艦隊 真・恋姫無双 73話目 |
【 前回の続き の件 】
? 洛陽 都城内 練兵場 にて ?
桂花「────その情報の根拠、信頼性の高さは!?」
冥琳「客将として孫家に仕える事になった……あの『于吉』だ!」
『………………………………』
桂花「『信頼性』の足元が……一挙に崩壊したわ。 冥琳、貴女も前に酷い目に遭ったこと覚えていないの!?」
詠「ちょっと! 尚更信用出来ないじゃない! アイツは……前に何をしてきたか知ってるの!? アイツらの謀の為に……ボクと月は!!」
ねね「いったい、何を考えているのですかぁ───っ!?」
冥琳「懸念はもっともだ。 しかし、我らも……確かな裏付けが取れているからこそ、その考えを持っているのだよ。 于吉の話だけでは無い、他にも……北郷配下の金剛姉妹より聞き及んでの結果。 だから──我々は許可したのだ!」
−−−
桂花「………金剛姉妹って?」
稟「あの黒い筒状の武器を携える女性達を見てください。 四人の中で三人が衣装と頭の髪飾りが一緒だと思います。 あの三人が姉妹なんですよ」
風「後もう一人は、直ぐに分かりますよー。 衣装と髪飾りは一緒ですからねー。 桂花ちゃんなら簡単に気付いちゃいますー!」
桂花「………いいわよ。 自力で探して………って一刀の側で三人で争う将がいるけど………あの似た衣装を着る娘?」
風「ぴんぽーん、ぴんぽーんで〜す!!」
桂花「なにそれ……いやに腹が立つ言葉だけど………」
風「お兄さんが教えてくれた、天の国で問題の答が正しい場合、叫ぶ擬音だそうで〜す! さすが、桂花ちゃん! 魏随一のツンデレ名軍師ですね〜!!」
桂花「………アンタねぇ、私を貶しているの? 褒めているのぉ!?」
風「それは、当然──あぁ、止めときましょうー! こんな時に争うと冥琳さんに、また小言を貰っちゃいますからー」
桂花「風ぅぅぅ───っ!!」
−−−
稟「ゴホンっ! 現に……元の世界で一刀殿達の危機を救い、私達の世界へ招き入れた張本人の一人。 そして、あの貂蝉とも手を組んでいると聞いています! ここまでして、私達を騙し──彼らに何の得がありましょうか!?」
詠「───で、でもねぇ!」
桂花「──い、いいわよぉ! ゼェゼェ………し、信用してあげる!」
ねね「………なんとなくですが………親近感が………」
稟「………全くです………」
桂花「わ、 私も一刀の配下『龍田』から聞いてるから。 その詳細な話も聞かせて貰ったわ…………!」
ねね「─────!?」
桂花「一刀はね……向こうの世界に居る時、敵からの強襲を受けたそうよ。 この都城より、遥かに立派な防御施設が整っていた場所なのに……短時間にして建物が崩壊する程の攻撃を………受けたって………」
星「…………私も聞いている。 死を覚悟で主が囮となり、配下の者を逃がす時間を作りあげたと。 しかし、避難させたと同時に……建物の崩壊も始り、敵の最終攻撃も開始され……死を受け入れるしか……なかったそうだ」
詠「じゃ、じゃあ……なんで……その二人は、アイツが助かったのを知っているのよ! 別人の可能性だってあるんじゃない!?」
稟「その一刀殿に、殉死も覚悟の上で寄り添った者が……数名居たそうですよ。 もちろん、避難した者も……命惜しさに逃げた者は……誰一人も居なかったと。 一刀殿の命令ゆえ……黙って従ったそうです……」
詠「………………………」
風「その数名が……金剛のお姉さん、龍田さん達ぃなんですよー!」
ねね「そ、それじゃあ………実際に傍で体験した事ぉぉぉ!?」
冥琳「………二人を含む北郷たちは、左慈に助けられ貂蝉の下へ! 避難をした者たちも、于吉達の手引きにより別の地に降りたそうだ。 ──だから、私は于吉達を信用したい! 過去の事は……私にも原因がある事だしな………」
詠「──もぉう、分かったわよ! 嫌な事を思い出させないで!!」
ねね「詠殿ぉ!?」
詠「建物の中の籠城……逃げ場の無い四面楚歌の中で、ボクは何度も月に謝るしかなかった! 月は笑いながら『仕方ないよ』って言ってくれたけど……その優しさが、更にボクを責めるのよ!!」
