ゼロの使い魔 AOS 第16話 古典的恋愛物語 |
いつの時代にも恋物語や恋愛物語というものがある。
平凡な日常をおくる女性たちが空想の恋や恋愛に自分を重ねて想いふける。
ある時は若き貴族たちに思いを寄せられる美しいお嬢様の上流社会の恋、またある時は敵国の王子様と王女様の命がけの悲恋。
見目麗しい旦那さまとメイドの身分差の恋、美しい妹に恋焦がれる兄が妹と結ばれるために家族や社会を敵に回す禁断の恋。
時代がすぎても、基本的な構成は人物が変更されるだけで変わることはない・・・いわいる古典とよばれる話だ。
それでも世の女性たちを魅了するのはそれだけの魅力があるからだろう、今日もどこかで恋の話が咲き乱れる。
トリステイン魔法学院の生徒には貴族の子女たちが集まっている、上流家庭に生まれ蝶よ花よと育てられてきたお嬢様たちがほとんどである。
そうでない女子生徒もいるのだが基本的には「結婚するまでは殿方に体を許してはいけません」、そういう貞操観念をもった少女たちである。
しかし・・・いくら親や学院が純粋に育てようとしてもそこは年頃の女の子、恋という甘い幻想には惹かれてしまうものである。
「あなたたち、ちょっと良いかしら」
三人組の少女たちに話しかけて来たのは同級生のキュルケだった。
「あら、めずらしい!キュルケが私たちに声をかけてくださるなんて」
「そうね、いつも男の子としか話していないあなたが女の子と話すなんて」
「今日は収穫がなかったのかしらね、微熱さん?」
・・・あまり良い雰囲気ではない、女子特有のハブる空気が全開である。
そもそもこのキュルケ、女子の評判が非常に宜しくないのである。
故郷のゲルマニアで問題をおこしてトリステインに留学してきたとか、恋人のいる男子生徒に手を出しまくっているとか・・・。
大体当たっている、それでもその美貌とプロポーションで男子からは絶大な人気を博しているので表立って虐めたりする女子はいないのだが。
「あんたたち、相変わらず口が悪いわね〜」
「まさか、あの!キュルケにそんな事をいわれるなんて思ってもいませんでしたわ!!」
キュルケもお嬢様口調での嫌味なセリフに、いい加減うんざりしているのだがここは気を取り直してもう一度話しかける。
「ふ〜〜まあいいわ、それよりもすごく面白い話があるんだけど・・・この話に乗らない?」
「キュルケの面白い話なんて下品なお話しか想像できないわ、いったいどんなお話なんでしょう?」
「ルイズの恋人が学院の正門まえに来ているのよ、しかも使用人の男の子みたいなのよ・・・どう見に行かない?」
「ルイズってあのヴァリエール家のルイズゥ!?しかも使用人って・・・平民の恋人!?」
「しかも何か事情があって学院に入れないらしいの・・・禁断の恋かしらね?」
「「「キャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」」」
そんな訳で三人のお嬢様はキュルケの話に乗ったのである、正直キュルケにはあまりお近づきになりたくは無いのだが禁断の恋という響きには抗えない!
正門前に案内された三人が見たのは、見たことの無いような服を着た黒目・黒髪の少年だった。
「みんな、その子が例の子よ!」
「へ〜、この子があのルイズの?」
「外国人かしら?」
「なに〜、この服?おかしな色合いだわ」
ルイズの恋人らしい少年は三人のお嬢様の姦しさに照れていた、うら若き乙女に囲まれる十六歳の男の子なら仕方が無い反応ではないだろうか。
そして...
「じゃあ、囲むわよ!」
「「「ハ〜イ!!」」」
少年は、女の子の檻の中に閉じ込められた・・・・・・お嬢様たちの匂いに囲まれて。
キュルケと三人のお嬢様は、少年をルイズの部屋まで無事に送り届けることに成功した。
「俺は平賀才人だ、よろしくなキュルケ!」
(ヒラガサイト・・・なんて言いづらい名前なのかしら、そして平民の癖に貴族に対する言葉遣いが良くないわね)
そんな事を各自思いながら、ヒラガサイトと言う少年を置いてルイズの部屋の前から離れていく・・・ここからが本番だ!!
