本編 |
悪魔騎兵伝(仮)
第10話 アビスの影
C1 抱擁
C2 慰め
C3 命の価値
C4 記憶の断片
C5 予定
C6 調査隊
C7 調査
C8 調査2
C9 アビス…
C10 ヒーローごっこ
次回予告
C1 抱擁
早朝。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン。キューズベリー公園に張られたエグゼニ連邦の軍隊のテント。
エグゼニ連邦の兵士Cの声『しかし、いくらハチュウ類人の皮膚で覆ったとしてもあれだけの防御力はでないぞ。』
エグゼニ連邦の兵士Dの声『そうだよな…。』
椅子に座り、呆然としているファウス。机の上には首だけのアンドロイドのポンコU。周りにはエグゼニ連邦軍の兵士達。ポンコUはファウスを見つめる。
ポンコU『ファウスさん。』
動かないファウス。エグゼニ連邦軍の兵士Aが彼らの方を見つめる。
ポンコU『ファウスさん!』
ファウスの瞳には机の角が映っている。ヴァンガード城城主オータキとエグゼニ連邦兵士Bが来る。
エグゼニ連邦兵士B『こちらに。』
ファウスの方に手を向けるエグゼニ連邦兵士B。
オータキ『おお。』
ファウスを見つめるオータキ。
オータキ『ファウス。』
オータキはファウスに駆け寄る。
オータキ『ファウス!』
オータキはファウスを抱きしめ、ファウスの顔を見つめる。
オータキ『良かった。無事だったか。』
ファウスはゆっくりとオータキの方を向く。
ファウス『御主人さま…。』
オータキ『まったく、お前という奴は心配させおって…。』
ファウスはゆっくりとオータキの方を向く。ファウスとオータキの方を見つめる一同。
オータキ『こちらに一報は欲しかったものだ。』
ファウス『御主人様…。』
オータキの方を向くポンコU。
ポンコU『申し訳ございません。私の責任です。もし、あの時、ファウスさんを止めていれば…。』
オータキは立ち上がり、ポンコUの方を向く。
ファウス『違います。僕が悪いんです。だって、僕が…。』
オータキはファウスの方を向く。
オータキ『そうか。』
ファウスの肩を叩くオータキ。
オータキ『あまり無茶はするな。もし、お前の身に何かあったら俺が悲しい。』
眼を見開くファウス。
ファウス『僕なんかの為に…。』
ファウスは口を押えて、俯き、泣き出す。
ファウス『申し訳ありません…。申し訳…。』
C1 抱擁 END
C2 慰め
早朝。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城。書斎。椅子に座るオータキ、向かいに立つファウス、机の上には首だけのポンコU。オータキはファウスの方を向く。
オータキ『疲れたな。今日は良く休め。』
オータキを見つめるファウス。ノックの音。
女アンドロイドAの声『失礼します。』
扉の方を向くオータキ。
オータキ『入れ。』
扉が開き、現れるメイド服を着た女アンドロイドの体の部品を載せた台車を引くメイド服を着た女アンドロイドA。彼女はオータキの傍らまで台車を引き、止まる。立ち上がるオータキ。
オータキ『さて。』
オータキは首だけのポンコUの方を向き、彼女を持って、メイド服を着た女アンドロイドの体の部品に装着させる。
オータキ『新しい体はどうだ?』
ポンコUはオータキの前で一回転し、腕を動かしてオータキの方を向く。
ポンコU『前の体よりは滑らかです。ありがとうございます。』
オータキに深々と頭を下げるポンコU。一歩前に出るファウス。
ファウス『御主人様…。』
ファウスの方を向くオータキ。
ファウス『僕は…。』
オータキ『…お前が責任を感じることは無い。』
ファウス『でも、僕は…。』
ファウスの傍らに寄るオータキ。
オータキ『こんなに汚れて…。服も破れてしまったな。一着しか注文してなかったからな。まあ、ライブルのところに修繕に出しておくことにしよう。シャワーを浴びておくといい。』
オータキはファウスの肩を叩く。
オータキ『あまり自分を責めるな。』
オータキはポンコUの方を向く。
オータキ『ポンコU。ファウスの世話をしてくれ。』
頭を下げるポンコU。
ポンコU『はい。』
オータキはファウスの頭を撫でて書斎から出ていく。オータキの方を向くファウス。
ファウス『御主人様…。』
早朝。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城浴場。シャワーを浴びるファウス。脱衣所の曇りガラスから見えるポンコUの影
ポンコU『ファウスさん。』
脱衣所の扉の方を向くファウス。
ポンコU『お着替えをここに置いておきます。』
ファウス『ありがとうございます。』
ポンコU『…メイド服になりますが。』
ファウス『…はい。』
早朝。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城。メイド室。
ファウスはベットに横になり、眼を閉じる。隣に座るポンコU。
C2 慰め END
C3 命の価値
朝。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城。メイド室。
遺族女Aの声『城主はいるんでしょ!』
遺族Aの声『お前じゃはなしにならない!』
