女神異聞録〜恋姫伝〜 第五十五話
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                  女神異聞録〜恋姫伝〜

 

                    第五十五話

 

               「紐解かれる繰り返される歴史」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 于吉は禁書録の蔵書を読み進めていた。

 

暗い蔵の中、途方も無い蔵書の数。

 

そこでふと手が止まる。

 

文字を読んで行くたびに違和感に気が付いた。

 

「なぜ………悪魔召喚プログラムがバロウズと共にない………」

 

悪魔召喚プログラムを統括している筈のバロウズの存在がこれまで読んでも見当たらない

 

のだ。

 

電霊と呼ばれる特殊な種族として存在している彼女の存在は一刀を助ける存在として極め

 

て大きい。

 

吹き出る汗が止まらない。

 

じっとりと身体に纏わり付く汗は焦燥を大きくしていく。

 

「どこから!何処から彼女は産まれたと!」

 

何処から彼女が出てくるのか、そしてどうやって彼女が産まれたのかそれをこの膨大な量

 

の情報から調べなければならなかった。

 

奥から順に逆に巡るようにして彼は探す。

 

この世界で一体何日が過ぎたのだろうか、半ばほどにきてようやくバロウズの物語が書か

 

れている物を見つける。

 

だがそれまでに憔悴しきっていた。

 

彼は最後を読んでしまっていた。

 

この物語の行き着く先を。

 

絶望しか残らない物語を。

 

この物語に英雄は存在しない………正確には存在できない。

 

死ぬか、殺されるか、消滅してこの物語は終結を迎える。

 

ただ一つの望みを叶える為に幾度と無く繰り返されている物語。

 

死により終焉を向かえ、死ぬことで発端を開く。

 

救いの無い物語。

 

この外史の管理者はこんなものは望まない。

 

正史に準じた物語でありながら、外史足り得ない物語。

 

そして否定の管理者と肯定の管理者を知った。

 

「電霊バロウズ、楽園エデン………なぜ………三者が協力を………」

 

そしてもう一人、第三の管理者………この外史の繰り返しの原因。

 

「秘神ヒトタラズノカミ」

 

否定でも肯定でもない、この外史そのものを作り変える為に存在する管理者。

 

否定はこの((世界|外史))のあり方を否定した。

 

肯定はこの((人物|外史))を肯定した。

 

変化はこの((終焉|外史))を変える為に動いている。

 

そしてこの異聞録という意味。

 

「これは私たちからすれば………未来の外史………繋げてはならない正史………」

 

在ってはならない未来の書物。

 

だからこそ知る者はそれこそ少ない。

 

ゆえに異聞録。

 

語られる((物語|歴史))とは異なる((物語|外史))。

 

ゆえに異聞録。

 

「管理者が物語の英雄の味方となっても尚も勝てないということは、それほど敵というも

 

のは強大だという事………」

 

敵と明確に表されながらもその敵の姿そのものが出てこない。

 

出せるはずが無いものなのか。

 

「これは一体、何の冗談なんでしょうね」

 

バロウズの産みの親が読み解かれた。

 

自分自身だとは想像すらしていなかった。

 

「ならば私は、戻らなければならない………だが戻る術が無い」

 

ガツンと本棚の角に拳を打ち付ける。

 

この外史は終わりを迎えさせなければならない。

 

知りながら、正史そのものを侵食する外史を止める事ができない。

 

外史を否定してきたものとして、管理してきたものとして無力な自身に憤っていた。

 

繰り返すから侵食するのか、侵食したから繰り返しているのか。

 

終わらないから侵食しているのか、侵食しているから終わらないのか。

 

だが、確かに本来の終わりである終焉を向かえた物語はある。

 

ミカエルを倒し、混沌たる終わりを迎えた物語。アンチメシアとしてのワルオ。

 

アスラ王を倒し、秩序たる終わりを迎えた物語。メシアとしてのヨシオ。

 

どちらをも倒し、天秤の守手として迎えた物語。ヒーローとしてのフツオ。

 

だがそのどれも、一刀の姿は終わりには無い。

 

そのどれも最期には殺されている。

 

英雄を殺すのはいつの世も民だった。

 

一つの封筒が落ちている事に気が付く。

 

棚を殴ったときに落ちたのだろうか。

 

読み進めてゾクリと背筋を震わせる言葉が書かれていた。

 

