神次元の外れ者(56)
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「その剣舞は業火のごとくその一撃は災厄のごとく」

 

(チータ視点)

アノネデスの通話が終わったころ、プルルートは既に三人の((調教|ガッタイ))を済ませて待ちぼうけていた。

通話している間、じっっっっっと見つめられて大事そうな話の内容が入ってこなかった…と言うかまだかまだかとひたすら待てをされ続ける猛犬のような威圧感を放たれてて早く終わって欲しかった……これが無言の圧力か。

まああのオカマの話の重要な話って言うのもそこまで大した話してないだろうし、普段からふざけたことしか言わないし無視しても問題ねぇだろ、うん

そう思いつつアイツの方を向くと、終わった事が分かったのか、余程退屈していたのか、プルルートは満面の笑みをこちらに向けて来た…ってちょっと待てその構え、まさか投げるつもりじゃ……

そんな不安を感じ取ったのか、プルルートの顔が満面の笑みから不適の笑みに変わった…マズい、殺られる……!!!!

「できたよ〜!それ〜!」

「おいちょっと待て投げんな危ねぇだろおおおおおおおおおお!!!」

 

ガッ…ズンッ

 

間一髪、3人をハード合体させて出来た武器に串刺しにされそうになったものの、白刃取りでどうにか受け止め、Dead Endにはならずに済んだ。

しかし重い…これが女神三人分の重量か?いくらなんでも重すぎるだろ!

と思ったが、冷静に考えると女神の力の源、シェアエナジーが質量を持って重くなったと考えたら不思議と納得してしまった。

「手渡しとか置いとくとかあるだろちょっとは考えろサボリ姫!殺す気か!!」

「だっておもかったんだも〜ん♪それにあんたがそれで死ぬなんて思ってないし〜♪」

「さっきまで余裕で持ってたよね!?って言うかそこで女の子アピール!?今は意味ねぇ努力する暇ねぇだろオイ!」

「むっ……(ピキッ)」

『ちょっと二人とも!喧嘩してる場合じゃないでしょ!?』

二人の間に稲妻が走り始めた時、ノワールの声がそれをバッサリと切り落とした。

そうだった…今はコイツにかまけてる場合じゃねぇか。一刻も早く…クリエ助けてあのヤローぶん殴らねぇと。

「ピーシェ、またパンチング行くぞ!」

「おー!!」

俺は再びハードフォームになったピーシェと合体する…が、それだけでは終わらない。

 

ググ…ギギギギギィィィ

 

開かないと思われがちなロケットパンチの拳を開かせ、三人が合体した武器を握る…と同時に、凄まじいエネルギーが体中を駆け巡り、意識が薄れ始めた。

一人ならまだしも四人の女神と同時に波長合わせて一体化なんてことやってるから無理もない。

個性が飛びぬけてる奴らとまとめて波長を合わせるっていうのは、ドリンクバーにある飲み物の全種類混ぜを無理やり飲まされるようなもんだ…吐きそう

分厚い暴風の障壁を前に、仲間によって俺は本気でくたばりそうになっていた。

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(デバッカ視点)

「ほぅ…まさかあの巫女がこのような芸当を……」

好敵手の復活を心から喜ぶクラトスの至高満面の笑み……死の淵から蘇った俺が最初に見たのは、最悪の状況だった。

向こうは嬉しそうだがこっちは嬉しくない、クリエが急所から血を流して倒れている所を見て最早コイツなんかにかまけてる暇がない……!

けどコイツが逃す訳がない…なら今は集中するしかない、倒せなければどっちにしろ俺達は終わりだ。

覚悟を決め、両手の剣を構えなおす。そして再び眼前の敵を鋭く見つめる。

逃げていてはその間クリエは死ぬ、急げ、焦るな、されど速く、早く、はやく、ハヤク……!!

 

ドッッ…………!!!

 

同時に飛び込んだ…いや、クラトスの方が一瞬速い!けど斧を振り切るまでに懐に飛び込め!振り切られる前に間合いから振り切れ!

気が付けば全てがスローになっていた…敵の動きも、俺の動きも、倒れているクリエの呼吸も、泊まってるかのように遅くて遅くて仕方が無い。

けれどヤツよりも俺の方が遅い、ヤツの斧が迫っているのに俺は止まっているようだった。

刻一刻と迫る斧、俺はこのまま斬られるのか……嫌だ、俺は生きなければならない。

生きなければ俺が死ぬ。生きなければクリエが死ぬ。生きなければ俺を生かしてくれたクリエの行為が無駄になる……それだけは嫌だ。

何の為に生きてるか分からない俺が死ぬのは構わない!けど目標があって、目的があって、生きる意味がちゃんとあるクリエが俺の為に死ぬなんて御免だ!