キュルケは前日にヒラガサイトと言う少年に会っている。
いろいろと多忙なキュルケだがめずらしく休日の予定がなく最近知り合った友人と院内を歩いていると、正門の外をうろうろする不審者を見つけて声を掛けたのだ。
話を聞いてみるとどうやら同級生のルイズの実家の使用人でルイズに荷物を渡しに来たという、そして何を思ったのかその荷物を自分の代わりに渡して欲しいと頼んできた。
この荷物には何かある・・・そう、学院に届けたという記録が残っては都合が悪い何かがある。
そう思って荷物の受け渡しを引き受けたキュルケだったが、同時に手渡された手紙(メモ)を見て都合が悪い何かを確信した!!
━━ルイズ、昨日は先に帰ったんだよな?色々と言いたい事はあるけれどそれは次に会った時に話すよ。家に置いていった着替えを届けに来たから。━━
ビンゴ!!間違いなく恋人どうしのやり取りである、しかも家に置いていった着替えという事はそういう関係なのはほぼ間違いない!!
トリステイン王国で三本指に入る名門ヴァリエール家のお嬢様のルイズとそこの使用人らしき平民のただならぬ関係!!これは使えるし、個人的にも面白そうだ。
そんなわけで着替えとメモをルイズに届けたあとにこの件をどう料理しようかと楽しみにしていたのだが、肝心のルイズが部屋に閉じこもって出てこないのである。
肩透かしを食らったキュルケだったが閉じこもっている原因があの使用人では?と当たりを付けて別の料理法は無いものかと考えていのだが、早くも好機が到来した!
場所は移ってここは普段授業で使われる教室の中、キュルケと三人のお嬢様・・・だけではなく二十人近い女子生徒が集まっている。
いったい何が始まるのか?
「例のものは、持ってきてくれたのかしら?」
「ちゃんと用意してあるわ・・・遠見の鏡よ」
遠見の鏡とは遠隔地を映し出すことのできる鏡、術者がいなくても効果を発動するマジックアイテムである。
ちなみにこの学院のトップ、オスマン学院長も同じものを持っているのだがこれは三人のお嬢様の自前の品である。
「ふふ・・・ありがとう、それじゃあみんなあまり大きな声を出さないようにね〜」
(((((コク・・・)))))
「それでは名門ヴァリエール家のお嬢様とその使用人の身分の差を越える禁断の恋物語、始まり〜始まり〜」
そう大掛かりな覗き(ピーピング)だった・・・。
そして、遠見の鏡に映された光景は貴族のお嬢様がたには非常に刺激的で未知の世界だった・・・。
同級生のルイズが使用人の少年と顔を合わせて向かい合っているのだ・・・おそらく唇が当たってもおかしく無い距離で。
そして、少年がルイズにボディタッチをしていく・・・頬に首に手首に次々とタッチをしていくのである。
ルイズは顔を真っ赤にしながらも抵抗をせず、それを受けいれてるのである。
目の前に映し出される官能チックな世界、教室に集まったお嬢様たちは固唾をのんで凝視するのであった!!
同級生の普段は見られないその姿に教室のテンションはうなぎ上りである・・・もちろん静かにしているが。
そして場面は移り変わり今度はルイズが攻めているように見える、早い話が「あ〜ん」の場面になったのだ。
恥ずかしがる少年・・・そして、高圧的にクッキーをその手から食べさせるルイズ・・・。
この世界は魔法が発達していて、魔法を使えば女でも男と互角に戦うことはできるし上回る事もできる。
だが基本的には男尊女卑の風潮で、男は浮気をするもの女は耐えるものみたいな所がある。
実際に彼女たちの男家族にも愛人や寵愛しているメイドなどがいるのだ、だが目の前の光景はどうだろうか・・・。
身分が上のお嬢様が身分が下の平民を威圧的にかわいがっている様に見えるのだ、まさに未知の光景!!
恋愛書物などに自分を重ね想いふける事はあったが、こんなジャンルは見た事が無い・・・まさに新世界である。
少女たちは期待する、この後の展開を!!
いわゆる・・・愛する二人の身体が重なり合う展開を!!!
だが・・・無常にもその期待は叶わない、なぜならば...
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「だれですか!!教室を勝手に使っているのは!!・・・あなたたち!!自分の部屋に戻りなさい!!!」
「「「「「きゃ〜〜〜〜〜〜!!ごめんなさ〜〜〜〜〜〜い!!!」」」」」
...見回りに来た、ミセス・シュヴルーズの一喝だった。
....第16話 古典的恋愛物語 終
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執筆.小岩井トマト
説明 | ||
やっとの事で仲直りをはたした才人とルイズ。 仲直りをする過程に色々あったものの修復できて内心うれしい二人です。 しかし、仲直りをする過程の舞台裏では・・・。 第16話は第14話&15話の裏エピソードみたいな扱いです。 |
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