風「──反董卓連合戦ですねー! でも、稟ちゃん……その時、于吉さんて居ましたでしょうかー? 于吉さんと左慈さんの知識はあるんですがー?」
稟「………私も漠然とした情報しかないんですよ? 後々、冥琳殿に尋ねてみましょう……」
詠「──ボ、ボクだって……月の天下を望んだのが、于吉達を呼びこんだも同然だもの! 気が付けば……洛陽は囲まれて籠の鳥のような状況。 ボクも月も、死を覚悟するしかなかった。 幾ら生きたいと願っても……無理だった!」
星「ふふっ……懐かしいな。 あの主の行動には大部呆れたが……今思えば、あれこそ大器の片鱗であったに違いない! あの行動力が無ければ、詠や月の命は無かったのだからな!」
詠「………信用するわよ! だ、だけど……于吉本人を信じてるワケじゃないんだからね! あの一刀が信用するなら……ボクも信用する! 月だって納得してくれるわよ! もし、反対しても………ボクが説き伏せてみせる!!」
桂花「………どういう意味よ?」
詠「ア、アイツは、別の一刀だって言ってたけど──あんな馬鹿が世の中に何人も居てたまるもんですか! 自分の命を顧みず見返りを求めない、あんなお人好しの姿をしている奴が……ボクたちを助ける為に力を尽くして──」
桂花「………言っておくけど……アンタを助ける為じゃなく、ここに存在している者たち全員を救いたがっている事を……忘れるんじゃないわよ!? アイツ、一刀は──そんな男なんだから!」
詠「わ、分かっているわよ! ボクが聞きたいのは、アイツも于吉達を信用してるんでしょう!? か、かかか──か、一刀もぉ……!?」
冥琳「于吉、左慈、貂蝉は、北郷にだけ真相を話しているそうだ。 まあ……我々にもどこまで真相を話してくれているか───分からないがな?」
詠「………でも、別の意味でも信じられない! あんな兵器を見せ付けられた挙げ句、その上で敵対してる奴が……アイツらより遥かに強いなんて!! それが本当なら……………ボクたちは既に殺されてる筈よ!?」
風「それがですねー。 幾つかの目的があって、風たちを放置しているようなんですー。 于吉さんの説明ですと……大陸全体で殺し合いをさせる事、そして……お兄さん『北郷一刀』の奪取を優先しているそうですよー!」
桂花「────な、なんで一刀を狙うのよ!?」
詠「アイツが……大陸の危機回避を担っている!? しかも、大陸全体の殺し合いって───黄巾の乱から始まった争乱!!」
ねね「ですが、確たる証拠も無く、繋がっているかどうかなど──」
星「いや、私もそれらしい者と対戦した。 相手は男だったが……強さは私を完全に圧倒していたのだ! 完膚無きに……な!!」
稟「……その者は、金剛姉妹の末妹『霧島』殿を、執拗に狙い追尾してきました。 狂気と殺気を同時に纏いながら! しかも、片腕に黄色の布を巻いていました。 これは、明らかに黄巾と関わり合っています!」
風「お兄さんたちが洛陽に来て一週間も経たずしてー、しかも、名前だけで無く顔を見て判別し迫るのは、この大陸には居ないでしょうー!」
『…………………………』
冥琳「それにな………北郷たちを……前の世界で殺害しようとした相手、それが奴等だ! しかも………信じられない事に……漢王朝最高武官である大将軍何進───あの方が『深海棲艦』の親玉だ!!」
『─────────!?!?』
◆◇◆
【 劉辯皇女 の件 】
? 都城内 練兵場 にて ?
一刀「…………さて、劉辯さま。 そろそろ私は、行動を起こさなくてはなりません 。 貴女たちの為に、劉宏陛下の約束を果たすにも!」
劉辯「…………ッ!」
俺は、劉辯皇女を静かに降ろした。
しかし、 余程……王允が怖かったのか……俺の服を掴んだまま離してくれない。
それに………劉辯皇女は……顔を真っ赤にされて下を向き、足元が定まらない御様子だ。 身体が小刻みに震えているのが見てとれた。
普通に考えれば……この短時間で衝撃的な出来事が次々と起きたんだ。
御自分の母親『何皇后』の豹変、その母親の手首を……雷華が目の前で切断! その前後に襲いかかる楊奉の謀………体調が悪くなるのも無理はない。
それでも、何とか此処まで来れたのに関わらず……… その疲れ果てた精神を………更に逆撫でするかのような王允の対応!
