模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第37話
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今ガンプラバトル史上!もっともしょーもない戦いが始まろうとしていた!

 

バトルフィールドはオーブ近海の孤島、ガンダムSEEDに登場した前半主役機ストライクガンダムと

ライバル機、イージスガンダムが激闘を繰り広げた場所だ。自然豊かなその島は、それほど大きくはなく

十数メートルで表示されるガンプラにとって一つのリングの様な物だった。

 

「ったく、陰気な天気だぜ。アイツの性格みてぇだ」

 

ブスジマは空を見ながらぼやいた。天候設定は空一面の曇りだ。CGとはいえ嫌な気持ちになる。と、Gポッドに警告音が響く、ツクイのザク改が来た。

 

「きやがったか!」

 

ブスジマはグフのヒートサーベルを抜き構える。

 

「呑気に天気見てる場合か!」

 

ザク改はホバーで森を突っ切りながらマシンガンを撃ってくる。ステップでかわすブスジマの乗ったグフ

「ケッ!余裕なんだよ!」

 

すかさずブスジマは左腕のガトリングシールドで迎撃する。連続で放たれる弾丸がザクを襲う。

 

「フン!」

 

ザク改はホバーを駆使し流れる様に弾丸をかわす。

 

「ならこいつで!」

 

ブスジマのグフもザクに合わせるように高速で移動しつつ射撃、そして右腕を向け。ヒートロッドを撃ち出した。

長い付き合いだ、相手の動きはある程度予測出来てる。ガシッと音を立ててヒートロッドの先端部がザクの右肩のシールドに張りつく、

 

「何?!こっちの動きを読んで!」

 

「何度お前と戦ってると思ってやがる!」

 

「チッ!」

 

電撃が来ると判断したツクイはザクの左手に持ったヒートホークでヒートロッドのワイヤーを切り落とした。

そのままザクは右手のマシンガン下部に取り付けられたグレネードをグフ目掛けて撃つ。

 

「うお!あぶねぇ!」

 

シールドでガードするグフカスタム。グレネードはシールドに着弾、そして爆発。爆風により周囲は見えなくなる。

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「!こいつは!どこから来る!」

 

グフの正面から爆風を突き破ってザク改が突っ込んでくる。

 

「だぁあっ!!」

 

ツクイは叫びながらザク改のヒートホークを振り下ろす。

 

「この!」

 

ブスジマはシールドを身構え防御しようとするが、間に合わずシールドのガトリング部分を切り落とされてしまう。(本体は無事だったが)

だが振り下ろした体勢のザク改には隙がある。今がザク改に攻撃を加えるチャンスだった。

 

「もらったぜ!!」

 

狙うはザク改のコクピット、胸だ。グフの右手に握られたヒートサーベルがザク改に迫る。

 

「くっ!なんの!」

 

ツクイはザク改の身を捻り右腕を大きく開いた。腕と胴体の間をヒートサーベルの突きが通る。場所をずらしたのだ。

 

「ゲッ!!」

 

直後ザク改はヒートサーベルを持ったグフの右腕を脇で挟み込んだ。今のうちにとザク改はグフの頭めがけて左腕のヒートホークを振り上げた。

 

「野郎!」

 

ブスジマはさせまいとグフカスタムの左前腕部に搭載された3連装35mmガトリング砲(シールドの下部)をザクに向け放った。

放たれた銃弾がザク改の左手首を破壊、握っていたヒートホークを落としてしまう。

 

「ぅおっ!!」

 

ツクイはさっき脇に挟んだグフカスタムの腕に、ザク改の左腕を思いっきり叩きつけた。グフカスタムの右肘から下が衝撃で落ちる。

2体の得物がその場に落ちた。

 

「なっ!てめぇ!」

 

ブスジマは左腕の3連ガトリング砲でザク改のコクピットを狙おうとする、が、そうなる前にザク改はグフカスタムの鳩尾にキックを入れた。衝撃で吹き飛ぶグフカスタム

「がっっっ!!!」

 

吹き飛びながらも倒れず耐えたグフカスタム。それをツクイのザク改は右腕のマシンガンで狙い撃とうとする。

 

「もらうぞ!」

 

