僕の兄はとてもかっこいい人
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僕には一つ上の兄がいる。

兄は傲慢で、我儘で、少しおっちょこちょい。

皆からの評判もあまり良くないらしい。

でも僕は知っている。

兄はいつもカッコいい。

僕の前で見せる、あの優しい顔。いつも眩しいんだ。

だから、その笑顔を護りたい。

カッコいいままの兄でいて欲しいんだ。

 

兄さん。

 

僕はもう、弱くない。

 

だから、

 

今度は僕が守らせて?

 

 

 

 

崩れないように僕は走る。

まだ昼時の今日。僕はある場所に向かっていた。

抱えているのはある人が好きなケーキ?タルト?わかんないけど、スイーツを持っている。崩さないだけでも一苦労だ。それ以前に僕が走らなければいい話だが、あいにく僕は急いでいた。

早くこのスイーツを届けないと。

あの人の笑顔が見れない。

あの人の笑顔を浮かべるだけで笑みが零れる。

おっと、気を許してしまった。

早く届けないと、あの人を待たせてしまっては困ってしまう。

僕は少し速度を上げた。もちろんスイーツの事を気にかけながら。

 

やがて着いたのは倉庫。

ここはいつもあの人が溜まる所だ。ここにはもうあの人が講習を終わらせて座っているはず。

意を決して倉庫の扉を開ける。

そこには、

 

僕が望んでいた人がいた。

 

 

「お、来たか。待ってたぞ」

 

「兄さん!スイーツミルクアップルベリーパイ?とろけるハニー添え?、買ってきたよ!」

「ナイスだ我が弟よ!」

 

僕の名前は沢渡冬夜。

兄、沢渡シンゴの弟である。

 

 

 

 

「ん?おいちぃ?!」

「良かったよ!」

 

兄さんの笑顔を見れただけで僕は幸せだ。

先に行っておくが、これは僕が勝手に行った事であって決してパシリで行かされた訳ではない。決してだ。パシられる前に買いに行っている。

兄さんが幸せそうにスイーツを頬張っていると、兄さんの取り巻き達の山部さん、大伴さん、柿本さんがやって来た。

この三人は僕が中学に入学する時に兄さんと一緒にいたから、その時に僕が紹介された。関係は安定である。

僕はあらかじめ用意しておいたお皿に三人の好みのスイーツを乗せ、差し出す。

 

「山部さん、大伴さん、柿本さん。お疲れでしょう、どうぞ!」

「マジで!?ありがとう冬夜!」

「冬夜君マジで良い子だ…」

「癒しだ…」

 

なんか口々に言ってるけど嬉しいな。

僕の分?無いよ?実は言うと僕の好みのスイーツがなかったってだけ。スイーツは大好きだ。

僕の大好きなスイーツ、もといケーキはチョコが好きなんだけど、実は売り切れていた。悔しい!どうせなら食べたかった!

なので僕の分は無いので麦茶で我慢する事にしよう。

と、虚しく麦茶を飲んでいた時だった。

 

「!冬夜、お前ケーキは?」

「え?あ、売り切れだったんだよ」

「なんだそんな事か。ほら、口開けろ」

「………………え?」

「え?じゃねえよ。ほら一口やるから」

 

ま じ か 。

スイーツだけは寄越さない兄さんがなんとお気に入りのスイーツを一口とだけと言って差し出してきた。これは明日雨、いや雷が降る。そのくらい珍しい光景なのだ。現に山部さん達が口を開けて呆然としている。これが良い例だ。

中々食べない僕に兄さんは首を傾げる。

 

「食べないのか?」

「いや、兄さんがこんな事してくるなんて、明日は雨がいや雷が降るなと…」

「お前は俺をなんだと思っているんだ!日々の礼だよ。有難く受け取っとけ」

「………………」

 

カッコ良い。ヤバイ兄さん今凄い輝いてるよ。

僕は有難くその行為を受け取り、兄さん公認のスイーツを一口だけ頬張った。

正直に言うと甘すぎた。甘党の兄さんじゃこれが普通なのかな?でも美味いのは確かだ。

兄さんは一口食べた僕の顔をキラキラとした目で見てくる。感想を言って欲しいのかな?僕は正直に言った。

 

「美味しいよ、兄さん」

「!だよなぁ!俺の舌に狂いはねぇんだよ!」

「さっすが沢渡さん!」

「でも少し甘すぎだよね。兄さんはこれが普通なの?」

「その甘すぎが良いんじゃねえか!」

「へぇ、さすが甘党兄さん!」

「へへ褒めるなよ?」

 

貶してるんじゃないか?という声が取り巻きさん達から聞こえた。失礼な。僕は褒めてます。兄さんを貶した事なんて一度もありません!

僕は少し麦茶を含む。甘い物を食べたらこういうのを飲めば虫歯にはなりにくい。というかそれがいいという情報を掴んだので。まぁ一番いいのは甘い物食べない事だけどね。

兄さんはペロリと完食。取り巻きさん達も完食していた。

お皿は僕の自前なので全て僕が持って帰るべきで、洗い物も僕がすべきなのだが、たまに取り巻きさん達は自分達で持ち帰って洗ってきてくれる、今日もそのたまにの日らしい。

取り巻きさん達が食器を片付けている時に、兄さんが聞いてきた。

 

「そういえば冬夜、お前組んでたデッキは完成したのか?」

「?したけど、なんで?」

「実は近い内に榊遊矢ってやつとデュエルすんだが」

「うん」

 

榊遊矢って、ペンデュラム召喚っていうやつを成功させた人だよね?その人に兄さんがなんでデュエルするのかな?

その答えを聞く前に兄さんが話してくれた。

 

「ペンデュラムカードっての、知ってるよな?」

「うん、榊遊矢さんだけが持ってるって」

「そのペンデュラムカードを奪う」

「………え?」

「……勘違いするなよ。これは命令で動いてんだからな。まぁ、あのレアなカードは俺が持つべきってのは分かってるんだけどなぁ?だからペンデュラムカードを奪ったら、そのペンデュラムカードを使って榊遊矢とデュエルする」

「……へぇ、面白そうだね!」

「だろ?だからその為にお前に協力して欲しいんだが…無理なら無理でいいぞ?」

「大丈夫だよ?僕平気だから!」

 

兄さんがそうしたいなら僕もそうしよう。

ごめんね榊遊矢さん。大事なペンデュラムカード、無くなっちゃうけど。

 

目をつけられたあなたが悪いんだからね?

 

脳が兄さんが悪い。止めなければと言っている。

だけど僕はその信号を跳ね除けた。

確か兄さんは命令でと言っていた。だとすると兄さんを裏で操っている人がいる。

何が目的なのかは知らないけど…兄さんを理由してペンデュラムカードの情報が欲しいなら、自分達で取ればいいのに。わざわざ兄さんを物として使わないで欲しい。

兄さんは人間なんだ。

僕の家族なんだ。

例え全世界を敵に回しても。

 

兄さんだけは守る。

 

 

これは、僕と兄さんの物語ーーーーー。

 

 

説明
僕の兄は傲慢で、我儘で、おっちょこちょいで。

でもそんな兄を、僕は大好きです。

ハーメルンに投稿していたものを移しました。
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