眼を開けるファウス。彼はベットから出て窓から柵の外に群がるゲインに親族を殺された爬虫類人の遺族達を見つめる。ファウスの傍らに寄るポンコU。ファウスはポンコUの方を向く。
ファウス『あの御主人様は?』
ポンコU『主様ならあなたの服を修繕に出しにいっています。それにこれはあなたには関係ない事です。お体を休めて…。』
遺族Cの声『城主がいないんなら偽王子を出せ!いるんだろ!』
ファウスは眼を見開いて窓からゲインに親族を殺された遺族達の方を向く。
ポンコU『ファウスさん。出る必要は…。』
駆け去るファウス。
ポンコU『ファウスさん!』
朝。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城の庭を駆け、
ゲインに親族を殺された遺族達の居る所へと駆け寄るファウス。ゲインに親族を殺された遺族達はファウスの方へ一斉に眼を向ける。ファウスを指さし、顔を見合わせる親族を殺された遺族達。
遺族D『あれが偽王子か。』
俯くファウス。
遺族Aが一歩前に出る。
遺族A『あんたが偽王子か?』
ファウスは顔を上げ、親族を殺された遺族達の方を向き、頷く。
ファウス『はい。』
遺族B『だったら話は早い。俺達はあのゲインって野郎に身内を殺されたんだ。』
眼を見開き、親族を殺された遺族達を見つめるファウス。
遺族B『賠償請求しようにも殺った本人が死んじまってできやしねえ。』
遺族女A『だから城主様に援助して頂きたいの。』
ファウス『えっ…。』
一歩前に出る遺族女B。
遺族女B『息子が殺されて…生命保険がたった150万エグゼしか出ないのよ。』
遺族女Bの方を向いて口を開ける遺族女A。
遺族女A『ひゃ、150万エグゼも!うちなんて69万エグゼしかもらってないのに!なんであんたのドラ息子の方が貰える額が多いのよ!』
遺族女B『ド、ドラ息子!あんた、言っていい事といかん事があるでしょう!』
遺族女A『内の息子はね。親孝行で働き者だったんだよ!あんたの息子なんて家に女ばっかつれこんでたじゃない!見えないところじゃカツアゲもやってたらしいじゃない!ほんとなんでできの悪い奴が多い金額を貰うことができるのおかしいでしょ!』
遺族女Aを殴る遺族女B。
遺族女B『言ったわね!』
遺族女A『やったわね!』
取っ組み合いの殴り合いをする遺族女Aと遺族女B。泣き出す遺族女Aの幼い娘。遺族女Cが彼らの間に入る。
遺族女C『落ち着いてください。』
遺族女Aを睨む遺族女B。
遺族女B『こいつが先に言いがかりをつけたんじゃないのよ!』
遺族女C『無くなった二人の息子さん達がかわいそうですよ。』
遺族女A『あんたはいくらもらったのよ!』
遺族女C『えっ…そ、それは…。』
遺族女Cを睨む遺族女Aと遺族女B。
遺族女A『言えないってことは私たちより金額が多いってこと?]
遺族女B『い、いくらもらったのよ!』
遺族女C『に、250…。』
遺族女A『なんであんたなんかみたいなアバズレの息子の方が高い訳!』
遺族女C『そ、それは…。』
遺族女Cは保険の外交員の女性被害者遺族の方を指さす。
遺族女C『あいつが!あのクソババアが悪りいんだよ!だいたいあいつの勧めた保険じゃねえか!』
保険の外交員の女性被害者遺族に詰め寄る被害者遺族達。
遺族A『これはどういうことだ!』
遺族女B『どうして金額が違うの?』
保険の外交員の女性被害者遺族『え、あ、あのそれは…。逸失利益というものがありまして…。そのですね。将来を嘱望されていた若者や社会で華々しい活躍をして高収入の人の算定額は高く、失業者やパート従業員は低く算定される…。』
遺族Aの幼い娘『お兄ちゃんは将来を渇望されていなかったの?だって、必死でお仕事しておかねを稼いで…。大学に行くって…。』
保険の外交員の女性被害者遺族の胸ぐらを掴む遺族女A。
遺族女A『私の息子の命の価値はないというのか!』
保険の外交員の女性被害者遺族『ほ、法律で決められているんです!』
ファウス『もうやめてください!』
一斉にファウスの方を向く一同。保険の外交員の女性被害者遺族はファウスを暫し見つめた後、睨みつけ、指をさす。
外交員の女性被害者遺族『だいたいアイツのせいじゃない!ポルポ市が無くならなきゃこんなことにはならなかったんだ!』
眼を見開くファウス。遺族Aの幼い娘が柵に駆け寄り、涙を流しながらファウスを見つめる。
遺族Aの幼い娘『お兄ちゃんを…お兄ちゃんを返して!』
後ずさりするファウス。彼を睨み付ける一同。ヴァンガード城の方へ駆けていくファウス。
遺族A『こら!何処へ行くんだ!』
遺族女A『逃げるなんて卑怯よ!』
C3 命の価値 END
C4 記憶の断片
朝。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城庭。ヴァンガード城の扉から出て来るポンコU。彼女の傍らを駆け、城内に入って行くファウス。ポンコUはファウスの方を向く。
ポンコU『ファウスさん!』
ヴァンガード城の廊下を駆け、階段を駆け上がってメイド室に入るファウス。彼は扉を閉め、ベットの横に蹲り、頭を抱え、震える。
暫し沈黙。
ゆっくりと開くメイド室の扉。メイド室に入って来るポンコU。彼女は震えるファウスを見つめ、彼の傍らに寄る。ポンコUを見上げるファウス。ポンコUはファウスの隣に座り、彼の手を握る。
ポンコU『
伝う その思い 響き合わせたい
』
