アニメオタクの恋愛事情〜2話〜大坂?いいえ大阪です
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「仰〜げ〜ば〜ほにゃ〜らら〜」

 

 

 

「剣介……………しっかり歌えよ………」

 

 

 

歌詞なんか覚えられるか、アニソンは別だが。

卒業式、他の奴等はあまり泣かないな。

 

 

 

「いざぁ〜ざらぁ〜ばぁ〜」

 

 

 

前言撤回、一番前の柔道部の巨漢が思いっきり号泣してた。

 

 

 

(卒業か………)

 

 

 

式が終わり、何となく周りを見渡した。

周りは両親が嬉しそうに我が子の卒業を喜んでいた。

俺にも両親がいれば、祝福してくれているんだろな。

 

 

 

(何か、寂しいな)

 

 

 

俺の両親は幼い頃に他界している。

親戚の家で暮らし、義理の妹達の面倒を見ていた。

その親戚の人達は仕事で来ていない。

 

 

 

(明日の準備をしねぇと)

 

 

 

「「「「「副主将、お疲れ様でした」」」」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

さっさと帰ろうとしていたらバスケ部の後輩が来た。

高畑と中田は入団のため卒業式に出れなかった。

花束に色紙と何故かゲームソフトやアニメのDVDなど、有り難い物を貰った。

 

 

 

「お前ら、来年の大会はもっと厳しくなるぞ、気を引きしめろよ」

 

 

 

「うっす!!!!」

 

 

 

「じゃあな!!!」

 

 

 

「「「「「「三年間お疲れ様でした」」」」」」

 

 

 

後輩と分かれて急いで家に帰る。

途中、女子生徒に声を掛けられたが構っている暇がなかったので一礼だけした。

 

 

 

(明日に間に合うか?)

 

 

 

いや、間に合わせないといけない。

急いでいるのには理由がある、進学した大学があるのは大阪にあり、東京に住んでいる俺は大学に行くために大阪に転居する事にした。

だが 出発は明日で今すぐ準備をしないと間に合わない。

家に帰宅し、すぐに大きめの鞄を三つ用意する。

その鞄の中に衣類や靴、充電器とノートパソコンにゲーム機を入れていく。

流石にフィギュアとかは無理だな。

なんだかんだで準備していたら夜になっていた。

 

 

 

「あれ、お兄ちゃんもう帰って来てたの?」

 

 

 

「千早、ただいま」

 

 

 

唐突ではあるが俺には二人の妹がいる。

引きこもりの千早とヤンキーな十夏。

マイペースでゆっくり喋る千早と気が強くてオラオラな十夏。

正反対なマイシスターズ、どうなったらこんなに違うのかね。

 

 

 

「卒業おめでとう」

 

 

 

「ありがとよ、どうした?」

 

 

 

「お母さんがご飯だから呼んでこいって」

 

 

 

「もうそんな時間か、ありがとう」

 

 

 

「どういたしまして…………」

 

 

 

相変わらず大人しい子だな。

千早と一緒に一階に降りていく。

千早、俺の背中に密着するな恐い。

 

 

 

「ただいまぁ」

 

 

 

「あれ?」

 

 

 

予想外に十夏の帰りが早い、いつもは深夜の3時過ぎに帰ってくるのに。

 

 

 

「あら、今日は早いわね?」

 

 

 

「明日から兄貴が居なくなるから、今日だけ早く帰ってきた」

 

 

 

「おかえり十夏」

 

 

 

「あ、兄貴」

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

「卒業、出来て良かったな」

 

 

 

「おうよ」

 

 

 

「むっ」

 

 

 

「あ?」

 

 

 

背中に密着していた千早を見た十夏は不機嫌になった。

いつもは仲が良い二人だが、俺がいると急に悪くなる。

 

 

 

「お前ら、喧嘩は飯の後にしてくれ………」

 

 

 

その後、晩御飯を食べ終えて部屋で準備をしていると、下の階で口論が始まった。

 

 

 

「十夏いい加減に夜遊びを止めろ!!!つまらん連中とつるんで何が楽しい!!!!」

 

 

 

「うるせなぁ、あたしが何しようが構わねぇだろが!!!!」

 

 

 

「それだから剣介君と…………」

 

 

 