臣下の身分で高圧的な態度、不遜な物言い、しかも体格が貂蝉並み。 その威圧感は半端ではなかった筈だ。
劉辯「…………………」
劉辯皇女は、上目遣いで俺を見つめる。 桜色をした唇を噛んで俺を心配そうに眺める。 上手くいくか……心配されているのだろう。
一刀「大丈夫ですよ。 必ず──果たして見せます!」
劉辯「─────!?」
俺は、心配しなくても大丈夫と──声と掛けると同時に、劉辯皇女の頭を撫でた。 もちろん、雷や電のように荒っぽい撫で方では無く、ゆっくり優しく三回ほど撫でたんだよ。 言葉と動作を同時にすれば納得しやすいからね。
………俺の対応次第で、あの王允の状況が変わる。
そうすれば、劉辯皇女の心も少しは休まるだろし、皇帝に即位されれば、劉宏陛下への約束にも報えるだろう。
劉辯「……………………」
一刀「───では、行って参ります!」
俺は、劉辯皇女に向け敬礼をして、翔鶴率いる第三艦隊に向かう!
────最後の作戦を命じる為に!!
★☆☆
劉協「あ、姉上………? 大丈夫ですか?」
劉辯「………………」
劉協「姉上? 姉上!?」
劉辯「────∂∠◎☆Γю*!!」バタン!
劉協「あ、姉上ぇ───っ!?」
劉辯「…………ボソボソ( ………御遣い様に萌え尽きちゃた。 後、お願い……)」
劉協「姉上ぇぇぇぇぇぇ−−−−−−!!」
―――
―――
一刀「──限界に達したのか! ならば、早く終わらせないと!!」
何進「やれやれ………誰が止めを刺したのやら…………」
長門「………まったくだ!」
霧島「でも、それが(司令の)良き所ですよ!」
一刀「───?」
◆◇◆
【 それぞれの動き の件 】
? 都城内 練兵場 北郷 一刀 陣営内 にて ?
一刀「───翔鶴! 各艦載機の準備……大丈夫か!?」
翔鶴「はいっ! 提督の命令一下、何時でも発艦できます!」
瑞鶴「え〜と………翔鶴姉が北方向で、私が南?」
サラ「あらっ、提督! 御無事で何よりでした! 子細はビッグEより聞いております。 御無事でお戻りになられた事、主に感謝しなければ………!」
ビッグE「全く……To being fearful(ひやひやさせやがって)! 提督がアイツに殺られると思う、此方の身にもなってくれ!!」
一刀「小言は後でしっかり聞かせて貰うよ。 その前に例の作戦だ、準備は出来てるかい?」
サラ「はい、私の艦載機は東を望んで向かわせます!」
ビッグE「アタシは西か! どの方角であろうが任務を果たすのみ! 提督、早く命じてくれ! アタシの勇猛なる艦載機が、発艦したくて騒いでいやがるんだ! 」
瑞鶴「どこか厨二臭い台詞だよね、翔鶴姉ぇ?」
翔鶴「艦娘……それぞれなのよ。 ………瑞鶴」
一刀「だけど、これは遊びじゃない! 漢王朝を存続するための作戦でもあり、敵の動きを確認するためである! 航空写真を撮るようにも伝えて欲しい。 拡大作業が出来るようなサイズの撮影を頼む!」
「「「「 ───はっ!(了解!) 」」」」
★☆☆
? 練兵場 曹孟徳 陣営 にて ?
