女神異聞録〜恋姫伝〜 第五十一話 |
女神異聞録〜恋姫伝〜
第五十一話
「二人目の超人」
夢を見ていた。
夢だとわかるかつて見た光景を見ていた。
苦笑を浮かべているもの、満面の笑みを浮かべ酒を飲むもの、知己と話し合う者達。
永く永く一代では終わらないはずだった戦が終わった。
この夢はその時を祝っていた宴の記憶。
きっと、兵も将もそして王ですらもこの瞬間を望んで目指し切磋琢磨してきた瞬間。
歴史に刻まれるとして最高の一時。
そして見ている私にとっては最悪の一時。
私が兄と呼んだ人は、人から『天の御使い』と呼ばれた人物で、胡散臭い占いから黒天を切
り裂き乱世を収める為に降り立つといわれていた存在。
きょろきょろとその兄を宴の中に探す。
居ないと知っていながら、この笑顔の和の中に居てほしいと今でも願っているから。
居る場所を知りながら、それでも人という存在の環の中に存在していてほしいと祈ってい
るから。
場面が変わる。
満月が照らす、せせらぎの聞こえる小川の辺。
兄が仲間と呼んだ誰もそこには居らず、ただ一人で月を肴に杯を傾けていた。
この夢の終わりが近いことを知っている。
『妾』であった時が終わるときがその時だと、そして改めて『私』が歩き出す始まりの時。
これは夢で、記憶だ。
振り返るも愚か過ぎる遠い過去の記憶。
愚かだといわれる選択をした記録。
有り得ない奇跡を願った『私』が生まれた瞬間。
馬鹿と呼ばれた『妾』がいなくなる瞬間。
涙に視界を歪めて兄に縋りつく『妾』が見える。
泣きじゃくり、裾をつかみ願った記憶が思い出される。
「嫌じゃ、居なくなっては嫌なのじゃ!!」
必死に捕まえようと小さな手に力を込めて服を握り締める。
「戦争がようやっと終わったのに、もう『誰か』が居なくなるのは嫌なのじゃ!」
その言葉で思い出すのは、戦争によって失われた民の命。
愚将と歴史で呼ばれる行いをしながら、民の顔を覚え、兵卒たちの名を聞いてきた、愚かし
いまでの名将の背を見てきたゆえに学び、それを真似てきた少女。
戦後処理をするたびに胸が締め付けられてきた。
覚えた顔が、聞いた名が消えていくそれを見てきた。
『妾』という童女が真似たそれですら兄の模倣なのだ。
兄は兵の全ての名を、民の全ての顔を覚えていたのだろう。
『妾』の頭に手を置きながら、『私』に強い眼差しを向ける。
「『妾』にその意味は通じないのじゃ。『私』は今ここに居る………兄様に託した皆と共にじ
ゃ!」
兄の向ける眼差しに真っ向から見返し、成長した体で胸を張って答える。
「諦めることをしなかった兄様の背を見て乱世を駆け抜けたのじゃ!諦めの悪さは、馬鹿
を超えた大馬鹿さ加減は兄様譲りじゃ!」
背伸びをしても胸板までしか届かなかった小さな『妾』は姿を消し、兄より頭半分ほど低い
までに成長した『私』と兄だけが小川の辺に残っていた。
扇子を閉じたままに指し、笑顔で『私』は少し悲しそうな笑顔のまま消えていく兄に一時の
別れを告げる。
「わらわは諦めん。再び兄様と歩む道を」
兄が強かった理由を、『天の国』と呼んだ故郷が未来の世界だと知ってから、生き続けるこ
とを諦めなかった。
零れていく記憶の雫を失わないことを諦めなかった。
世界を渡り異界の泰山に渡り、それの苦痛を知りながら託された願いと願った『妾』の祈り
と共に不老の呪いを受け入れた。
繋がる未来が在るのだから諦められるはずがなかった。
だから『私』は今ここに居る。
目を覚ます。
今でもあの夢を見ると、我慢してきた涙が頬を伝う。
あの時『妾』は兄が安心して行ける笑顔を出来たのだろうか。
「きっとぐしゃぐしゃの顔だったのじゃろうなぁ」
流れた涙を裾で拭い苦笑する。
そしてまだ起きていない隣で毛布に包まる女性を揺り起こす。
「ほれ、七乃。起きるのじゃ」
「ふわぁ………うぅ、また美羽お嬢様の寝顔を見られなかった………」
揺さぶって起こしてやれば、目尻に涙を溜めて悔しがる。
「うはははっ。わらわは七乃の寝顔を堪能させてもらったからのう」
「よっ!このいけず、いじわる、悪女〜」
「ぬははは〜。もと褒めてもよいぞ〜」
褒める?七乃に、笑う美羽。
心底から笑顔で居るその二人はとても幸せそうだった。
『私』は昔の光景と在り方を。
七乃はこの生涯で得た初めてで最後の主。
きっと、見ている方向性は違っていても見つめる方向は変わらず未来を見ていた。
「それでは今日も行くとしようかの」
荷物を片付け、テントなどのキャンプ用品を七乃が背負う。
