「それぞれのはなし。」 |
◆CONTENT◆
それぞれのはなし。〜バレンタイン編〜
それぞれのはなし。〜ホワイトデー編〜
それぞれのはなし。〜新学期編〜
それぞれのはなし。〜父の日母の日編〜
それぞれのはなし。〜七夕編〜
それぞれのはなし。〜海の日編〜
それぞれのはなし。〜夏祭り編〜
それぞれのはなし。〜いろいろな秋編〜
それぞれのはなし。〜謹賀新年編〜
それぞれのはなし。〜節分編〜
それぞれのはなし。〜ひなまつり編〜
それぞれのはなし。〜恋愛指南編〜
それぞれのはなし。〜誕生編〜
それぞれのはなし。〜バレンタイン編〜
CASE‐1 悟飯&ビーデルの場合
オレンジスターハイスクールに六時限目の終了を告げるチャイムが響き渡る。遠方から通学する悟飯はクラブ活動をしていないため、早々に帰り支度を始めていた。それを引き止めるべく、ビーデルはおずおずと声をかける。
「あ、あのね、悟飯くん」
いつもならばどうってことないやり取り、至って普通に呼びかけるのに、思惑を秘めた今日は違った。どうしても言葉がスムーズに出てこない。
全宇宙の存亡を賭けた戦いを経て取り戻した平和。一度は宇宙の塵となった地球も、ドラゴンボールによって復活し、以前のような穏やかな日常が流れる世界。ビーデルがこうして胸をときめかせ、その日を待ち遠しく思うのも、戦いに勝利して得た『現在』という時間があってこそ。世界にもたらされた、緩慢でありつつもかけがえない毎日を人々は生きていた。
「なんですか? ビーデルさん」
教科書やノートを鞄にしまっていた悟飯は、その呼びかけに手を止める。普段とは違うビーデルの挙動不審さには気づかないまま。
「その…今度の日曜日なんだけど、なにか予定があったりする?」
勘のいい女子なら、この問いの意図は容易に見抜けてしまうだろう。けれど、俗世間的な知識に乏しい悟飯は、その日付の意味を知らなかった。
「日曜日ですか? いえ、特には。おとうさんと軽く修行をするくらいですよ」
「そうなんだ」
とりあえず遠出はないとの返答に、安堵するビーデル。
「それがどうかしましたか?」
「ええと、あの、その…」
どうしてそんなことを訊ねるのかと示唆する問いに動揺するが、昨日の夜から何度もシュミレーションした問答を思い起こす。
「実はパパが――そう、パパがね、お世話になったお礼をしたいんだって。悟空さんにはブウ…ミスター・ブウのことで助けてもらったから。だったら物よりは、おいしい料理でも届けたらどうかって話になって、今度の日曜日、うちのコックを引き連れてお邪魔してもかまわないかしら?」
ブウが、拾ったベエと一緒にサタンの家で暮らしていられるのは、地球人から魔人ブウに関する記憶を消してもらったおかげだ。ドラゴンボールなしでは叶うことがなかった。そのことを、父親がとても感謝していることは事実。サタンがどんな礼をすればいいのか考えていたところへ、ビーデルが助言して礼の内容と日付を調整した。その日に堂々と孫家を訪問できるように。食欲に対する欲求は地球人の比じゃない彼らが、食べ物の礼を断るはずもない。
「本当ですか? それはみんな喜びますよ」
ビーデルの予測どおり、悟飯は歓迎の意向を見せた。うまく事が運びつつある。しかし、肝心なことはもうひとつ。さりげなさを装いながら、最も重要なことを確かめる。
「それと…デザートに甘いものがあるけど、悟飯くんは大丈夫? ケーキとかチョコレートとか」
「大丈夫ですよ。ボクたちみんな、好き嫌いはないですから。甘いものも全然問題ないし、なんでも食べますよ」
その日を象徴するような単語が入っていたにも関わらず、そういう方面に鈍い悟飯は、察知することもないまま笑顔で答えた。必要な情報を本人からリサーチしたビーデルは明るい表情。決戦は日曜日、自分の目的がうまく達成できるように祈りながら。
「楽しみにしててね」
悟飯に言いつつ、自らの心を舞い躍らせた。
