真・恋姫無双 覇王伝 第三十二話
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〜洛陽にて〜

「此処まで無能だとは思わなかったわ!」

苦々しい言葉を吐き捨てる様に呟いているのは李儒だった

彼女が無能と嘆いているのは宦官達の事である

彼女は一刀達の南陽への侵攻を見越して西涼の軍勢を呼ぶ事を進言した

そしてこれは受け入れられた ここまでは良かった

だが彼女は侵攻が現実となった時、最善手として宛に禁軍を籠城させ、籠城戦に苦慮している北郷軍を西涼軍で攻撃する策を進言した だが

「禁軍を洛陽から出すなどとんでもない」

「その通り そんな事をして洛陽の守りをどうするというのだ」

と宦官に却下された

そこで次善の策として宛に西涼軍を籠城させる策を進言したが

「西涼の軍で一気に攻め滅ぼすべきであろう」

「左様 籠城戦などして宛の物資を無駄に使う事もあるまい」

「大体、そんな悠長な事をしていては漢王朝の権威に傷がつく」

「そもそも北郷軍が宛を攻めずに洛陽に直接攻めて来たならばどうする」

とこれも却下された

要するに宦官は洛陽の禁軍を動かすと自分達が不安なだけで禁軍は動かしたくない

そして宛の物資は惜しい

更にまだ漢王朝の権威失墜を理解していない

おまけに、北郷軍が洛陽を直接攻撃する筈が無い事も分かっていない

そんな事をすれば後方から西涼軍に攻められるのだから

その事を李儒は説明し、必死に説得しようとしたが

「お主如き若輩者が差し出がましいぞ」

「西涼軍を呼んでおく事位、我等でも考えていた それを思い上がるな」

「お主如きは我等の言うままに働いておれば良いのだ」

とまともに取り合おうとしない

「西涼軍が負ければもう漢王朝に後が無いというのに・・・

 野戦となれば良くて五分五分 むしろ西涼軍が不利か・・・」

李儒は空を見上げて

「身の振り方を考える必要が有るかもしれないわ

 自害か、北郷に降るか、曹操や劉備に降るか・・・ どれも苦渋の決断ね」

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〜星対蒲公英〜

蒲公英が先手必勝とばかりに勢い良く攻め込む

だが星は

「甘い!馬岱と云ったか

 やはり私の見立て通り筋は良いが未熟

 錦馬超か馬騰でなくこのような未熟者が相手とは、ハズレ以外の何物でもない」

と全ての攻撃を余裕を持って捌いている

騎馬戦において重要なのは馬術と武術

その馬術に於いては騎馬民族でもある蒲公英の方が星より優れている

だが星も馬術が不得手でなくむしろ優れているので差は僅か そして鐙でその差は覆されている

もう一方のの武術の於いては星が1枚も2枚も上手だ

これでは蒲公英に勝機は殆ど無い

更に星は持ち前の毒舌で蒲公英を挑発する

馬術で互角、武術で完敗、心理戦で平常心を失う

もはや勝敗は決したと言っても過言では無い

「そろそろ此方から行くぞ

 はい、はい、はいー!」

蒲公英も必死で堪えるが辛うじての感はぬぐえない

「そら、どうした

 まだまだ続くぞ」

星の猛攻に耐えきれずに一か八かで

「舐めるなー!」

と反撃を試みるが星はその不用意な一撃を待っていた

(防御一辺倒の相手を崩すのは骨だが、不用意な攻撃を仕掛けてきた相手にならば・・!)

交作法気味に星は蒲公英に反撃をする

蒲公英は直撃は免れたものの、落馬してしまう

「いった〜」

落馬して背中をしたたかに打ち付け、その痛みを押して起き上がろうとするが

「ここまでだ」

と槍を眼前に突きつけられてしまう

「敵将、馬岱 この趙雲が捕えたりー!」

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〜疾風対翠〜

「此方から参るぞ!」

疾風が騎馬を走らせ一気に攻め入る だが

「悪いが待つつもりはないよ!」

翠も騎馬を走らせる

「そら、そら、そらー!」

疾風がその真名の通りの速さで突きを繰り出す

「舐めるな!」

翠もそれを捌いて逆に攻撃する だが

「その程度で!」

と疾風も譲らない

この二人馬術に於いては翠の方が優れている 鐙を考慮しても翠の方がやや優位を保っている

武術に於いても翠の方が優れている

馬術に於いても武術に於いても劣勢な疾風が勝つ見込みは薄い

それは疾風も一騎討ちが始まって直ぐに理解した だが

(私の一撃が先に決まれば!)

自慢の速さに一縷の望みを託し、連撃で勝機を掴もうと攻撃を仕掛ける

「おりゃー!」

その疾風の攻撃を翠は力強く弾き飛ばす

自分の攻撃を捌くのではと予測していたが余りの力強さに疾風は完全に態勢を崩す そして

「貰ったー!」

翠の一撃が疾風の胸を貫く

「ぐはっ!

