魔法音快ゴシックライブ! 第壱話『ライブジャック犯は、ゴスロリ少女!?』
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 ホンモノみたいなニセモノ

 

 ニセモノみたいなホンモノ

 

 どっちにする?

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第壱話『ライブジャック犯は、ゴスロリ少女!?』

 

 ぱちぱち……ぱちぱち……。まばらな拍手は、学校の講堂という広い会場には寂しいものだった。

「ありがとうございましたー!! まだまだ歌いますから、聴いてくださいねー!!」

 講堂のステージ上で、やや小柄ながらも元気よく、声を張り上げるツインリボンのボーカリストがいた。これが私。

「客席に何人おる?」

「ざっと数えて五、六人ほど」

 その後ろで、ショートヘアのギタリストが関西弁で尋ね、ロングヘアなベーシストが残念そうに答える。

「((空木|うつぎ))さん、((岡田|おかだ))さん、次の曲いくよー!!」

「予想はしとったねんけど、観客がこれじゃ」

「やる気でないよね」

「ちょっと、お客さん少ないかも知れないけれど、来てくれてるのは私たちの熱狂的なファンだよ、きっと!」

「どうみても退屈しのぎか」

「休憩がてら、座りに来てるって感じだよね」

「そんなこと言わないの。天罰が下るよ!」

「天罰の代わりに、オカマが下ったりして……」

「オカマ? 岡田さん何を唐突に」

「……いるのよ。((宮代|みやしろ))さんの後ろに」

「ほえ? ええええっ!?」

 私が後ろを振り返ると『オカマ』は、瞬時に私の隣で密着し、私の肩をしっかり掴んだ。身動きが取れない!?

「そのマイク、ちょおぉだい☆」

「ひいっ!? は、はいっ」

 オカマは私からマイクを奪いとると同時に、数名の男たちがステージへと上がり込んでくる。

 この状況は一体何なの!?

「みなさんお待たせ。ライブジャックのお時間よぉ☆」

「ライブジャック!?」

「平たく言うと、乗っ取りかしらね? うふ☆」

 可愛らしく喋っても、オカマはオカマだ。衣装だけ見ると女性っぽいが、ゴツい体格に加え、顔や声が、典型的な男性なのだ。しかも少し汗臭い。

 よく見ると薔薇で彩ったキラキラなドレスで身を飾り、キュートなフリルとリボンも付いている。これに合う表現は『不気味』である、としか言い表せない。

「そう怖がらないで。食べたりしないから。んふ☆」

 食べられてたまるかっ! どうしてこんな事になっているの。今日は楽しい女子校での女子による女子だらけの学院祭の真っ最中だったはず。それがなぜ、オカマがいるの。

 講堂を使ったステージイベントで、ポピュラーミュージック同好会による『みんなで盛り上がろうアニソンライブ!』という題目で、ライブ演奏をやっていたのだ。

 もちろんステージで歌っていたのは私。同好会のボーカリストで、部長を務めている。同好『会』なのに、どうして部長なのか? 会長だと生徒会長のように聞こえるから、同好会でも部長にしなきゃいけないらしいからだ。

 それはさておき。一曲目を歌い終えた直後に突如として出現した、謎のライブジャック犯たち。一体、何者なの?

「はい、みなさぁん。注目ぅ☆」

 オカマは私から奪ったマイクを握りしめ、喋り始めた。そこ、小指立てるのやめて!!

「これから、とぉ?っても楽しい、ショータイムのはじまりよぉ☆ 準備できたぁ?」

「バッチリ」

 オカマが後ろを振り向くと、シンセサイザーを鳴らし、準備オッケーと親指を立てている小柄な男がいた。シルクハットにギラギラとした白銀のスーツ姿で、派手ではあるが紳士的にも見えた。

「ちょっと待って」

 ステージの隅っこで、野太い男性の声が聴こえた。照明スタッフと何か打ち合わせしている。一見ナイスバディで綺麗な女性のように見えたが、今の声からするに、この人もオカマっぽい。

 というか、なんで照明スタッフや、学院祭実行委員、さらに生徒会まで、ライブジャック犯の言うがままに動いているの!?

