艦隊 真・恋姫無双 73話目
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【 前回の続き の件 】

 

? 洛陽 都城内 練兵場 にて ?

 

桂花「────その情報の根拠、信頼性の高さは!?」

 

冥琳「客将として孫家に仕える事になった……あの『于吉』だ!」

 

『………………………………』

 

桂花「『信頼性』の足元が……一挙に崩壊したわ。 冥琳、貴女も前に酷い目に遭ったこと覚えていないの!?」

 

詠「ちょっと! 尚更信用出来ないじゃない! アイツは……前に何をしてきたか知ってるの!? アイツらの謀の為に……ボクと月は!!」

 

ねね「いったい、何を考えているのですかぁ───っ!?」

 

冥琳「懸念はもっともだ。 しかし、我らも……確かな裏付けが取れているからこそ、その考えを持っているのだよ。 于吉の話だけでは無い、他にも……北郷配下の金剛姉妹より聞き及んでの結果。 だから──我々は許可したのだ!」

 

−−−

 

桂花「………金剛姉妹って?」

 

稟「あの黒い筒状の武器を携える女性達を見てください。 四人の中で三人が衣装と頭の髪飾りが一緒だと思います。 あの三人が姉妹なんですよ」

 

風「後もう一人は、直ぐに分かりますよー。 衣装と髪飾りは一緒ですからねー。 桂花ちゃんなら簡単に気付いちゃいますー!」

 

桂花「………いいわよ。 自力で探して………って一刀の側で三人で争う将がいるけど………あの似た衣装を着る娘?」

 

風「ぴんぽーん、ぴんぽーんで〜す!!」

 

桂花「なにそれ……いやに腹が立つ言葉だけど………」

 

風「お兄さんが教えてくれた、天の国で問題の答が正しい場合、叫ぶ擬音だそうで〜す! さすが、桂花ちゃん! 魏随一のツンデレ名軍師ですね〜!!」

 

桂花「………アンタねぇ、私を貶しているの? 褒めているのぉ!?」

 

風「それは、当然──あぁ、止めときましょうー! こんな時に争うと冥琳さんに、また小言を貰っちゃいますからー」

 

桂花「風ぅぅぅ───っ!!」

 

−−−

 

稟「ゴホンっ! 現に……元の世界で一刀殿達の危機を救い、私達の世界へ招き入れた張本人の一人。 そして、あの貂蝉とも手を組んでいると聞いています! ここまでして、私達を騙し──彼らに何の得がありましょうか!?」

 

詠「───で、でもねぇ!」

 

桂花「──い、いいわよぉ! ゼェゼェ………し、信用してあげる!」

 

ねね「………なんとなくですが………親近感が………」

 

稟「………全くです………」

 

桂花「わ、 私も一刀の配下『龍田』から聞いてるから。 その詳細な話も聞かせて貰ったわ…………!」

 

ねね「─────!?」

 

桂花「一刀はね……向こうの世界に居る時、敵からの強襲を受けたそうよ。 この都城より、遥かに立派な防御施設が整っていた場所なのに……短時間にして建物が崩壊する程の攻撃を………受けたって………」

 

星「…………私も聞いている。 死を覚悟で主が囮となり、配下の者を逃がす時間を作りあげたと。 しかし、避難させたと同時に……建物の崩壊も始り、敵の最終攻撃も開始され……死を受け入れるしか……なかったそうだ」

 

詠「じゃ、じゃあ……なんで……その二人は、アイツが助かったのを知っているのよ! 別人の可能性だってあるんじゃない!?」

 

稟「その一刀殿に、殉死も覚悟の上で寄り添った者が……数名居たそうですよ。 もちろん、避難した者も……命惜しさに逃げた者は……誰一人も居なかったと。 一刀殿の命令ゆえ……黙って従ったそうです……」

 

詠「………………………」

 

風「その数名が……金剛のお姉さん、龍田さん達ぃなんですよー!」

 

ねね「そ、それじゃあ………実際に傍で体験した事ぉぉぉ!?」

 

