本編補足 |
白そして青
C1 交渉
C2 大多数の嘘は真になる
C3 参戦
C4 虎の威
C1 交渉
グリーンアイス連邦。ノース都市国家のアラグマ基地に向かうテウシン王国のトン級小型起動城塞で、シル一族の所有する記念機動城塞のグアラン。格納庫の色あせた壁を見つめ、手を添えるテウシンの血の名誉将軍シルパラ。扉が開き、現れるシルパラの息子のシルトラ。
シルトラ『父上、お姿を見ないと思えばこの様な所に。』
顔を上げ、シルトラの方を向くシルパラ。シルトラはシルパラの傍らに寄る。
シルパラはシルトラを見た後壁を見上げる。
シルパラ『…お前が産声を上げたのもこの中だったな。』
シルトラは色あせた壁を見つめる。
シルトラ『はい。』
正面を向くシルパラ。
シルパラ『…あの時の賑わいが懐かしい。』
シルパラの方を向くシルトラ。シルパラはシルトラの方を向く。
シルパラ『…我が一族もわしとお前だけになってしまった。』
シルパラを見つめ、頷くシルトラ。シルパラは格納庫の方を向く。
シルトラ『しかし、シンノ一族の行動には目に余るものがあります。この起動城塞はモングとの戦いで最初から最後まで我々と共に歩んだことを知らぬわけでもあるまいにオンボロと。』
頷くシルパラ。
シルパラ『そうだな。あの男はまるで自領のように振舞う。』
シルトラ『ホクガ殿の言っていた通り、あの男は獅子身中の虫…。』
頷くシルパラ。
シルパラ『虫ならば殺せば良い。しかし、奴は各国に血縁の網を張り巡らしたやっかいな蜘蛛だ。ギュウキュウ王時代、国家の財務を管理し、奴の分からないくらい遠縁のインスパイアヤデがギュウジュウ王時代の財務管理を行っていた。思えば王に献上する女性も突出して多く、不審な点はいくつもあった。非常にしっぽを隠すのが上手い男だ。ギュウキュウ王を殺し、今回の事でギュウジュウ王を事実上失脚させたのはおそらく奴だろう。しかし、証拠がない。だが、今回は調子に乗りすぎた。元来、尻尾を隠すのが上手い男が、周りが若輩者達ということもあってか、長年の鬱憤からか箍が外れたか。』
シルパラの方を向くシルトラ。
シルトラ『父上。では…。』
シルパラ『どうやら奴はテウシン国内に闇商を入れているという信憑性の高い情報が入っている。帰国次第、各王達の報告し、グリーンアイス連邦とツァ王国を通し、貴族連合の力を使い、シンノ一族を倒す。』
シルトラ『は!』
扉が開き、駆けこんで来るシルトラの配下A。
シルトラの配下A『シルパラ様!シルトラ様!このようなところに…。』
シルトラの配下Aの方を向くシルパラとシルトラ。シルパラは一歩前に出る。
シルパラ『どうしたのだ?』
シルトラの配下Aは跪く。
シルトラの配下A『はっ!…シンノパクラ殿が処断されました!』
眉を顰めるシルパラとシルトラ。
シルトラ『なっ!』
シルパラの方を向くシルトラ。シルパラは頷く。
シルパラ『…分かった。下がってよい。』
頭を下げ、格納庫から去るシルトラの配下A。頷くシルパラ。
シルパラ『うむ…。』
シルトラ『…父上。至急戻り、王国間との調整に入るべきです。』
首を横に振るシルパラ。
シルパラ『いや、時間がない。グリーンアイス連邦との外交時刻は差し迫っている。』
グリーンアイス連邦。ノース都市国家。グリーンアイス連邦議事堂。円形の議場を埋め尽くすゴーラン都市国家代表のダランセル、女性でブルベド都市国家代表のコーをはじめとした都市国家代表者達。中央の高く巨大な柱の上にあるお立ち台の上に立つシルパラとシルトラ。彼らの傍らに寄るグリーンアイス連邦総代表レッサーパンダ獣人ラス。
