がちゆり〜京子vあかり2
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がちゆり〜京子vあかり2

 

 泣いていた。

 

 いつも強気で私を守ってくれていて結衣が悔しそうに、あかりが悲しそうに

泣いていて、私もつられて二人と一緒に泣いていた。

 

 そんな夢を見た。

 

「・・・」

 

 目を覚ますといつもより少しばかり早い時間に目覚めて何だか胸の辺りが

もやもやするような嫌な気持ちになっていた。

 

「あー、かなり昔のこと思い出しちゃったじゃんよ〜」

 

 髪を軽くくしゃっと掴んだ後にぽりぽり掻いて私は部屋を出た。

休みの日だし原稿の疲れとかもあってゆっくり寝ていたかったんだけど

残念ながらそんな気分にはなれなくなってしまったから。

 

 私はあかりの家へ行くことにした。

 

ピンポーン

 

「はーい」

 

 あかりの家では変に悪戯しないことにしている。結衣と違って他の家族もいるからだ。

インターホンを押した後に聞きなれた声が聞こえた。それから少ししてから玄関の扉が

開き、お団子を頭にこさえたあかりが顔を出してきた。

 

「あ、京子ちゃんだー」

 

 私に向けるその笑顔が何だかあの夢の嫌な気分を払拭させてくれるような気がした。

何とも心が温かくなるではないか。

 

「おう、あかり。遊びにきたぜ〜」

 

 そんなあかりに手を挙げて応えるとあかりの言葉を受けて中へと入れさせてもらった。

あかりの部屋に行くと相変わらずさっぱりとした見た目の部屋で面白みのない部屋だった。

だけど何だかあかりらしい暖かい雰囲気が漂っている。

あかりの匂いがするからそう思うのかもしれないけれど。

 

「今、ジュースとお菓子もってくるね」

「おっと、今日は手ぶらでは来てないよ。ほらっ」

 

 私は持っていた紙袋を見せるとあかりはジュースだけ持ってくるねと言って

一度部屋を出ていく。出かける私に母が持たせてくれたものだ。

 

 あかりはジュースを持ってきてから私がもってきたちょっとお高めのお菓子を

つまみながら話をした。少し遠慮がちなあかりに私はいっぱい話題を振って

盛り上げると、あかりが途中からちょっと気になってるような表情で私を見ていた。

 

「今日は珍しいよね、いつもは結衣ちゃんのところに行くのに」

「そりゃあ、たまにはあかりの家にも行きたいことだってあるさ」

 

「・・・何かあった?」

「え?」

 

「いや、ちょっとね。京子ちゃんの表情が少しだけ暗かった気がしたから」

「わかるのかよ!」

 

「え、だって。ずっと一緒だから。ずっと見てきてるから」

「何だか照れるな・・・」

 

 夢のことで不安になって来たとは言い辛いこともあってその場ではぐらかしたけど…。

 

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**

 

 久しぶりにお泊りまですることになってあかりの分の気ぐるみパジャマを持ってきて

布団に潜った時、もう寝てるであろうあかりに向けて呟くように言った。

 

 本人に聞こえたら恥ずかしいから寝ている時に言った。これまでの思いを。

寝てる時に言うのは卑怯かもしれないけれど仕方ないことだ。

 

「今日さ。夢を見たんだよなぁ、昔の・・・。私が弱かった頃の夢」

 

「いつも守ってくれてばかりだった私を、いつものように守ってくれて。

でも、あの日だけは逆に返り討ちにあって私の前で泣いていた二人がいて」

 

「私は悔しかったんだよ。大好きな二人にこんな顔させてさ」

 

 思い出しながら少し唇を噛んでから、震える声を抑えることができずに続いた。

 

「だから私も二人のようになりたいからがんばったさ。二人を守れるようになりたいから」

 

「あー、でも強くはなれなかったかな。その分バカみたいに明るくはなれたけど」

 

 暗い部屋の中、仰向けになりながら話を続ける。集中しているからか周りの音が

まったく聞こえてこなかったから独り言のようにずっと小さい声で呟いていたら。

 

「そうだったんだ…」

「!? あかり!?」

 

「え、何で驚いてるの!?」

「寝てたんじゃ…?」

 

 呟いてる内にいつの間にか私の隣にあかりがいてずっと私のことを見ていたらしい。

全く気配を感じられなくて心臓に悪かった。

 

「そっか〜、京子ちゃんが変わっていったのはそれがきっかけなのかぁ」

「そうだよ。だからもっともーっとこの京子ちゃんに頼ってくれてもいいのだよ?」

 

 ちょっとわざとらしく言うと真っ暗の中、あかりの吐息とカーテン越しから僅かに

漏れる明かりから口元が笑っているように見えることしかわからなかったけれど。

それとくすくすと笑う声が聞こえてくるだけで私は落ち着くことができた。

 

「あかりはずっと京子ちゃんを頼りにしてたよ。小さい時からずっとね」

「え・・・?」

 

「京子ちゃんが傍にいてくれたからあかりがんばれたんだよ」

「あかり・・・」

 

 話をしている間、あかりが私の手をずっと握っていてくれて。

暖かくて柔らかくて、あかりの手を握ってると何だかクセになりそうだ。

 

「だから昔も今もずっと京子ちゃんのこと大切で大好きだよ」

「よくそんなこと恥ずかしげもなく言えるなぁ、さすがあかりだよ〜」

 

「んも〜!せっかくいいこと言ったつもりだったのに〜」

「ははは、冗談だよ」

 

 口を3の字に尖らせて拗ねるあかりを宥める。いつものやりとりがこんなにも

愛おしいと思ったことはなかった。無意識に笑みが浮かぶくらい幸せに感じる。

 

 そして二人で見つめあいながら少しずつ近づいていって。

 

「みんな大好きだけど京子ちゃんは特別だよ」

「私も…あかりのことが好き…。愛してる」

 

 顔がある程度近くなった後、一瞬お互いの動きが止まりそして・・・。

私たちは抱きしめあった。あかりの体温が吐息が全てが感じられて、安らいでいって

そして私はいつしか眠りに就いていた。

 

 その日見た夢はあの時、泣いていたあかりが私を見て微笑んでいた。

それを見て私の中につっかえていたものが取れたようにスッキリした気持ちで

朝を迎えられた。

 

 それを境にあかりとの関係は劇的に変わったわけではないけれど手を握ったり

家に泊まりに行ったりする回数は増え、あかりをいじる回数も・・・増えていた。

 

「もー、京子ちゃんったらー」

「あはは、しょうがないよ」

 

「何がしょうがないのー!?」

「あかりが可愛すぎるからさ〜」

 

「もう・・・!」

「・・・私たち、ずっと一緒だよな」

 

 まだ他に誰も来ていない部室の中で外を眺めながら聞こえるか聞こえないかくらいの

声で少し自信なさげにぽつりと聞くと、手を握っていたあかりの手の力が強まって

握り返してきて。

 

「ずっと一緒だよ」

 

 そう言われた私はつくづく幸せ者だと感じた。

 

お終い

 

説明
昔を思い出して悩む京子にあかりが優しく接してくれる。それから二人の間に変化が?そういうのを簡単に書いてみたものです。少しでも楽しんでもらえれば幸いです。誕生日以外で書くゆるゆりモノは久しぶり。
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