冥琳「………二人を含む北郷たちは、左慈に助けられ貂蝉の下へ! 避難をした者たちも、于吉達の手引きにより別の地に降りたそうだ。 ──だから、私は于吉達を信用したい! 過去の事は……私にも原因がある事だしな………」

 

詠「──もぉう、分かったわよ! 嫌な事を思い出させないで!!」

 

ねね「詠殿ぉ!?」

 

詠「建物の中の籠城……逃げ場の無い四面楚歌の中で、ボクは何度も月に謝るしかなかった! 月は笑いながら『仕方ないよ』って言ってくれたけど……その優しさが、更にボクを責めるのよ!!」

 

風「──反董卓連合戦ですねー! でも、稟ちゃん……その時、于吉さんて居ましたでしょうかー? 于吉さんと左慈さんの知識はあるんですがー?」

 

稟「………私も漠然とした情報しかないんですよ? 後々、冥琳殿に尋ねてみましょう……」

 

詠「──ボ、ボクだって……月の天下を望んだのが、于吉達を呼びこんだも同然だもの! 気が付けば……洛陽は囲まれて籠の鳥のような状況。 ボクも月も、死を覚悟するしかなかった。 幾ら生きたいと願っても……無理だった!」

 

星「ふふっ……懐かしいな。 あの主の行動には大部呆れたが……今思えば、あれこそ大器の片鱗であったに違いない! あの行動力が無ければ、詠や月の命は無かったのだからな!」

 

詠「………信用するわよ! だ、だけど……于吉本人を信じてるワケじゃないんだからね! あの一刀が信用するなら……ボクも信用する! 月だって納得してくれるわよ! もし、反対しても………ボクが説き伏せてみせる!!」

 

桂花「………どういう意味よ?」

 

詠「ア、アイツは、別の一刀だって言ってたけど──あんな馬鹿が世の中に何人も居てたまるもんですか! 自分の命を顧みず見返りを求めない、あんなお人好しの姿をしている奴が……ボクたちを助ける為に力を尽くして──」

 

桂花「………言っておくけど……アンタを助ける為じゃなく、ここに存在している者たち全員を救いたがっている事を……忘れるんじゃないわよ!? アイツ、一刀は──そんな男なんだから!」

 

詠「わ、分かっているわよ! ボクが聞きたいのは、アイツも于吉達を信用してるんでしょう!? か、かかか──か、一刀もぉ……!?」

 

冥琳「于吉、左慈、貂蝉は、北郷にだけ真相を話しているそうだ。 まあ……我々にもどこまで真相を話してくれているか───分からないがな?」

 

詠「………でも、別の意味でも信じられない! あんな兵器を見せ付けられた挙げ句、その上で敵対してる奴が……アイツらより遥かに強いなんて!! それが本当なら……………ボクたちは既に殺されてる筈よ!?」

 

風「それがですねー。 幾つかの目的があって、風たちを放置しているようなんですー。 于吉さんの説明ですと……大陸全体で殺し合いをさせる事、そして……お兄さん『北郷一刀』の奪取を優先しているそうですよー!」

 

桂花「────な、なんで一刀を狙うのよ!?」

 

詠「アイツが……大陸の危機回避を担っている!? しかも、大陸全体の殺し合いって───黄巾の乱から始まった争乱!!」

 

ねね「ですが、確たる証拠も無く、繋がっているかどうかなど──」

 

星「いや、私もそれらしい者と対戦した。 相手は男だったが……強さは私を完全に圧倒していたのだ! 完膚無きに……な!!」

 

稟「……その者は、金剛姉妹の末妹『霧島』殿を、執拗に狙い追尾してきました。 狂気と殺気を同時に纏いながら! しかも、片腕に黄色の布を巻いていました。 これは、明らかに黄巾と関わり合っています!」

 

風「お兄さんたちが洛陽に来て一週間も経たずしてー、しかも、名前だけで無く顔を見て判別し迫るのは、この大陸には居ないでしょうー!」

 

『…………………………』

 

冥琳「それにな………北郷たちを……前の世界で殺害しようとした相手、それが奴等だ! しかも………信じられない事に……漢王朝最高武官である大将軍何進───あの方が『深海棲艦』の親玉だ!!」

 

『─────────!?!?』

 

 

◆◇◆

 

【 劉辯皇女 の件 】

 

? 都城内 練兵場 にて ?