華琳「北郷が何か……始めるようね?」
春蘭「また北郷めぇ! 碌でも無い事をしようと企んでいるのだろう!」
華琳「春蘭、それは違うわよ? 北郷の考えは確かに奇想天外な物だったけど、執金吾の策を悉く(ことごとく)阻止した。 今回の命じている事も、何かしら切迫した事態が押し迫っている事だわ! 誰か、直ぐに情報を収集──」
真桜「た、大将ぅぅぅ! た、大変やぁあああッ!!」
沙和「た、大変なのぉ!!」
春蘭「ど、どうしたんだ! お前たち!!」
真桜「今……王允とかぬかすオッサンが……御遣い様と喋ってたんやけど……」
沙和「洛陽の街で、劉辯皇女の皇帝即位を止めさせる蜂起が、あっちこっちで起こっているって! 回りの野次馬に入りこんで聞き付けたの!!」
華琳「それは……本当!? 」
桂花「───華琳様、それは事実です!」
春蘭「桂花! 何処に行っていたんだ!?」
華琳「心配ないわ、私の許可を得て孫権軍の下へ出向いて貰ったの。 あの智将で名高い、周公瑾の呼び掛けがあったから……桂花にね!」
春蘭「な、なるほど……。 桂花なら……周公瑾の狙いが何かを覚り、逆に偽情報を得る也、此方の望む情報を引き出す事が出来ると、思案された訳ですな?」
華琳「………貴女、本当に春蘭? よく狙いが分かったわね?」
秋蘭「姉者! まさか───頭を強く打ち付けて!」
春蘭「私は───正気だぁぁぁぁぁ!!」
桂花「華琳様! 周公瑾の下に情報収集を得意とする将から一報が入りました。 内容が──『蒼天已死、黄天當立』と……洛陽の民衆が騒ぎ立てているそうです! これは、漢王朝の終末を告げる天の御遣いの意思だと!!」
『────!?』
★★☆
? 練兵場 孫仲謀 陣営 にて ?
蓮華「そんな馬鹿な! 一刀は──漢王朝の存続を! 劉辯皇女を即位させる為に頑張ったのよ!? それが───なんで、漢王朝の滅亡を示唆する事になっているの? こんなの絶対おかしいわ!!」
明命「しかし──どこも、この話で持ち切りです! 実際に雷声(雷鳴)、空を自由に飛び交う『天からの裁きの使者』を見たと証言者が多数!! そのために、信憑性が増して騒ぎが広がっています!!」
冥琳「───これは……完全に裏を掛かれました!」
小蓮「ど、どう意味なの! シャオにも分かるように教えてよ!!」
★★★
? 練兵場 主に西涼側 陣営 にて ?
詠「つまり……真実の意味を変えて流布したのよ!」
月「ご、ご主人様が……悪者扱い!?」
ねね「少し違うですぞ? アイツがやった事は全部、ねね達や皇女さま、他の関係者を助ける為に行った策の運用なのです。 ですが、その噂を流した者は、その見た実際の事柄に……都合の良い意味を付けて広めたのですぞ!?」
詠「漢王朝を……天の御遣いが不定した……って! 」
―――
翠「すると……事はさぁ、どうなるんだ……蒲公英?」
蒲公英「お姉様、本気で言ってるの!?」
翠「冗談、冗談だよ! つまり──漢王朝の求心力が下がって、五胡の奴等が侵入しやすくなる……ってことだよな!?」
蒲公英「それだけじゃないよ! 王朝の支配で圧迫された民衆の恨みが一気に吹き出し、あの頃の黄巾の乱以上に、激しい戦乱へ陥る可能性も!?」
美羽「な、七乃ぉぉぉ…………」
七乃「………大丈夫ですよ。 必ず──助けてくれます。 あの三国一の種馬さんが、私達を救ってくれない事はないんですから。 あの……優しくて暖かい……お人好しの北郷さんが…………」
◆◇◆
【 新たな顔合わせ の件 】
? 練兵場 北郷一刀 陣営内 にて ?
流琉「──ちょっと季衣! こんな所に勝手に来ちゃて大丈夫?」
季衣「シィーッ!! 春蘭さまや華琳さま達に気が付かれちゃうよ! ボク達が兄ちゃんに逢える機会なんてそうそう無いんだから! ───流琉だって兄ちゃんと会いたいんだろう? 」
流琉「…………うん」
季衣「だったら黙って付いてきなよ! そうしないと───」
??「あらっ、誰に気付かれると不味いのかしら? 」
流琉「───!?」
季衣「さっき、言ったじゃないか! 聞いてなかったぁ!? 春蘭様やかり────華琳さまぁぁぁ!?!? 」
華琳「ふふっ……困った子達ね。 私の親衛隊としての役目があるのに関わらず、勝手に此処まで来るなんて………」
春蘭「全くだ! 華琳さまの名誉ある親衛隊として泥を塗るとは!」
「「 ごめんなさーい!! 」」
秋蘭「 …………でも、良かった。 お前達が此処に居てくれて。 北郷の様子を見に行こうと話になり、全員の集合を呼び掛けたら、お前達だけ居ないではないか。 探そうとしたら………桂花が………な?」
桂花「貴女達は………まだ一刀に逢ってないんでしょう? だから、此処に来るって思ったのよ。 一刀の指揮する仲間達の下へ………ね!」
―――
蓮華「冥琳、こっちよ! こっちに一刀達が集まって───!?」
恋「……………蓮華……」
蓮華「れ、恋? 私の事………覚えているの?」
恋「…………コクッ」
冥琳「久しぶりだな! 相変わらず元気そうだ! 私の事も………覚えているか?」
恋「…………冥琳……」
蓮華「恋──ッ!!」ガバッ!