ラス『テウシン領の国々とわがグリーンアイス連邦との相互交通条約と経済協力は満場一致で採択された。』
深く頭を下げるシルパラとシルトラ。シルパラは頭を上げ、グリーンアイス連邦の都市国家代表たちを見つめる。
シルパラ『…さしでがましいようですが、実はもう一つお願いがあります。我が国はグリーンアイス連邦と共に歩む用意があります。』
一斉にシルパラの方を向く一同。
シルパラ『我が国はヂョルガロン王国との共同統治により成立しましたが、宮中の混乱に寄り、ヂョルガロン王国のギュウジュウ王は精神に異常をきたして、もはや統治どころではありません。そこで、我が君であるテウシン王が急遽、国家の舵をとることになりました…しかし、王といえど、まだ年端もいかない少女です。隣国のグリーンアイス連邦に何卒、お力添え願いたい。無論、ただでとは言いません。貴国のテウスの土地の軍事利用を許可し、その額は全て我が国が負担いたしましょう。』
顔を見合わせるグリーンアイス連邦都市国家代表達。
シルパラ『その代わりに、テウシン王国と軍事同盟を結んでいただきたい。』
眼を見開くラス。
ラス『それは願ってでもない。あの地に基地を建設できればクリシュナ王国への抑えとなる。』
ダランセル『資金も全額負担とは…。』
書記長席から立ち上がるグリア都市国家代表でグリーンアイス連邦書記長バルコフ・スターリング。
バルコフ・スターリング『確かに、我々にとってはいい話であるが…。テウシン王国独自で軍事同盟を結ぶ理由は?』
シルパラはバルコフ・スターリングの眼を見つめる。
シルパラ『はい。我がテウシン王国はテウシンの地の盟主国ではありません。共同統治のヂョルガロン王国が盟主国なのです。そして、テウシン王国は他国と比べ、基盤が脆弱であり、兵力はほぼヂョルガロン王国に持っていかれてしまいました。そこでここは強国であるグリーンアイス連邦のお力添えをぜひ得ておきたいのです。』
頷くバルコフ・スターリング。
バルコフ・スターリング『ふむ。分かった。』
席に座るバルコフ・スターリング。ラスはグリーンアイス連邦の都市国家代表達の方を向く。
ラス『突然のテウシン王国からの申し出、わしは受けないわけにはいかないと思うのだが…。』
グリーンアイス連邦議事堂に巻き起こる拍手。
ラスは頭を掻き、シルパラの方を見つめる。
ラス『ふむ。どうやら満場一致のようだ。』
頭を下げるシルパラ。ゆっくりと手を叩きながら眼を細めてシルパラの方を見つめるバルコフ・スターリング。
トン級小型起動城塞で、シル一族の所有する記念機動城塞のグアラン艦橋。椅子に座るシルパラとシルトラ、配置につくシルトラの配下達。
シルパラ『至急、テウシン王国に戻るぞ。保険はかけておいた。』
頷くシルトラ。動き出すグアラン。
C1 交渉 END
C2 大多数の嘘は真になる
テウシン王国首都ブザのダンレン宮殿。奥の間にはモング国テウシン領総督の金絲猴獣人ポッパンの死体を加工して作られた玉座に座るテウシン王国国王でテウシン王の血を引く美少女スヒィン。隣にはユ王国国王の容姿端麗なユガの息子で容姿端麗なユーリと内務官でリマ教の僧侶パゴタが並び、その他の文官達が並ぶ。スヒィンの前に跪くシルパラとシルトラ。
スヒィン『シルパラにシルトラ、戻ったのですね。』
シルパラ『はっ。』
シルトラ『はっ。』
スヒィン『…シンノ一族は一夜にして逃げてしまいました。して…。』
シルパラ『はっ、グリーンアイス連邦とテウシン領の各国は相互交通条約と経済協力を採択し…。』
顔を上げるシルパラ。