 

一刀「…………さて、劉辯さま。 そろそろ私は、行動を起こさなくてはなりません 。 貴女たちの為に、劉宏陛下の約束を果たすにも!」

 

劉辯「…………ッ!」

 

俺は、劉辯皇女を静かに降ろした。

 

しかし、 余程……王允が怖かったのか……俺の服を掴んだまま離してくれない。

 

それに………劉辯皇女は……顔を真っ赤にされて下を向き、足元が定まらない御様子だ。 身体が小刻みに震えているのが見てとれた。

 

普通に考えれば……この短時間で衝撃的な出来事が次々と起きたんだ。

 

御自分の母親『何皇后』の豹変、その母親の手首を……雷華が目の前で切断! その前後に襲いかかる楊奉の謀………体調が悪くなるのも無理はない。

 

それでも、何とか此処まで来れたのに関わらず……… その疲れ果てた精神を………更に逆撫でするかのような王允の対応!

 

臣下の身分で高圧的な態度、不遜な物言い、しかも体格が貂蝉並み。 その威圧感は半端ではなかった筈だ。

劉辯「…………………」

 

劉辯皇女は、上目遣いで俺を見つめる。 桜色をした唇を噛んで俺を心配そうに眺める。 上手くいくか……心配されているのだろう。

 

一刀「大丈夫ですよ。 必ず──果たして見せます!」

 

劉辯「─────!?」

 

俺は、心配しなくても大丈夫と──声と掛けると同時に、劉辯皇女の頭を撫でた。 もちろん、雷や電のように荒っぽい撫で方では無く、ゆっくり優しく三回ほど撫でたんだよ。 言葉と動作を同時にすれば納得しやすいからね。

 

………俺の対応次第で、あの王允の状況が変わる。

 

そうすれば、劉辯皇女の心も少しは休まるだろし、皇帝に即位されれば、劉宏陛下への約束にも報えるだろう。

 

劉辯「……………………」

 

一刀「───では、行って参ります!」

 

俺は、劉辯皇女に向け敬礼をして、翔鶴率いる第三艦隊に向かう!

 

────最後の作戦を命じる為に!!

 

★☆☆

 

劉協「あ、姉上………? 大丈夫ですか?」

 

劉辯「………………」

 

劉協「姉上? 姉上!?」

 

劉辯「────∂∠◎☆Γю*!!」バタン!

 

劉協「あ、姉上ぇ───っ!?」

 

劉辯「…………ボソボソ( ………御遣い様に萌え尽きちゃた。 後、お願い……)」

 

劉協「姉上ぇぇぇぇぇぇ−−−−−−!!」

 

―――

―――

 

一刀「──限界に達したのか! ならば、早く終わらせないと!!」

 

何進「やれやれ………誰が止めを刺したのやら…………」

 

長門「………まったくだ!」

 

霧島「でも、それが(司令の)良き所ですよ!」

 

一刀「───?」

 

 

◆◇◆

 

【 それぞれの動き の件 】

 

? 都城内 練兵場  北郷 一刀 陣営内 にて ?

 

一刀「───翔鶴! 各艦載機の準備……大丈夫か!?」

 

翔鶴「はいっ! 提督の命令一下、何時でも発艦できます!」

 

瑞鶴「え〜と………翔鶴姉が北方向で、私が南?」

 

サラ「あらっ、提督! 御無事で何よりでした! 子細はビッグEより聞いております。 御無事でお戻りになられた事、主に感謝しなければ………!」

 

ビッグE「全く……To being fearful(ひやひやさせやがって)! 提督がアイツに殺られると思う、此方の身にもなってくれ!!」

 

一刀「小言は後でしっかり聞かせて貰うよ。 その前に例の作戦だ、準備は出来てるかい?」

 

