Dear My Friends! ルカの受難 第14話 テルの決断
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(アフス城内・開発武器試験場・会議室)

 

 アフス&フォーリナー陣営である、アル、ユキ、ミキだけでなく、皇帝のイロハまで集まり、今後のことについて話しを始めるところだった。

 

ミキ「残りのメンツだけでなく、イロハ皇帝まで集まってどういうことですか? 次は最後の“私とテルの試合”があって、こっちは、引き分けか勝ちの二択しかないんですよ?」

ユキ「おまえが勝った場合は問題なく、“こっちの勝ち”、の条件を突き付けることができる」

ミキ「私は必ず勝ちますよ!」

アル「ここで話す内容は、万が一、お前が負けたときの事、つまり、“引き分け”、になってしまった時の事だ」

ミキ「随分信用がないんですね」

ユキ「そういう事態が起こってしまった後、こちらがすぐに対応できない事を懸念しているのだ。持ちケースは多い方がいい」

ミキ「…わかりました。『万が一』起こってしまった事として把握します」

アル「うむ。さて、5戦という“奇数”のカードを用意した関係で、“引き分け”のケースは用意してなかった。そこで私とユキで少し案を出した結果、この件は権限を持つイロハ皇帝に、許可を得ないと行けないと判断し、わざわざお越し頂いたのだ」

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 皇帝のイロハは、従者を引き連れて、専用の椅子まで用意させて、そこに座っていたのだった。通常、皇帝の権限を持つ人物が来るような場所ではないのは重々承知だが、イロハ自身としても、この試合の結果や対応に参加したいという気持ちもあったので、逆に従者を説得して、ここに、はせ参じたのだった。

 

イロハ「さてはて、私がここに来るという事は、その“引き分けの対応”には、並々ならぬ“許可”がいるという事だな」

ユキ「お言葉の通りでございます。率直に申し上げますと、皇帝もご存じの“巡音ルカ”を我々に少々お貸しいただきたいのです」

イロハ「何? “異界から来た才女”をだと? 丁重に扱うと聞いたから、従者にそういう扱いをするように手配したのだが、今更彼女に何かするつもりなのか?」

ユキ「実は…」

 

 この後、30分ほど、“今後の事”、を話しあった結果、イロハを説得したユキの提案と行動、条件などを受け入れ、実際の行動に移したのだった。しかし、ミキだけは、その“恐ろしさ”で気持ちが悪くなってしまったのか、30分後の“決定”の後、「試合の準備をしたいので」と告げて、バトルアリーナの控え室に一人だけ移動してしまったのだった。

 

(アフス城内・開発武器試験場・控え室)

 

ミキ「く・・・・・・狂ってる・・・・・・」

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(アフス城内・開発武器試験場・バトルアリーナ)

 

 それから1時間後…

 

 アフス&フォーリナー陣営、テル、共に準備が整ったので、テルとミキの二人がバトルアリーナの闘技スペースで対峙していた。しかし、どうにもミキの様子がおかしかったのだった。

 

 テルに対しての殺意でもなく、闘争心でもない、増長しているのでもなく、萎縮しているのでもない。むしろ、“同情して哀れんでいる”というべきだろう。しかもその視線は、テルだけでなく、闘技スペースから離れた待機スペースで、学歩と佇んでいる“ミク”にも向けられていた。

 

テル「? お前、体調悪いのか? どうにも戦える状態とは思えないが… 悪いが私はお前がどういう状態でも全力で戦い、勝たせて貰うぞ? これは最終試合なのだからn」

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ミキ「・・・・けろ・・・」

テル「? “けろ”?」

ミキ「・・・負けろ・・・わざと負けるんだ・・・」

テル「何!?」

ミキ「ミクとルカの帰還と完成魔法陣の件は、今回は諦めるんだ。時期を待って、もう一度来るんだ」

テル「なんだと!? どういうことd」

ミキ「逃げる時は私が手伝ってやる、だから、絶対に負けるんだ! ミクさんの為にも!」

テル「!?!? 何を言っているのかさっぱりわからん!」

ミキ「私が勝ちたいから言っているんではない! お前が勝った“後の試合”に問題があるんだ!」

テル「“試合”だと!? お前と私の試合が最後ではないのか? 確かに“引き分け”のケースは聞いてないが」

ミキ「ブレイン共が話し合ったのだ。引き分けのケースを。そしてもう準備が出来ている」

テル「・・・追加試合で決める訳か…」

ミキ「そう、問題はそのカードだ。お前の方は…わかるな、残りは“ミクさん”しかいない。これまで特例でカードを作らなかったが、ここで引き分けた場合、その特例がはずれ、彼女が戦うことになる」