ファウスの手を強く握るポンコU。ファウスはポンコUの方を向く。
ポンコU『
心 閉ざした 器は震えて
感じる あなたの手の鼓動 ぬくもりを伝う私の手
心と心を 繋げたい
』
メイド室の開いた扉の前に立つ黒ずくめのローブを被り、青白い肌をしたウィンダム諜兵団のネクロ。
ポンコU『
私の心はあなたと 違っているけど
あなたの感じる痛みを 受け止められれば
苦みと悲しみだけじゃない 未来の光が照らす
』
ポンコUの方を向くファウス。
ファウス『ポンコUさん。』
ファウスを見つめるポンコU。
ファウス『ありがとう…。』
メイド部屋の中に進むネクロ。
ネクロ『ぴょるぴょるぴょる。』
ネクロの方を向くファウスとポンコU。
ファウス『あ、あなたは。』
ポンコU『ネクロ様?』
ネクロ『いやはや、美しい歌声が聞こえたので。』
ネクロを見つめ首を傾げるポンコU。
ポンコU『歌…?そのようなものはプログラムされておりませんが。』
ファウスはポンコUの方を向く。
ネクロ『ほう…。』
顎に手を当てるネクロ。
ネクロ『そうですか。なるほど。なるほど。』
ネクロはファウスとポンコUに背を向ける。
ネクロ『失礼しました。ぴょるぴょるぴょる。』
去って行くネクロ。
C4 記憶の断片 END
C5 予定
夜。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城。食堂。ピザとスパゲッティの並ぶ食卓を挟んで向い合せで座るオータキとファウス。周りにメイド服を着た女アンドロイド達が並ぶ。俯くファウス。ファウスを見つめるオータキ。テレビに映るエグゼニ連邦教育テレビの番組。画面に映る子供Aと子供B。
子供A『うえ〜ん。この単語のスペルが分からないよ〜。』
子供B『大丈夫。そんな時はスペルマンを呼ぶんだ。』
立ち上がる子供A。
子供B「さあ、一緒に!スペルマーン!スペルマー…。』
リモコンのボタンを押すオータキ。画面に映るミートボーイ社長の顔。
ミートボーイ社長『あれはNPO法人の男が勝手にやったことだ!我々の方が被害者だ!』
切り替わる画面。
ニュースキャスターA『今回の事件、どう思われますか?』
コメンテーターA『凶悪犯罪者を雇って、炊き出しに人肉を提供していたんですよ。消費者を欺いて、刺されてもしょうがないですよ!』
リモコンのボタンを押すオータキ。消える画面。
オータキ『留守中、遺族連中が来たようだな。』
オータキの方を向くファウス。
ファウス『えっ…。』
俯くファウス。
ファウス『…はい。』
オータキ『…何か酷い事はされなかったか?』
顔を上げ、オータキの方を見つめるファウス。
ファウス『えっ、そんなことは…。』
首を横に振るファウス。
ファウス『…ただ僕は逃げだして。』
顔を上げるファウス。
ファウス『でも、ポンコUさんが…。』
周りを見回すファウス。
オータキ『ポンコUは…新しい体との調整の為、ここ数日は出れない。』
ファウスはオータキを見つめる。
ファウス『そんな。』
オータキ『気にすることは無い。ただの点検だ。今日はすまなかったな。』
オータキを見つめるファウス。オータキはため息をつき、ファウスを見つめる。
オータキ『明日、オンディシアン教国の暗部が来る。お前にあのツチノコ彼らからの協力要請で、お前にあのツチノコ人のことを聞きたいと。ポンコUもいないので、他のアンドロイドとお前に街の案内をさせようと思っていたのだが…。』
2、3回頷き、ファウスを見つめるオータキ。
オータキ『お前が辛いようなら、これを断る。お前はこの城にいればいい。』
ファウスはオータキを見つめ、首を横に振る。
ファウス『いえ、大丈夫です。』
ファウスはオータキの眼を見つめる。
ファウス『僕、できることがあればなんでもやります。だって、こんなに僕にこんなに良くして頂いて…。
御主人様の為になりたいんです。』
オータキは眼を見開き、ファウスの眼を見つめる。下を向き、頷く。
オータキ『…そうか。』
顔を上げ、ファウスを見つめるオータキ。
オータキ『ありがとう。』
オータキは窓の方を向き、ピザを一枚取って口に運ぶ。ピザを食べる音が響く。
オータキ『明日はオンディシアン法王直轄15神将の一人、ジャンヌ様もいらっしゃる。粗相のないようにな。』
朝。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城メイド室。窓の前に立つファウス。
城門の前に立つ城門の前に立つオンディシアン法王直轄15神将の15神将を務める灰色のジャンヌとオンディシアン教国暗部の男性セートとオンディシアン教国暗部の女性のルイナ。メイド服を着た女アンドロイドCが門を開け、中に入って行く彼ら。ファウスは彼らを見つめる。扉が開き、現れるメイド服を着たアンドロイドC。
メイド服を着たアンドロイドC『失礼します。ファウス様。主様がお呼びです。』
ファウスは暫し、ジャンヌとセートにルイナを見つめた後、メイド服を着たアンドロイドCの方を向く。
ファウス『はい。』
メイド服を着たアンドロイドC『では、こちらに…。』
ファウスは頷き、メイド服を着たアンドロイドCの後に続く。
C5 予定 END
C6 調査隊
朝。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城応接室。椅子に座るオータキ。その隣に座るファウス。