CASE‐2 クリリン&十八号の場合
セルの脅威から平和を取り戻して数ヶ月。南の海に浮かぶ小さな島、そこに立つカメハウスには平穏な日々が流れていた。亀仙人はいつものようにテレビのエアロビクス番組に夢中、ウミガメは浜辺で甲羅干し、クリリンは退屈そうにパラソルの下で寝転がる。
孫悟空が死んでしまってから、毎日がなにか物足りない。世界に平和が戻ったというのに、嬉しさはあまり感じなかった。乾いた日常に精神が侵蝕されていくのが分かる。もう敵もいない以上、強くなるという目的もなくなって、どう生きればいいのかも見えなくなっていた矢先。
冬の季節でも温かい太陽の陽射しが、クリリンの上だけ陰った。なんだろうと思って目を開けると、十八号が自分を見下ろしている。
「あれ? 十八号じゃないか。どうしたんだ、急に」
身を起こしながらクリリンは訊ねた。あの日「またな」と告げ去ってから、十八号は時折カメハウスへやってくる。なにをするでもなく、ただクリリンと一緒に時を過ごして帰っていくのだ。
「用がないと来ちゃいけないのか?」
「いや、そんなことないよ。いつでも大歓迎さ」
屈託ない笑顔で告げると、なぜか十八号は顔を背ける。いつも、彼女の行動はよく分からない。理解できなくてクリリンは頭を悩ませるけれど、こうして会えるだけで嬉しいことはたしかだ。
「お茶でも入れるから、とりあえず中に入らないか?」
来訪者への無難な行動を選択したクリリンだが、十八号は動こうとせず、片手に持っていた紙袋を無言のまま差し出した。クリリンは目の前に突きつけられたものに怪訝な表情を浮かべる。なかなか相手が受け取らないので、十八号は短く告げた。
「やるよ」
「えっ?」
「おまえにやるって言ってるんだ! さっさと受け取りな」
十八号が自分になにかをくれるなんて、初めてのことだ。クリリンはあっけにとられていた。これが本当に現実のことなのかと。自分の頬をつねって、夢じゃないかと確かめたいくらいに。
「いらないなら、海に放り投げるよ」
「うわあ! 捨てないで! いります、もらいます。だから…!」
業を煮やした十八号の台詞に、慌てて紙袋を受けとるクリリン。
「あ、ありがとう、十八号。でもなんで急に…?」
彼女が自分になにかくれるのは嬉しいけれど、その意図が掴めない。こんな辺鄙な場所で生活していると、時節的な出来事に触れる機会がないため、クリリンは不思議そうに首を傾げた。
「………今日が何の日か知らないのか?」
「へっ? 何の日って、オレの誕生日じゃないし…」
間の抜けた返答に、十八号は複雑な表情で沈黙したあと、ぶっきらぼうに言う。
「カレンダーでも見るんだね」
クリリンが「カレンダー?」と呟く間に、数歩離れて飛び立とうとしていた。
「待てよ、十八号。せっかく来たんだから、ゆっくりしていけよ」
「――――来月、また来る。忘れるんじゃないよ」
背を向けたまま強張った口調で告げると、十八号は一気に彼方へと去っていく。
「忘れるなって、なにを…?」
事態を呑み込めないクリリンは、唖然と立ち尽くしていた。
「どうしたんじゃ、クリリン?」
そこへ、居間の窓から師匠が声をかける。
「それが…十八号がやってきてなにかくれたんですけど、よくわからなくて…。今日が何の日だとか、カレンダーを見ろって。今日は何月何日でしたっけ?」
問われて亀仙人は部屋の中を振り返った。ちょうどテレビのニュースが始まったところで、日付が画面に表示されていた。
「今日は二月十四日じゃろ」
「二月十四日か。………えっ? ええっ! 二月十四日!?」
本日の日付を認識して、クリリンは驚嘆の声を上げる。二月十四日が何の日であるのかくらいはさすがに知っていた。
「じゃ、じゃあ、これはまさか――――」
震える手で十八号から受け取った紙袋を開くと、予想どおりのチョコレート。
「マ、マジで…?」