シルパラ『私の独断でグリーンアイス連邦とテウシン王国との軍事同盟を締結させました。』
立ち上がるスヒィン。
スヒィン『軍事同盟?なぜ、グリーンアイス連邦との軍事同盟が必要なのですか!?』
頭を下げるシルパラ。
シルパラ『はっ、それは我が国の兵力では心ともないため、異民族との守備に若干の不安があるからです。テウスにグリーンアイス連邦の軍事施設の建設を許可し、全額をこちらが引き受けることを条件にしました。』
スヒィンはシルパラを見つめる。
スヒィン『全額を…。』
シルパラ『無い兵力は買うしかありません。』
頷くスヒィン。
スヒィン『そうですか。貴方がいうことであれば間違いはありません。』
頭を下げるシルパラ。
テウシン王国首都ブザのダンレン宮殿。階段を下りていくシルパラとシルトラ。シルパラはシルトラを見つめる。
シルパラ『よし、報告は終わった。わしは各国との調整に入る。』
シルパラに頭を下げるシルトラ。
シルトラ『はっ。』
シルパラ『後のことは頼んだぞ。』
シルトラは頭を下げ階段を登って行く。
首都の方を向き、顔を見合わせる衛兵達。シルトラは彼らの方を向いた後、首都ブザの方を向き、眼を見開いて立ち止まる。
シルトラ『父上!』
シルトラの方を向くシルパラ。
シルパラ『どうした?』
階段を駆け上がるシルパラ。彼の眼に映える首都ブザを取り囲むミゼ王国、カヤン王国、ユ王国、クド王国、パノパス王国、バカイ王国、ツァ王国の旗印。舌打ちするシルパラ。
シルパラ『遅かったか。』
ダンレン宮殿から出るスヒィンにユーリ、パゴタ。上空に映されるミゼ王国の美しい女王ユヅルハ、カヤン王国のラクガヤにユ国のユガ、クド王国のタグに左パノパス王国の女王ファボス、バカイ王国のダンジョン、ツァ王国のツァグトラのホログラム。彼らを見つめるスヒィン。
スヒィン『各王達?これはいったい?』
ファボス『ミゼ王国、カヤン王国、ユ王国、クド王国、パノパス王国、バカイ王国、ツァ王国はテウシン王国に宣戦布告するものである。』
眼を見開くスヒィン。
スヒィン『せ、宣戦…。』
一歩前に出るスヒィン。
スヒィン『なぜです!なぜ、宣戦布告など!』
ファボス『テウシン王国で王を名乗っている女は、侍女がギュウジュウ王の子を孕んでいることを使い、ショルガロン王国の王太合をそそのかし、証拠隠滅の為に毒殺して王位につこうとした薄汚い妖女だ!』
首を横に振るスヒィン。
スヒィン『なっ、何を言っているのですか?どうして私がギュウトウ様を!どうして…。』
ユズルハ『信頼していたのですが…。そのようなあくどい方だとは思いませんでした。』
ラクガヤ『いやはやなんという…。』
ため息をつくユガ。
タグ『…そのような姑息な手を使ってまで王になりたかったのか!』
ダンジョン『最初から気に入らなかったのだ。』
ツァグトラ『私もテウシン王の悪事は許せません!』
首を横に振り、後ずさりするスヒィン。
スヒィン『違う…。違…。』
スヒィンを抱きかかえるユーリ。
ユーリ『王!気をしっかり持ってください。我々がいます。』
スヒィンは目を見開き、ユーリの方を向く。
スヒィン『ユーリ。』
雄たけびが上がり、首都ブザで砂煙が上がる。スヒィンはそれを見つめる。顎に手を当てるシルパラ。
シルパラ『まずい。このままでは…。』
声『テウシン王!』
門の方を見つめる一同。ダンレン宮殿の扉が開き、現れるバビルサ獣人のキバシシ、背後に並ぶシシ党の面々。キバシシはスヒィンを見つめる。キバシシは上空に映る各王達のホログラムを見つめる。