サラ「はい、私の艦載機は東を望んで向かわせます!」

 

ビッグE「アタシは西か! どの方角であろうが任務を果たすのみ! 提督、早く命じてくれ! アタシの勇猛なる艦載機が、発艦したくて騒いでいやがるんだ! 」

 

瑞鶴「どこか厨二臭い台詞だよね、翔鶴姉ぇ?」

 

翔鶴「艦娘……それぞれなのよ。 ………瑞鶴」

 

一刀「だけど、これは遊びじゃない! 漢王朝を存続するための作戦でもあり、敵の動きを確認するためである! 航空写真を撮るようにも伝えて欲しい。 拡大作業が出来るようなサイズの撮影を頼む!」

 

「「「「 ───はっ!(了解!) 」」」」

 

★☆☆

 

? 練兵場 曹孟徳 陣営 にて ?

 

華琳「北郷が何か……始めるようね?」

 

春蘭「また北郷めぇ! 碌でも無い事をしようと企んでいるのだろう!」

 

華琳「春蘭、それは違うわよ? 北郷の考えは確かに奇想天外な物だったけど、執金吾の策を悉く(ことごとく)阻止した。 今回の命じている事も、何かしら切迫した事態が押し迫っている事だわ! 誰か、直ぐに情報を収集──」

 

真桜「た、大将ぅぅぅ! た、大変やぁあああッ!!」

 

沙和「た、大変なのぉ!!」

 

春蘭「ど、どうしたんだ! お前たち!!」

 

真桜「今……王允とかぬかすオッサンが……御遣い様と喋ってたんやけど……」

 

沙和「洛陽の街で、劉辯皇女の皇帝即位を止めさせる蜂起が、あっちこっちで起こっているって! 回りの野次馬に入りこんで聞き付けたの!!」

 

華琳「それは……本当!? 」

 

桂花「───華琳様、それは事実です!」

 

春蘭「桂花! 何処に行っていたんだ!?」

 

華琳「心配ないわ、私の許可を得て孫権軍の下へ出向いて貰ったの。 あの智将で名高い、周公瑾の呼び掛けがあったから……桂花にね!」

 

春蘭「な、なるほど……。 桂花なら……周公瑾の狙いが何かを覚り、逆に偽情報を得る也、此方の望む情報を引き出す事が出来ると、思案された訳ですな?」

 

華琳「………貴女、本当に春蘭? よく狙いが分かったわね?」

 

秋蘭「姉者! まさか───頭を強く打ち付けて!」

 

春蘭「私は───正気だぁぁぁぁぁ!!」

 

桂花「華琳様! 周公瑾の下に情報収集を得意とする将から一報が入りました。 内容が──『蒼天已死、黄天當立』と……洛陽の民衆が騒ぎ立てているそうです! これは、漢王朝の終末を告げる天の御遣いの意思だと!!」

 

『────!?』

 

★★☆

 

? 練兵場 孫仲謀 陣営 にて ?

 

蓮華「そんな馬鹿な! 一刀は──漢王朝の存続を! 劉辯皇女を即位させる為に頑張ったのよ!? それが───なんで、漢王朝の滅亡を示唆する事になっているの? こんなの絶対おかしいわ!!」

 

明命「しかし──どこも、この話で持ち切りです! 実際に雷声(雷鳴)、空を自由に飛び交う『天からの裁きの使者』を見たと証言者が多数!! そのために、信憑性が増して騒ぎが広がっています!!」

 

冥琳「───これは……完全に裏を掛かれました!」

 

小蓮「ど、どう意味なの! シャオにも分かるように教えてよ!!」

 

★★★

 

? 練兵場  主に西涼側 陣営 にて ?