「宮代はああぁん、もう少ししたら解放してくれるって。それまで辛抱してやー」

 いつの間にか逃げていた、ギター担当の空木さんが、ステージの下から叫んでいた。

「これ、どういうこと? 生徒会が承認してるって? はぁ!?」

 ステージの下で、同じく逃げていたベース担当の岡田さんが、生徒会役員に向かって激しく抗議していた。

 抗議の相手は……生徒会統括上級副会長の((五十嵐|いがらし))さんだ。この学院で実務における生徒会トップクラスの人だ。

「彼らは生徒会総会長の承認を得ているわ。総会長直々による承認を覆すことはできないの。どのみち、あなたたちの演奏時間は、もう終わっていたけどね」

「たった一曲で!? 納得できないわ!」

 岡田さんが激しく抗議をしていた。がんばって! そして、はやく私を解放するように言って!

「だって、ポピュラーミュージック同好会は解散したのでしょう? 解散した同好会に割り当てるステージなんて無いわ」

「なっ!? か、解散!? そんな話聞いてないわよ!」

「廃部届けが受理されているのよ。ほら、総会長のサインもあるし。廃部日時は、さっきの演奏終了時刻」

 二人の話し声は、私の耳にも届いていた。嘘……私、廃部届けなんて提出してないよ。誰がやったの? どうして、こんな酷い仕打ちを。真面目に活動してたよ、私たち。

 ショックとパニックで、涙が溢れでてきた。相変わらず隣は汗臭いし気持ち悪いし、もういやだ。帰りたい、逃げ出したい。というか、誰か助けて!

「きゃああっ!」

 突然、あたり一面が真っ暗になった。照明が消えた!?

 講堂の窓は全て暗幕で覆われていたため、会場内は真っ暗闇に包まれた。

 ♪♪♪?♪♪??♪♪♪♪♪?☆♪ ♪♪☆♪♪♪☆♪☆♪♪?♪♪☆☆♪♪♪♪

 間もなくして講堂内にクラシック調のノスタルジックな音楽が響き渡った。ほんのり照らされたステージに二人、スーツ姿でバイオリンを奏でている男性の姿が見えた。

 ステージ中央では、さっきのシルクハットの男が忙しそうに電子キーボードを奏でている。不思議なビート感があって、聴き入ってしまう。

 あれ? この曲、どこかで聴いたことがあるような……。

「ん? 花びら? これは……薔薇?」

 今度は講堂の真上から、たくさんの花びらが紙吹雪のように降り注ぎ、舞い降りてくる。

 赤、黄、青、白と、目まぐるしく変化するステージライトが、講堂の中央付近を照らす。光の中心には赤、ピンク、黄、白、黒と多種多様な薔薇で彩られたゴンドラがあった。いつ、こんなものを講堂の上に仕掛けていたのだろうか。

 薔薇で彩られたゴンドラには、真っ黒いゴシックドレスで身を包み、雅やかに輝いている少女が乗っていた。

 クロアゲハチョウが擬人化したかのような、おとぎの世界からやってきたかのような、幻想的な美しさだった。あれ、この衣装見覚えがある。

「この衣装……知ってる。((零式|れいしき))プルーンだ! うそっ、まるでホンモノみたい……」

 感無量のあまり思わず叫んでしまった。私が大好きなアニメ『アリスロイド・ガールズ』に登場する敵役・零式プルーンそのものなのだ。

 ゴンドラが近づくにつれ、少女の顔が鮮明に見えてくる。その顔は見覚えがあった。アニメのキャラクターに扮しているが、今現在、最も(私の中で)話題になっているアーティストだ。

「都城エレナ様だ……間違いない、ホンモノだ!」

 

 これが、私、((宮代藍凛|みやしろあいり))と((都城|みやこのじょう))エレナ様。不思議で((悪戯|いたずら))な、運命の出逢い。

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 ゴンドラから虹色に輝く無数の玉が飛散し、ゆっくりステージに向かって軌跡のように描いた。虹色の玉の正体はシャボン玉だ。

 ♪♪♪☆♪♪?☆♪ ♪♪☆♪♪♪☆♪☆♪♪☆・♪♪♪☆♪♪?☆♪

「♪愛しなさい♪ ♪その強さで♪ ♪私を((懐抱|かいほう))するの♪」

 しかも、しかも! この歌、思い出した! アリスロイド・ガールズ第二期オープニングテーマ曲『絶対少女聖歌』だよ! 私は((戦慄|せんりつ))した。生で聴けるなんて夢みたい。

「♪((不惑憂懼|ふわくゆうく))の((安堵|あんど))をくれる♪ ♪あなたに従う♪」

 このフレーズの瞬間、私とエレナ様の目線が合った。心臓が飛び出すんじゃないかと思うくらいに跳ね上がった。だって、だって、大好きな作品の主題歌を、本人が目の前で歌っているんだよ!?