テル「!? そ、そんな事許さん! 彼女はど素人なのだぞ!」

ミキ「それだけではない。お前はわかるか? コッチ側の“コマ”が誰か…」

テル「まだ出していないフォーリナーの兵士かなにk・・・・・・・・ま・・・・・まさか・・・・・」

 

ミキ「半分正解で半分間違っている。答えは“ルカさんのコピー”だ」

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テル「な!?」

ミキ「詳しく言えば“コピー培養成分と最強兵士の成分をミックスした「戦士のルカさん」”だ」

テル「な・・・・何だと!」

 

ミキ「まだ救われるのは“ルカさん本人”ではないこと。しかしこれはブレイン共が、“ルカさん本人”に残っていて欲しい為だ。コピーの原本として、我々の有能なブレインの一人として…」

テル「ル・・・ルカさんの姿をした戦士と…友人のミクを、戦わせるというのか!!!!!!」

ミキ「そして勝ち負けの結果も、お前達の条件を呑んだとしても、こっちにはルカさんのコピー成分が残っている。魔法陣は諦めても、有能な成分を獲ることが出来る。こっちが勝てば、願ったり叶ったりの条件で終えることが出来る…」

 

テル「き・・・・・貴様ら・・・・・それでも人間か!」

ミキ「この会議に反対した私を除外しろ、とは言わない。とにかく、もう、ルカコピーは完成してしまった。ミクさんのためにも、ルカさんの為にも、お前が勝てば、最悪のシナリオが幕を開けるんだ、だから・・・・・負けるんだ」

 

 テルとミキは、戦闘するポーズを取り、相手の出方をうかがう仕草をしながらも、暫し、黙ってしまった。ミキもこれ以上語れば、ブレイン共に悟られると思ったからであるし、テルは、珍しく“熟考”してしまったのだ。

 

 テルは考えた。自分に降りかかることを除外しても、聡明なルカさんはなんとかやっていけると考えても、自分が負けて、当分の間、ミクさんやルカさんが帰れない事になってしまう“結果”が良いのか、自分が勝って先を開き、可能性を見つけるため、ミクさんvsルカさんコピーの辛い試合をさせる事が良いのか…

 

 静寂の時間は15分にも及んだ。しかし、それが限界時間だった。

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 カーン!

 

 ユキはたまらず、催促のゴングを鳴らした。

 

ユキ「こら! 両名! にらみ合いにも程があるぞ! いい加減、試合をしなさい! どっちみちこの試合には“引き分け”はないのだぞ! お前らほどの実力があれば、15分あれば、相手の棋譜くらい読めるだろ!」

アル「ミキのヤツ…まさかテルに話したのではないだろうな…」

ユキ「そうなれば、“人道精神”をかすかでも持っているテルの方が、“わざと負ける”、方を選ぶでしょう。どちらにせよ、我々の方に風は吹きます」

アル「そうだな、まぁそれでも油断は禁物だ」

 

 その頃、テルとミキは、小声で会話をしていたのだった。

 

ミキ「テル、そろそろシンキングタイムの限界だ。どうするんだ?」

 

テル「・・・“私が勝つ”事にする。今の事態ではミクさんに相談する事が出来ない。バレる事を承知で相談に言っても、どっちの道も選べないと言われる事が目に見えている」

ミキ「では、何故“勝つ”方を選ぶのだ?」

 

