【月刊少女野崎くん】熱情【堀鹿】
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堀先輩は情熱的というか熱情型というか、何かに夢中になると周りが見えなくなる傾向がある。

その熱をもっとも傾けるのは演劇……、いや、鹿島だ。

鹿島を称賛し、部活へ連れて行くためなら手段を選ばず、鹿島のために俺のアシスタントをしている。

そんな想いを一身に受ける鹿島も、思考は突拍子もないものの、先輩を尊敬し、どんなことでも受け入れ、叶えようと努力しているのがわかる。

こちらも熱情だな。

 

 

そんなある日――

 

「そんなに泣くなって……。たかが音痴で見捨てたりしねぇから」

「だって、だって……」

音痴がバレて泣き出した鹿島を、慰める先輩。

先輩の態度次第ではぶん殴る勢いだった瀬尾は拳をひっこめ、間に入って右往左往していた佐倉もホッとしている。

この段階では、このままお付き合いでもはじめたらネタになるな、程度に思っていた。

 

「鹿島、聞いてくれ。俺は――」

漸く落ち着いた鹿島の、まだ潤む瞳を見据え、先輩が口を開いた。

いつにも増して真剣な目つき、熱を帯びた声。

遂に告白か?俺達は固唾をのんで見守ったのだが……。

 

 

「お前が…、ついでに世界中の音痴も楽しく歌えるものを、絶対に作ってみせる!」

 

――ああ、俺達の認識が甘かった。

鹿島のことには暴走しがちな先輩が明後日の方向に突き進んでしまったら、を誰も考慮していなかった。

 

「なんでそっちに行った?」

瀬尾のツッコミが速かった。

珍しく真っ当なツッコミで先手を取られたのが妙に悔しい。

佐倉は……、脳内の処理が追いつかないのか固まっている。

こっちも心配だが……。

 

鹿島は?こんなぶっ飛んだ宣言をされた鹿島はどうしている?

佐倉のようにフリーズしても、ドン引きして青褪めてもおかしくは……。

 

「せん…ぱい……」

泣いていたのとは違う熱を帯びた瞳。

頬を染め、耳まで真っ赤にして……、明らかに照れている。

鹿島が照れるのは珍しいと思うが……、そんな要素どこにあった?

自分のために何かをしてくれるなら、何でもいいのか?

 

「絶対ですよ?約束ですよ?」

「ああ、必ず。俺が約束を違えたことはあるか?」

「ない…です……」

ひしと抱き合いながら交わす言葉、二人の間に流れる空気は甘い。

甘いけど、なんだか釈然としない。

 

「…………どうしてこうなった?」

俺が瀬尾のツッコミに心の底から賛同したのは、後にも先にもこの時だけだ。

 

「ノーパンの方がまだマシだよ……」

佐倉にいたっては酷く混乱しているのか、奇妙なことを口走っていた。

 

これはぶっ飛びすぎてネタにならないし、ネタにしようとしても先輩に即バレて怒られそうだ。

そう判断した俺は、メモに『熱情型の男女は両方を暴走させないよう注意』とだけ書き込んだ。

 

十数年後、本当に音声合成技術の開発・実用化してしまった先輩と、それを公私ともに支えた鹿島をモデルに漫画を描くことになるとは、まだ知る由もなく……。

説明
二次創作もOKらしいので、野崎くんで堀鹿。
堀鹿だけど視点は野崎くん。
以前ぷらいべったーに投下したもので...、タイトルの割に中身は軽いです。
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