代表決定戦で入手した零落白夜のデータから製作予定の改良型零落白夜(仮名)を試験的に搭載した機体となる予定だ。
運用目的がヴレイブとは違うので其方は高い攻撃力を必要としている。対IS用の機能として採用されたのが零落白夜のバリア無効化能力だ。
『もう一機の専用機!?』
その言葉に絶叫が湧き上がる。中には『ずるい』と言う声も沸きあがるが、それはそれ……『次の量産期の|原型機《オリジナル》だから』と言っておく。これも四季に与えられたテストパイロットと言う肩書きゆえの特権と義務となる。
まあ、『四季さんとご一緒できなくて、残念ですわね』と呟いているセシリアについては可哀想としか言えないが。
彼女自身四季が初恋の相手である『騎士王』と呼んでいる少年と同一人物と確信しているが、それ以上に己の専用機であるブルー・ティアーズのBIT兵器の発展系のファンネルを自分以上に使いこなしている四季に指導して貰いたいと思っていた部分もある。
初恋の相手(かもしれない)と一緒に居られる事と技術の向上……その両方が望める、正に一石二鳥な状況を逃してしまったのだから、不運としか言い様が無いだろう。
まあ、内心『絶対に一緒に訓練させて貰おう』と燃え上がっていたりするセシリアだが、
「貴様、秋八の言葉を無碍にするのか!?」
「それで給料貰っている訳だしな」
そんな四季へと箒が噛み付いてくるが、あっさりと斬り捨てる。それで毎月給料を貰っている身の上としては疎かに等出来る訳もない。
まあ、毎月の給料の他に『親の責任』と言う事で生活費に小遣いも貰っていたるしている時点で、給料は遠慮するべきかと思っているが、『彼女との結婚資金とデート費用とでも思って貰っとけ』と言って無理矢理渡されている。
「貴様っ!」
激昂して殴りかかってくる箒に反応して立ち上がって迎撃しようとすると、
「座れ、馬鹿共!」
それよりも早く箒の頭を叩いていた。……正しくは四季の頭も殴ろうとしたのだが、寸前のところで回避されていたりする。
(危なっ! 一瞬でも反応が遅れたら危なかった)
風圧が前髪を揺らす中、一m先を千冬の拳が通り過ぎていく感覚を四季はそう評する。確かに『英雄』にこそ劣り、教師生活からのブランクは有るだろう。だが……それでも『世界最強』の称号は伊達ではないと言う事だろう。まだまだ四季の先を歩いている。
「……何故私だけ……」
「お前が先に手を出したんだろうが」
そして、小さく『他の先生方ではお前には強く出れんだろうからな』と呟く。……『篠ノ之束の妹』……本人は自覚していない……と言うよりも自覚していたとしても否定しているだろうが、それは確実に彼女に対する特権を与えている。
「下らん揉め事は十代の特権だが、生憎今は私の管轄だ、自重しろ」
そう言った後、千冬は四季へと視線を向け、
「お前もクラスの一員だ、時々で良いから協力しろ」
「……………………はい」
納得できる言葉に多少躊躇しながらも返事をする四季だった。そもそも、四季としては一夏に協力することには文句は無いのだし。千冬の狙いが分からないのが不安だが、一応そう返事をしておく事にした。
本当に寮に入れたがっていた先日からの変化が気になる所だが。
(……専用機がもう一機か。良し、それならばもう一機有っても良いだろう。ちゃんと色もアイツの好みに塗り替えた。少しでも四季に寮に入っても良いと思わせなければ)
無理矢理入れるのを止めて地道に四季の心境を変えようと作戦を変えた訳だった。
第二グラウンド……ISを使っての実技授業
「では、これよりISの基本的な飛行操縦を実践して貰う。五峰、オルコット、織斑兄弟。先ずはISを展開してみろ」
四季とセシリアと一夏と秋八はISを展開する。セシリアは流石は代表候補生と言った所で、一応は天才と言った身の上の秋八もセシリアに遅れることコンマ数秒の差で、二人に遅れること一夏も白式を展開していた。
……四季はと言うと……。
「……お前は本当に素人だったのか……?」
「経歴に嘘は無いはずですよ、先生」