 無念・・・ 北郷様、申し訳ありません」

疾風は落馬し、その命は尽きた

疾風の誤算は翠が膂力重視の武人だと思い込んでいた事

親の馬騰が豪快な戦いをするとの噂が鳴り響いていた為、娘の馬超も同じだと思っていた

だが実際は膂力も有るが速度も有る 少なくとも疾風の攻撃に対応出来る程度の速さは有った

「アンタは強い武人だったよ

 でも私の方が一枚上手だったようだね

 敵将 高順 この馬超が討ち取ったりー!」

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〜一刀対馬騰 一刀視点〜

「その程度かい!」

馬騰が挑発してくるが何も言い返せない

戦況は俺が圧倒的に不利だ

馬術は鐙が有るにも関わらず向こうの方が上

武術は騎馬戦なので槍を使っているが俺は槍術より剣術の方が得意な上に馬上での戦い

俺の修練した『北天一心流』は体術が使えない為、馬上の戦いに向いていない

馬術でも武術でも劣るなら戦い方を変えるしかない

馬を操り、その場から離れる

「逃げるか!」

馬騰が怒鳴るが、少し離れた所で向きを変え馬を勢い良く走らせ突っ込む

「逃げない事だけは褒めてやるよ!」

馬騰は迎撃の構えを取る

そして、俺の攻撃はハズレ、馬騰の攻撃は俺の左肩を掠めた 浅手なのは不幸中の幸いだ

交差しても勢いを殺さずに、また間を取り再度突っ込む

「何度やっても同じ 否、ここで決めてやるよ!」

馬騰も突っ込んで来た

そして馬騰の槍が繰り出される直前俺は馬の背中から跳躍した

跳躍した俺は馬騰に頭上から馬騰に斬りかかる 馬騰は当然槍で防ごうとするが

(引っかかった)

俺は斬りかかる振りをして馬騰を飛び越え、馬騰の後ろの馬上へ着地した

そして馬騰の襟首を掴んで諸共馬上から落ちる

馬上で勝てないなら地上で戦う それが俺の戦法だった

「くそっ!」

落馬した馬騰、俺 双方とも素早く態勢を立て直す

一瞬俺の方が早く立て直し、抜刀術で斬りかかる だが馬騰も槍の突きを繰り出した

(躱せない!)

この突きは躱せない ならばせめて相討ちにと覚悟を決めた

その瞬間、突きの軌道が変わり俺の脇腹を突きが掠める

浅手とは言えないがまだ動ける

斬りかかる俺は馬騰が吐血しているのを見た あの吐血は病?それで突きが逸れたのか

そして俺の抜刀術が馬騰を斬る

馬騰は地に倒れ落ちた

 

「病に侵されていたのか」

俺が脇腹の傷を抑えながら、倒れた馬騰に尋ねると

「言い訳にならないよ 私は負けた

 それが全てだ」

「貴方程の人物なら漢王朝に未来が無い事位分かっていた筈だ

 何故、そこまで漢王朝にこだわる?」

「ふっ 漢王朝に未来が無くても人の営みは続く

 ならば新しい王朝を強き力で造らねばならない

 私達西涼軍を破った事をその強さの証とさせる為さ

 西涼軍を失った事で漢王朝に頼る物は無くなる

 これで、老害たる漢王朝は終わりだ」

馬騰は自らを生贄として漢王朝の次に世を託したのか

「貴方の想いは無駄にしない

 敵将 馬騰 北郷一刀が討ち取ったりー!」

 

 

〜翠地点〜

「報告します 馬岱様が敵に捕らえられました」

「なんだって!救出に向かうよ!」

疾風を討ち取った翠の元に蒲公英が捕えられた報せが入る

直ぐに救出に向かおうとした翠の元に

「大変です 馬騰様が討ち取られました」

「なにーーー!!!」

翠は絶叫するがまだ一介の将としての判断能力は残っていた

「くそっ!撤退する!

 体制を立て直してから母様の弔い合戦だ!」

西涼軍は撤退を始めた

北郷軍も損害が多く、また一刀の負傷も軽くなかった為、追撃は行えなかった

だが翠には失念していた 馬騰の死で頭に血が昇っていた為かもしれない

それは馬騰を盟主としていた西涼連合の部族長は馬騰の『配下』では無い

あくまで馬騰は西涼連合の代表で有る事

すなわち、全軍が馬騰の弔い合戦を望んでいる訳では無い

そして翠は未だ西涼連合の部族長に盟主として認められる功績をあげて無かった

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〜あとがき〜

 

3つの一騎討ちでした

 

星対蒲公英は無難な所だと思います

蒲公英の処遇は次話にて

 

疾風対翠で疾風は死亡しました

疾風は蒲公英位の強さと考えていましたので

 

一刀対馬騰で馬騰が死亡しました

翠の復讐戦は不可避です

 

更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
3ヶ所での一騎打ち
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コメント
mokiti1976-2010様>疾風は万能系で補佐役として重宝されるんですがこうなってしまいました。蒲公英に関しては次話にて。(ZSAN)
nao様>良くて相討ちです。(ZSAN)
疾風さんは残念です、南無阿弥陀仏。でも、代わりに蒲公英が加入とか…さすがに難しいかな?(mokiti1976-2010)
馬騰が病いじゃなかったら一刀勝てなかっただろうな^^;(nao)
タグ
真・恋姫無双 北郷一刀 馬騰   蒲公英 

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