恋「───ッ!?!?」
冥琳「『朋有り、遠方より来る、亦悦しからずや』………私の心情だよ、恋!」
恋「──? でも、冥琳……喜んでるの……分かる。 凄く……」
小蓮「ちょっと待ちなさい! 恋、お姉ちゃんや冥琳を覚えてて、シャオを忘れたなんて言わせないわよっ!?」
恋「…………………………」
小蓮「な、何よ!? 本当に忘れちゃったのぉぉぉ!?!?」
恋「シャオ………大丈夫。 恋……忘れない。 友達も………ご主人様も………… !」
―――
月「詠ちゃ〜ん! ま、待ってよ!」
詠「月ぇ、早く早くぅ!! 早く行かないと……一刀の反撃が見えなくなるわよ!?」
ねね「恋どのぉぉぉ──!! 一人でどちらに行かれたのですか〜!?」
月「ハァ……ハァ……きゃあああああッ!!」
詠「月ぇえええッ!?」
─────ガシィ!
??「──急ぐ場合、足元に注意されるが良いと思うがな。 ……っと、失礼! 今は太守様だったか。 ご無礼を───」
月「───へ、へうぅぅぅ! 思春さん! お願いですから、昔と同じように接して下さいっ!!」
詠「し、思春、ありがとう! ごめんねぇ月ぇぇ……ボクが急がせちゃたから」
月「ううん───早く行こう! ご主人様の活躍を──見届けなくちゃ!!」
―――
翠「蒲公英、美羽、七乃! 此方だ! ご主人様は、この先に──っ!?」
星「相変わらず元気のようだな……馬孟起殿よ。 私を覚えているか?」
翠「───ふん! 常山の趙子龍と言った方がいいのかい? それとも……あたしを散々からかった……メンマの伝道師とも呼んだらいいのか?」ニヤッ
蒲公英「────姉さま…………」
星「どちらも正解だ───我が真名を、また預かってくれるか? 錦馬超殿よ! それに……馬岱殿もな?」
蒲公英「星姉さま────!! タンポポも真名で呼んでいいから! 前と同じでいいからぁ!!」
星「─── わかった! 蒲公英、お前も息災で……何よりだ!」
蒲公英「───星姉さまも!!」
翠「───ったく、面倒くせぇ言い回ししやがって……。 一言、声を掛けてくれれば済むじゃないのか? あたしの真名は………前の時に預けてあるのに……」
星「………会う者が全部が全部、翠のような者なら楽なんだが……そうもいかんのだ。 お前達の方でも……記憶が無い者が居ないか?」
翠「んーとぉ………張文遠、華雄の二人だよな? 蒲公英!」
蒲公英「う、うん! そうだよ!!」
星「此方は───」
風「星ちゃん……いつまで風たちを除け者にしてるのですかー!? いい加減にして貰わないと風の機嫌を損ねますよー? ぷっぷくぷ〜!!」
稟「仕方ないじゃないですか。 蜀で苦楽を共に過ごして来た仲間なんですから。 元敵国であり……恩より怨の方が強い彼女たちにとって……私や風を覚えてくれているか………分かりませんからね?」
翠「………あのなぁ……あたし達、西涼の者を舐めるなよ? 母様の件は華琳……曹孟徳より正式な謝罪と理由、そして丁寧に埋葬してくれたんだ! わだかまりなんてないからな! それに──あたしも覚えているぜ!!」
蒲公英「覚えている者は、ここにも居るぞぉぉぉ!!」
稟「…………そうですか。 ならば……感謝の意を込めて、私の真名を預けます」
風「風も預けますよー! え〜と、失禁馬超さん?」
翠「だ、誰がぁ失禁だぁぁぁ!? 」
蒲公英「まあまあ……お姉さま! 場を和ませる軽い冗談だから………」
翠「ば、馬鹿ぁ! 軽いどころか、あたしの二つ名が危ない性癖になっているじゃないか! 洛陽全体に知れ渡ったら、どぉーするんだよっ!?」
―――
美羽「な、七乃………!」
七乃「美羽さま………北郷さん………ですね。 あの時より、少し老けたかもしれませんが………あの感じ、あの眼差し、あの頃より変わっていませんね……!」
―――
霞「………あれが、月の言ってた『北郷一刀』やないか? ──華雄! 」
華雄「天の御遣いの技、特と拝見させて貰おうじゃないか!!」
◆◇◆
【 艦載機 発艦 の件 】
? 都城内 練兵場 にて ?