「調子に乗るんじゃねぇ!!」

 

ブスジマのグフカスタムも左腕のガトリング砲で迎撃する。フィールドをポツリ、ポツリと雨が降ってきた。

雨の降る中、お互い移動しながらの撃ち合いが始まった。

 

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周りの観客が歓声で賑わう、そんな戦いをアイ達は目の前の戦いを茫然と眺めていた。

 

「なんて凄い戦い……」

 

「鬼気迫るって感じね、あれは特に」

 

それはお互いの全力を出した泥臭さ全開の戦いだった。

 

「そうですか?私にはただの子供の喧嘩にしか見えないですよ」

 

いつもの事、そんな風にモニターの戦いを見ながらミドリは言った。

 

 

 

お互いの銃撃戦が始まってから暫くの時間が過ぎた。グフカスタムの3連ガトリング砲を撃とうとするも、ガトリング砲はカラカラと音しか出さない。

 

「ゲッ!弾切れかよ!」

 

「馬鹿め!残弾も確認しないから!」

 

ツクイのザク改にはまだ弾が残ってる。そのままグフカスタムを撃ち続けた。

 

「ケッ!弾がねぇなら拳で戦うだけだぁ!!」

 

グフカスタムはザク改へ突っ走る。

 

「無謀な!」

 

ザク改は片手で持ったマシンガンでグフカスタムを撃つ、しかし、グフカスタムはかわしながら猛スピードで突っ込んでくる。

 

「なんだと!?」

 

「ぅおおっ!!」

 

グフカスタムの左ストレートがザク改の頭部を殴り飛ばす。

そのままズザザッとザク改は大地を転がる。その拍子にザク改はマシンガンを落としてしまった。

 

「これで条件は五分五分だぜ!」

 

そのままユラッとザク改は立ち上がる。

 

「無茶をする!お前と言う奴はいつもいつも野蛮だな!」

 

「お高くとまってるテメェにゃいわれたくねぇぜ!」

 

ザクもまた拳を構え猛スピードで突っ込んできた。

 

「お前が強引すぎるんだろうがぁぁ!!!!」

 

そのままグフの顔面を殴り飛ばすザク改

 

「ワシがいつ強引だってんだよ!」

 

顔面のひしゃげたグフがザク改に回し蹴りを放つ。

 

「覚えてないんか!俺が頑張って作ったディスプレイ用のMGEx-Sガンダム!無理やり変形させて壊したろうが!」

 

ザク改は蹴りをかわしながらグフの角を掴みへし折る。まるで子供が髪の毛を引っ張るかのように。

 

「あれは謝ったろうが!それならテメェだって大学の時!ゼミの可愛こちゃんがガンプラ好きだってガセ情報教えやがって!

ワシがガンプラプレゼントしたらドン引きされたんだぞ!!」

 

「それだって謝っただろ!ザクが好きだから俺の事虚弱体質とか言いおって!やられメカだからとでもいいたいのか!」

 

「病気がちだったんだから良いだろうが!テメェだってワシがデブだからドム男とか言いやがって!」

 

「太ってるお前が悪い!」

 

「なんだとバカ!」

 

「バカって言う方がバカなんだこのバカ!」

 

段々言い争いが子供じみてきた……その所為かアイ達には殴り合いも子供の喧嘩の様な叩きあいになった様に見えた。

 

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観客の歓声がだんだん笑い声になって来た。アイ達は絶句してたか呆れていたかのどっちかだった。

 

「何スかこの戦い……」

 

「馬鹿親父……またこんな所で恥さらして……」

 

ミドリは恥ずかしそうに顔に手を当てていた。

 

 

そして勝負は佳境に入っていた。グフカスタムがザク改に腕十字を極めると言う無茶苦茶な展開によって……

 

「ガーッハッハッハ!!この勝負ワシの勝ちだな!」

 

グフカスタムがザク改の左腕をへし折ろうとする。

 

「ぐぇぇ!くそぉぉ!!足首の塗装が不十分なこんないい加減な奴にぃぃ!!」

 

負けるか!とツクイは背中のバーニアを全力で吹かす。その勢いで二機はすごい勢いでぬかるんだ地面を滑り出した。

 