「♪背負った((罪業|ざいごう))♪ ♪((栄|さかえ))を捨てて♪ ♪((天|あめ))より((降|くだ))りし((顕現|けんげん))♪」

 エレナ様が乗ったゴンドラは、静かにステージ中央で着地して、そのまま取り付けられたマイクを添えるように持ち、粛々と歌い続けた。

 ステージライトが、赤と青で激しく交差し彩り、紫のスポットライトがエレナ様を妖しく照らす。

「♪照らす十字架で♪ ♪((御国|みくに))の((門|かど))へ招き♪ ♪勇み昇るの♪」

 ステージのバックに巨大な十字架のスクリーンが映し出された。この学院に、こんなこと出来る設備あったの!?

「♪我が父よ♪ ♪((清楚|せいそ))でいさせて♪ ♪((純潔|じゅんけつ))の((挺身|ていしん))♪」

 エレナ様はマイクを持ったまま、ゆっくりと私の方に向かってくる。

「♪少女のまま♪ ♪レーゾンデートル♪ ♪((成|な))さしめたまへ♪」

 最後のフレーズの瞬間、エレナ様は観客席の方へ向いて手を振った。多数の拍手が講堂に響く。まばらだった観客が、いつの間にか凄い数に増えていたのだ。

「いつまで触ってるの」

「イタッ!」

 エレナ様は私の肩を掴んだままだったオカマの手をつねった。

「気持ち悪かったでしょう? ごめんなさいね。さ、こちらへ」

「気持ち悪いなんて、ひどいわぁ」

 ((不貞腐|ふてくさ))れるオカマを無視して、エレナ様は私の手を優しくそっと握ってくれた。細くて綺麗な指先の感触が、私の手から伝わってくる。ほんの少し冷たい手が不思議と気持ちよかった。

 そのままステージ中央にある階段へと私は導かれた。

「足元、気を付けて」

「あ、ありがとうございます」

 私が階段を降りて、ステージの方へ振り返ると、エレナ様は優しい笑顔で手を振ってくれた。これぞ淑女、いや貴婦人の((微笑|ほほえ))みというべきか。TVで見る姿以上に上品で美しい。

 これがまた、アニメで一度だけ見られる零式プルーンの微笑みにそっくりで、さらに私の心臓が大激動した。

「あれって、都城エレナ様じゃない?」

「本物? うそっ、本当にマジゴシ!?」

「本物よ! えっ、どうして来てるの!?」

 私たちが演奏していた頃は、観客は十数名程しかいなかったが、今の騒動が呼び水になったらしく、次々に人が押し寄せ気付けば、ざっと二百名以上には増えていた。

 突発的に有名人が現れた場合、大抵は群衆が押し寄せて混乱するのだが、ここは違う。歓声を上げたり、割り込んだりなんて、はしたないことは誰もしない。

 学院祭実行委員の指示に従って、整然として順番に列び、誘導されるままに席に座っていく。さすが、お嬢様学校というところか。

「こんにちは、ラ・プティット・プペの皆さん。ライブジャック犯の((魔法音快|マジーガム))ゴシックです」

 エレナ様が挨拶すると観客の生徒たちが一斉に拍手する。ライブジャック犯なんて過激なことを言っているにも関わらず、自然に受け止められていることに内心驚いた。

 これが他の人気アイドルのライブだったら奇声上げる人が出たり、トーク中に◯◯ちゃあああん、かわいいだのノイズが混ざったりするんだけど、そういうのが一切無い。

 何度か声優系のライブに行ったことがあって、必ずと言っていいほど、そういう人種が何故か私の真横だとか真後ろにいて、何度耳を((塞|ふさ))いだことか。出演してるアイドルやアーティストさんは大好きなのに。

「ところで、ラ・プティット・プペって、なあに?」

「フランス語で、可愛いお人形よ。確か」

 後ろからヒソヒソと声が聞こえてくる。私も何だろうって思ったけど、そういう意味だったんだ。でも、どうして、お人形なんだろう?