ノックの音。
メイド服を着たアンドロイドDの声『失礼します。オンディシアン教国暗部の方々をご案内いたしました。』
頷くオータキ。
オータキ『どうぞ。』
扉が開き、現れるジャンヌとセートにルイナとメイド服を着たアンドロイドD。メイド服を着たアンドロイドDは一礼して扉から出ていく。彼らを見つめ立ち上がるオータキとファウス。ファウスはジャンヌとセートにルイナの方を向き、一礼する。彼らの方に歩み寄るオータキ。
オータキ『オンディシアン教国からの長い道筋、ご苦労様です。どうぞおかけください。』
頷くジャンヌ。
ジャンヌ『お心遣い感謝します。』
オータキ『しかし、わざわざ15神将のジャンヌ様がいらっしゃるとは…。』
ジャンヌは頷く。
ジャンヌ『暗部も色々と忙しく、私が協力を申し出たのです。』
頷くオータキ。
オータキ『そうですか。どうぞ。』
椅子の方に手を向けるオータキ。頷いて、座るジャンヌとセートにルイナ。
オータキ『しかし、わざわざこんな場所までいらっしゃるとは…。』
オータキの方を向くセート。
セート『先日のNPO法人の男が起こした事件…。』
ファウスは目を見開いて、俯く。
セート『…ハチュウ類人の皮で覆われたヘビ型機構には攻撃が全く通じなかったと聞きました。』
頷くオータキ。
ルイナ『通常ではありえないことです。我々はエグゼニ連邦軍から実際に使われたハチュウ類人の皮と被害者の遺体を手渡されました。』
ルイナの方を向き、頷くセート。
セート『…調査の結果、通常ではありえない程のアビスの反応がありました。今回の被害者達はアビスに汚染されています。』
眼を見開くオータキ。
オータキ『そう…ですか。』
ルイナ『我々はNPO法人の男とアビスの接点を調査しにきました。その男はなんでも前はポルポ市に住んでいたとか。その為、あなたが雇っている偽王子に話を聞きたいのですが…。』
周りを見回すルイナ。ファウスは胸に手を当てジャンヌとセートにルイナの方を向く。
セート『偽王子はいないのですか?』
オータキはファウスの方を向く。顔を上げるファウス。
ファウス『…僕が…僕が偽王子…です。』
ファウスの方を見つめるジャンヌにセートにルイナ。オータキの方を向くルイナ。
ルイナ『…なぜ、女装…。』
オータキ『いや、この城は見た通り、私と女性型のアンドロイドしかいなく、彼にあうサイズの服も無かったからです。特注した品もNPO法人の男との戦いで破れてしまい…。』
オータキの方を向き、頷くジャンヌ。
ジャンヌ『そうですか…。』
顔を見合わせた後、ファウスの方を向くセートとルイナ。
セート『…お前が偽王子ということだが。』
俯くファウス。
ファウス『はい…。』
セート『単刀直入に聞く。NPO法人の男とはポルポ市にいたらしいが…お前は奴と取引はしたのか?』
眼を見開くファウス。
ファウス『えっ?取引??取引って何をですか?』
眉を顰めるセート。彼は懐から桃色の肉片の入ったビーカーを出す。
セート『これに見覚えは無いか。』
首を傾げるファウス。
ファウス『それは何ですか?』
顔を見合わせるセートとルイナ。セートはファウスの方を向く。
セート『しらばっくれるな。偽王子!貴様はこのアビス層の破片を取引したんだろ!』
首を横に振るファウス。
ファウス『何をいっているんですか?僕、知りません!』
立ち上がるルイナ。
ルイナ『あなたは以前、ポルポ市にいたんでしょう!そこでアビス層の取引をしていた。』
首を横に振るファウス。
ファウス『本当に知らないんです。ゲインさんだって、あの町で一回見ただけで…。』
顔を上げ、ジャンヌにセート、ルイナを見つめるファウス。
ファウス『本当です。信じてください。』
口を開けるセート。セートの方に手を向けるジャンヌ。セートはジャンヌの方を向き、口を紡ぐ。
ジャンヌ『分かりました。調査にご協力ありがとうございます。』
眉を顰め、ジャンヌの方を向くセートにルイナ。
セート『ジャンヌ様!』
ルイナ『ジャンヌ様!あの偽王子なんですよ。アビスにかかわっていたとしても…。』
ジャンヌはルイナとセートの方を向く。彼女に顔を近づけるルイナとセート。口を動かすジャンヌ。
セート『まあ、確かに…。』
ルイナ『分かりました。』
ジャンヌはゆっくりと首を上げ、ファウスを見つめる。
ジャンヌ『先程の非礼はお詫び申し上げます。』
ファウス『そんなことは…。偽王子なんだから疑われてもしょうがないんです…。』
俯くファウス。ジャンヌはオータキの方を向く。
ジャンヌ『では、街の案内を宜しくお願いします。』
C6 調査隊 END
C7 調査1
朝。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファッション経済特区ソーシン。公道を走るヴァンガード城の高級車。運転席にはメイド服を着たアンドロイドE。助手席にはファウス。後部座席にはジャンヌを真ん中にしてセートとルイナが座る。流れるニュース。
ニュースキャスターA『…今朝起こったミートボーイの従業員の刺殺事件はどう考えられますか。』
コメンテーターA『いくら酷い問題を起こした会社とはいえ人を刺すなんて言語道断です!そのような犯罪行為は許されざる暴挙です!』
