ゼロの使い魔 AOS 第02話 早すぎた召還 |
少年は平穏な生活をしていた。
少年は日本という世界でも類を見ない平和な国に生まれた。
多少の貧富の差はあるがこの国の憲法は国民一人ひとりに最低限度の生活を保障してくれる。
また義務教育の名の下に子供たちには学習の機会が多く与えられる。
選挙制度の名の下に国民が政治家を選ぶことで間接的ではあるが国家運営に携わることができる。
職業も本人の努力しだいではあるが選択する自由が与えられている。
他国の軍隊にあたる自衛隊もあるが志願制で民間人がその意思に反して徴兵されることも無い。
経済大国と呼ばれる国は数あれどこれだけ一般国民が恵まれている国は世界には無い。
平賀才人は平穏な生活をしていた高校1年生だった・・・。
・・・寒い。
才人は上着を通して吹いてくる風を受けてそう思った。
目の前は暗闇でまぶたが重い、どうやら眠りから覚めたらしい。
ベッドから落ちたのか?肌寒さからそう判断し、まぶたを開ける前に立ち上がろうと床に手を付けた。
・・・が、腕が動かない!?
バランスを崩して床に顔面からダイブ、痛さで顔をしかめながらまぶたを上げて現在の状況を初めて確認した。
「痛って〜〜〜!!鼻打った〜〜〜!!」
「・・・はい?」
動かなかった両腕...いや、両手首を見て才人は戸惑った。
「手錠...か?しかも、時代劇で見るような板の手錠だよな?夢みてんの...」
「うるさいぞ!!」
背中に衝撃を感じてそのまま、本日2回目の顔面ダイブ!!
「〜〜〜〜〜!!」
突き飛ばされたのか?蹴り飛ばされたのか?あまり良い状況では無いと咄嗟に判断して声を上げるのを我慢した。
暴力と恫喝、一度も経験したことが無い状況ながらも才人は恐る恐る周りを見回す。
(ここは外か?いや違う、大きな穴が開いているけど建物の中だ)
さらに人の気配を追って周りを見渡すと大人の男と思われる人影が2つある。
(・・・拉致されているんだよな、コレ?)
平賀才人の平穏な生活はこの日、終わりを告げることになる...がこの時の彼はまだ知らない。
日本時間で深夜1時、トリステイン学院教員室から明かりが漏れている。
学院長以下、ほぼ全ての教員が出席しての学院会議が行われている。
議題内容は...
「全く、なんてことをしてくれたんだ!こんな事態は前代未聞だ!!」
「1年担当の大失態だぞ!我が学院の伝統の使い魔召還を1年も前に行うなど!!」
「我々の教え子達が1年の時には進級試験まで召還を行わないように厳しく言い聞かせていたものなんだがね」
2年や3年担当の教師から途切れることの無い叱責と罵倒が1年担当の教師陣に飛ぶ!!
「起こってしまった事は仕方がないじゃろうて、1年早いが進級試験を済ませたと思え...」
さすがに場が熱くなり過ぎと判断してオスマン学院長がここで救いの手を差し伸べようとしたが・・・。
「学院長!そういう問題ではありません、この事態が王宮のうるさ方に知られればどうなるかお分かりでしょう」
「うるさ方だけの問題ではありませんよ、ほかの生徒の親御さんに知れれば特定の生徒を贔屓していると苦情が!!」
(わかっとるっちゅ〜に・・・み〜んなうるさいし、親達は自分の子供が特別扱いされないとす〜ぐ文句いうしの〜)
教員室がヒートアップしている中で顔面蒼白で部屋の隅に座っている生徒が1人いる・・・そう、ルイズである。
(どうして・・・なんでこんな事になっているの・・・ううっ)
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急な爆風で背中から叩きつけられたルイズは気を失いかけたが、なんとか堪えた。
土煙の中に見えるシルエットから感じ取れた、自分の中につながるラインを一瞬で感じ取れた。
(・・・私の使い魔!)