《 華琳 視点 》
私達が到着した時、広い練兵場に──それぞれが背を向けて構える四人が居たのよ。 銀色の長髪を棚引かせる将、二つ結びにしている将、金髪長身の将、全体を布地で覆っている将が、まるで──何かの儀式を行うかの如く佇んでいたわ!
その内の二人は、秋蘭より簡素で一回り大きい弓を構え、空に向けて矢を放つ態勢を示す! 金髪の将は……両手に武器らしい黒い物を携え、最後の将は、厚手の紙の集まりを開き、何やら祈っている様子!
その四人より少し離れた先には、天の御遣い『北郷一刀』と配下と覚しき将が眺め、身動き一つせず四人の様子を見守っていた!
私とは違う覇気ではなく………流れてくる気は落ち着いた清流のような気。
気が付けば、私の横に居る流琉と季衣は………日頃の子供らしい様子を見せず、滂沱の涙を数行、頬に作りあげ……北郷一刀の様子を注視している。
また、春蘭も桂花も………一言も声を発せず様子を見守っているかのように見える。 ただ、何時もの二人と違うのは違和感を感じるのは──優しく柔らかい視線で、様子を見ている為なのだろうか?
いったい、これから何が始まるのか───私の心が期待に膨らませた。
★☆☆
《 恋 視点 》
ご主人様………やっと逢えた。
恋は……あれから……多くの友達……出来た!
セキトやねね、他の皆以外の友達……たくさん、たくさん出来た!
だけど……ご主人様は………恋より早く居なくなった。
恋の手を握って……笑いながら……目を閉じて……二度と開かなくなった。
………哀しかった。
………悔しかった。
握っていた手が、どんどん冷たくなっていくから。
幾ら……恋が強くても………ご主人様を連れ去るモノ……追い払えなかった。
今度も、恋は………付いて行く!
友達が沢山できて……恋は幸せだったから……。
ご主人様と出逢えて………幸せだったって……『ありがとう』の言葉と共に………ご主人様に御礼したい………!
★★☆
《 一刀 視点 》
気が付けば、諸侯が集まり──第三艦隊の様子を伺っている。
別に見られて構わないし、技術も製作も……この時代では追い付かない。
しかし、一人だけ……かなり興奮した様子で見ている者が居たんだよ。 目を血走りながら……説明を求める将が。
真桜「そこの御遣いの兄ちゃん! 頼むから教えてくれへんか!? あの空飛ぶ絡繰りの流れるような形、翼の均等なる美しさ! あれこそ造形究極の美! なあぁぁぁ───どうしてもぉ、あの絡繰りを知りたいんや!! 教えてぇなあぁぁぁっ!!」
まさか、この時代で……航空機の良さを分かる者が居るだと!?
軽巡洋艦の夕張が居れば、良き友達になっていたかも知れないが、残念な事に……俺の所には、まだ就役してない。
凪「いつもの事ですので、どうぞ気になさらなくても大丈夫です! ご命令頂ければ、即黙らせに行きますので!!」
────な、凪、落ち着こうか?
今は二人とも、所属は違うのだから簡単に接触は出来ないよ。 もし、作戦に支障をきたすなら──その時に代表として頼むから。 但し……穏便にね?
凪「はっ……はい!」
俺は、多数の見守る中──遠くで此方を見守る劉辯皇女、劉協皇女を見付ける。
劉辯皇女は、手の指を組んで目を閉じて祈るような態勢で、俺たちを見つめる。 劉協皇女は、劉辯皇女を支え、同じように注視している!
───失敗は出来ない。
だが───不安も無い!!
旗艦の翔鶴は、あの通り真面目で責任感も強い。 彼女に任せておけば、この大役も難なくやり遂げてくれる。
それに、瑞鶴も姉を支えて頑張ってくれる。 彼女の快活さは……五航戦の要だ! 翔鶴が不安になっても……そこを補うために動いて作戦を成功に導いてくれるだろう!