エグゼニ連邦の兵士Cとエグゼニ連邦の兵士Dが賃貸ダンジョンの入り口に立つ。止まるヴァンガード城の高級車。メイド服を着たアンドロイドEはニュースを切る。エグゼニ連邦の兵士Cが車に近づく。サイドガラスを開くメイド服を着たアンドロイドE。
エグゼニ連邦兵士C『ここは閉鎖されている。直ちに…。』
エグゼニ連邦の方を向くジャンヌ。
ジャンヌ『九老の依頼で来ました。』
ジャンヌは懐から書類を取り出し、エグゼニ連邦兵士Cに渡す。エグゼニ連邦兵士Cは書類に目を通し、ジャンヌに返す。
エグゼニ連邦兵士C『いや、オンディシアン教国暗部の方々でしたか。大変失礼しました。』
ざわめき。
賃貸ダンジョンの方を向く一同。
ルイナ『随分と騒がしいですね…。』
眉を顰め、賃貸ダンジョンの方を向くエグゼニ連邦兵士C。
エグゼニ連邦兵士C『はあ。実は賃貸ダンジョンの管理人夫妻が、あちらのほうで心中しましてね。』
眼を見開くファウス。
エグゼニ連邦兵士C『まあ、凶悪犯罪者に家を貸していたことが責められたのか、老後の収入減が無くなったことを悲観してか。』
俯くファウス。ため息をつくエグゼニ連邦兵士C。
ルイナ『そうですか。』
エグゼニ連邦兵士C『まあ、そんなところですね。』
エグゼニ連邦兵士Cはジャンヌ達の方を向く。
エグゼニ連邦兵士C『ご案内いたします。』
車から降り立つジャンヌにセートにルイナにファウス。
エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファッション経済特区ソーシン。瓦礫の散乱する賃貸ダンジョンの外を歩く一同。小型の計器を取り出すセート。彼は、その目盛りを見て顎に手を当て、ため息をつく。ルイナはエグゼニ連邦兵士Cの方を向く。
ルイナ『NPO法人の男ですが…。いったいどのような活動を行っていたのですか。被害者から皮を剥いでいたことは分かっているのですが…。』
2、3回頷くエグゼニ連邦兵士C。彼はジャンヌ、ルイナとファウスの方を向いて眉を顰める。
エグゼニ連邦兵士C『…あまり女性や子供には話したくない身の毛のよだつような話ですが…構いませんか。』
頷くルイナ。前を向くエグゼニ連邦兵士C。
エグゼニ連邦兵士C『奴は被害者の皮を剥ぎ、その死体をNPO法人の炊き出しの中に混ぜて処分したんですよ…。』
ルイナ『つまり…。』
エグゼニ連邦兵士C『被害者の死体を炊き出しにやってくる人々に…食わせた。』
眼を見開くルイナ。眉を顰めるセート。俯くファウス。跡形もなくなり瓦礫の散乱したゲインの賃貸ダンジョン。地下室への階段の前に立つエグゼニ連邦兵士C。
エグゼニ連邦兵士C『こちらになります。』
小型の計器の目盛りを見て眉を顰めるセート。降りていく一同。岩と、瓦礫が散乱した地下室。岩に潰された血の付いた台座。周りを見回す一同。
エグゼニ連邦兵士C『この場所であの男は被害者達の皮を剥ぎ、ひき肉にして炊き出しで提供しました。残酷なことです。』
頷く一同、俯くファウス。セートは計器の目盛りの大幅な振れを見る。
セート『分かりました。ところでその炊き出しの場所と受けていた人々の詳細は分かりますか?』
エグゼニ連邦兵士C『…炊き出しの場所はキューズベリー公園で学生とともにやっていましたね。受けていた人々は…なんせホームレス達なので…。』
セート『そうですか。ありがとうございます。』
セートはジャンヌの方を向く。
セート『我々はキューズベリー公園に向かいます。』
頷くジャンヌ。
ジャンヌ『分かりました。』
C7 調査1 END
C8 調査2
昼。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファッション経済特区ソーシン。公道を走るヴァンガード城の高級車。運転席にはメイド服を着たアンドロイドE。助手席にはファウス。後部座席にはジャンヌを真ん中にしてセートとルイナが座る。ジャンヌの方を向くセート。
セート『測定値結果が…非常にまずい状況です。』
眉を顰めるルイナ。頷くジャンヌ。
ジャンヌ『そうですか…。いずれは大地に吸収されるでしょうが、時間はかかるでしょう。しかし、ブルベドよりは短いはずです。』
彼らの方を向くファウス。セートはジャンヌに耳打ちする。
頷くジャンヌ。
エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファッション経済特区ソーシン。キューズベリー公園の駐車場に止まるヴァンガード城の高級車。
メイド服を着たアンドロイドE『ここがキューズベリー公園になります。』
頷くジャンヌにセートにルイナ。ヴァンガード城の高級車に駆け寄るエグゼニ連邦兵士E。彼の方を向く一同。
エグゼニ連邦兵士E『おまちしておりました。賃貸ダンジョンから連絡があったもので。』
エグゼニ連邦兵士Eの方を向くジャンヌ。
ジャンヌ『ご協力感謝いたします。』
メイド服を着たアンドロイドEは車から降り、リアドアを開ける。車から降りる一同。
エグゼニ連邦兵士E『ささ、どうぞこちらへ。』
昼。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファッション経済特区ソーシン。キューズベリー公園を歩くエグゼニ連邦兵士E。続くジャンヌにセート、ルイナにファウスとメイド服を着たアンドロイドE。ルイナは周りを見回す。
ルイナ『ここが例のNPO法人の男が炊き出しをしていたところですか。』