キバシシ『あの王達め、嘘ばかり並べやがって!スヒィンちゃん…テウシン王はそういうことをする子じゃない。俺達が知っている!』
スヒィン『キバシシ!』
眼を閉じ、笑うキバシシ。
キバシシ『ようやく俺達の出番だな。』
跪くキバシシとシシ党の一同。
キバシシ『王!出撃の命を!』
キバシシを見つめるスヒィン。
スヒィン『キバシシ…。』
キバシシ『な〜に、あの街は俺達の庭みたいなもんよ!任せときな!』
キバシシを見つめた後、スヒィンの傍らに駆け寄り、跪くシルパラ。
シルパラ『王!ここは至急グリーンアイス連邦に援軍を打診すべきです。』
スヒィン『グリーンアイス連邦に…。』
スヒィンは頷き、シルパラを見つめる。
スヒィン『はい。』
C2 大多数の嘘は真になる END
C3 参戦
テウシン王国首都ブザのダンレン宮殿。奥の間にはモング国テウシン領総督の金絲猴獣人ポッパンの死体を加工して作られた玉座に座るスヒィン。隣にはユーリとパゴタ、シルパラにシルトラが並び、文官や衛兵たちが動き回る。モニターに映るグリーンアイス連邦総代表ラスの顔。
ラス『真に気の毒なことだ。濡れ衣を着せられ、宣戦布告をされと…。しかし、喜んでくれ。我がグリーンアイス連邦はテウシン王国に援軍を派遣する。』
頭を下げるスヒィン。
スヒィン『はい。ありがとうございます。』
ラス『安心し給えよ。一昼夜にはつく。』
頭を深く下げるスヒィン。消えるモニター。スヒィンは頭を抱える。
スヒィン『どうして、どうしてこんなことに…。』
スヒィンの傍らに寄るユーリ。
ユーリ『スヒィン様…。』
一歩前に出るシルパラ。
シルパラ『あの獣人だけでは心ともない。わしも出る。一昼夜、時間を稼げばよい。』
シルパラの隣に寄るシルトラ。
シルトラ『父上!私も行きます。』
シルトラの方を向くシルパラ。
シルパラ『お前は残れ。』
シルパラを見つめるシルトラ。
シルトラ『はい?』
シルパラ『お前は何が何でも生き延びて、シル一族の血を残すのだ。』
シルパラを見つめるシルトラ。
シルトラ『父上…。』
階段を駆け上がってくるテウシン王国の衛兵A。
テウシン王国の衛兵A『敵軍!退いていきます!』
階段を駆け上がってくるテウシン王国の衛兵B。
スヒィン『キバシシ…。』
テウシン王国の衛兵B『キバシシがミゼ王国の将バンガにバカイ王国の将ジョルジュンを討ち取りました!』
シルパラ『何…。』
顎に手を当て、首を傾げるシルパラ。
テウシン王国首都ブザのダンレン宮殿。奥の間にはモング国テウシン領総督の金絲猴獣人ポッパンの死体を加工して作られた玉座に座るスヒィン。隣にはユーリとパゴタ、シルパラにシルトラに文官や衛兵が並ぶ。
スヒィンの前に跪くキバシシを筆頭とするシシ党の面々。
スヒィン『キバシシ、それに皆よくやってくれました。後少しすれば、グリーンアイス連邦からの援軍がやってきます。』
頭を下げるキバシシ。
スヒィン『それで…敵将の首級は?』
キバシシは頭を上げ、スヒィンを見つめる。
キバシシ『あれは女の子が見るものではありません。』
スヒィン『…しかし。』
ユーリはキバシシを見て頷く。
キバシシ『あのようなおぞましいものは。』
スヒィンはキバシシを見つめ、頷く。
スヒィン『分かりました。頼みます。』
頭を下げるキバシシ。
キバシシ『はは。』
階段を駆け上がってくるテウシン王国の衛兵C。
テウシン王国の衛兵C。
テウシン王国の衛兵C『た、大変です!』
テウシン王国の衛兵Cを見つめる一同。
テウシン王国の衛兵C『ヂョルガロン王国の旗印が!』
スヒィン『ヂョルガロン…。』
奥の間から出る一同。
