かがみ様への恋文 #4
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「おっそーい! こなたのやつ、なにやってんだろう?」

 

かがみはいつものように不満を大きく吐き出した。

 

それから腕にはめていた時計に目をやった。

もう約束の時間から三十分は過ぎている。

 

かがみはイライラしていた。

 

それは、いつものようにこなたが約束の待ち合わせ時間に遅れているからだ。

 

おまけに今日はいつもよりも遅い。

 

それに待ち合わせ場所も悪かった。

冬の寒空の下、風を遮るものが何もない噴水の前。

時折降り掛かってくる飛沫さえも、かがみの怒りの炎を消すことができない。

いや、むしろ油を注いでいるかのようだ。

 

寒さのせいで体を動かさずにはいられなかったのだろう。

 

かがみはダンダンと、地面を踏み鳴らした。

 

「遅い! 連絡もしないでどういうつもりなのよ!」

 

こなたの電話は何度かけても継らない。

 

「自分から言い出しておいて遅れるってどういうことよ?」

 

かがみは周囲を険悪な目つきで睨んだ。

 

無差別に周囲を威嚇しているわけでは決してない。

この怒りをただ一人の少女にぶつけてやりたいと思っていただけなのだ。

いつどこから現れるとも知れない少女に対して、臨戦態勢を取っていたにすぎない。

 

けれども、その表情は凶暴なまでに恐ろしく、

そばにいた少年をすくみあがらせるには十分すぎた。

 

「ご……ごめんなさい!」

 

少年は、堪らずに謝ってしまった。

 

直撃だった。

 

「こういうときのお姉ちゃんと目をあわせちゃダメだよ」

 

と、ついさっきこっそりとつかさに忠告されたにもかかわらず、

目をあわせてしまったのだ。

 

「どうして逢沢君が謝るのよ?」

 

相変わらずの嶮しい表情を優一に向ける。

 

優一はたまらずに目を伏せた。

何かかがみの気に障るような粗相をしたのではないかと、

慌てて自分の行動を省みた。

 

しかし、いくら考えてもわかるわけがない。

だって優一はなにもしていないのだから。

 

けれども優一がちらりと上目でかがみの様子を伺うと相変わらず恐い顔が向けられていた。

その顔は、無言でありながらも優一に強大なプレッシャーをかけつづけていた。

 

そして優一は一つの結論を出した。

 

(きっと……僕がいるから先輩が怒っているんだ……)

 

かがみの無言の尋問に対して、優一は顔をふせたまま答えた。

 

「ごめんなさい……」

 

と。

 

「だからどうして相沢くんが謝るのよ!」

 

一段と強くなる語気。

 

優一はびくりと体を震わせた。

 

「お姉ちゃん、お菓子食べる?」

 

姉の扱いにはなれているのか、つかさがポッキーを一本取り出して姉の口の前に差し出した。

 

ぽりぽりという音とともにかがみの顔はとたんに穏やかに変わっていく。

 

「ホント、こなたの奴遅いわね」

 

かがみはもう一本を箱からつまみながら言った。

 

この方法はかがみの怒りを鎮める万能の方法のように思えるが、必ずしもそうではない。

体重計に乗ったあと、二度不機嫌なオーラをばりばりとまき散らすようになるのだ。

もちろんつかさもそのことは十分に知っていたけれど、

涙ぐんでいる優一が可哀想で放っておけなかったのだ。

 

今日はつかさと、かがみ、そしてかがみの恋人候補の優一の四人で遊びに行く予定になっていた。

言い出したのがこなただった。

けれど、今日はいつも以上に遅い。

 

「いつもだったらそろそろ来ても良い時間なのにね」

 

なだめるようにつかさが言った。

 

「もうすぐ映画が始まっちゃう時間だよ」

 

とりあえず、まずは映画でもみようかという予定になっていた。

その映画がそろそろ始まりそうなのだ。

 

「しかたない、あいつは放っておいて入るわよ」

 

「えぇっ、でも……」

 

と躊躇うつかさ。

 

「遅れてくるあいつが悪いのよ! まったく、いつもいつも……」

 

かがみはつかつかと映画館に向かった。

遅れてつかさと優一もしぶしぶ続いた。

 

結局こなたが現れないまま映画は始まった。

 

話も半分くらい進み佳境にさしかかった頃。

突然ムードをぶち壊す騒音が誰かの携帯電話から発せられた。

 

(だれよ、迷惑ね! 電源を切っておくのがマナーでしょ!)