「あっ!テメッ!」

 

不意を突かれるブスジマ、その拍子に手が緩みザク改の拘束がとかれた。ザク改の滑りがグフカスタムを振り切る。

振り切ったザク改は立ち上がると、そのままさっきヒートホークを落とした地点に戻った。ヒートホークを回収するためだ。

 

「待ちやがれ!!」

 

ヒートホークを回収しようとするツクイにグフカスタムが走ってくる。

 

「くっ!」

 

ヒートホークより手近にあった為、ザク改はグフカスタムのヒートサーベルを掴んだ。すかさずグフカスタムに横に振るう。が

 

「テメェ!人のモン取るな!」

 

身をかがませ回避するグフカスタム、そのままザク改のヒートホークをグフカスタムが回収、二機とも敵の武器を持ちながら一旦離れる。

もうお互い満身創痍だった。このまま時間切れで判定に持ち越せば「勝てるかもしれない」とお互いが思う。だがお互いそんな事は望んでいなかった。

 

「テメェは!」

 

「お前は!」

 

『ワシ(俺)が倒す!!』

一気にお互いが突っ込む。捨て身でお互いの武器を振り下ろした。その為お互いが密着したまま離れない。

 

――どっちが勝った!?――そう誰もが思った時だった。

 

「……残念だったな……」

 

ザク改のツクイが言う。彼のザク改にはヒートホークがコクピットの表面に刺さっていた。

だがまだ皮の部分だ。対するブスジマは……

 

「オメェの方が……早かったってのかよ……畜生……」

 

悔しそうにブスジマがうめく、彼のグフカスタムの胸には深々とヒートサーベルが刺さっていた。

剣と斧のリーチの差、これが決定打だった。

 

「俺の……勝ちだぁ!」

 

「チクショォオオオオオオオオッッッ!!!!!!!!!!!」

 

すぐさま離れるザク改、絶叫と共にブスジマのグフカスタムは爆発した。勝利者はツクイ・クニヒコのザク改だ。

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その後の表彰式はとりわけ何も異常なく終わった。二位だったブスジマはずっとどこか悔しそうなままだったが

 

「いい加減機嫌直してよ父さん。どっちか負けるのは間違いなかったんだから」

 

アイ達の観客席に戻ってきたブスジマ、彼はずっと黙ったままだった。ふとブスジマの目から涙が滲んできた。

 

「ちくしょう……」

 

泣いてるのを見られたくないのだろう。顔を背けながらブスジマは涙を拭った。

 

「工場長……」

 

「やれやれ、そんな風に泣かれるとこっちが困るな」

 

そしてツクイが歩いてきた。こちらは上機嫌だった。

 

「クニヒコ……てめぇ……」

 

「どうだったかなアイちゃん?俺がシンジより強いって解ったかい?」

 

「え?あの……どこかでお会いしましたっけ?」

 

唐突に名前を呼ばれるアイ、しかし彼女の記憶にはこういった人はいない。

 

「あれ?気付いてない?」

 

ツクイが髭と髪を外す。付け髭とカツラだった。そして出てきたツルツル頭の顔にアイは見覚えがあった。

 

「あ!昨日の品管の人!」

 

「そう俺だよ。若いゲストにいい所見せたくて頑張った甲斐があったってもんさ」

 

「ケッ!スケベ根性丸出しだぜ!毎回大会でコスプレして出るのによく恥ずかしくねぇもんだ!」

 

「お前が言うな!とにかくこれで選手権のチームリーダーは俺に決まりだな!」

 

にんまりと笑うツクイ

 

「ん?リーダー?」

 

「今日の大会はですね、選手権でどっちがリーダーやるか大会で優勝した方に決めようって話だったんですよ」

 

ミドリが呆れた様に言う。

 

「昨日の話し合いでどっちにするか言い争いになっちゃってね。それで元々参加申請してたこの大会で決めようとしたんだよ」

 

「あぁ、だから昨日言い争いに……仕事中にですか?!」

 

「ははは、お恥ずかしい。品管の仕事ついでにだよ」

 

――……この人たちも選手権にでるのか……――

 