「兄貴を引き合いに出すんじゃねぇ!!!!」

 

 

 

叔父と十夏だ。

叔父はまた俺を引き合いに出して十夏を怒らせたのだろう。

 

 

 

「もういいだろ!!!」

 

 

 

「待ちなさい!!!!!」

 

 

 

(やっと終わった)

 

 

 

喧嘩が終わり胸を撫で下ろす。

外には出ていないな。

 

 

 

(もう深夜か…………)

 

 

 

この部屋で暮らすことはもうないだろう。

このベッドも今日でおさらば、フィギュアは千早に全部あげるか。

 

 

 

(もう寝るか)

 

 

 

ベッドに入り、電気を消して目をつぶった。

 

 

 

 

 

翌日

 

 

 

 

 

「叔父さん、叔母さん、今までありがとうございました」

 

 

 

始発の新幹線に乗るため、早朝に家を出る。

叔父さんと叔母さんが駅の前まで見届けに来てくれた。

 

 

 

「大阪でも頑張るんだよ?」

 

 

 

「はい、俺の部屋にある物は全ての十夏か千早にあげて、どちらかの部屋にして下さい」

 

 

 

「もう戻らないつもりかい?」

 

 

 

「俺はもう一人でも生きていかないと、引き取ってくれた叔父さんたちには、もう迷惑をかけれないですし………」

 

 

 

「そんなことを言うな!!!!」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「剣介君………俺は君を実の息子だと思って育ててきた」

 

 

 

「実の息子じゃないとしても、ここまで暮らしてきた時間は本物だよ?」

 

 

 

「私達の家は君にとって家なんだ、たまには遊びに来るといい」

 

 

 

「あ、ありがとうございます!!!」

 

 

 

涙が出てしまった。

そろそろ出発の時間だ。

 

 

 

「十夏と千早にはよろしく言っといて下さい、今頃グダグダ寝ていると思いますが」

 

 

 

「あぁ分かった」

 

 

 

「では、これで」

 

 

 

荷物を持って新幹線のホームに向かう。

ホームでアニメを見ながら待っていると

、特効服を着た集団がいた。

誰かを送っているのか?

 

 

 

(俺には関係ないことだな)

 

 

 

暫くしたら新幹線が到着時乗り込む。

エコノミーだが、まぁ快適だな。

さて、到着するまで寝てるかね。

 

 

 

「ちょっと悪ぃんだけど、窓際の席に通っていいか?」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

あぁ俺の隣の座席の人か、足を引いて…………あれ?

 

 

 

「え?」

 

 

 

「あ………」

 

 

 

そこには数日前に出会った総長と言われていた不良少女だった。

卒業式だったのか刺繍のされた真っ赤な特効服を着ていた。

だが今は知らない振りをしておこう、席が隣になっただけで途中で別れるだろう。

 

 

 

「すいません、今通れるようにしますから」

 

 

 

「あ、ありがとよ」

 

 

 

《まもなく出発しまーす》

 

 

 

新幹線が発車して一時間、俺はタブレットでアニメを視聴している。

 

 

 

(き、気まずい)

 

 

 

え、ちょっと何?

不良少女が何か凄いこっちを見てるんですけど…………タブレットと俺を交互に見てる。

容姿に似合わないアニメオタクだと思われているよ絶対。

話しかけて変な空気になるのは勘弁だ。

 

 

 

スッ………

 

 

 

横からのプレッシャーが無くなった…………横を見ると……

 

 

 

「スゥ……スゥ………」

 

 

 

「oh………」

 

 

 

寝ていらしゃった。

そういや始発だったな、朝早いから寝てる人がいても不思議じゃないよ。

てか寝息がかわいい、そんな寝息はアニメでしか聞いたことがない。

 

 

 

(他人だし気にしないでいよう)

 

 

 

《まもなく新大阪、新大阪です》

 

 

 

目的地である新大阪に着いたのでこの寝顔ともさよならだ。

 

 

 

(貴官の健闘を祈る)

 

 

 

貴官て軍人じゃないんだけどな。

新幹線を降りてUR大阪駅行きの電車に乗り、そこから大学近くの駅に到着した。

大学に着くと入寮手続きをするため教務課に行く。

担当の人からとんでもないことを言われた。

 

 

 