 

そう、つんつんとつぶやいていたかがみであったが、

隣で自分の妹が慌てふためいていることに気づいてしまった。

 

「あんたまさか……」

 

つかさはあたふたしながら席を立ち上がり、

周囲にごめんなさいごめんなさいをしながら離れた。

 

途中暗闇で誰かの足に躓いたのか悲鳴をあげながらこけたものだから、

姉の顔はもどかしさと恥ずかしさで赤く変色していた。

 

つかさが外に出てから扉を閉めると、ようやく映画の世界に集中できる環境が戻った。

 

(こなたからの電話だったのかしら?)

 

話が終わればすぐに戻ってくるだろうと思い、

かがみは気にせずスクリーンに意識を向けた。

 

ところが、映画が終わってもつかさは戻ってこなかった。

 

「おかしいわね、私達の座っている場所が分からなくなったのかしら?」

 

そう思い映画館の中も外も探したけれど、つかさの姿は見当たらなかった。

 

かがみは携帯電話を取り出した。

 

少し長めの呼出し音の後つかさが出た。

 

「もしもし、つかさ、今どこにいるのよ?」

 

「お……、お姉ちゃん……。い、今ね……えっとね、その……」

 

電話の向こうで動揺している姿が目に浮かぶようだ。

 

「つかさ、用事ができたから帰るって言えばいいんだよぉ」

 

受話器の向こうからもう一つの聞きなれた声が聞こえてきた。

 

「お、お姉ちゃん、私用事ができちゃったから先に帰るね」

 

筒抜けになっているとも知らずにつかさは言われた通りの言葉を伝えてきた。

 

「用事ってなんなのよ? ねぇ、つかさ。ひょっとしてこなたと一緒なの?」

 

「ど、どうしよう? こなちゃん、お姉ちゃんに気づかれちゃったよ?」

 

つかさは受話器を塞ぐということさえ知らないようだ。

 

そんなつかさからこなたが受話器を取り上げたのだろう。

 

「もしもし、かがみ?。私たち用事ができちゃったから先に帰るよ。

だから二人でデート楽しんできてね?」

 

そんな冷やかしの言葉を最後に、電話は一方的に切られた。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

と叫んだかがみの声はもう届いていなかったはずだ。

 

「どうしたんですか、先輩?」

 

優一が心配そうにかがみを見つめていた。

 

(そんな急にデートなんて、一体どうしろっていうのよ!?)

 

くらいのことを心の中で叫んだのだろう。

 

デート。その甘美な響がかがみの顔をいつの間にか赤く染め上げていたことに、

本人は気づかなかったようだ。

 

初めてのデート。

 

右も左もわからないデート。

 

相手は、年下の可愛い男の子だ。

 

「お姉さんに任せなさい!」

 

などと強がって見せる余裕なんてあるはずもなかった。

 

そして追い討ちをかけるようなメールが送られてきた。

 

「男は狼だから気を付けるんだよ(笑)」

 

(あいつ、楽しんでやがるな……!)

 

映画の後のスケジュールは何も決まっていなかった。

 

(こ、心の準備もできていないのに……!)

 

「どうしたんですか? ……先輩?」

 

不安気にかがみの顔を見つめる無垢な少年の顔、

それがかがみにプレッシャーをかける。

 

(……一体なんて切り出せばいいのよ!)

 

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7/5は陵桜際です

 

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是非是非足を運んでくださいな。

 

 

夏コミは二日目、東モ59aです。

 

 

あと、当サークルでは絵描きさん募集中です。

挿絵描いてくれる人とか。

説明
かがみが年下の男の子から恋文をもらったら……という話。
いつの間にかその男の子と二人きりにされてしまうというありきたりな展開です。
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コメント
コメントありがとうございます。この後の展開は…1週間後くらいに公開する予定です。楽しみにしていただければ幸いです。(moo)
こなたんらしいやり方だね、さてかがみんこれからどうする?(brid)
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らき☆すた  かがみ 

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