熟練のIS操縦者は展開に一秒と掛からないそうだが、四季もまた一秒以下での展開だった。実戦形式の訓練だと展開中も構わず攻撃してくるガンダム達相手なのだから、必死さが違う。
「まあ、優秀なのは良い事だ。四人とも展開速度は言う事なしだな。では、飛んで見せろ」
千冬の言葉で一斉に飛び立つ四人、先行する四季とそれに僅かに遅れるセシリアを追いかける一夏と秋八。感覚の問題なのか、飛ぶと言う感覚に慣れていない二人は遅れるのだろう。
身近に飛ぶ事が大好きな人達が居るせいか、飛行訓練に限定すれば実は最も多くしていたりする。……主に空戦部隊の隊長の指導の下に。
「何をやっている、織斑兄弟? スペックでは五峰のヴレイブは兎も角、ブルー・ティアーズよりも高いのだぞ」
「そんな勝って当たり前みたいな言い方されても……」
「スペックを引き出せる……って言うのは別物だからね」
千冬が一夏と秋八にそう言う。Hi−νガンダム・ヴレイブのカタログスペックは何気に四機の中で最も高い。完全な汎用型……宇宙空間でさえ活動できる全域対応型のG−アームズの技術提供の結果の機体が並の性能であるわけが無い。
現に『艦』に封印されている『機体』を除けば世界に存在している全ISの中でトップと言っても良いだろう。
「やっぱり飛ぶのは楽しいな」
「そうですわね、四季さん」
まあ、そんな彼等の影響で四季もまた空を飛ぶ事に魅せられている。空を飛ぶ楽しさを知ってしまった身の上としては、何時か詩乃や他の仲間達と一緒に空を飛んでみたい……そう思う。
(『自分の前に角錐を展開させるイメージ』って言われても、急上昇も急降下も昨日習ったばかりだぞ……)
(くそっ、思ったより難しい! あいつはどれだけ優秀な先生に指導して貰ったんだよ!?)
イメージに四苦八苦しながら必死に飛んでいる一夏とは違い、同じく四苦八苦しながらも苛立ち交じりにそう考える秋八は目の前で優雅に空を飛びまわっている四季を睨み付ける。
確かにG−アームズ空戦部隊部隊長『ガンセイヴァーΖ』。ISを使っているとは言え、空中戦に於いて一級の指導者と言えるだろう……物凄く着陸は下手だが……。そう、致命的なほどに。……その点に於いてだけは四季にとっての一級の反面教師になっている。
まあ、一番四季の訓練に付き合ってくれていたのはガンイーグルνだが。
「飽く迄授業で教えられるのは基本的なイメージの一例だぞ、一兄」
そんな四苦八苦している一夏と秋八の隣に何時の間にか降りてきた四季がそうアドバイスする。
「そうですわ、イメージは所詮イメージ。自分がやり易い方法を模索する方が建設的でしてよ」
「なるほど、ありがとうオルコットさん」
そんな四季のアドバイスに補足説明するセシリアに礼を言う秋八。
「そう言われてもなあ。大体空を飛ぶ感覚があやふやなんだよ。なあ、四季、お前はどう言うイメージで飛んでるんだ?」
「どう言うって……『飛ぶ事は当然』って感覚で……寧ろ難しい事は考えずに、だな」
正しくはヴァンデモンやらウォーグレイモンやらデュークモンやらと言った人型のデジモンの姿を元にガンセイヴァーの動きを参考にしているが、基本的なイメージ元は前述の空中で戦う事が当然な人型のデジモンの姿だ。
「それ一番難しくないか?」
「……考えすぎない分自由に飛べるって訳か……」
「流石ですわ、四季さん」
呆れ半分尊敬半分と言った様子な一夏、納得している秋八、尊敬している様子のセシリア。
「理論もありますし、それを説明しても構いませんが、長いですわよ? 半重力力翼と流動波干渉の話しになりますもの」
「パス、聞いたら変に意識しそうだな」
「そう、残念ですわ。ふふっ」
逆さまで胡坐の体制でフワフワと浮いている四季が米神を抑えながらセシリアの言葉に答える。……Hi−νガンダム・ヴレイブがそんな事をしている姿をイメージすると結構シュールな姿だ。そんな四季に微笑むセシリア。
「秋八っ! 何時までそんな所に居る! 早く降りて来い!」
そんな時、箒の声がやけに大きく響く。地上とはかなり距離が離れており、彼女の肉声が届くはずは無いと思って地上を見てみると、真耶のインカムを強奪してそれに怒鳴っていた様子だった。