生まれて初めて好きな女の子からチョコレートをもらったクリリンは、感激のあまり「生きててよかった」と嬉し泣く。そして、もらったチョコレートを三日三晩拝み倒すこととなった。
CASE‐3 ベジータ一家の場合
「パパ? どうかしたの?」
重力室で鍛錬中のトランクスは、唐突に動きを止めた父親へ声をかけた。
「おまえは気づかないのか? この匂い…」
「え? なにか匂ってるの?」
トランクスも普通の地球人よりは運動能力も身体機能も優れているが、純粋なサイヤ人であるベジータはそれ以上に鋭利な感覚を持つ。
「なんだ、この甘ったるい匂いは」
重力室は重厚な扉で閉ざされているにも関わらず、外部から漂う匂いに反応した。ベジータからすればトレーニングの妨げになるほどの強烈さ。気が散って仕方ないため、鍛錬を切り上げる。
「あ、本当だ。甘い匂いがする」
通常の重力に戻して重力室から出ると、トランクスにも感知できた。たしかに尋常ではない匂いが家中に広がっている。
「これってたしか…」
トランクスはその香りの正体を把握するが、ベジータは歩き出していた。この甘ったるい匂いの発生源はダイニングルームらしい。親子揃って匂いに誘われるように、階下の現場へ向かった。
「なにをやってる?」
そこへ足を踏み入れたベジータとトランクスは、唖然として挙動を止める。ダイニングルームの中央に、巨大な物体が鎮座していた。
「な…なに、これ?」
父子が呆然とそれを見上げると、物体の背後から現れたのは彼らの妻であり母親。
「二人とも、ちょうどよかった。たった今、特製チョコレートケーキが完成したところよ」
「チョコレートケーキって…それ、大きすぎない?」
たしかにその物体は、香ってくる匂いからチョコレートケーキに違いないのだが、それにしても巨大すぎる。人間の身長よりも高く直径も三メートル以上。背後には巨大サイズのオーブンや調理器具が片付かないまま放置され、チョコレートをあちこちにつけたロボットが複数転がっている。ブルマがロボットたちを駆使して、この巨大チョコレートケーキを作ったようだ。
「だって、これくらい大きいものじゃないと、すぐになくなっちゃうじゃない。あんたたち二人だと、あっという間に食べてしまうでしょ?」
「だからって、なんでチョコレート…」
母親の語る論理に頷きかけたトランクスだったが、なぜチョコレートケーキなのか。チョコ入り生地で焼いたスポンジの上に、さらにコーティングしたチョコレート。それがこの広い家中に、甘いチョコレートの匂いを充満させている。
「だって、今日はバレンタインデーよ」
ブルマが宣言すると、父親と息子はカレンダーに視線を注いだ。たしかに今日は二月十四日、バレンタインデーだ。あまりそういうイベントを気にしないため、すっかり忘れていたけれど。
「毎年あたしが頑張ってチョコレートを手作りしても、一口で食べちゃうでしょう。いろいろ工夫してるのに味わいもせず、腹に入ればなんでも同じだって。だから、今年は大量に食べられるケーキにしたの。これなら食べ応えがあるでしょう? さあどうぞ、思う存分食べて」
微笑むブルマに逃げ場はないと悟る父子。食べ応えがあるといっても限度がある、極端すぎないか、など言いたいことは胸中にあるけれど、それを言える雰囲気ではなかった。
「…ど、どうするの、パパ?」
「どうするって、食うしかないだろう?」
ブルマに聞こえないような小声で、ベジータとトランクスは話し合う。
「でもあんなに大きいの、食べきれる? 絶対無理だよ。ボクもケーキは大好きだけど、四分の一くらいが精一杯だって」
「無理だろうが、とにかく腹に入れろ。呑み込めばなんとかなる。この状況で拒否などできるわけないだろう」
「だ、だけど」
「ブルマの顔をよく見てみろ。目が笑ってないぞ」
「…ホントだ。なんでバレンタインのチョコレートに、これだけ躍起になるわけ?」
「それは………」
