東京タワー |
『東京タワー』
それはある晴れた日の昼下がりの午後だった。
操がいつものように、裏長屋の引き戸をがらりと開けた。
「いらっしゃい。」
と、べしみがちょこちょこと走り出て、操のぽっくり下駄を土間の上にそろえて、
「さあさあさあ」と畳部屋の畳の上へと促した。
畳の大きさは四畳半ぐらいの小さな部屋。
そこは、操の遊び場で天国だ。
「今日はなんの遊びをしますかね?」
と、べしみが言うと、式尉が、
「やっぱりお手玉がいいでしょう。」
と、答えたので、「はい、まずはお手玉ですね」とまずべしみが見本を見せました。
「ばか、おまえがやるんじゃねぇよ。」と、
式尉はいつものことで、怖いです。
そこ般若がひらりと躍り出て、
「私と一緒にお手玉をやってみましょう。」
と、操の手をとってお手玉をやってみましたが、
後ろから「俺もお手玉やりたい〜」と、
火男がのしかかってきたので、般若とのお手玉は阻止されました。
「やっぱりあの人、顔怖いよね。」
と、べしみは言います。
操もその通りだと思いますが、ちょっぴり寂しい気もしました。
さて、べしみはあやとりの糸を出してきました。
「んじゃ、あやとりやってみましょう。」
べしみは手先が器用なので、糸くりがうまいです。
「これできますか?」
と操に聞きます。それはほうきの形でした。
操はできそうにないので、「できないもん、そんなの・・・・。」
と、操は答えて、不機嫌な顔つきになります。
べしみはその顔を見るとあわててほかのやつに糸を渡して、
「川やって。あれならおまえでもできるだろ。」
と言いました。
火男は「なんで俺が」と思いつつ、
「はいはい、これが川ですよ。最初はこの形だね。」
と言います。
「うん、できた。」
と操は素直に答えましたが、なんだか物足りなくて悲しい気持ちがなくなりません。
黙って見ていた式尉が、
「私もこれぐらいしかできないんですが・・・。」
操の手からあやとりを取って、別の形に変えました。
「これ、簡単です。最初はこれからやってみましょう。」
で、般若と三人で?操はあやとりをはじめました。
べしみは不満そうです。
「またこの形ですか。」
「いいじゃねぇか。繰り返し繰り返し遊ぶんだよ。」
「でも最後それ、ばらけるから・・・。」
言ったとたんに、操のあやとりの糸が、はじめの糸の状態になりました。
みるみるうちに、操の顔が、泣き顔になりました。
「ほらやっぱり・・・・。」
火男と般若は数字に弱いので、こういうときどういえばいいのかわかりません。
2人の視線を感じたべしみはあわてて必死であやとりをくって、操に叫びました。
「こっ、これが東京タワーですっ。ほらすごい形ですね。すごい技なんですよ。」
操がようやく、か細い声で言いました。
「東京タワー?」
べしみはもはや、自分でも何を言っているかわかりません。
「あるんですよ。東京にはいつかタワーができるんです。」
「タワーって何?」
「だっ、だからっ、塔です。」
「お寺の上にあるの?」
「そっ、そんな形だといいですけどもねぇ・・・・。」
「操、変な形の塔やだな。」
「そっ、そうっすねぇ・・・・・。」
他の三人は、今度はべしみに助け舟を出してくれそうにありません。
あわててべしみは、後ろにある障子紙の引き戸の前にどんどん、そのあたりにあった、
木の台をつみあげていきました。べしみは言いました。
「の、登ってみてください。」
「え、操これのぼるの?」
「うんうんジャングルジムだな。」
「おまえは何も言うな。」
操の背後で、式尉と般若が今虎視眈々とにらみあっているようです。
操は一段ずつ登ってみました。
操の東京タワーはぐらぐらして、あぶないです。
最後の段にまでたどりついたとき、
突然障子紙の戸が開きました。
それは間近で見ると、とても綺麗な男の人の顔でしたが、操はよく覚えていません。
なぜならその瞬間、東京タワーが足元から崩壊してしまったからです。
「なんでこかすの?なんでこかすの?」
操が大声で泣いていると、その綺麗な男の人はなぐさめにやって来て、操の頭を優しくなでてくれました。
「なんで大声で『うるさい』って言うのかねぇ。」
「蒼紫様はああいうお人なんです。」
「ああいうお方っていうか・・・・」
今日も蒼紫の部下四人たちの恨み言は、続いているようでした。
説明 | ||
ドリーム小説でしたが、蒼紫操で変換しています。 | ||
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るろうに剣心 蒼紫 操 | ||
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