しかも己の字で。

 

『そもに外史とは一体なにか』

 

ガタガタと指は震えながら、文字を追っていく。

 

『外史から見た正史とはどの様に映るのか。

 

所詮は平行世界の物語でしかない、それはただのどちら側の視点で見るかそれだけでしか

 

ない。

 

外史から見れば正史こそ外史で、正史から見ればやはり外史は外史。

 

数多にある外史は繰り返し読まれこそすれど、その世界そのものは住まうものにとって現

 

実。

 

外史とは所詮は平行世界を写した物語。

 

それは本来薄皮一枚を隔てた可能性の一つの姿。

 

性別を変えただけの物語こそ顕著なもの。

 

始まりから性別が違う歴史ならそれこそ、その世界の正史でしかない。

 

未来の私がまだ外史を否定し、正史を肯定するのならば、ぜひともこの終わらせることので

 

きなかった外史を砕いて見せてください』

 

その文章の最期には未来の自身に向けた言葉と、戻るための願いを賭けたスペルが書かれ

 

ていた。

 

ただ一言。

 

『((Amen|救いよ在れ))』

 

弱々しい願いをつづった祝詞。

 

それを口ずさみ私は全てをもってあの外史へと戻る。

 

「アーメン、アーメン………なんとも、弱々しい響きなんでしょうねぇ」

 

アマラ経絡の奥底へと。

 

例えその終わりに誰にも一刀の記憶が残らないとしても。

 

震えはもう止まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ラサウムは進入してきた新たな玩具を弄ぶかとくつくつと笑みを零していた。

 

武器を持つ人間とバケモノが徒党を組んでラサウムに群がろうとしている。

 

「弱き者が群がり何をしようというのか」

 

嘲り嗤いながら、黒色破壊光線でなぎ払っていく。

 

一人は器用に避け、二人は耐え、二人は守られた。

 

バケモノたちはそれらを受け流してこちらに攻撃を仕掛けてくるがこそばゆいものだ。

 

レベルは100を少々超えたのが一人。

 

「ははは、その程度で我に挑もうなど片腹痛いわ」

 

哄笑と共に衝撃波を複数発生させて張り付こうとしていた一人を弾き飛ばす。

 

腕でも折れたのだろう片腕がだらりと力なくぶら下がっている。

 

「脆い、脆いな。笑い声だけでこれとは。悶え苦しんで死ね」

 

もう一度複数の衝撃波を生み出すが、今度はこれを避けられ肉薄された。

 

「ほぅ?」

 

肉薄されたと同時に予測から外れた結果から軽い驚きの声を洩らす。

 

下半身に小さいとはいえ傷をつけた。

 

「く、くははははっはっはっは」

 

実に面白いものを見た様に笑い声を上げる。

 

羽虫が挑むというものも面白いものだったが、存外の結果に更に面白いものを見せた。

 

ラサウム自体三超神の残りカスといえる澱みから生まれたとはいえ遜色ない強さを誇る。

 

更には無敵結界の上位互換であるものを纏っているというのに、傷をつけたのだ。

 

これが笑わずにしていられるものか。

 

「面白い、実に面白いぞ」

 

面白いことこの上ない、ある可能性が浮上するのだから。

 

ラサウムの野望を成就させる駒に丁度いいとも言える。

 

そうルドラサウム打倒という野望の可能性。

 

だがこいつに堕ちる未来は見えない。

 

何処までも楽しませてくれる男だ。

 

堕ちはしないが、堕ちないがゆえにぶつけられると確信する。

 

しかし、まだまだ弱い。

 

傷を負わせることは出来るが、到底足りない。

 

舌打ちする音が聞こえる。

 

先ほど傷つけたダメージ分の回復が済んでしまったのだろう、先ほどのダメージ程度では

 

どれだけ注ごうとも致命傷まで到底足りん。

 

どうすれば強く出来るか………より強力に、より強大に………思案する。

 

結界は砕かれた。

 

攻撃の手を休めてはいない。

 

ダメージは与えているが、人間どもも回復している。

 

のんびりと考える時間は十分にありそうだ。

 

人間を強めようなどと我ながら面白いものを考えたものだ。

 

「人間、共にラサウムを倒して世界を手中に収める気は無いか?」

 

にべもなく断られた。

 