 

詠「つまり……真実の意味を変えて流布したのよ!」

 

月「ご、ご主人様が……悪者扱い!?」

 

ねね「少し違うですぞ? アイツがやった事は全部、ねね達や皇女さま、他の関係者を助ける為に行った策の運用なのです。 ですが、その噂を流した者は、その見た実際の事柄に……都合の良い意味を付けて広めたのですぞ!?」

 

詠「漢王朝を……天の御遣いが不定した……って! 」

 

―――

 

翠「すると……事はさぁ、どうなるんだ……蒲公英?」

 

蒲公英「お姉様、本気で言ってるの!?」

 

翠「冗談、冗談だよ! つまり──漢王朝の求心力が下がって、五胡の奴等が侵入しやすくなる……ってことだよな!?」

 

蒲公英「それだけじゃないよ! 王朝の支配で圧迫された民衆の恨みが一気に吹き出し、あの頃の黄巾の乱以上に、激しい戦乱へ陥る可能性も!?」

 

美羽「な、七乃ぉぉぉ…………」

 

七乃「………大丈夫ですよ。 必ず──助けてくれます。 あの三国一の種馬さんが、私達を救ってくれない事はないんですから。 あの……優しくて暖かい……お人好しの北郷さんが…………」

 

 

◆◇◆

 

【 新たな顔合わせ の件 】

 

? 練兵場 北郷一刀 陣営内 にて ?

 

流琉「──ちょっと季衣! こんな所に勝手に来ちゃて大丈夫?」

 

季衣「シィーッ!! 春蘭さまや華琳さま達に気が付かれちゃうよ! ボク達が兄ちゃんに逢える機会なんてそうそう無いんだから! ───流琉だって兄ちゃんと会いたいんだろう? 」

 

流琉「…………うん」

 

季衣「だったら黙って付いてきなよ! そうしないと───」

 

??「あらっ、誰に気付かれると不味いのかしら? 」

 

流琉「───!?」

 

季衣「さっき、言ったじゃないか! 聞いてなかったぁ!? 春蘭様やかり────華琳さまぁぁぁ!?!? 」

 

華琳「ふふっ……困った子達ね。 私の親衛隊としての役目があるのに関わらず、勝手に此処まで来るなんて………」

 

春蘭「全くだ! 華琳さまの名誉ある親衛隊として泥を塗るとは!」

 

「「 ごめんなさーい!! 」」

 

秋蘭「 …………でも、良かった。 お前達が此処に居てくれて。 北郷の様子を見に行こうと話になり、全員の集合を呼び掛けたら、お前達だけ居ないではないか。 探そうとしたら………桂花が………な?」

 

桂花「貴女達は………まだ一刀に逢ってないんでしょう? だから、此処に来るって思ったのよ。 一刀の指揮する仲間達の下へ………ね!」

 

―――

 

蓮華「冥琳、こっちよ! こっちに一刀達が集まって───!?」

 

恋「……………蓮華……」

 

蓮華「れ、恋? 私の事………覚えているの?」

 

恋「…………コクッ」

 

冥琳「久しぶりだな! 相変わらず元気そうだ! 私の事も………覚えているか?」

 

恋「…………冥琳……」

 

蓮華「恋──ッ!!」ガバッ!

 

恋「───ッ!?!?」

 

冥琳「『朋有り、遠方より来る、亦悦しからずや』………私の心情だよ、恋!」

 

恋「──? でも、冥琳……喜んでるの……分かる。 凄く……」

 

小蓮「ちょっと待ちなさい! 恋、お姉ちゃんや冥琳を覚えてて、シャオを忘れたなんて言わせないわよっ!?」

 

恋「…………………………」

 

小蓮「な、何よ!? 本当に忘れちゃったのぉぉぉ!?!?」

 

恋「シャオ………大丈夫。 恋……忘れない。 友達も………ご主人様も………… !」

 

―――

 

月「詠ちゃ〜ん! ま、待ってよ!」

 

詠「月ぇ、早く早くぅ!! 早く行かないと……一刀の反撃が見えなくなるわよ!?」

 

ねね「恋どのぉぉぉ──!! 一人でどちらに行かれたのですか〜!?」

 

月「ハァ……ハァ……きゃあああああッ!!」

 

詠「月ぇえええッ!?」

 

─────ガシィ!