ルイズは嬉しかった、魔法が使えずに平民とまでバカにされ蔑まされた自分の使い魔がここに居る。
(本当に来てくれた!私の所に来てくれた!わっ私は貴族だもん・・・来るのは当たり前よ!でも・・・ありがとう)
ルイズは感謝をした!家族とあの方以外に心から感謝をしたのは初めてだった、無駄ツンデレはご愛嬌だが。
土煙が晴れそのシルエットの本体がついに浮かび上がる、ドラゴン?・・・犬?ルイズは感謝から興味に移っていた。
そして現れたその姿は...
「えっ!?・・・なにこれ、な・な・な・なんで人間・・・しかも、平民?」
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「ふい〜〜〜、すこし混乱しとるの〜コルベール君もう一度最初の状況から説明してくれんかの〜?」
オスマン学院長から話を振られた頭が少々さびしい男性教師が立ち上がり状況を説明する。
「はい、では最初から説明させていただきます、私が本日1回目の院内巡回中に女子寮の方から激しい爆発音を確認」
「学院襲撃の可能性も考慮して近くに居た守衛二人を伴い現場に急行しました、場所は1年のヴァリエール嬢の寮室」
「うっ・・・・・・」
急に自分の名前が出され反応するルイズだがコルベールは気にせずに話を続ける。
「私が見たのは大穴があいた部屋にヴァリエール嬢と見たことも無い平民の男・・・いや、少年が一人です」
「まて!そこまではいい、どうしてその平民が使い魔なんだ?いや、平民どうこう言う前に人間の使い魔などと」
コルベールの話を折るように一人の教員が疑問をぶつける。
「それは先ほども説明したように彼の手の甲に使い魔のルーンが刻まれているのを確認しヴァリエール嬢にも確に...」
「そういう事ではない!人間が使い魔として召還されるなど私は聞いた事が無い!ミスターコルベールの勘違いでは?」
「しかしこうして現実に起きている以上、聞いた事がある無いの問題ではありませんぞ!!」
「ではヴァリエール嬢に質問したいのだが、ヴァリエール嬢よろしいかな?」
「あ・・・はっ、はい!?」
教師同士の白熱した問答が急に自分に向けられたルイズ、内心ビクビクしながらも席を立つ。
「ヴァリエール嬢・・・ん...失礼...ミス・ヴァリエール、君は使い魔召還方法を知っているのかね?」
「いいえ、知りません・・・」
「しかし、君は現に召還と契約を果たしているよだが?知らない君が召還できるのかね?」
「わかりません・・・あの時、使い魔がほしいと願いましたがそれだけです」
「正直に言いたまえ、誰に召還方法を教わったんだい?」
「いいかげんになさい!!生徒がわからないと言っています、それを罪人かのごとく詰め寄るとは!!」
「ミセス・シュヴルーズ、ミス・ヴァリエールはあなたの授業を今日は受けている様ですが・・・まさか」
「なっ・・・!?」
「そこまで!!そこまでじゃ!!この馬鹿ものどもが!!!」
完全に一触即発のムードをオスマン学院長が強引にねじ切る。
オスマン学院長の剣幕に教員室は静まり返る、そして。
「もうどうするかなんぞ答えが出ている話じゃろ〜が、それをぐちぐちと疲れる事しおって」
「・・・・・・」
オスマンの一言で教員室の空気が一瞬で変わった、ルイズ以外は。
「えっ?えっ?」
「あ〜なんじゃ〜、ミス・ヴァリエールとその使い魔くんには気の毒じゃが無かった事にしてもらおうかの」
....第02話 早すぎた召還 終
next第03話 ごめんね
執筆.小岩井トマト
説明 | ||
トリステイン魔法学院の劣等生ルイズの願いが届くが・・・。 現れた使い魔はなんとドラゴンでも犬でもなく人間? ついに小岩井トマトがゼロ魔で一番好きな彼が登場します。 |
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