これが強くなるのは憤怒でもない。

 

だが強い反応はある。

 

剣を振るう男性よりも強く感じるこれは何処からだ。

 

何かに封じられている?いや、あえて封じられて身近に置かせているのか。

 

もう一段強くなればこれも使役できる力量になる。

 

「くっくっく………だろうなぁ。そうだろうなぁ、貴様はこの話を蹴るしかないからなぁ」

 

断られることを知りながら語りかけたこと、だが迷う素振りもなく即座に断る姿勢こそ好

 

ましい。

 

高潔で孤高に立ちながら、己が否と断じた者を決してそのままに許すことは無いその在り

 

方に、思わず口角が緩やかに上がる。

 

これを落とした瞬間の悦楽はどれほどのものか。

 

勇者というものがいるのは知っていたが、対峙してその輝きというものを見た。

 

胸中で高笑いをあげる。

 

勇気あるものを勇者というが、それこそ笑い種だ。

 

目の前に居るこれこそ正に勇者の姿では無いか、我が前に恐怖し震える四肢を武器もって

 

立ち会うものなど、それこそ悪魔たちにすら多くは無い。

 

一つ下の一級神達ですらそれを震わせるだろう。

 

だが、この有様を見てみろ………勇気ある者が勇者とは笑わせる。

 

勇気与えるものこそ勇者といえる。

 

だからこそ面白い。

 

死地に向かう蛮勇こそ勇者と称えられるのだから。

 

死に瀕した時こそその価値が知れる。

 

「あぁ、その愚かな答えを後悔して逝け!」

 

業火を降らせ、雹嵐を呼び寄せ、魔法を撒き散らしていく。

 

攻撃のパターンを逐次変え、タイミングをずらし、回復を上回るダメージを与えジリジリと

 

劣勢に立たせていく。

 

一時に膨大なダメージを与え一気呵成に絶望を叩きつけるのではなく、余裕を持ってじっ

 

くりと絶望という沼に引きずり込んでいく。

 

一人また一人と動けなくなっていく。

 

「まだまだ殺さんよ………」

 

その言葉通り、戦闘不能までは追い込むが殺しはしない。

 

殺してしまえば楽しめないからだ。

 

死なせて成長するならそれもいいが、男を殺すのは面白くない。

 

鬼札の一枚になる価値があるかどうか、見る必要がある。

 

さぁ、のんびりと観察させてもらおうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 手足が痺れる。

 

呼吸が苦しい。

 

リンゴが回復させてくれるけど、それよりも激しい攻撃が繰り返されている。

 

どうすればこの戦いに勝てるのだろうか。

 

「ご主人様は………恋達が守る………」

 

ぽつりと言葉を洩らせば、方天画戟を持つ手に力が篭る。

 

心臓が連動して鼓動を上げていく。

 

「そう………恋『達』が守る………」

 

ご主人様から色々貰った。

 

いっぱい戦えるみんな、おいしかったご飯、幸せそうな笑顔、優しくてあったかい手、隣に

 

並ぶのに不足なんてない戦友。

 

あの時、ご主人様に会うまでなかった物が脳裏に浮かんでは消える。

 

「(月はいつも優しかった。詠も良く怒ってたけど優しかった。霞は一緒にいて気持ちよか

 

った。華雄はいつも真っ直ぐだった)」

 

隣の霞を見て、後ろでみんなのダメージを軽減する為に頑張っているねねを思う。

 

「(ねねはいつも恋のために色々してくれた)」

 

戦争が終わった後も霞や華雄たちと一緒に、戦うことしか出来なかった恋達に出来ること

 

を探してくれた。

 

足裏に踏みしめている地面の感触が戻ってくる。

 

ねねは破魔が弱点だといっていた。

 

でも、あまり効いていない気がする。

 

ハマ等は元々ダメージを与えるものでは無いので仕方がないといえば仕方がない。

 

自分に何が出来るだろうかと考えてみたが、武器を振るう以外に答えは見出せず、方天画戟

 

をぎゅっと握り締める。

 

「恋に出来るのは………戦うだけ………」

 

いつものぼんやりした眼差しをキッと鋭くし、今も炎を撒き散らす悪魔王を見ていた。

 

「そう………守る事も………新しく作ることも出来なかった………」

 

「恋!ぼんやりしとる暇はないんやで!」

 