 

??「──急ぐ場合、足元に注意されるが良いと思うがな。 ……っと、失礼! 今は太守様だったか。 ご無礼を───」

 

月「───へ、へうぅぅぅ! 思春さん! お願いですから、昔と同じように接して下さいっ!!」

 

詠「し、思春、ありがとう! ごめんねぇ月ぇぇ……ボクが急がせちゃたから」

 

月「ううん───早く行こう! ご主人様の活躍を──見届けなくちゃ!!」

 

―――

 

翠「蒲公英、美羽、七乃! 此方だ! ご主人様は、この先に──っ!?」

 

星「相変わらず元気のようだな……馬孟起殿よ。 私を覚えているか?」

 

翠「───ふん! 常山の趙子龍と言った方がいいのかい? それとも……あたしを散々からかった……メンマの伝道師とも呼んだらいいのか?」ニヤッ

 

蒲公英「────姉さま…………」

 

星「どちらも正解だ───我が真名を、また預かってくれるか? 錦馬超殿よ! それに……馬岱殿もな?」

 

蒲公英「星姉さま────!! タンポポも真名で呼んでいいから! 前と同じでいいからぁ!!」

 

星「─── わかった! 蒲公英、お前も息災で……何よりだ!」

 

蒲公英「───星姉さまも!!」

 

翠「───ったく、面倒くせぇ言い回ししやがって……。 一言、声を掛けてくれれば済むじゃないのか? あたしの真名は………前の時に預けてあるのに……」

 

星「………会う者が全部が全部、翠のような者なら楽なんだが……そうもいかんのだ。 お前達の方でも……記憶が無い者が居ないか?」

 

翠「んーとぉ………張文遠、華雄の二人だよな? 蒲公英!」

 

蒲公英「う、うん! そうだよ!!」

 

星「此方は───」

 

風「星ちゃん……いつまで風たちを除け者にしてるのですかー!? いい加減にして貰わないと風の機嫌を損ねますよー? ぷっぷくぷ〜!!」

 

稟「仕方ないじゃないですか。 蜀で苦楽を共に過ごして来た仲間なんですから。 元敵国であり……恩より怨の方が強い彼女たちにとって……私や風を覚えてくれているか………分かりませんからね?」

 

翠「………あのなぁ……あたし達、西涼の者を舐めるなよ? 母様の件は華琳……曹孟徳より正式な謝罪と理由、そして丁寧に埋葬してくれたんだ! わだかまりなんてないからな! それに──あたしも覚えているぜ!!」

 

蒲公英「覚えている者は、ここにも居るぞぉぉぉ!!」

 

稟「…………そうですか。 ならば……感謝の意を込めて、私の真名を預けます」

 

風「風も預けますよー! え〜と、失禁馬超さん?」

 

翠「だ、誰がぁ失禁だぁぁぁ!? 」

 

蒲公英「まあまあ……お姉さま! 場を和ませる軽い冗談だから………」

 

翠「ば、馬鹿ぁ! 軽いどころか、あたしの二つ名が危ない性癖になっているじゃないか! 洛陽全体に知れ渡ったら、どぉーするんだよっ!?」

 

―――

 

美羽「な、七乃………!」

 

七乃「美羽さま………北郷さん………ですね。 あの時より、少し老けたかもしれませんが………あの感じ、あの眼差し、あの頃より変わっていませんね……!」

 

―――

 

霞「………あれが、月の言ってた『北郷一刀』やないか? ──華雄! 」

 

華雄「天の御遣いの技、特と拝見させて貰おうじゃないか!!」

 

 

◆◇◆

 

 

【 艦載機 発艦 の件 】

 

? 都城内 練兵場 にて ?

 

《 華琳 視点 》

 

私達が到着した時、広い練兵場に──それぞれが背を向けて構える四人が居たのよ。 銀色の長髪を棚引かせる将、二つ結びにしている将、金髪長身の将、全体を布地で覆っている将が、まるで──何かの儀式を行うかの如く佇んでいたわ!

 

その内の二人は、秋蘭より簡素で一回り大きい弓を構え、空に向けて矢を放つ態勢を示す! 金髪の将は……両手に武器らしい黒い物を携え、最後の将は、厚手の紙の集まりを開き、何やら祈っている様子!