「すいません、もう一度言ってくれます?」

 

 

 

「残念ですが空きの部屋がありません」

 

 

 

「他に無いんですか?」

 

 

 

「申し訳ございません」

 

 

 

「無責任な!!!!」

 

 

 

入寮者が予定よりも多くなった為、一部の者は近くのアパートかマンションに入居するようにと。

これがブラックな大学か……………。

賃貸は色々と不味いな、バイトで働き詰めで勉学が全く手に付かない可能性が高い。

ブラックアルバイトなら尚更だ。

どこか探す前に…………

 

 

 

「日本橋に着いたぞぉー」

 

 

 

もう、現実逃避してやるこの野郎!!!

大学を離れて大阪のオタク達の聖地、日本橋にいる東京のオタク。

東京に秋葉原あれば大阪に日本橋あり……とまでは言われてないか。

だがこの俺の欲望を潤す程の力を感じるぞ。

 

 

 

「オタロードは歩行者天国みたいだな」

 

 

 

道路を縦横無尽に人が歩いている。

たまに車が通っていることから歩行者天国ではなく歩行者天国状態が正しいな。

お、ここは………

 

 

 

「ここが西日本で一番広いと言われているアニザワメイト日本橋店か」

 

 

1階と2階がアニザワメイトで3階がらしょうばん、4階エロンブックス、5階がカード研究所か。

此処だけで満足しそうだ。

アニザワメイトの店員が店の外で一番くじ引きをはんばいしている。

隣にランライブのラーメンが……………。

少し向こうにコロズキヤがある、あそこにはブレイレッドのライフスパイクさんのパーカーが限定販売されてた気がする。

 

 

 

「いやがった!!!!」

 

 

 

「は?」

 

 

 

「オラ!!!!」

 

 

 

ゴスッ!!!

 

 

 

「ぐぼらぁ?!」

 

 

 

何かいきなり蹴られたんですけど?!

誰だ、あれ?

 

 

 

「君は隣に座っていた…………」

 

 

 

目の前にいるのは新幹線で一緒だった不良少女だった。

顔が紅いし汗も凄い掻いている、急いで来たのが目に見えて分かる。

 

 

 

「テメェ…………何で起こさなかった?」

 

 

 

「いや、行き先が一緒って分からないだろ」

 

 

 

「そうじゃなくても起こすだろ!!!!」

 

 

 

何か分からんが謝っておこう。

 

 

 

「何か………すまん」

 

 

 

「まぁいいけどさ」

 

 

 

いいのかよ、なんだこの不良少女は………

 

 

 

「だいたいアンタはどうしてここにいるんだよ、東京いましたよね?」

 

 

 

「あっ?、進学したから来たに決まってんだろ」

 

 

 

おぉ俺以外にもこれは物好きな人がいるんだな。

そう思っていたら彼女の携帯が鳴った。

 

 

 

「もしもし?アタシだけど………あぁ……あぁ………分かった………」

 

 

 

ピッ

 

 

 

「アタシは行くわ、引き留めて悪かったな」

 

 

 

引き留めてって言うより蹴り止めてだよな…………。

 

 

 

「おう、気を付けてな」

 

 

 

「………………藍染………」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「藍染彩(あいぞめ・あや)、アタシの名前だ、また会おうぜ、剣介」

 

 

 

そう言って不良少女もとい藍染さんは人混みに消えていった。

さっき俺の名前を呼んだよな、教えてないのに……………。

 

 

 

(そんなことより部屋を探さないと……………)

 

 

 

マズイ、このままだと大学生活をホームレスで過ごさないといけなくなる。

 

 

 

「あれ?剣介?」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

そんな窮地に現れたのは……………

 

 

 

「お前そんな所で何やってんだ?」

 

 

 

プロチームに入団した高畑と中田だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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用語集

 

 

 

 

 

アニザワメイト

 

アニメ、ゲーム、漫画などの関連商品を販売する会社。

全国に店舗がある。

 

 

 

ブレイレッド

 

ザークシステムワークスが開発した対戦型2D格闘ゲーム。

主人公はラグシア・ブラッドナイト、必殺技はライフスパイクで飛び道具にならないと飛び道具として有名。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
主人公はアニメオタクである。
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タグ
アニメ 恋愛 

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