「本日は、せっかく、キリスト教の学校に来たので、それにちなんで『アリスロイド・ガールズ』という、お人形さんが戦う、アニメの衣装にしてみました」

「その中で登場する、ナンバー零式プルーンって、キャラクターを、模してみました。似合ってるかは、分かりませんが」

 拍手が沸き起こった。中には納得したように頷いてる人もいた。人気作だけに意外と知ってる者も多そうだった。

「よかった、ありがとう。あ、やっぱり、首を傾げてる人もいますね……え、どうして、キリスト教と関係あるのかって?」

 私は知っている。アリスロイド・ガールズ自体は創り話なんだけど、十五世紀の中央ヨーロッパで起きたフス戦争を発端とした物語なのだ。

 ざっくりと概要を説明すると、当時史実によれば、キリスト教はフス派(プロテスタントの前身みたいなもの)とカトリック派で対立し、戦争をしていた。

 フス派は当時画期的な新戦術を用いて、カトリック派を圧倒した。最終的にフス派は全滅するんだけど、起死回生の兵器として、フス派の最後のリーダーが、錬金術士を名乗る男に死なない兵士を作らせた。

 これが当時のアンドロイドで、後にアリスロイドと呼ばれるようになる。もちろん創作の設定で、そんな事実は見つかっていない。今のところ。

 様々な経緯を経て、八体のアリスロイドが現代に蘇り、生みの親であるパパ(錬金術士のこと)の行方を追って、アリスロイド同士で戦うことになる。これがアリスロイド・ガールズの概要だ。

「その内の一体、零式プルーンが、個人的に大好きで、とうとう衣装まで作ってしまいました。それで着る機会を探してたんです」

 私の説明と全く同じ内容で、丁寧に説明してくださったエレナ様が締めくくる。クールなエレナ様に、プルーンの衣装が最も似合ってることは認めざるを得ない。

 ちなみに私が好きなのは、((二式|にしき))クランベリーと、((六式|ろくしき))ブルーベリーだ。双子みたいな関係で、親友のように仲がよくて、とっても可愛いのだ。

「次の曲は、せっかく、薔薇のゴンドラに乗ってきたので、薔薇の曲を用意してみました」

「((薔薇三昧頌歌|ばらざんまいしょうか))」

 ♪・♪・♪・♪♪?♪♪・♪♪・♪☆ ♪・♪・♪・♪♪?♪♪・♪♪・♪♪・♪♪☆

「♪薔薇のアーチ♪ ♪くぐり抜けて♪ ♪薔薇の城♪ ♪築くの♪」

「♪アルキメデスの叫びユリイカ♪」

「♪ロゼットに咲き誇る伊豆の踊子♪」

「♪可憐なルチェッタ♪ ♪繊細なピエール・ドゥ・ロンサール♪」

「♪優雅なフィリスバイド♪ ♪幻想のバビロンローズ♪」

「♪甘い誘惑ハニーブーケ♪ ♪赤い情熱ロサ・キネンシス♪」

「♪ヨハンに捧げよゲーテローズ♪ ♪((美貌|びぼう))のベルロマンティカ♪」

「♪青い涙のレイニーブルー♪」

「♪ハインリッヒが夢みたノヴァーリス♪」

「♪薔薇の城下に 咲かせましょう♪』

 曲が鳴り止むと、盛大な拍手が場内を賑わした。私も手が痛くなるくらい夢中で拍手する。

「もう一曲、薔薇の歌いきます。『((薔薇庭園夜想曲|ローズガーデン・ノクターン))』」

 ♪☆・♪☆・♪♪♪・♪・♪?♪♪・♪☆・♪♪♪・♪・♪・♪?♪♪☆・♪・♪♪・♪♪♪

「♪満月の夜に♪ ♪蒼き光捧げる♪ ♪薔薇の庭園♪」

 どちらも初めて聴く曲だったが、絶対少女聖歌とはまた違ったエレガントな曲調に、ユニークな歌詞が乗った、聴いていて気持ちのいい歌だった。

 エレナ様が歌っている間、二人のオカマのダンサーが、ステージの周囲で優雅に、時には怪しく、バラエティ豊かな踊りを披露した。

 見た目とは裏腹に、超一流を思わせるレベルの高いダンスで、見ていて飽きない。

 ♪・♪・♪♪・♪♪?♪♪・♪♪☆♪♪☆・♪♪♪?♪♪・♪♪・♪・♪♪?♪♪・♪☆♪☆

 あっという間に、二曲とも終わってしまった。これやばい、もっと聴きたい!