その理由は、昨年までのバレンタインデーに生じた出来事に起因していた。普段の食べ物と同等に扱い、一瞬で平らげた挙句に「食えればなんでも同じ」と言い放つ。そんなベジータの言動が、ブルマを今回の行動に走らせたのだ。
「今さら、そんなことを言っても仕方ないだろう。後の祭りだ。とりあえず、あのケーキを食えるだけ食うしかないだろう」
「すっごく、胃にもたれそう…」
「食わないと、それ以上におそろしいことが待ってるぞ」
覚悟を決めたベジータとトランクスは、巨大チョコレートケーキに立ち向かう。
「あのさ、パパ」
「なんだ」
「ママって…あの邪悪なブウより怖くない?」
「ある意味、な」
宇宙で二番目の強さを持っている男がため息をもらすと、二人はブルマの愛が入った特製ケーキを半日かかって完食した。
それぞれのはなし。〜夏祭り編〜
SCENE‐1 ベジータ&ブルマ
「混んでるわね」
「どこから湧いてきやがった、この烏合の衆は」
「さすがに都で一番大きい祭りは違うわね。すごい人出」
「だからオレは嫌だと言ったんだ」
「来ちゃったものは仕方ないでしょ? 今さら帰るとか言い出さないでよ」
「……ちっ」
「祭りっていうのは、たくさんの人でにぎわうものよ」
「暑いときにわざわざ群衆に呑まれて、なにが楽しいんだ」
「興醒めするようなこと言わないで。空気に馴染めばわかるわよ」
「そんなもの、わかりたくないがな」
「文句はそこまでよ。せっかく浴衣も着てきたんだから」
「なんだ、このヒラヒラした服は? 涼しいのはいいが動きづらいぞ」
「普通に歩くだけなら問題ないでしょ? 戦うわけじゃないんだし」
「地球の文化は実用性がないものばかりだな」
「情緒があるってことよ。慣れれば感じ方も変わってくるわ」
「…トランクスはどうした?」
「さっき悟天くんと会ったから、一緒に遊んでくるって」
「ということは、カカロットも来てやがるのか?」
「そうだけど。言っておくけど、こんな公衆の面前で暴れたりしないでよ」
「だれがするか」
「屋台のゲームで勝負したら、ヒートアップして暴走しそうじゃない」
「そんなガキのような真似…!」
「お互い『気』で居場所がわかるんだから、避けて通れば」
「…面倒くさい」
「とにかく祭りを楽しみましょう。二人で、ね?」
「……――――」
「今夜はあたしのそばから離れるの、禁止よ」
「ど、どうして腕を組む!?」
「なに? 嫌なの?」
「嫌だとは言ってないが」
「だって、これだけ人が多いと、はぐれたときに困るじゃない」
「どれだけ人間がいようと、おまえの『気』ならすぐに見つけられる」
「…それってさ」
「なんだ」
「あたしのことすごく愛してるってこと?」
「だっ、だれが…! どうしてそういう結論になる?」
「違うの?」
「オ、オレは…」
「そんなのわかりきってるんだから、今さら照れなくてもいいのに」
「――――……」
SCENE‐2 トランクス&悟天
「たくさんの人でいっぱいだね、トランクスくん」
「そりゃあ、この夏祭りは花火が豪華だからな」
「そうなんだ」
「世界各地から、花火を見にやってくる客だっているんだぜ」
「へえ。楽しみだなあ」
「おい、悟天。射的やろうぜ」
「その前にボク、りんご飴が食べたい」
「両手にこれだけ食いもの持ってるのに、持てるのか?」
「これくらい、すぐに食べちゃうよ」
「なら、さっき買ったかき氷を先に食べようぜ。溶けるぞ」
「うん」
「そういや、あのかき氷屋の男、妙な目でオレたちを見てたな」
「そうかな?」
「どこかで会った気がするんだけど…思い出せない」
「ふうん」
「たしかに見覚えがあるんだけどな、あの顔…」
「気のせいじゃない?」
「まあいいか。そんなことより、りんご飴を買ったら、次は射的で勝負な」
「ボクが勝ったら、トランクスくんのおもちゃ、三個もらうからね」
「いいぜ。でも勝つのはオレだけどな」
「あれ? あそこにいるの、にいちゃんだ」
「ビーデルさんも一緒…ってことはデートか」