テル「…ミクさんとルカさんには悪いが、我々が負けて、あの完成魔法陣がお前らに渡ってしまったら、間違いなく、お前らによる向こうの世界への侵攻が始まる」

ミキ「それは避けられないだろうな」

テル「当然、向こうの世界は、“荒れる”、事になるだろう。そして、時を置いてミクさんやルカさんが戻れるようになったとしても、そんな“荒廃した世界”に戻れる事に、何の意味があるのだ? 間違いなく“ない”だろう。こっちにいるより遥かに“大きな不幸”を背負うだけだ」

ミキ「言い過ぎ、考えすぎの範疇と言いたいが、残念だが、それは“起こりうる可能性が非常に高い予想”だろう。そうか、“こっち”と“そっち”を天秤に掛けた上で決めたのか」

テル「これが私が考えて獲た“答え”だ」

ミキ「しかし、ミクさんは、次の試合、まともに“ルカコピー”と戦って勝てると思うか?」

テル「破滅が必ず待っている選択を選ぶよりは、ずっと“可能性”のある道だと思う。“コピー戦士”の技量は知らない。だが、私だって“何か”できるはずだ。ミクの武器を強化したり、ミクを説得する“余地”が生まれるわけだし。いずれにしても、この試合、勝たせてもらう」

 

 ミキは暫し黙っていたが、目線をテルに向け、コクっと頷き、最後の声をかけた。

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ミキ「わかった。お前の魔法“衝撃刃”を私に撃て。巧くノックアウトを演じよう。どうもブレイン達は私の技量に疑問符を持っているらしいし、むしろ“次の試合”を待っている気持ちまであるようだ。一撃ノックアウトされても、文句は出まい」

テル「…お前はそれでいいのか?」

ミキ「ボディが壊れない程度にしてくれ。この“ミキボディ”は頑丈だが、直撃だとそれなりのダメージは喰らうはずだ。私もミリアムとして死亡し、せっかくミキボディに定着できたのだ。それ相応にまだまだ楽しみたいし、お前らの援助もできるだろう」

 

テル「…かたじけない。それでは当てることにするぞ」

ミキ「巧くやれよ」

 

 こうして、“結論”、に達した二人は、“一世一代の大演技”を演じる事にしたのだった。

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テル「スキあり! これで終わりだ! 衝撃刃!」

ミキ「し、しまった!」

 

 テルの手先から、4枚の“風の刃”が飛び出し、ミキを切り刻んでいった。ミキは“破壊されない程度のガード”をして、腕を構えて耐えていた。

 

 バシュ! バシュ! バシュ! バシュ!

 

 ミキの周りの土が土煙としてミキを囲んでいたが、煙が消えると、ボロボロのミキが現れたのだった。

 

ミキ「む・・・・・・・無念・・・・・・・」

 

 ガチャン!

 

 ミキはいかにも力つきるようなポーズを取って、テルの前に倒れ込んでしまった。そして、わざとピクリとも動かなかった。

 

テル「(すまん)おい! ユキ! これはKOでいいな!?」

 

 カーン! カーン! カーン!

 

 試合終了のゴングが打ち鳴らされた。いやに“残念な感情のないゴング”だった。

 

ユキ「うむ。こっちの負けだ。医療班! すぐにミキを医務室に運べ!」

 

テル(やはりミキの言うとおり、こっちを望んでいたか…)

 

 こうして、本来、一番盛り上がるだろう、便宜上の最終戦は、あっけなく終えられてしまったのだった。

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(アフス城内・開発武器試験場・テル側待機スペース)

 

ミク「やりましたね!! これでイーブンです!」

学歩「うむ、天晴れだ!」

テル「あ、ああ…」

ミク「(何で元気ないんだろ?)そう言えば“結果的に引き分け”になったときの条件って決めてなかったですね」

学歩「うむ。1つ“引き分け”が入ったからな。さて、向こうさん、どう出るかな」

テル「そ、そうだな…」

 

 ピーーーーガガガ!