シルパラ『…ギュウジュウ王が。』
空に映るヂョルガロン王国第一王子のギュウジュウイチを抱いたヂョルガロン王国国王のギュウジュウ。
ギュウジュウ『ヂョルガロン王国はテウシンの妖女討伐に参戦する。スヒィンよ。スリョクを殺し、母を毒殺してリンパク、ソンタク、シャクノツゴーに罪をかぶせるとはそんなことまでして王になりたかったのか!そんなえげつない事までして…。』
ギュウジュウは抱いたギュウジュウイチの方を見つめた後、スヒィンの方を向く。
ギュウジュウ『ギュウジュウイチよ!あれがお前の母の敵だぞ!』
震えだすスヒィン。スヒィンを抱きしめるユーリ。
キバシシ『…ギュウジュウ王までもか?誰かに騙されているんじゃねえのか?』
鬨の声、砂煙が上がる。立ち上がるキバシシとシシ党の面々。
キバシシ『ちっ、次々来やがる。いくぞ!』
雄たけびを上げ、キバシシについていくシシ党の面々。号令を掛けるシルパラ。シルパラを先頭にカッシャ級人型機構に乗り込むシルパラとシルトラの配下達。ユーリが彼らの元に駆けていく。
ユーリ『私も行きます。』
シルパラはユーリの方を向く。
シルパラ『ユーリ殿は王を守ってくれ。』
ユーリは震えるスヒィンの方を向いた後、シルパラの方を向いて頷く。
C3 参戦 END
C4 虎の威
テウシン王国首都ブザ。市街を進むシルパラとシルトラの配下のカッシャ級人型機構。鬨の声。火を吹いて黒こげで転がるパノパス王国とカヤン王国のカッシャ級人型機構。カヤン王国の将デデクとパノパス王国の将ダダの首を上げるキバシシとシシ党のダンゴムシ人のマルマルンヨ。退いていく敵軍。大歓声が上がる。シルパラはキバシシ達の方を見つめる。
シルパラ『何かがおかしい。キバシシ達が奮闘しているにしろ。多勢に無勢…。しかも、討ち取られていくのはミゼ王国のユミル、ユラルの政敵ばかり…。それにあの兵力ならば一気に制圧も可能な筈だ…。何かを待っているのか?』
夜。テウシン王国首都ブザのダンレン宮殿。奥の間にはモング国テウシン領総督の金絲猴獣人ポッパンの死体を加工して作られた玉座に座るスヒィン。隣にはユーリとパゴタ、シルパラにシルトラに文官や衛兵が並ぶ。スヒィンは立ち上がり、門の前に立つキバシシとシシ党の面々の方へ歩いていく。隣を歩くユーリ。スヒィンの方を向くキバシシ。
キバシシ『王。』
スヒィン『キバシシ。ご苦労様です。』
首を横に振るキバシシ。
キバシシ『そんなことはありませんぜ。俺達みたいな輩を雇って下さったんだ。』
スヒィン『後少しすれば、グリーンアイス連邦からの援軍が来ます。それまでの辛抱です。』
階段を駆け下りていくテウシン王国の文官A。
テウシン王国の文官A『王様!グリーンアイス連邦からの通信です!』
眼を見開くスヒィン。
スヒィン『グリーンアイス連邦からの!分かりました。行きます!』
階段を駆け上がって行くスヒィンにユーリ、テウシン王国の文官A。彼らは玉座の間に駆け込む。
モニターに映るしかめっ面をしたラス。
スヒィン『ラス殿。』
スヒィンはモニターに駆けていく。
スヒィン『援軍は…。』
首を横に振るラス。
ラス『うむ。…援軍は出せない。』
唖然とする一同。
スヒィンはラスを睨み付ける。
スヒィン『なぜですか!』
ラスは顎に手を当てて、スヒィンから目を背ける。
ラス『キィーーーーーー。』
スヒィンはモニターを叩く。
スヒィン『なぜ!どうして!どうしてなのですか!』
一歩前に出るシルパラ。
シルパラ『ラス殿。これはいったいどういう腹積もりか!援軍を出すといい、援軍を出さないという。同盟を結んだ我々を…。』
