エブリデイ えーゆー譚! 〜恋姫達とのドタバタ生活!〜 二十七話 |
お日様ポカポカ、午後の授業。
小等部6-2の教室……の窓際で、とある生徒が寝ていた。
いや、寝てるんだがその姿勢は直立していて寝ているようには見えない。
風「ぐぅ……」
先生「〜〜だからここは…」
風「ぐぅ……」
先生「ここに〜〜〜を入れて、〜〜〜するわけで…」
風「ぐぅ……」
先生「じゃぁここを……よし、日向。……ってまたか」
算数の教師が眠っていた生徒、日向 風を指したがその状況に少し苦笑いする。
この光景は日常茶飯事なのだが、彼は怒ることなく風の後ろの席のリュウタロスに目を合わせた。
意図がわかったのか、リュウタロスは風の肩を揺する。
リュウタロス「風ちゃーん、朝だよ。起きてー」
風「ぐぅ……」
先生「起きないかじゃあ隣の…」
美以「にゃー、ワケわかんないのにゃー!!」
先生「うん、やっぱり起こしてくれ野上」
リュウタロス「はーい」
さりげなく美以をディスったが致し方ない。
リュウタロスは風の鞄から…まるで稟をデフォルメしたような目覚まし時計を取りだし少し弄る。
そして風の席にそれを置いた。
リュウタロス「じゃあみんな耳塞いでてね!」
全「「「………(ざわっ」」」
リュウタロス「…ポチッと」
目覚まし時計『……起きろッッ!!』←稟ボイス
風「おおう!?………おや、もう朝ですかー」
宝慧「おいおい嬢ちゃん。えらく遅い朝じゃねーか」
起きた風の頭にある宝慧が(て言うか腹話術で)喋り、風は欠伸する。
その一部始終を見ていた教師は一回咳払いした。
先生「それで日向。この問題の答えは?」
風「35.6uですー。あ、先生次の問題の二行目間違ってますよー」
先生「そうか。すまないすまない」
リュウタロス「やったね風ちゃん!」
美以「風はすごいのにゃ!」
風「ふふふのふーですよー。風にとってはあんな問題は朝めsgh、ぐぅ……」
全「「「あ、また寝た」」」
先生「そうだ。明日小テストするから今日やった部分をしっかり復習するように」
全「「「はーい」」」
再び目を閉じる風に口を合わせてそう言う。
先生の言ったことにも口を合わせて返事をする。
小等部6-2の最大の特徴はツッコミのいない学級と言うことだった…。
そしてその日の放課後。
リュウタロス「おじゃましまーす!」
美以「美以が一番なのにゃー!」
ミケ「じゃあミケが二番なのにゃー!」
トラ「うぅー、トラは三番なのにゃー…」
リュウタロス達はある家の中に入っていく。
周りの住人が見ていれば、これは『友達の家に遊びに来た子供達』と言うどこにでもある一般的な光景だと言うだろう。
それを見ていたのは付き添いのリトと侑斗……と侑斗にぶら下がっているシャム。
リト「意外だな。わりと普通の家だ…」
侑斗「いや、どんなの想像してたんだよ」
シャム「ぶらーん」←侑斗の腕に捕まってる
リトの言葉に突っ込む侑斗。
実はここ……風の家なのだ。
リュウタロスに風の家に勉強しに行くから来てよと言われ、風の家に興味を持ったのが事の始まり。
風の家だから宝慧みたいな感じかな、と思っていたが実物は普通の家だった。
聞くと三人家族で両親は海外で稼いでるとか何とか。
それなりに収入がいいのか、家の広さはやや広め……だが普通だ。
少し呆けてたリトに苦笑いしながらも、玄関にいた稟は声をかける。
稟「平沢殿、それに桜井殿。今日はわざわざすみません」
リト「ああいいよ。一応付き添いだし」
侑斗「これ、キャンディな。デネブが持ってけって」
稟「ありがとうございます」
そう言って稟は三人を連れて中に入る。
そしてリビングに連れていくと……そこには普通に座ってるリュウタロスとなんかもう勉強とかそっちのけで遊んでる美以達がいた。
リュウタロス「あれー?稟お姉ちゃん、風ちゃんは?」
稟「ああ……風は、ちょっとやることがありまして、少ししたらきますよ」
美以「フカフカにゃー!」←ソファでトランポリン
ミケ「だいおー、ずるいのにゃ!ミケもフカフカポヨーンしたいのにゃ!」
トラ「デネブのキャンディうまうまだじょー♪」
シャム「おねむなのにゃ…」
侑斗「…お前ら人ん家で遊ぶな!!」
リト「あとシャム。お前の寝てる所本棚!ぐらぐらするから下りなさい!」
真っ先に侑斗とリトが突っ込むがあんまり聞いてない。
ここは早く風を呼んで勉強させようとリトはリビングを出て、風のいる場所を探し出す。
大抵自分の部屋にいるだろうと思い二階へ行き、『風のお部屋』と書いてある部屋をノックしようとするが…
リト「なんかこっちな気がする…」
リトは通路の向こうにある鉄の扉の部屋に進む。
…いや、明らかに怪しいし、なんか風が居そうだし。
リトはそう自分に言い聞かせ、その扉を開ける。
……そこは薄暗い部屋だった。
さほど広くもないが狭くもない、ただの部屋。
だがその奥にあったのは……五面のディスプレイに長めのキーボード設備のパソコンと大型のデスク。
大きな椅子に座っているのは……自分が探し求めた人物。
風「おやおや、見てしまったようですねー」
椅子を回してリトの方を見る風。
そして、風の奥にあるパソコンを見て顔をひきつらせるリトは口を開く。
リト「ふ、風……。ここお前の部屋だよな…?」
風「オフコースですよー。ここは風のお部屋なのです」
稟「正確には風の作業部屋、ですね」
いつの間にか後ろに立っていた稟は眼鏡を少し上げ風の言葉に付け足す。
いや、それ以前に何時からいた?