ブスジマ達を見ながらヒロは思う。道を外し、自分たちを離れたかつての仲間、レムに再び会う為、

いずれブスジマらを含めた強豪とも戦う事になる。ヒロはそう思うと勝てるかどうか不安だった。そして彼は一つの考えを出した。

 

「お願いします!僕達全員にあなた達の戦い方を教えてください!」

 

「ヒロ?!」

 

「ヒロさん!?」

 

「僕達には単純に力試し以外にも勝ちたい理由があります!でも正直全国のビルダーに勝てる自信がありません!僕達に戦い方を教えてください!」

 

「……アタシからもお願いします!」

 

次にでたのはナナだ。彼女は周りとの差がある。選手権で足を引っ張らないか不安だった。

 

「……俺からもお願いするっス」

 

「俺も!」

 

「私も!」

 

次々とメンバーが頼み込んでくる。ついには全員が頼み込むようになっていた

 

「いいぜ!ワシでよけりゃ教えてやらぁ!」

 

ブスジマの顔に笑顔が戻る。嬉しかったようだ。

 

「未来は老人が作る物ではない。か、俺も賛成しよう。だがシンジ、なんで負けたお前が言うんだ?」

 

「ケッ!いいじゃねぇかよ!アイちゃんと最初に知り合ったのは俺だぜ!」

 

「理由になるか!勝ったのは俺のほうだから俺が言うべきだろう!」

 

「ケチケチすんな!教えるついでに俺だってもっともっと強くなって次こそお前に勝つもんね!」

 

「そう単純に行くか!そんな計画性もなしに生きてきたからそんなブクブク太ったんだろうが!」

 

「計画性ないのはどっちだよ!シャア(金髪)やらシロッコ(紫)やら真似して髪何度も染めた結果、一気にハゲたオメェが言うか!」

 

「仕事のストレスの方がデカいわ!うちの会社の仕事についてこれなくて!泣きながらやめて楽な中小企業行きやがって!!」

 

「泣いてねぇもん!やるかコノヤロー?!」

 

「上等だ!」

 

またも言い争いを始め、取っ組み合いになる二人。しかし怖いという印象は無く、ただただ『馬鹿馬鹿しい』という印象しかなかった。

 

「また口喧嘩してる」

 

「ほっときましょう。止めようとするだけ無駄ですよ」

 

「本当子供みたいっス……」

 

「残念だけどね、男ってのは幾つになっても男でしかないのよ」

 

ソウイチに対し、ミドリは悟った様に言った。

「……でも、好きな物を好きな気持ちは持ち続けていたいですよね……」

 

「女でそれを貫くのは容易じゃないけど……アイちゃん、そうよね」

 

アイに続くヨウコ。

 

「しっかしあの二人、本当仲悪いわね」

 

「え?そう?私には普通に仲よさそうに見えるけど」

 

「嘘!?」

 

アイの答えにナナは意外そうに答えた。

 

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遅れて申し訳ありません。雨が多く、ガンプラの仕上げに時間がかかってしまいました。

そしてオッサン二人のデザインはこんなもんです。

 

大会の話はもうしばらくかかりますがお付き合い頂けたら嬉しいです。

他に描写したいところもありまして……

説明
37話「少年の心を持ち続けた大人達」(後編)

ベテラン同士の大会、その決勝はアイのバイト先の上司、ブスジマ・シンジと彼の幼馴染みにしてライバル、ツクイ・クニヒコの一騎打ちとなった。
はたしてその勝負の行方は?
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コメント
mokiti1976-2010さん 有難うございます。腐れ縁ですね。こんな喧嘩ばかりが目立ちますが、若い子を導く役もさせたいです。(コマネチ)
W-ネームレスさん ありがとうございます。コンセプトはギャグに全振りしたレイジVSフェリーニでした。笑える喧嘩を目指したのですがそう思って頂いて何よりです。(コマネチ)
まあ、おっさん二人の間にゃ若造には計り知れない程の何かがあるって事ですね。これからもおっさん方の活躍を期待しております。(mokiti1976-2010)
こんな風にいつまでも馬鹿やれてるのはかっこいいですね ほっこりしながら読ませていただきました 次回も楽しみにしてます!(W-ネームレス)
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