「そろそろ人の居る場所が見つかるといいですね〜」
「うむ、そうじゃの。あのような輩はもう見飽きたわ」
目の前に居るのは角で作った飾りを股間からはやしているピンク色のアクマ。
夜魔インキュバス。
精神系の攻撃を得意とし、眠りに特化した個体が多い種族。
そして異性に性的な事を行おうとするというのも対となるサキュバス共々持ち合わせてい
る。
「粗末なものをぶら下げおってからに」
パパパン。
三点バーストでグロッグ17Cが火を吹く。
「ひぎぃ!?」
股間にあるピーーーとピーーの二種計三点が弾丸によってぶち抜かれる。
打ち抜かれたインキュバスは股間を押さえたままビクンビクンと膝と頭を地面につけて震
えている。
「さて、ロッポンギまではまだかのぅ」
「歩きですからね~。まだまだかかりますよ〜」
悶えているアクマを無視して素通りしていく二人。
そんな二人に慄き、襲いかかろうとするアクマもモンスターですら居なかった。
特に男性型はその恐怖が良く伝わる為だろう。
あのような仕打ちを受けたいという特殊なものは除かれるが、出会ったものは須らく急所
をぶち抜かれ放置されていた。
「ナム」
途中で歩き疲れたと召喚された地霊ティターンはそんな哀れな犠牲者たちに歩きながらで
はあるが黙祷を捧げた。
「しかし、人の利器という物も発達したものじゃのぅ………友たちを得た時は竹管じゃっ
たんじゃぞ」
「もう1000年永いもの」
「え!?お嬢様一体幾つなんですか!?」
「うふふ、女性に歳は聞くものではない」
扇子を広げ、口元を隠し艶かしげに言った。
表情は笑っていたが、目は笑っていなかった。
詠「詠と」
月「月の」
詠&月&へ「「「あとがきコーナー」」」
詠「ちょっと………美羽が………」
へ「純粋に馬鹿な子ってこの子位なもんだからねぇ」
月「これはなんていう改竄?」
へ「戦国恋姫の話になるけど、公式で持ち帰りが出来てるってことは修正された上で彼女た
ちが存在している証拠だからねぇ」
詠「正史に歴史を修正されたけど一刀が居た外史そのものが存在しているって事?」
へ「そういうこと」
月「え〜と………私たちも居るけど正史である男性の私たちも居るということですか?」
へ「その通り。それを表しているのがウンチョウだね」
詠「なんでそんな事が起きるのよ」
へ「この辺はこじつけになるけどね。普通に埋葬されたなら骨は劣化してるはずだし、残さ
れた書物に名前しか出てきていなかったら?」
月「性別の判断が曖昧になるということですか?」
へ「その上で男尊女卑の国になったとすれば、歴史の改竄も容易くなるはずだしね」
詠「後は劇だとかで大体的に民衆に刷り込んでいくってことね」
へ「まぁ、これは例のアレと同じ扱いでね。物語の雛形を取られたって事だね」
月「それを聞くと私はすごく殺意が沸くのですが………」
へ「止めて!?矢が刺さると痛いの!?」
詠「そのままだとぼくも月から曹操の元に行っちゃってるし」
へ「もちつけ。これはあくまでどちらも存在させる為の整合性の整理だから」
月「乙女演義では三国演義とも三国志とも細かいところが違いますから」
へ「本来は突っ込んだら原作にまで突っ込む事になるからねぇ」
詠「とりあえずこの作品ではこうして行きますってことね」
へ「歴史とか特に興味ないので荒なんて探せば一杯出てくる事になると思うけどねw」
月「あ、正史でも演義でも孫堅さん半董卓連合のときまで生きてますものね」
へ「まぁ、突っ込もうと思えば色々突っ込めるところあるからね」
詠「あっちじゃ曹操も天子様を保護してないのに猛威振るってたものね」
へ「後ろ盾は大事でしょ。無いから呉の平定も大変だったんだろうし」
月「あ、そろそろ終わりですね」
へ「おっと、今回は短いけど楽しんでもらえたら幸いです」
詠&月&へ「「「ではお休みの間、アクマに身体を乗っ取られませんようにお気をつけて」」」
詠&月&へ「「「また次回でお会いしましょう」」」
へ「あ、骨とかで性別判明してたらごめんね」
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真・女神転生世界に恋姫無双の北郷一刀君を放り込んでみたお話 人の命はとっても安い、そんな世界 グロや微エロは唐突に生えてくるもの 苦手な人は注意されたし |
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