今の俺にも生きる意味がある。俺が生きて且つコイツを早く倒せばクリエは助けられる、俺を助けてくれたアイツが助かる。

だから動け、もっと早く、もっと速く、もっとはやくモットハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤク

 

ギィィンッ……!

 

「………………え?」

気が付いたらクラトスはおらず、斬られた跡もなく、ただ眼前にあるのは振りぬいた剣とそれを握る手だけだった。

刀身には熱が帯びており、煙がたっていた…と思いきや体中からたっており、体中が熱かった。

「ほう……我が速度を超えたか」

声が後ろから聞こえたので振り向いたら、脇腹にかすかな煙をたたせているのを見た。

再度俺は突っ込んだ…時間が無い分考えた分時間もロスした、これ以上は考えられない。

「……楽しむのはやめだ」

再び全てがスローになった中の筈が、そのつぶやきが普段通りの速さで聞こえた。

 

ゴ…………ッ!!

 

瞬間、何かに弾き飛ばされた…だが減速する暇も停止する暇もない俺は足が地に付く瞬間、勢いに引かれる身体に鞭打って再び前に跳ぶ

そこで見たクラトスは、斧ではなく剣と盾を持っていたように見えたがそんな事は関係ないと更に踏み込んで加速。

完全に捉えた。このまま振り切れば奴に当たる!そう思っていた瞬間…これまでにない殺気を感じて横に跳んだ…その時、直前に俺がいた場所が、空間ごと斬られていた。

つまりもし俺があのまま突っ込んでいたら真っ二つになってたわけで、そして空間も斬られてるという事は真空が出来るって事で収縮が起きて……

「…っと!?」

急激に引き寄せられる身体、踏ん張りを効かせる脚、その間に殺気を感じて上に跳んでかわすとまたしても直前に自分がいた場所に剣が振りぬかれていた。

またしても収縮が起き、引き寄せられる途中で盾で殴られて飛ばされる。

両手の剣を突き立て減速すると目の前にクラトスが現れる。

振り下ろされる剣を初めて確認し、俺はこれまで感じた殺気がこれのせいだと初めて知った。

確認した後じゃ確実に遅れる、だからこの一撃は避けられない…………!!

 

ギギギギギギギギイイイイイイイイ…………!!

 

「……んぐああああああああっ!!!」

剣を交差させ、振り下ろされた剣を受け止めてから逸らす、逸らさせる。重い一撃を真っ向から受け止めるのが無理でも、受け流すことなら何とか……!!

けれどもこれがかなりキツかった。剣が地に付いたとしても、その衝撃波で吹き飛ばされてしまいそうだった…が、身体は勝手に、思うよりも速く動いていた。

脚は跳び身体を捻り回し、クラトスの顔面目掛けて剣を振るっていた……だが傷つける事は叶わず、相変わらず引き裂くような金属音が鳴るだけだった。

だめだ…まだ足りない。このままでは時間だけが過ぎるだけだ。奴の身体は鋼そのもの、刃が届く事は……鋼?

その瞬間、俺は自分の刀身とクラトスの脇腹に生じていた【煙】を思いだし、ある事を思いついた。

成功するかは分からないが、最早それに賭けるしかなかった。

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(チータ視点)

「グッ…オオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアア!!!」

埋もれる、流される、混ざる、濁る、【俺】という俺が薄れていく、流されていく……消えていく

手を放せばそれは無くなるかもしれない。けど俺は握り続けた、でなきゃアイツ等を助けられねぇからなぁ!!

力を纏めるだけなら出来る、後はこれをねじ伏せて同調させりゃいい。ただ一つ、同じ事を想えれば……!

『ちょっと何流されそうになってんのよ!しっかりしなさい!』

『テメェこんな所でモタついてんじゃねぇ!』

『いそいでくださいまし!この状態も何時保てるか分かりませんわ!』

『早く早くー!』

「うるせぇ!こっちだって踏ん張ってんだ!とっとと行くぞクリエを助ける事だけを考えろ!!!」

強引に勢いで個性派四人の思考を纏める。これでギリギリ行ける筈だ、多少俺にガタが来ても大丈夫だろ。

そんじゃあやろうか!俺の全力ごとぶっ放して俺が廃人になるか、暴発して全員O・DA・BU・THUか!

どっちにしろ俺は助からない確率高いけどこの際これっきゃ方法ねぇからやるっきゃね……

「ふぅ……っ?」

「えひゃあああああああああ……!」

み、耳に息吹きかけられて変な声出しちまった!って言うかヤベェ!今のでコントロールミスった!早くブッパしねぇとここら一帯が……

「えいっ」

「うおっ!?」

ずしっと重みがあるがどこかで背負った事のあるような感触が……ってまさか!