ぼんやりといつもの調子で見ていた。

 

いつものように見える、いつもとは違う酷くか細くて弱々しい光の道。

 

いつの間にか蓮華が道中で助けたアクマ達が壁を作っていた。

 

攻めないと負ける。

 

恋の勘はそう囁いていた。

 

隣に立ったウンチョウを見上げる。

 

「霞………ねね………蓮華………………ばいばい」

 

二人でともに駆け出す。

 

いつか見た風景の戦場に似ていた。

 

「兄者を任せたでござるよ。三人とも」

 

「飛将軍、呂布、奉先………真名を恋………往く!」

 

ねねが止めようとする声が聞こえたがそれを無視して、悪魔王ラサウムの放つ火弾の雨の

 

中に二人して身を躍らせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 確かに見えている道を踏みしめるように駆け出す、その様を見て確信した。

 

確実に見えている『勝つための道筋』という、確かな天与の才をもっている恋。

 

ただ、ぽつりと一言洩らした言葉は、その『勝つ為の道筋』が自分の為に用意された道筋で

 

はないことだろうか。

 

「道筋が………届かない………」

 

「さもありなん。ならばここが某らの死地というわけでござるな」

 

恋の呟きを聞いたウンチョウはその突きつけられた事実を受け止めた。

 

それほどに敵は強大だと認識している為だろう。

 

他から見ればあっさり過ぎるほどにそれを受け止めた。

 

「一歩でいい………アレを上から退ける」

 

「承知」

 

目の前には放たれた巨大な炎の渦。

 

だが、二人はその進む方向を変えることは無い。

 

「冷艶鋸!大ッ風ッ車ッ!!」

 

ウンチョウは渦を十字に切り裂き、指先で器用に風車のように回転させる。

 

炎はそれに絡まりかき回されるように、熱を放射しながら偃月刀に飲み込まれていく。

 

ちりちりと肌を焦がす熱量の中、真っ直ぐにラサウムに肉薄して行く。

 

その途中で恋は立ち止まり、光り輝く金の大弓を手にしていた。

 

「((赫赤|カクシャ))の((奉天|ホウテン))」

 

方天画戟を矢につがえ、ぎりぎりと金色の大弓の弦を引き絞っていく。

 

渦は全て飲み込まれ、ラサウムの腕が振り上げられ二人に迫らんとしていた。

 

ウンチョウはそれを跳躍し、眼前に捕えながら偃月刀を下段に構え一息に振り上げ飲み込

 

んだ炎と共に叩きつける。

 

「剛衝破!」

 

空間は叩きつけられ衝撃波を生み出す。

 

「もう一つ!」

 

振り下ろすようにもう一度衝撃波を発生させる。

 

二度畳み掛けてようやく拮抗する攻撃同士だが、衝撃波の持続は短い、ただの一時の時間稼

 

ぎにしかならない。

 

赤く熱された刃も形を歪ませ長くは保たない。

 

だがそれでも最後の足掻きとして、翻し突きを放つ。

 

「疾風突きぃ!!」

 

目を見開き、空を蹴り加速させてウンチョウの持つ最速の一撃を、迫るラサウムの拳に叩き

 

つけた。

 

ウンチョウの持つ偃月刀・冷艶鋸が刃を砕き、柄を破壊されながら、風を纏った一撃をラサ

 

ウムの拳を一瞬、確かに弾き身体を浮かせる。

 

そのタイミングでもう片方の肩に赤い光が吸い込まれていく。

 

その光は肩を貫き、左肩を破砕する。

 

浮き退けられたその結果に満足し、眼前には開かれた巨大な掌を待っていた。

 

「天和、地和、人和………兄者に会わせてくれた事、今改めて感謝しよう。だからもう某の

 

側にいる必要は無い。兄者の元へ!」

 

武器を失った二人は、防ぐ術も持たずその掌の下に散った。

 

説明
真・女神転生世界に恋姫無双の北郷一刀君を放り込んでみたお話
人の命はとっても安い、そんな世界
グロや微エロは唐突に生えてくるもの
苦手な人は注意されたし
なぜ炎蓮さん出て来ないし………呉編楽しみにしてたのに
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真・恋姫†無双 メガテン アリスソフト 真・女神転生 恋姫 恋姫無双 恋姫†無双 

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