 

その四人より少し離れた先には、天の御遣い『北郷一刀』と配下と覚しき将が眺め、身動き一つせず四人の様子を見守っていた!

 

私とは違う覇気ではなく………流れてくる気は落ち着いた清流のような気。

 

気が付けば、私の横に居る流琉と季衣は………日頃の子供らしい様子を見せず、滂沱の涙を数行、頬に作りあげ……北郷一刀の様子を注視している。

 

また、春蘭も桂花も………一言も声を発せず様子を見守っているかのように見える。 ただ、何時もの二人と違うのは違和感を感じるのは──優しく柔らかい視線で、様子を見ている為なのだろうか?

 

いったい、これから何が始まるのか───私の心が期待に膨らませた。

 

★☆☆

 

《 恋 視点 》

 

ご主人様………やっと逢えた。

 

恋は……あれから……多くの友達……出来た!

 

セキトやねね、他の皆以外の友達……たくさん、たくさん出来た!

 

だけど……ご主人様は………恋より早く居なくなった。

 

恋の手を握って……笑いながら……目を閉じて……二度と開かなくなった。

 

………哀しかった。

 

………悔しかった。

 

握っていた手が、どんどん冷たくなっていくから。

 

幾ら……恋が強くても………ご主人様を連れ去るモノ……追い払えなかった。

 

今度も、恋は………付いて行く!

 

友達が沢山できて……恋は幸せだったから……。

 

ご主人様と出逢えて………幸せだったって……『ありがとう』の言葉と共に………ご主人様に御礼したい………!

 

★★☆

 

《 一刀 視点 》

 

気が付けば、諸侯が集まり──第三艦隊の様子を伺っている。

 

別に見られて構わないし、技術も製作も……この時代では追い付かない。

 

しかし、一人だけ……かなり興奮した様子で見ている者が居たんだよ。 目を血走りながら……説明を求める将が。

 

真桜「そこの御遣いの兄ちゃん! 頼むから教えてくれへんか!? あの空飛ぶ絡繰りの流れるような形、翼の均等なる美しさ! あれこそ造形究極の美! なあぁぁぁ───どうしてもぉ、あの絡繰りを知りたいんや!! 教えてぇなあぁぁぁっ!!」

 

まさか、この時代で……航空機の良さを分かる者が居るだと!?

 

軽巡洋艦の夕張が居れば、良き友達になっていたかも知れないが、残念な事に……俺の所には、まだ就役してない。

 

凪「いつもの事ですので、どうぞ気になさらなくても大丈夫です! ご命令頂ければ、即黙らせに行きますので!!」

 

────な、凪、落ち着こうか?

 

今は二人とも、所属は違うのだから簡単に接触は出来ないよ。 もし、作戦に支障をきたすなら──その時に代表として頼むから。 但し……穏便にね?

 

凪「はっ……はい!」

 

俺は、多数の見守る中──遠くで此方を見守る劉辯皇女、劉協皇女を見付ける。

 

劉辯皇女は、手の指を組んで目を閉じて祈るような態勢で、俺たちを見つめる。 劉協皇女は、劉辯皇女を支え、同じように注視している!

 

 

───失敗は出来ない。

 

だが───不安も無い!!

 

 

 

旗艦の翔鶴は、あの通り真面目で責任感も強い。 彼女に任せておけば、この大役も難なくやり遂げてくれる。

 

それに、瑞鶴も姉を支えて頑張ってくれる。 彼女の快活さは……五航戦の要だ! 翔鶴が不安になっても……そこを補うために動いて作戦を成功に導いてくれるだろう!

 

サラやビッグE………他の艦娘と全く違う出身であり、前は敵対していた身。 だけど……その分、翔鶴や瑞鶴の気付かない弱い場所を知ってる。 敵として対してから分かる事を。 だから、その働き──大いに期待しているよ!

 

だから───心配しなくて大丈夫だ!

 

俺の信頼する仲間たち───だからな!