背中を見ると案の定、ずっしりとした重量感に似合った大きさの戦闘機がくっついていた…

こいつはプルルートのファイナル・ハード・フォーム、((PR-To=IX|プルートアイクス))……!(今さっき俺が名付けた)

『……んふ(はぁと』

「やっぱてめぇかプルルート!つぅか何で女王モード!正義面を見てどぉしても歪めたかったんだもぉん♪』

「『だもぉん♪』じゃねぇ!わかってんのこの状況!?少しでも調節誤ったら皆まとめてボカンなんだぞ!?っつうか今まさに……あれ?」

『「今まさに」……なぁに?』

どういう事か、力が逆流も暴発も何も起きてない…寧ろ安定してる!?

しかも女神4人分の力に意識が呑まれ埋もれで消えそうだったのに……大丈夫だ。何でだ?

『やっぱり人の話はちゃぁんと話を聞いていと駄目ねぇ…アタシはアンタの携帯を電波ジャックしたから聞いてたけど』

「てめぇが通話中こっちを睨んでなかったら聞いてたよ!」

『そんなにアタシが気になったのぉ?可愛いわねぇ…フフッ』

「目線逸らしたら((雷撃|エグゼドライブ))飛ばすじゃねぇか!」

『飼い主がペットから目を離さないのは当たり前でしょぉ?』

「誰がペットだゴラァ!!」

『まあいいわぁ…アンタはそのまま力を纏めていなさい、細かい事はアタシがやるから』

「…それ、あのオカマから?」

『大雑把に言うとぉ…そんな感じ?』

「ちゃんと言えや!それ今めっちゃ重要な事だろ!?」

『つーまーりー…身体が丈夫なアンタが受け止めて、エネルギーの流れが上手なアタシが調整するって事。分かったらさっさと構える!』

「あっ…はい……」

これ以上口うるさくすると投げ出しそうだったので、俺はそれ以上の追及を止めて風の壁を壊す事に集中した。

アイツに助けられるのは何だか恰好付かないが、同時に頼もしくも思い、一人で纏めようとしてた時よりも自身が湧いて来た。

「じゃあ行くぜアホ姫!」

『命令するのはアタシだってのぉ!!』

二人の息の良さに呼応するように、合体ハードフォームの先端から光が伸び、天高くそびえ立った……その時、俺のいる場所の真上の雲がどけ、光が射しこんでいた

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(デバッカ視点)

「捉えたぁ!」

クラトスの声でこの場そのものが揺れる…と同時に剣が振り下ろされる。

最早それを剣で追わず殺気で感知した俺は、それを後ろにかわした…それがどうなる事になるかを知っていながら。

切り裂かれて出来た真空に空気が戻る瞬間、当然俺も引き寄せられる。だが俺は引き寄せられ始めた瞬間、クラトスに突っ込んだ。

これまでと違いクラトスに笑みはない、ただ敵を討ち殺る事を考えた目で俺に剣を振り下ろす…だが俺はその瞬間を殺気で捉え、更に踏み込み加速した

 

ザンッ

 

「ぬぅ……っ!?」

剣が振り下ろされるよりも速く、俺は奴を通り過ぎ、その脇腹に焼けるような斬り跡を付けた。

その時の俺の刀身は、燃えるような赤に染まっていた。

簡単な事だ、属性付加を剣の外側だけでなく内側の((細部|オク))の((分子|オク))までも浸透させて【剣そのものに火を灯しただけだ】

分子レベルまで高温を宿らせたことで繋がりが取れて溶けていく所を、浸透させた俺の魔力で代用して繋ぐ事で、【形や強度を保ったまま】剣を炎そのものにした。

いくら奴の身体が鋼のような強度だろうと、この剣ならば焼き斬れる!

「成程……己が刃を紅蓮にしたか…だがその微かな希望、儚く無惨に散らせてやろう、貴様のその身と共にっ!」

クラトスは振り向き様に剣で払い、俺はそれをしゃがんで回避しつつカエル跳びで股を潜り抜け、その間に両脚を斬る…が浅い。

読まれていたのか盾で押しつぶされそうになったが、地に剣を突き刺し肘と膝を曲げる事で身体を丸めて急速回避。

剣を抜いた直後に斜め上に跳んだと同時に剣が振り下ろされるが服一枚で何とかなった。

振り返るもそこに奴はいない…と思いきや振り向くと振り下ろされた剣が迫る。

逸らしたら捉えられると思った俺は剣がギリギリ当たらない所に横移動してから跳び、その勢いで相手の剣を受け反らしつつ、こちらの剣を奴目掛け振り切る

……と思いきや当たる直前にしゃがみ込まれ、盛大に空振りした。それを好機と言わんばかりにクラトスは左手の盾を構えた後

 