インカムに向かって怒鳴っている箒と、オロオロとしている真耶。そんな状況も千冬の出席簿チョップを叩き込んで事態を収拾していた。
「五峰、お前が良く出来るのは分かったが、これは授業だ! 何時までも遊ぶな!」
「はい」
流石に良く出来ているとは言え完全に空を飛ぶ事を楽しんでいた四季を叱責する。……傍から見た飛行技術自体は見事だが授業中に半ば遊んでいたのは拙かったと反省する。
普段が実戦を前提としているだけにこう言う基礎訓練にさえならない基本技術の訓練は遊びに近い。
「五峰、オルコット、織斑兄弟。次は急降下と完全停止をやってみろ。目標は地表から10cmだ」
千冬が次の指示を出す。急降下は兎も角……教官であるガンセイヴァーの超苦手分野の停止である。
「了解です。では四季さん、お先に」
最初にセシリアが急降下し、ジャスト10cmで完全停止して、上空に居る四季に向かって微笑んでみせる。一国の代表候補として積み重ねてきた技量は十二分にあると言う事だろう。
「流石だな。次はオレか」
そのままブースターを全開にして急加速、最高速度を殺さずに体制を建て直し、そのままジャスト10cmで完全停止する。
……この辺は教官の癖がうつったのか、墜落するレベルでの急加速をしてしまう悪い癖がある。まあ、その一点に於いては死ぬ気で練習して完全停止と着陸は出来るようになった。毎回墜落現場を見せられていれば反面教師扱いされても無理は無い。
G−アームズ空戦部隊隊長ガンセイヴァーΖ……空戦部隊として致命的な着陸下手の弱点を持つ。
「ジャスト10cm……とても素人だったとは思えんな」
「あら、肩にそんなエンブレムって有りましたっけ?」
「ん? ああ、昨日クラス代表決定戦での三連勝のお祝いにって」
四季の技量の高さに千冬が感心していると、彼の近くに居たセシリアが四季のヴレイブの肩にあるエンブレム……G−アームズのエンブレムに気が付く。
クラス代表決定戦での……フィン・ファンネル二つを壊してしまったマイナス点は有ったが、三連勝に対するお祝いとしてコマンドガンダムから貰ったG−アームズのエンブレムである。
なお、マイナス点の為にパーソナルマークとして用意されていたギルモンとデュークモンをイメージした槍と龍のエンブレムはお預けになった。
そんな会話を交わしていると彼等の後ろで二つ衝撃音が響き渡り、グラウンドにクレーターが二つ開いていた。
「……セイヴァー隊長を見ているようだ……」
「セイヴァー隊長?」
「オレの教官で、着陸での反面教師」
「反面教師……ですか?」
「致命的なレベルで下手なんだよ……着陸。一兄達と同レベルで」
「そ、それは……」
四季の戦い振りを見ているだけで十分に彼を指導したガンセイヴァーの技量の高さは面識のないセシリアにも理解できるが、其処まで着地が下手なのはだと言われてもとても信じられない。
「天は人に二物を与えない物ですのね……」
四季の説明にセシリアはそう呟いたのだった。何者にも欠点や弱点が有り、ガンセイヴァーのそれは着陸なのだろうと考える事にした。……人では無く正しくはガンダムなのだが……。
「馬鹿者共、誰が地上に激突しろと言った? グラウンドに穴を開けてどうする。自分達で責任を持って元に戻せ」
「「……すみません」」
クレーターの奥に居る一夏と秋八の二人に対して千冬の言葉が響く。それに対して声を揃えて謝る二人だった。
まあ、そんな形で授業は先に進んでいく。流石に授業中は時間が惜しいのでグラウンドの穴埋めは後に廻されたが。
「織斑兄、武装を展開しろ。それ位は自在に出来るようになっただろう」
「は、はあ」
「返事は“はい”だ」
「は、はいっ!」
「よし、では始めろ」
そう言って一夏が展開させるのは雪片。
「……ふむ。次、織斑弟、お前も武装の展開をやってみろ」
「はい」
秋八も千冬の指示に従って武装を展開する。
「二人とも遅い。0.5秒で出せるようになれ」
実の弟二人の成果を容赦なくそう切り捨てる。四季から見ても確かに遅いが。
「次、五峰、お前がやってみろ」