「にいちゃ――――」
「バカ! 声をかけたりするな」
「どうして?」
「こういうとき、カップルの邪魔をするのは野暮っていうんだぜ」
「野暮?」
「家でも、両親が仲良くしてるときは遠慮するもんだ」
「なんで?」
「夫婦であっても、男と女だからだろ?」
「詳しいね、トランクスくん」
「小さい頃から、おばあちゃんがいろいろ教えてくれたからな」
「じゃあ、トランクスくん家でおじさんとおばさんが仲良くしてたら?」
「気を利かせるのが、賢い子どもの『ショセイジュツ』ってヤツだ。当然だろ」
「難しい言葉、知ってるなあ」
「悟天にはまだ早いかもな」
「とにかく、おとうさんたちやにいちゃんの邪魔をしなければいいんだよね?」
「そういうことだ」
「わかった」
SCENE‐3 悟飯&ビーデル
「どうしたの? 悟飯くん」
「いや、さっき悟天の声がしたような…。気のせいかな」
「それにしても、すごく混んでるわね」
「地球最大規模の花火大会ですから」
「花火が打ち上がるのは、何時からだったかしら?」
「ええと…あと二十分くらいですね」
「――――おい、そこの若人カップル」
「わたしたちのこと?」
「占いの出店…?」
「未来を占ってやろうか? おぬしたちならサービスしておくぞ」
「なんだ、占いババじゃないですか。なにやってるんです?」
「見てのとおり仕事じゃ。こんな大きな祭りを見逃す手はないからの」
「その割に、繁盛はしてないようですが…」
「そうね」
「おまえたちなら格安で占ってやるぞ」
「悟飯くん。見て、この占い料金」
「十万ゼニー!? 金運は百万ゼニーって…! いくらなんでも高すぎですよ!」
「普段なら一千万ゼニーのところ、出血大サービスじゃ」
「道理でお客が寄りつかないはずよね」
「祭りの出店でそんな金額、無茶ですよ」
「わしの占いはそこらのまがいものとは違うんじゃから、当然の対価じゃわい」
「閑古鳥が鳴いてるのも頷けるなあ」
「いくら当たる占いでもね…」
「おぬしたちなら半額で占ってやろう」
「結構です。そんなお金持ってませんよ」
「わたしも遠慮します」
「ほい、未来が水晶に映っておるわ」
「勝手に占ったって、お金は払いませんからね! 行こう、ビーデルさん」
「うん」
「やれやれ、慌てて行ってしまうとは。それにしても…これがあの二人の未来か」
SCENE‐4 悟空&チチ
「あれ? 悟天はどこに行ったんだ?」
「トランクスとバッタリ会ったから、二人で見て回るって」
「そうか。なんかよく知った気配がすると思ったら、ベジータも来てたのか」
「祭りなんだから、ベジータとケンカするでねえぞ」
「しねえよ、ケンカなんて」
「いいや、信用ならねえ。些細なことでも対抗意識を燃やすんだから」
「ベジータも、ブルマにそう言われてるんだろうな。器用にこっちを避けてら」
「それならいいんだが」
「あ、チチ。あのイカ焼きも、うまそうだな」
「どれだけ食べたら気が済むだ? さっきから見かけた食べ物全部買って…!」
「だってよ、すげえうまそうな匂いがするからさ」
「まったく食べることにだけは貪欲なんだから」
「まあ、せっかくの祭りなんだし。お、あそこにかき氷があるぞ!」
「悟空さ! 急がなくてもかき氷は逃げねえだ」
「おい。かき氷くれ、大盛りでな」
「…今度は父親か」
「ん? あれ? おめえ、どっかで会ったことあるか?」
「どうしただ、悟空さ?」
「直接会ったことはないが、オレはおまえを知っている。孫悟空」
「なんでオラのことを知って…? 待てよ、おめえのその顔」
「クリリンの嫁に似てるだなあ」
「あっ、そうか! おめえ、十八号と双子の十七号だろ?」
「今日は知った顔に出くわす日らしい」
「へえ、おめえが十七号か」
「かき氷屋なんてやってるだか?」
「今日だけな。さっき、おまえの息子が来たぞ。ベジータの息子と一緒にな」
「悟天が?」
「あの二人も買い食いばかりしてるだな。まったくしょうがねえ」