眉を顰めるラス。
ラス『我々にも我々の事情がある。援軍は出せない以上だ。』
切れるモニター。首を横に振り、周りを見回すスヒィン。動き回る文官に衛兵達。階段を駆け上がるテウシン王国の衛兵D。
テウシン王国の衛兵D『た、大変です!大変です!大変です!』
体中に汗を流し、青ざめた顔をしたテウシン王国の衛兵D。彼の方を向く一同。
テウシン王国の衛兵D『ああああれを!あれを見てください!あれをおおおおお!』
奥の間から出て、首都ブザの方を向く一同。彼らの目に映る貴族連合盟主国シュヴィナ王国の旗。
シルパラ『…シュヴィナ王国だと。』
深夜。テウシン王国首都ブザのダンレン宮殿。奥の間にはモング国テウシン領総督の金絲猴獣人ポッパンの死体を加工して作られた玉座に座るスヒィン。隣にはユーリとパゴタ、シルパラにシルトラ、動き回る文官や衛兵達。
スヒィン『…どうすれば。』
一歩前に出るシルパラ。
シルパラ『貴族連合が出てきた以上、もはや打つ手はありません。ここは逃げるべきです。』
シルパラを見つめ首を横に振るスヒィン。
スヒィン『そのようなことはできません。私はこの国のおうであります。国家を見捨てて逃げるなど言語道断です。』
眉を顰めるシルパラ。一歩前に出るパゴタ。
パゴタ『私に案があります。』
スヒィン『パゴタ。』
頷くパゴタ。
パゴタ『ここはモング国に救援を求めるのです。』
眼を見開きパゴタを見つめるシルパラ。
パゴタ『グリーンアイス連邦が援軍を出さなかったのはシュヴィナ王国の参戦を知ったからでしょう。貴族連合に対抗するのはモング国しかありません。』
握り拳を震わすシルパラ。
シルパラ『王!モングと手を結ぶというか!』
パゴタはシルパラの方を向く。
パゴタ『シルパラ殿。現状、この手が一番いい方法なのです。至急、私が使者として出向き、モング国に救援を要請します。』
パゴタを見つめるスヒィン。
スヒィン『分かりました。パゴタ、頼みます。』
一歩前に出るシルパラ。
シルパラ『王!』
スヒィンはシルパラの方を向く。
スヒィン『シルパラ。パゴタの護衛を宜しくお願いします。この国の命運がかかっているのです。頼みます。』
項垂れるシルパラ。
シルパラ『王は悪魔と手を結ぶというのか。』
スヒィン『こうでもしなければ、この国は滅んでしまうのです。シルパラ。』
スヒィンを見つめるシルトラ。シルパラは俯く。
スヒィン『シルパラ!』
シルパラは顔を上げ、スヒィンを見つめる。
シルパラ『…わかり…ました…。』
胸をなでおろすスヒィン。
スヒィン『ではお願いします。』
深夜。テウシン王国首都ブザのダンレン宮殿。階段を下りていく、シルパラとパゴタ。シルパラは奥の間を見上げる。
シルパラ『白く、そして青すぎたのだ…。』
パゴタはシルパラの方を向く。
パゴタ『どうかなさいましたか?』
パゴタを見つめ、首を横に振るシルパラ。
シルパラ『いや、何でもない。』
C4 虎の威 END
END
説明 | ||
・必要事項のみ記載。 ・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。 ・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。 |
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R-18グロテスク 悪魔騎兵伝(仮) | ||
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