頷くエグゼニ連邦兵士E。
エグゼニ連邦兵士E『はい。…学生達と…。今回のことで彼らも心に傷を負ってしまっています。善意で配った筈の炊き出しの具材が…。』
エグゼニ連邦兵士Eは一同の方を向く。
エグゼニ連邦兵士E『ああ。すみません。昼飯時でしたね。ミートボーイの株も今回の件でガタ落ちですよ。』
ルイナ『ところで、炊き出しを受けていたという人々は?』
眼を見開くエグゼニ連邦兵士E。
エグゼニ連邦兵士E『…ホームレス達ですが、彼らに会いに行くのですか。』
頷くルイナ。
ルイナ『調査の為です。』
エグゼニ連邦兵士E『分かりました。案内します。』
無線を取り出すエグゼニ連邦兵士E。
昼。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファッション経済特区ソーシン。ダンボールハウスの並ぶレナト区を歩くエグゼニ連邦兵士Eにエグゼニ連邦兵士F、エグゼニ連邦兵士Gとエグゼニ連邦兵士H。続くジャンヌにセート、ルイナにファウスとメイド服を着たアンドロイドE。
周りを見回すルイナ。
エグゼニ連邦兵士E『ここがかれらのたまり場になります。』
ダンボールハウスから顔を出すホームレスのダエニル。
ダエニル『おいおい。軍人さんよ。たまり場はひどいんじゃねえのか。』
ダエニルの方を向く一同。
ダエニル『しかし、めずらしいな。あんたらみたいな連中がこんな所に来るとは…。』
ルイナ『私達はNPO法人の男から炊き出しを受けた人々の調査を行っています。』
ダエニル『そうか。そう…。』
ダエニルはファウスを見つめる。ダンボールを蹴飛ばす音。
ルディ『腹減ってんだよ!クソが!!』
ダンボールハウスを壊すホームレスのルディ。ルディの方を向いた後、談笑するホームレス達。
ルディ『炊き出しをやめやがって!人肉だろうとなんだろうとともかく食えりゃいいんだよ!食えりゃよ!ふざけんなよ!』
ダエニルはルディの方を向く。
ダエニル『ルディの奴。またおっぱじめやがって…。』
ダエニルはジャンヌ達の方を向く。
ダエニル『あいつは食い意地はっててよ。なんせあの炊き出しで行列に2回も3回も並んでいたからな。さてと。』
立ち上がるダエニル。
ダエニル『あんたら色々と知りたいらしいが…。』
ダエニルは親指に人差し指を添え、丸める。
ダエニル『話すにはこれが…なあ。』
頷くセート。
ダエニル『それと…。』
ダエニルはファウスに近づく。ダエニルの方を向くファウス。
ダエニル『…お嬢ちゃん。あんた俺が残してきた娘に似てるんだ。その…。手をつないでくれないか。』
ファウスはダエニルの方を見つめる。
ファウス『…こんな僕でよろしいんですか?』
頷き、手を差し伸べるダエニル。ファウスは彼の手を握る。ダエニルの方を向くホームレス達。
ホームレスA『ダエニル、とんだロリコン野郎だぜ。』
ダエニル『うるせえ。』
笑うホームレス達。ダエニルはファウスを見つめ、手を握りしめる。数枚の紙幣をダエニルに差し出すセート。
ダエニルは紙幣を受け取る。
ホームレスB『あとで俺達にも分け前くれよ。』
ダエニル『分かってるよ。酒でも飲もうぜ。』
笑うホームレス達。
ルイナ『それで…。』
ルイナの方を向くダエニル。
ダエニル『分かってる。分かってる。炊き出しを受けてた連中だろ。ここにいる全員がそうだぜ。まあ、何人かはいなくなっちまったが。』
ルイナ『いなくなった?』
計器を取り出すセート。
ダエニル『まあ、炊き出しも無くなっちまったし、ポルポ市とかよそからも流入してきてるからな。おおかたどっか違う所に流れちまったんじゃねえのか。
俺も奴らの行先までは知らねえよ。』
俯くファウス。セートは眉を顰め、ジャンヌに近寄り、耳打ちする。頷くジャンヌ。彼女はダエニルの方へ近づく。
ジャンヌ『我々、オンディシアン教国の暗部はあなた方の体の診断をしたいと思っています。』
ダエニル『へっ…。』
ジャンヌの方を向くダエニルとホームレス達。
ダエニル『あんたらオンディシアン教国の人間だったのか…。』
ジャンヌ『無論、診断の為の費用やその期間の食事はこちらでもちましょう。』
ダエニル『ううむ。悪くはない話だが…。ここに居ない奴らもいるからな。少し話し合う。』
ジャンヌ『分かりました。では、明日までに結論を出しておいてください。』
ダエニル『ああ。たぶん大丈夫だと思うが。』
C8 調査2 END
C9 アビス…
エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城。書斎。椅子に座るオータキ。その向かいに立つジャンヌ、セートにルイナとファウス。
ジャンヌ『まことに申し訳ない事ですが調査が長引きます。』
ジャンヌを見つめ、頷くオータキ。
オータキ『そうですか。分かりました。どうぞこの城を使ってください。』
一礼するジャンヌにセートとルイナ。
ジャンヌ『お心遣い感謝します。』
夕方。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城。メイド室。ベットに座るファウス。夕日が彼を照らす。窓の方を向くファウス。ヴァンガード城の庭を駆けていくセートとルイナ。眼を見開くファウス。彼はメイド室から出る。廊下に立つジャンヌとオータキ。
ジャンヌ『軍による民間人の避難をお願いします。』