リト「稟先輩、あんた知ってたのか」
稟「ええ。ずっと前から知っていますよ」
風「というより稟ちゃんが風をこの道に引きずりこんだんですけどねー」
稟「言わないでください!結構後悔してるのに!」
風に向かって大声で言う稟。
何だか苦労人臭漂ってる稟の顔に後悔の色が見えることから事実なのだろう。
リト「え、引きずり…って、なんで?」
稟「…きっかけは、風が小等部一年の時でした…」
回想
風『りんちゃん、りんちゃん。風はしげきてきな本が読みたいのですよー』
稟『刺激的って……いつそんな言葉を覚えたんですか!?』
風『辞書に乗ってたんですよー。なんかもう、普通の本に飽きてしまいまして…りんちゃんの持ってる本に風は興味をしめしたのですよー』
稟『示されても困ります!…ええい、じゃあこれはどうですか!』
風『ほほう、これはこれは…』
リト「で、何見せたんだ…?」
稟「…ブラッディ・マン」
リト「アウトー!!何一年に見せてんだよそんなもの!!」
稟「それ以降風はご両親を説得しパソコンを購入し、自作のプログラムを作り始めてしまい…!」
稟はそう言ってハンカチを取りだし目をぬぐう。
そこまで後悔してるのか……リトは哀愁漂う稟に同情した。
リト「お前、わりとえげつない事してるんだな…」
風「いえいえ、お兄さん程では無いですよー」
リト「誰がだコラ」
風「えー、十分でしょう?風達に前の世界の記憶を与えた意味では」
風の言葉でリトの雰囲気が変わる。
その事を感じたのか、稟は少し緊張感を持って風に話しかける。
稟「風、それはどういう意味ですか…?」
風「稟ちゃんも分かってますよね?お兄さんがしたことは、一歩間違えればこの世界の風達を精神的な意味で壊す事になってたことに」
稟はその事でハッとする。
前の世界を今いるこの世界と融合させる時に少なくとも考えてた筈だ。
生まれる時代も環境も違う存在の記憶を別世界の自分達に与えればどうなるか。
いや、考えるのを止めていたのかもしれない……そうでもしなければどのみち自分達は消滅する、その事だけで頭が一杯だった。
風「一部を抜かせば、一応風達は一般人ですよ?どこにでもいる普通の人間。ですけどお兄さんが与えたのはある意味で非日常的な記憶。それも人が死ぬようなものです」
風「桃香さんや愛紗さん、それに鈴々ちゃんなんかいい例ですよ。劉玄徳であった桃香さんは人に人を殺させていた。関雲長であった愛紗さんと張益徳であった鈴々ちゃんは大勢の人を殺した。これをなんの前触れもなく得てしまったらどうなるか、なんて事言わなくてもわかりますよね」
リトは何も言わない……それは既に答えが出ているからだ。
普通は恐怖するだろう、普通は拒絶するだろう……最悪発狂、いや、自殺していたのかもしれない。
最悪の状況なんていくらでも思い付く、これでいいのかと何度も考えた。
その結果が今に至るのだ。
風「まぁ前の世界の風達が望んだ事ですし、責任の半分は風達にあります。でももう半分はお兄さんにあるんじゃ無いですか?」
稟「風!そんな言い方は…」
リト「いや、間違ってない。本当の事だろ」
リトは口を開き肯定した。
責任も何も、自分が起こした不始末でこうなった、もっと上手くやっていればこの選択以外にも改善の余地はあった筈だ。
そう言いたいが、二人は既にリトの言いたいことは分かっているのだ。
風「…認めるんですね」
リト「認めるもなにも、俺が原因だからな。俺が勝手に記憶を与えて、勝手に満足していたのかもな」
風「自己満足ですか。確かにそうも言えますね」
リト「ああ。でも、俺は…」
皆を救いたかった?違う。
世界を救いたかった?違う。
そんなんじゃない、そんな事じゃない。
それは偽善と呼ばれる行為だろう。
あくまで自分の為に、自分の知ってる皆に消えてほしくないと言う欲望の為に。
自分が求めた願望の為に。
リト「…皆と一緒に居たかった。俺が望んだ結果だよ。後悔はしないし、したくない」
風「…それでいいと思いますよ?やっぱりお兄さんはそれくらいじゃないと面白くありませんとねー」
稟「面白いかは別として、平沢殿がそう考えてるのなら何も言いません。それに前の世界で何があったとしても、それを含めて背負って生きて行けないほど、私達は弱くありません」
風はいつものように半開きの目になり椅子に乗ってグルグル回転する。
稟も一息つき柔らかい笑みを浮かべる。
これで話は終わりだろうと、リトは二人を連れてリビングに行こうとするが…