「そっくりだから一目でわかった。ほらよ、かき氷大盛り」
「いくらだ?」
「今日はサービスってことにしといてやるよ」
「タダってことか?」
「いいのか? そりゃあこっちは助かるが」
「…セルとのことでは、世話になったみたいだしな」
「セルを倒したのは悟飯だけど…そういうことなら、ありがたくもらっとく」
「おめえ、案外いいやつなんだな。今度うちに遊びに来てけろ」
「気が向いたらな」
SCENE‐5 クリリン&十八号&マーロン
「やっぱり都会はすごい人だなあ」
「マーロン、手を離すんじゃないよ」
「うん」
「出店もいろいろあるし。どれでも好きなもの買ってやるぞ、マーロン」
「どれにする?」
「うーんとね…」
「綿菓子にするか? りんご飴がいいかな?」
「あ、十七号のおじちゃん」
「えっ? どこに?」
「十七号だって?」
「あのかき氷屋さん、おじちゃんだよ」
「本当だ」
「なにやってるんだ、あいつは」
「おじちゃん!」
「マーロン、走ると危ないぞ」
「なんだ、家族で来てたのか」
「うん! おじちゃんは?」
「なにやってるんだ、十七号」
「見てのとおり、かき氷の屋台だ。祭りの屋台はいい稼ぎになるからな」
「久しぶりじゃないか。もっと顔を見せに来てくれよ」
「そのうちにな」
「おじちゃん。一緒に花火見よう?」
「悪いな、マーロン。今夜は仕事があるから」
「そっか…」
「その代わり、これやるよ」
「うわあ、かき氷だ」
「おまえの好きなイチゴ味じゃないか。よかったな、マーロン」
「十七号。なんでマーロンの好きな味を知ってる?」
「細かいことは気にするな」
「あたしたちの目を盗んで、マーロンと会ってるだろ?」
「いいじゃないか、十八号。十七号にとってマーロンは姪っ子なんだし」
「ありがとう、おじちゃん!」
「ほら、ついでだ」
「オレたちにも、いいのか?」
「今日は人出も多くて、かなり儲かったからな」
「こんなものでごまかされないよ、十七号」
「まあまあ、十八号。かき氷サンキュ、十七号」
「おかあさん。おじちゃんのかき氷、おいしいよ?」
「――――…」
「さあ、かき氷を食べながら、花火がよく見える場所を探そう」
「うん」
「じゃあな」
「バイバイ、おじちゃん」
「また遊びに来いよ」
「あたしたちのいる時間にだよ」
「わかってるって」
SCENE‐6 ベジータ&ブルマ
「もうすぐ花火が始まっちゃうわ」
「だからどうした」
「どこか、花火がゆっくり見れる場所はないかしら?」
「この人混みで、そんな空間あると思うか?」
「せっかく花火を楽しみにしてたのに」
「…花火が見れれば、どこでもいいんだな?」
「そりゃあまあ」
「しっかり掴まってろ」
「へっ!? ――――きゃあ!」
「大声を出すな。目立たないよう飛んでるんだからな」
「わあ、どんどん地面が遠くなっていく」
「これくらい浮けばいいだろ」
「たしかに、ここならゆっくり花火を楽しめそうね」
「そろそろじゃないのか」
「あ、本当。もう打ち上がるわよ。一時間弱、あたしを離さないでよ?」
「…一時間弱だと?」
「そうよ。この祭りの花火大会は、数十万発の花火が見物なんだから」
「……――――」
「なに? そんなに長い時間、飛んでいられないの?」
「浮くのはいくらでも平気だが…」
「愛する妻を支えられないほど、やわな腕力じゃないでしょ?」
「…………っ」
「ほら、上がったわよ、花火! たーまーや!」
説明 | ||
ベジブル、悟チチ、クリパチほか。家族中心ほのぼの作品。 ダウンロード版同人誌のサンプル(単一作品・全文)です。 B6判 / 140P / \200 http://www.dlsite.com/girls/work/=/product_id/RJ162423.html |
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