オータキ『分かりました。』
彼らを見つめるファウス。
ファウス『御主人様。いったい何が??』
顔を上げるジャンヌとオータキ。
オータキ『なにすぐに終わることだ。』
一歩前に出るファウス。
ファウス『すぐに終わるって…でも、避難って…。』
オータキの持つ無線が鳴る。
エグゼニ連邦兵士Iの声『…銃、ロケットランチャー、あの化け物のホームレスにはまったく効きません!ホームレス達を守り切れません。』
眼を見開くファウス。
オータキ『分かった。とにかく足止めを。すぐにオンディシアン教国の暗部が向かう。』
エグゼニ連邦兵士Iの声『分かりました。』
駆けていくファウス。
オータキ『ファウス!おい!ファウス!!』
夕方。カルノア区ファッション経済特区ソーシン。レナト区に駆け付けるファウス。屋根に上り、頭部の食われたホームレスCの死体の右足を持ち、胸を食いちぎるルディ。まばらな場所で腰を抜かすホームレス達。剣を抜き、構えるセートとルイナ。
ルディ『この甘味がいい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!』
眼を見開くファウス。
ルディはホームレスCの死体の胸に口を当てながらその両手、両足を持ち、高速で回転させる。
骨だけになるホームレスCの死体。
ルディ『うんめぇ!はふはふ!』
ルイナが火の玉を放つ。跳ねて違う屋根に飛び移るルディ。ルディはホームレスCの死体を掲げる。
ルディ『おいしいよ!』
セートがルディを切り刻む。すぐに再生するルディの体。舌打ちするセート。
ルディ『すんげえや。この肉の力!へっへ。銃も剣も魔法も効かねえ!この力さえありゃ、金も女も簡単にてにはいらあ!』
ルイナの魔法の爆風で吹飛ぶルディ。ルディはダエニルのいるところに落下する。震えるダエニル。ルディは血走った目でダエニルの方を向く。
ルディ『もっと肉ーーーーーーーーーーーっ!』
ダエニル『ひっ!』
ダエニルに突進するルディ。ファウスの風魔法がルディを吹き飛ばす。ダエニルに駆け寄るファウス。
ファウス『ダエニルさん!』
ダエニルは震える指先でルディを指さす。
ダエニル『ひっ!ひい!…や、奴が…。奴が仲間を食ってやがったんだ!』
砂煙と共に立ち上がるルディ。彼はファウスを睨み付ける。
ルディ『肉よこせ!肉ーーーーーーっ!』
セートの剣撃でルディを切り刻むと後ろに飛びルイナの横に並ぶ。再生するルディの体。
ルディ『蚊がいくらさそうと俺様の…おぁ!!』
斬られた部分から爆発するルディ。セートは眉を顰める。
セート『…コアが見えない。』
ルディを睨むルイナ。
ルイナ『まずいですね。』
ルディ『何度やってみょ…おにゃ…ひっひっ!』
頭を抱えるルディ。ファウスはルディを見つめ、ルディに近づく。
ファウス『…あ、あの。』
ファウスを見つめるセートとルイナ。
セート『馬鹿か!あいつは!』
顔を上げるルディ。その眼からは触手が飛び出る。絶句するファウス。
ルディ『キシャー!キシャー!』
口から数本の触手を出すルディ。風魔法でファウスとダエニルを吹き飛ばすセート。
ファウスはセートの方を向く。
セート『偽王子!余計なことをするな!』
ルイナ『そんなこと余裕があれば、ホームレス達を避難させなさい!』
頷くファウス。
ファウス『は、はい。』
ルディの体は膨張し無数の触手を出す。眉を顰めるセート。
セート『これはきびしいかもしれない…。コアが…。』
地面が黒く覆われ太い鎖が怪物化したルディを縛り付ける。眼を見開く一同。歩いてくるジャンヌ。
彼女の方を向く一同。
セート『ジャンヌ様。』
ルイナ『ジャンヌ様。』
ジャンヌに駆け寄るセート。
セート『このアビスのモンスターにはコアが見当たりません。』
頷くジャンヌ。
ジャンヌ『…そうですね。おそらくこの人は既にアビス層の破片と一体化してしまっているのでしょう。』
眼を見開くセートにルイナ。
ルイナ『…ということは。この化け物自体が大きなアビス層の破片ということですか。』
頷くジャンヌ。
ジャンヌ『コアを切り離すという対処法でしたが、こうなってしまっては消滅させるしかありません。
幸いアビスの反応は我々が対処したどのアビスの化け物よりも低い。』
ファウス『この人を殺すということですか?』
ジャンヌ『こうなってしまっては手遅れです。』
ファウスは化け物とかしたルディを見上げる。
ルディ『キシャー!キシャー!』
ファウス『でも…。』
ダエニル『何を言ってるんだ。こいつは凶悪な奴だぞ!俺達は殺されかけたんだ!』
ホームレスD『そうだ。そうだ。』
両手を広げて呪文を唱えるジャンヌ。右手は白く光り、左手は黒く光る。眼を見開くファウス。
セート『なんどみてもすごい。神性と暗黒魔法を同時に唱えるのは。』
ジャンヌの右手から白い球体が左手から黒い球体が現れ、混ざりあう。球体は浮遊し化け物と化したルディに近づく。白黒の光の中で消滅する化け物と化したルディ。
カルノア区ファッション経済特区ソーシン。キューズベリー公園。エグゼニ連邦軍兵士達が配置される。中央のテント内にはジャンヌにセート、ルイナにファウス。エグゼニ連邦軍のトラックに乗るダエニルをはじめとした生き残ったホームレス達。ファウスはジャンヌの方を向く。
ファウス『あの人たちはどうなるんでしょうか。』