「最後に、本日のライブジャック犯を、紹介します。ぴょこぴょこ踊っていた、ダンサーのピョコ蔵!」

「違うわよ! 私の((真名|まな))はシャーリプトラ・アルテミスよ☆」

「長いから、ピョコ蔵にしましょ」

「ひどいっ!」

 エレナ様とピョコ蔵さんの掛け合いが面白くて、場内から笑いと、賛同の拍手が鳴り響いた。

「もう一人、ダンサーのアッサムティ!」

 アッサムティと紹介されたダンサーは、軽くお辞儀をしただけで喋らなかった。無口キャラなのか、シャイなのか。

「バイオリンを演奏してくれたのが……」

 バイオリンを演奏していた二人は、ダンサーと違って普通の名前だった。どちらもお辞儀をしただけだったが、とても紳士的な感じだった。

「キーボード、((椎名|しいな))ショウ!」

 両手を挙げて観客へ手を振った後、椎名ショウさんは、シルクハットの天辺からカエルのぬいぐるみを出現させた。

「その帽子に、そんな仕掛けがっ!?」

 エレナ様がすごく驚いていた。本当に知らなかったらしくて、その様子が面白く、観客席からも笑い声が溢れていた。

「そして、ボーカル。都城エレナ」

 最後に自己紹介したエレナ様。盛大な拍手が沸き起こった。

「今日は、ありがとう。次は学院の外で、お逢いしましょう」

 ステージ裏へ退場していくマジゴシ((御一行様|ごいっこうさま))。

「エレナ様!」

 私はステージのすぐ手前まで走り、エレナ様を呼び止めた。無意識の内に起こした行動だった。エレナ様が私の方を向いた。

「私、すっごく感動しました。あ、あの、その……これからも応援します。がんばってください!」

「ありがとう。来てよかったわ」

 エレナ様は優しい笑顔で返答すると、ステージ裏へと去っていった。ちゃんと返事してくれたよ、嬉しい!

 ライブジャックされていたことなんて、すっかり頭から消えていた。

 今日のことは、一生忘れない。色々な意味で。

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 その後、夕暮れの生徒会執務室にて。

「ライブジャック大好評だったわね。総会長の人脈の広さにはホント頭が下がるわ」

「五十嵐さんの段取りが上手だったから、成功できたのよ。ありがとう」

 統括上級副会長の五十嵐と、総会長は、学院祭という大仕事を終えて、二人きりのティータイムを過ごしていた。

「そういえば、ポピュラーミュージック同好会が、解散について納得してなかったけれど」

「エクレシア女学院に、アニソンオンリーの同好会なんて必要ない」

「たった三人の同好会に厳しいわね」

「目障りな芽は、早い内に摘むに限るの。こう、プチッと……ね」

 そう言って、総会長は薄っすらと笑みを浮かべながら、デッサン用の練り消しゴムを、ねじりながら引き千切った。

 

(つづく)

説明
女子による、女子だらけの学院祭の真っ最中。
突如現れたオカマたちに、主人公・宮代藍凛は囚われの身となる。

高まる緊張の中、ノスタルジックな音楽と薔薇吹雪に彩られ、真っ黒なゴシックドレスに身を包んだ歌姫が、オカマの魔の手から藍凛を救う。
歌姫の正体は、人気急上昇中の音楽ユニット『魔法音快《マジーガム》ゴシック』のボーカリスト・都城エレナだった。

魔法音快ゴシックに魅了された藍凛は、彼女らを模倣した音楽ユニット結成を目指す。
しかし、藍凛に数々の苦難が襲いかかる。
生徒会の妨害、仲間の離反と孤立、謎の報告書と契約。
これらを乗り越え、ついに念願のステージに立つ。

藍凛の心の奥にある宝石、それが魔法の源。
魔法は歌に変わり、そして……妖魔の血へ。

「彼女は十七万年と十七年を生きている。ホンモノの妖魔だ」

魔法音快ゴシックとは何者なのか。
一体、何がホンモノで、何がニセモノなのか。
本当とウソ。赤と黒。二人の少女。

全てが交わるとき……運命の悪戯が、はじまる。

ライブの臨場感満載な、オリジナル・ライトノベルです♪ 全3話。

全3話収録の冊子版を通販しています。アリスブックスにて http://alice-books.com/item/show/5594-1
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オカマ 女子 魔法 ゴシック ゴスロリ ライブ 学園 

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