 

テル(クッ! 私から語るわけにも行かないから、仕方ないのだが…)

ユキ「えー、テル側の諸君、これで結果的に“イーブン”ということになったわけだ。しかし、このケースの条件などは決めていなかったのは、わかっているだろうな?」

ミク「ええ、全く。で、どうするわけ? 再試合?」

ユキ「うむ、それに近い。しかし、戦うのは、条件付きで外されていた、キミだ!」

 

ミク「え!? わ、私!?」

学歩「うぬぬ…」

テル「…」

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アル「君が勝てば、最初の約束通り、完成魔法陣は諦め、コピー魔法陣は全て消滅させ、ミク、ルカの両名を完成魔法陣で、元の世界へ帰そう。当然、君たち陣営の全員を、安全に送り届けることも約束しよう」

ユキ「しかし、ミク、君が負けた場合、完成魔法陣は我々が頂き、ルカも我々の陣営に入って貰う。反逆したテルは処刑。他は自国に帰って貰う。ミク、君は好きなようにしてもらうが、ルカに近づくことだけは許さない。クリプトン王国で余生を喰らうがよい」

 

ミク「・・・・・・・・わかった、どうせソレしか道がないわけだから、“戦って”やる! 相手は誰?」

アル「うむ、殊勝な心がけだ。で、お前の相手は、カノジョ、だ」

 

 ガガガガガ…

 

 闘技場に通じる“兵器搬入口”のドアが開き、そこに、ピンクの髪の女性戦士らしき人物が、剣と盾を持って、待機していたのだった。そして、ニコっと笑って、テル達に“挨拶”してきた。

 

女性戦士「Dear My Friends」

 

ミク「そ・・・・・・・・・そ・・・・・・・・そんな・・・・・・・・・」

 

ルカコピー「申し遅れました、私はルカコピーと申します。親愛なるミクさん、さぁ、楽しみましょ?」

 

(続く)

 

CAST

 

ルカ姫、巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ

初音ミク(ミク):初音ミク

 

<クリプトン(Cripton)王国サイド>

魔導師アペンド:初音ミクAppend

 

僧侶リン(リン):鏡音リン

勇者レン(レン):鏡音レン

 

<インタネ(Interne)共和国サイド>

異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ

 

<アフス(A-Hu-Su)帝国サイド>

魔導師テル:氷山キヨテル

 

皇帝イロハ:猫村いろは

神官ユキ:歌愛ユキ

クグツロボット(コードネーム)“ミキ”の外観:miki

(ミキの中身=ミリアム:Miliam)

 

ルカコピー:巡音ルカ

 

<フォーリナー(Foriner)軍政国家サイド>

変身兵士 ソニカ:SONiKA

 

皇帝アル:Big-AL

重機動兵器アン:Sweet Ann

剣士レオン:Leon

圧殺兵士ローラ:Lola

導士オリバー:Oliver

拳闘士シユ:SeeU

 

その他:エキストラの皆さん

 

***

 

<バトルアリーナの対戦カードまとめ>

 

第1回戦 : ×ソニカ  vs  ○拳闘士シユ

第2回戦 : ×レン   vs  ○圧殺兵士ローラ

第3回戦 : ○学歩   vs  ×剣士レオン

第4回戦 : △アペンド vs  △重機動兵器アン

最終戦  : ○テル   vs  ×ミキ(ミリアム)

 

EX最終戦 : ミク    vs  ルカコピー

 

回復担当 : リン   &   導士オリバー (非戦闘員)

説明
☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第15作目の第14話です。
☆今回は1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。

☆当時は2期を意識してなかったのですが、本作は最新シリーズ“Dear My Friends!第2期”の第1期という作品になり、第2期のシナリオやカラクリに、第1期となる“本作”の話も出てきますので、これから長い長いお話になりますが、長編“Dear My Friends!”として、お楽しみくださいませ。

☆この作品はナンバリング的には“第1期”となります。
☆主役はルカさんなんですが…。

☆今回は、テルvsミキ、でしたが、意外な展開に…
☆そして、事態はとんでもない方向に…
☆これから、どうなってしまうのでしょうか?
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Vocaloid 巡音ルカ 初音ミク Append 鏡音リン 鏡音レン 神威がくぽ 氷山キヨテル AHSボカロ 海外組 

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