サラやビッグE………他の艦娘と全く違う出身であり、前は敵対していた身。 だけど……その分、翔鶴や瑞鶴の気付かない弱い場所を知ってる。 敵として対してから分かる事を。 だから、その働き──大いに期待しているよ!
だから───心配しなくて大丈夫だ!
俺の信頼する仲間たち───だからな!
――――
――――
《 第三艦隊 視点 》
翔鶴「………提督? あの、そのぉ……独り言が全部……聞こえているのですが………。 信頼して頂くのは……大変嬉しいのですけど…………」
瑞鶴「わ、わざとなの!? ボケてるのぉ!? そ、そんな事を何気に口にする提督なんてぇ、これで起こしてあげるわ!! 目覚まし代りに……九九式艦爆発艦準備! 狙いは一刀提督! 準備出来次第発──」
ビッグE「止めないか! 我々に対する提督の信頼が厚い事が判ったんだ! ならば、その厚情に応えなければならんのが、アタシ達の役割だろう? ならば、今の状況は一刻の猶予も無い筈じゃないのか!?」
翔鶴「そうです! それに……私達が失敗すれば、一航戦の先輩方にも悪影響が。 ここは何としても──武勲を決めなければ!!」
ビッグE「それにな………どこの世界に、照れ隠しで艦爆発艦させて、提督を目標に定める艦娘が居るんだ! 金剛の台詞じゃないが時と場所を弁えろ!!」
瑞鶴「て、照れ隠しじゃ………ないもん…………」
ビッグE「何にしても……早く行動を起こし、事態を収拾、情報を得なければならん! アタシ達の信用が関わっているんだから!」
サラ「あらあらあら──ビッグEのやる気に満ちた顔も久しぶりね。 では、私も提督や仲間の為、この世界の隣人の為にも頑張りますわ!」
─────バッ!!
翔鶴「──全航空隊に次ぐ! 漢王朝の浮沈、私たちの活躍にあり! 必ずや各々の目標をやり遂げて下さい! 提督からの期待、他の艦娘達の働き! 私達を信じてくれる人達の為にも──決して裏切る事なきように!!」
瑞鶴「私達の航空隊の錬度……見せてあげる! ………赤城さんや加賀さんにも…………絶対に負けないんだからねっ!!!」
ビッグE「あれだけの飛行じゃ……準備運動にしかならない! アタシの艦載機達はね、まだまだ満足なんかしていないよ! 更に活躍の場を求めているのさ! あの大空の舞台で、再度の大活躍する日を夢みているからな!」
サラ「提督が目指されるのなら………私達は従うのみ! それもまた──主の御導きであり、あの大戦で亡くなった者たちへの償いでも………あるのだから………!!」
翔鶴「────では、行きます! あの大空へ向けて、各自発艦始め!!」
―――――
―――――
この後、四方に向けて、新五航戦の艦載機が発艦した!
編隊は五機編成……しかし、通常の縦一列の編隊(トレイル)ではなく、横一列に並んだ編隊(アブレスト)にわざわざ直しながら。
目標は、碁盤の目の様になった洛陽の空。
──後世の歴史書に曰く。
『この日、洛陽の民、様々な奇譚を見ゆ。 瑞兆とは、斯くの如しかと、民の間で長きに渡り、語り継げられた』と。
―――――――
―――――――
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
今回は義輝記の筈だったんですが………途中より進まなくなりました。
気晴らしに進めていた、こちらの方が早めに上がりました。 約束は2週間後に上げるとの事でしたが、完成したなら出して楽しんで頂ければな……と思いましたので。
そんなわけで、義輝記を楽しみにしている方は、ごめんなさい。
もう少しお待ちを………
説明 | ||
義輝記より、此方が早く上がりましたので。 義輝記は、まだお待ちを。 | ||
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コメント | ||
スネーク提督 コメントありがとうございます! そうですよね……。 近頃見る機会が無いのが、ちょっぴり残念。(いた) 横一列の編隊って綺麗だよねぇ…(スネーク) 雪風提督 コメントありがとうございます! かなり重要な任務になる話です。 その任務とは、次回に……!(いた) 綺麗な編隊なり・・そして、我に追いつく機体なし・・。情報こそ命・・この任務必ずや・・完遂っす。(雪風) |
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