ジャンヌ『…我々ができる限りの治療を施します…。』
テントにやってくるオータキ。ファウスは立ち上がり、オータキの方を向く。
ファウス『御主人様…。』
オータキはファウスを見つめた後、平手打ちをする。頬を抑えるファウス。
オータキ『本当にお前という奴は心配させて…。』
オータキはファウスを抱きしめる。ファウスはオータキを見つめる。
ファウス『御主人様…。』
カルノア区ファッション経済特区ソーシン。キューズベリー公園。入口に立つジャンヌにセートとルイナ。向かいに立つオータキとファウス。
ジャンヌ『報告があるので我々は一旦、本国へ帰ります。』
オータキ『分かりましたご苦労様です。』
去って行くジャンヌにセートとルイナ。
C9 アビス… END
C10 ヒーローごっこ
夕方。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城。食堂。椅子に座るファウスとオータキ。テレビに映るニュースの画面。
ニュースキャスターA『ミートボーイが倒産しました。』
画面に映るミートボーイ社長の涙顔。
ミートボーイ社長『今回、NPO法人の男の凶悪性を見抜けず、消費者の皆様方と、関係者の皆様方に大変なご迷惑をかけたことをお詫び申し上げます。』
立ち上がり、頭を下げるミートボーイ社長。切り替わる画面に映るニュースキャスターA。
ニュースキャスターA『今回の件は食品業界に波紋を広げています。大手惣菜業者5社の合同記者会見です。』
切り替わる画面。椅子に座る5人の大手惣菜業者社長達。
大手惣菜会社社長A『確かに我々はミートボーイから肉を仕入れていました。しかし、ちゃんとした検査を行ったうえで…。』
記者A『談合してるんだろ。』
記者B『あんな危険な肉を提供しておいて!』
立ち上がる大手惣菜業者社長B。
大手惣菜会社社長B『危険な肉ではありませんでした。』
記者C『だったらなんで炊き出しを受けたホームレスが人食いになるんだ!』
大手惣菜会社社長C『それはあの男の入れていた人肉が…。』
被害者遺族達『私達の子供が汚れているっていうの!人権侵害よ!』
テレビを見て俯くファウス。オータキはファウスの方を向いた後、リモコンのボタンを押し、テレビを消す。彼はファウスを見つめる。
オータキ『ファウス。』
顔を上げオータキの方を向くファウス。
ファウス『はい。』
オータキ『食事をするか。』
頷くファウス。
ファウス『…は、はい。』
扉が開き、食事の載ったワゴンを引いて現れるポンコU。
ポンコU『ファウスさん。』
ポンコUの方を向くファウス。
ファウス『ポンコUさん!』
立ち上がり、ポンコUを見つめるファウス。立ち上がってポンコUの傍らに寄るオータキ。
オータキ『新しい体との調整が終わったのでな。まあ、暫くは様子を見るが…。』
オータキの方を向くファウス。
ファウス『そうですか。』
ファウスはポンコUに駆け寄る。
ファウス『良かった。ポンコUさんが無事で本当に良かった。』
オータキ『無事でとは、ただの調整だぞ。』
笑うオータキ。
朝。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城。メイド室。窓から外を眺めるファウスの眼に庭の枯葉を掃くポンコUが映る。ファウスは頷き、メイド室から出る。
朝。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城。庭。枯葉を掃くポンコUの傍らに寄るファウス。
ファウス『ポンコUさん。』
ポンコUはファウスの方を向く。
ポンコU『ファウスさん。』
ファウス『その仕事…僕が代わりにやります。』
ポンコU『そんなにお気を使わなくてもよろしいですよ。』
ファウス『でも、ポンコUさんは本調子ではないんでしょ。』
ポンコU『それはそうですが…。』
ファウスの頭に当たるジュースの缶。頭を押さえて、蹲るファウス。
ポンコU『ファウスさん。大丈夫ですか。』
しゃがみ、ファウスの頭を撫でるポンコU。ファウスは顔を上げ、外を向く。外でファウスを睨む大手惣菜会社の従業員達。ファウスは大手惣菜会社の従業員達の方を向き、立ち上がる。
ファウス『あの、どうされたんです?あの、何があったんですか。』
2、3歩前に出るファウス。
大手惣菜会社の従業員A『俺達は惣菜会社の従業員だよ。偽王子。』
大手惣菜会社の従業員B『お前が、あんな騒ぎをおこしたからミートボーイは倒産!だが、なんでその後に俺達がせめられるんだよ!』
首を傾げるファウス。
ファウス『あんな騒ぎ??』
大手惣菜会社の従業員C『そうだよ!お前が、あのNPO法人の男とやりあった騒ぎだよ!』
眼を見開くファウス。
大手惣菜会社の従業員C『楽しいか!身勝手なヒーローごっこをして、騒ぎを大きくした挙句、そのとばっちりを俺達にあててよ!』
首を横に振り後ずさりするファウス。
大手惣菜会社の従業員D『お前があんな騒ぎを起こさずともあの男は逮捕されたんだ!』
ポンコUは立ち上がり、ファウスの視界から大手惣菜会社の従業員達を遮る。
ポンコU『ファウスさん。気にしないでください。あんなの言いがかりです。』
ポンコUを見つめるファウス。
ファウス『でも、あの人達は苦しんで…。』
大手惣菜会社の従業員D『お前のせいだ!お前の!!』
俯くファウス。
C10 ヒーローごっこ END