 

 

 

――――

――――

 

《 第三艦隊 視点 》

 

翔鶴「………提督? あの、そのぉ……独り言が全部……聞こえているのですが………。 信頼して頂くのは……大変嬉しいのですけど…………」

 

瑞鶴「わ、わざとなの!? ボケてるのぉ!? そ、そんな事を何気に口にする提督なんてぇ、これで起こしてあげるわ!! 目覚まし代りに……九九式艦爆発艦準備! 狙いは一刀提督! 準備出来次第発──」

 

ビッグE「止めないか! 我々に対する提督の信頼が厚い事が判ったんだ! ならば、その厚情に応えなければならんのが、アタシ達の役割だろう? ならば、今の状況は一刻の猶予も無い筈じゃないのか!?」

 

翔鶴「そうです! それに……私達が失敗すれば、一航戦の先輩方にも悪影響が。 ここは何としても──武勲を決めなければ!!」

 

ビッグE「それにな………どこの世界に、照れ隠しで艦爆発艦させて、提督を目標に定める艦娘が居るんだ! 金剛の台詞じゃないが時と場所を弁えろ!!」

 

瑞鶴「て、照れ隠しじゃ………ないもん…………」

 

ビッグE「何にしても……早く行動を起こし、事態を収拾、情報を得なければならん! アタシ達の信用が関わっているんだから!」

 

サラ「あらあらあら──ビッグEのやる気に満ちた顔も久しぶりね。 では、私も提督や仲間の為、この世界の隣人の為にも頑張りますわ!」

 

─────バッ!!

 

翔鶴「──全航空隊に次ぐ! 漢王朝の浮沈、私たちの活躍にあり! 必ずや各々の目標をやり遂げて下さい! 提督からの期待、他の艦娘達の働き! 私達を信じてくれる人達の為にも──決して裏切る事なきように!!」

 

瑞鶴「私達の航空隊の錬度……見せてあげる! ………赤城さんや加賀さんにも…………絶対に負けないんだからねっ!!!」

 

ビッグE「あれだけの飛行じゃ……準備運動にしかならない! アタシの艦載機達はね、まだまだ満足なんかしていないよ! 更に活躍の場を求めているのさ! あの大空の舞台で、再度の大活躍する日を夢みているからな!」

 

サラ「提督が目指されるのなら………私達は従うのみ! それもまた──主の御導きであり、あの大戦で亡くなった者たちへの償いでも………あるのだから………!!」

 

 

 

翔鶴「────では、行きます! あの大空へ向けて、各自発艦始め!!」

 

 

―――――

―――――

 

 

この後、四方に向けて、新五航戦の艦載機が発艦した!

 

編隊は五機編成……しかし、通常の縦一列の編隊(トレイル)ではなく、横一列に並んだ編隊(アブレスト)にわざわざ直しながら。

 

目標は、碁盤の目の様になった洛陽の空。

 

 

 

──後世の歴史書に曰く。

 

『この日、洛陽の民、様々な奇譚を見ゆ。 瑞兆とは、斯くの如しかと、民の間で長きに渡り、語り継げられた』と。

 

 

 

 

 

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あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

今回は義輝記の筈だったんですが………途中より進まなくなりました。

 

気晴らしに進めていた、こちらの方が早めに上がりました。 約束は2週間後に上げるとの事でしたが、完成したなら出して楽しんで頂ければな……と思いましたので。

 

そんなわけで、義輝記を楽しみにしている方は、ごめんなさい。

 

もう少しお待ちを………

 

説明
義輝記より、此方が早く上がりましたので。 義輝記は、まだお待ちを。
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コメント
スネーク提督 コメントありがとうございます! そうですよね……。 近頃見る機会が無いのが、ちょっぴり残念。(いた)
横一列の編隊って綺麗だよねぇ…(スネーク)
雪風提督 コメントありがとうございます! かなり重要な任務になる話です。 その任務とは、次回に……!(いた)
綺麗な編隊なり・・そして、我に追いつく機体なし・・。情報こそ命・・この任務必ずや・・完遂っす。(雪風)
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