「はい」
四季は腕を前方へと翳すと同時にビームライフルを展開、引き金さえ引けば何時でも撃てる体制だ。
「一秒か。上出来だろう。だが、今は授業中だ……引き金に指をかけるな、暴発したらどうする?」
「っと、確かに」
「……他の武装は殆ど装甲に内蔵されていたな……なら次は」
その後はセシリアの武装展開に移った。なお、授業終了後地面に開いたクレーターは一夏と秋八が頑張って直しました。
夜は食堂を借り切って一夏のクラス代表就任(辞退三人)のお祝いのパーティーが開かれるらしいが、流石に参加していたら遅くなるので自宅通学の四季はお暇させてもらった。
……最も参加できない代わりにお菓子と飲み物の差し入れはして置いたが。
そんな四季だが、
「くっ!」
「動きが鈍いですよっ!」
騎士ガンダムのスピアの一閃を試験運用しているもう一機の専用機のシールドで受け止めるが、彼の剣は四季の盾を簡単に貫き、SEを削る。
「このっ!」
ビームサーベルとシールドを投げ捨てるとバックパックから二本のソードを取り出す。零落白夜のデータを元に改造された武装では有るが、絶対防御どころかISすら使用していない騎士ガンダム相手では普通の武装となんら変わらない。
……伸縮自在で電気まで流れる原理不明なファンタジー世界の武器と比べれば、四季の使っている武器も普通にしか見えないから不思議だ。
四季の振るう剣を電磁スピアで受け流し、確実に四季のSEを削っていく。そんな騎士ガンダムだが、実はまだまだ二つも“単独での”パワーアップを残していたりする。専用機を纏った千冬でも簡単に倒してしまいそうな相手に実戦訓練を受けているので、
「はぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
「っ!?」
最後の一撃……デュークモンのロイヤルセーバーを意識させる騎士ガンダムの一撃によって一瞬動きを止めた四季のSEが完全に削られる。
「ヴレイブと違ってまだ多少扱いにくい様子ですね、そちらは」
「そうですね」
「ぶれいぶが有るとは言え、何時それが必要になるとは限らん以上、なるべく早く使いこなさなければ」
そんな四季に話しかける武者頑駄無。今日の教官役の二人から注意を受けながら、詩乃から渡されたタオルで汗を拭うとスポーツドリンクに口を着ける。
よく気が付く恋人に礼を言いつつ、もう一機の専用機の最大のコンセプト……『攻撃力特化』を思い出す。零落白夜(改)こそ後付だが元々着けていたシステムと合わせる事で一撃での破壊力を爆発的に高める事ができる。
そのシステムの調整の為に此方はヴレイブよりも長い調整期間を必要としている。
「試合とは言え実戦の後ですからね、休息は必要ですよ。特に貴方の場合は精神面での休息が」
そう言って騎士ガンダムは微笑を浮べると、
「今は、大切な恋人と一緒に過ごした方が良いですよ。貴方にはそれが一番安らげるはずですし。長く貴方を知っている者なら……誰でも心配する顔をしていますよ」
そして、『友人達も心配していましたよ』と付け加えられた騎士ガンダムのその言葉で、その日の訓練は普段よりも早い終了時間を迎えるのだった。
先日の宣戦布告が原因だろう。いや、もっと言えば根本的な元家族……特に千冬や秋八との再会が思ったよりも四季の心には負担だったのだろう。
秋八はともかく騎士ガンダムほどでは無いが千冬相手には今のままでは勝てない。決別すると言う意味でも己の手で勝利する必要があるだろう。だから、まだ出来るのは宣戦布告だけだ。
「ほら、行くわよ、四季。今はもう少し休みなさい」
予め騎士ガンダム達と相談していたのであろう詩乃が彼を引き摺ってアリーナを後にする。そんな二人の様子を騎士ガンダムと武者頑駄無は微笑ましく見守っていた。
「さて、私達からも何かお祝いを挙げた方がいいですね」
「おお、それは良い考えでござるな」
その日、IS学園二新たな来訪者を迎えた夜の四季達の光景だった。
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