風「あ、そうそう。お兄さんこの前翠さんの聖翠被ってましたねー。あのあとどうなったんですか?」
リト「……ちょっと待てなんでそれ知ってるんだ?」
風「ふふふのふー。風は入学以来学園に隠しカメラを設置しているのですよー。でもうっかりお兄さん達の所はカメラの調子が悪かったので…」
リト「おま、それ使って弱味握ってんのか!?」
風「むむ。失礼ですねー。風はただ人間観察がしたいだけですよー」
リト「おまわりさーーーん!!」
稟「そ、そして平沢殿は翠殿の濡れた下半身に手を伸ばしししししs」
リト「ってこっちもヤベェ!!」
別に稟の言うような状況にならなかったんだけど、むしろ凄く謝れたんだけど。
リトは口に出そうとしたがそれを言い終わる前に稟はその暑い情熱を噴射するだろう。
しかも方向がパソコンに向いている……リトは稟を正反対、つまり扉の方へ向けさせた。
……が、これはこれで不正解だった。
侑斗「おいリト、早く戻ってリュウタ達に…」←遅いから来た
稟「ブッハァァァァァァァァァァァァァァ!!」
リト風「「あ」」
侑斗「…………」←全身血まみれ
リト「侑……斗、大丈夫か…?」
侑斗「なん、じゃこりゃ……なんじゃこりゃぁああああああ!!!」
殉職したような叫びが響き渡る。
ドクドクと少女の鼻から血が吹き出す。
少年がひきつる。
少女が回る。
こんなカオスな空間が身近にあることなど知らず、リュウタロス達はおとなしくノートを開くのだった。
その少女は天才だ。
一度覚えた事は二度と忘れず、その応用もずば抜けており、理解力が人並み外れている。
そんな少女の両親は彼女をちやほやする訳でもなく、普通の子供と同じように接し愛情を注いだ。
隣に住む何歳も年の離れた幼馴染みも、分け隔てなく接してくれていた。
それだけで少女は満足だったのだ。
だからこそ、それ以外に興味を無くした。
時が経ち、近くの学園に入学した少女だったが、誰とも話さなかった。
いや、回りが接することをしなかったのだ……主に彼女の頭の人形のせいで。
だが少女とって好都合だった、だって自分の世界はここじゃないから。
両親と幼馴染みがいる場所が少女の世界、少女の全て。
それ以外に興味はなかったのだ。
そして入学から六年目に入る半年ほど前に変化が起こった。
それは記憶、ここではない別の場所で自分が人を殺すための策を練っていた記憶。
そこには自分の知る幼馴染みと自分の知らない人間がいて……。
気が付けば少女は汗だくになっていた。
あまりにもリアルなそれは紛れもない自分の記憶、思い出。
それを得る経緯も知った……だが彼女は記憶に関して絶望せず、むしろ平然としていた。
記憶の自分は間接的に人を殺してきた、それは変えられない事実。
それは二つの世界の少女が一つとなった以上、背負わなければならない事…前の世界の少女の業だ。
そう、それだけだ……後は何一つ変わらない、そう思っていた。
……たった一つを除いて。
リュウタロス「風ちゃん、一緒にお昼ごはん食べよ!」
美以「美以は食堂でいっぱいたべるのにゃー!!」
…友達ができたのだ。
きっかけがどうであれ、一人が前の世界の付き合いであれ、一人がきっかけとなった人物の関係者であれ……自分に友達ができた。
ある意味で世界を壊されたのだ……四人だけの世界から、パソコンに向き合うだけだった世界から。
今はこんなにも、楽しいと呼べる時間と場所がある。
そういう意味では感謝している。
きっかけの彼の情報はすぐに手にいれた。
マフィアの孫らしく、今は一般人らしいのだが……どこかで情報が漏れる可能性もある。
彼女はそれを考えた瞬間、パソコンに向き合った。
自分の腕なら情報操作はお手のもの、コレが自分の武器なのだ。
…ちょっとした恩返しのつもりなのかもしれない。
伸び悩んでる背の成長を代償にする行為は今までもしてきたので問題ない。
ただただ夜更かしするが……その意味が違ってきている。
そして今夜も、
日向 風は眠らない。
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XXX「キャラ設定が書き終わらない…」 一刀「いや、たった数行だろ?そんなにかからないんじゃあ…」 XXX「部活とか色々考えてんの!てなわけで『二十七話:日向 風は眠らない』スタート!」 一刀「なんかシリアルとシリアスのサンドイッチらしいぞ」 |
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