ゴッ

 

「ガ……ァハッ」

勢いよく俺の腹を盾で殴り飛ばした。上空に吹き飛ばされてゆっくりと落ちて行く俺、そして今こそ大技を決める時と剣を構えるクラトス。双方の目が合った瞬間、クラトスが俺の落下地点目掛けて駆けだした。

そして落ちて行く俺目掛けて連撃を繰り出した。

先ず剣を俺の落下速を上回る速度で振り下ろし、そこを俺が両手の剣で受け止め身体を回転させながら流すとすかさず盾で殴りつける。

何度も同じ手は喰らうまいと盾の内側に剣を引っ掛けて強引に自分の身体を移動させた俺を、今度は建て殴りの勢いを殺さぬまま身体を一回転させ剣で払う。

そこを更に迫る剣の腹を俺が自分の剣で突き立て膝を引っ込めてかわすと払った剣を強引に向けさせ切り上げに行く。

更にそこを片方の剣で受け止め流しつつ片方の剣で相手の剣の腹を突いて間合いから逃れようとする俺に剣を上に向けたまま盾で殴り、動きを鈍らせる。

その瞬間、振り上げたままの剣に渾身の力を込め、そのまま俺を真っ二つに両断せんと一気に振り下ろした。

……だが俺はその一撃を前にしても、いや、戦士の誇りとも呼べる止めの瞬間に、この一撃が来ると確信したからこそ、やる事が決まっていた。

それ故に地に足が付いた瞬間に考える間もなく踏み込み、両手両脚に魔力を極限まで集中させて跳んだ…振り下ろされたクラトスの剣に向かって

やけになったわけじゃない、奇跡をあてにしてるわけじゃない、この一撃に立ち向かったその先に、俺の活路があるから!!

 

 

ギィャンッ!

 

鈍い金属音がした。上空に折れた剣先が飛んだ。その剣先の持ち主は……綺麗に剣を溶断されたクラトスだった。

「馬鹿な……」

クラトスの握っている剣の根元には、綺麗な溶断跡がまだ赤く灯っていた。

跳躍の勢いを剣に乗せた一撃は、単に剣を振りおろした時とはわけが違う!

灯った断面が暗くなり、元の鋼色に戻っていく瞬間、クラトスは盾を面で押し付けるように俺を殴り掛かるが、俺は今度は盾を内側から突き刺し、ポールダンスの要領で盾の裏側に回り込み、クラトスの懐に入った

「なんと……っな!?」

体勢を立て直そうとするクラトスだが脚がよろめく…股抜けした際に斬った脚の傷が、先程の素早い連撃と渾身の一撃に寄る負担と合わさって効いて来たようだ

ならば今こそ、今度こそ決着を付ける為、今度は俺がクラトスに連撃を繰り出した。

左で胸部を突いて払い抜き、右で肩を斬り下ろして直ぐ逆手に返して切り払い、つられて左で斬り上げる。

その勢いのまま右の剣を敵の腹に突き刺して左の剣も胸部に突き刺しそのまま切り抜く。

反撃に剣を振りかかられるも跳んで回転斬り、そのまま身体をきりもみ回転させて何度も切り付けて着地すると両脚を切り払ってバランスを崩させる。

膝を付きつつ盾で殴りかかるクラトスを跳びかわしつつ両手の剣で切り付け、左右から払いと切り上げ、両手斬り下ろし回転切り、両方の剣を突き刺して払う。

そうして強くも速い剣撃をとめどなく燃え盛る炎のように絶え間なく繰り出していき、最後はすれ違い様に首を天高く斬り飛ばした。

その時いつの間にか人神化をしていて、羽がもう二本増えていたのだが…この時の俺は全然気付いていなかった。

 

【EXEドライブLv.1…豪火剣嵐】+【人神化第4段階】

 

これでもう終わった、決着が着いた。誰もがそう思っていたその時

「ま……だ…………だ!まだ我はここにいるぞおおおおおおおおおお!!!」

地に着いた胴体が焼ける中、頭だけとなったクラトスが、最後の足掻きと自力で神獣化させ、風を首の断面で燃えている火と混じり合わせて爆破させた。

その勢いで俺に頭だけで突っ込んで行った。

自らの身も戦士としての誇りも投げ打ち燃やし尽くしてでも、最期の最後まで全力を以って対峙する…それが己を超えた者に対する敬意であり、そしてこの身が残っている限り諦めないという不屈の意志の表れだった。

「ゴオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

ザンッ

 

俺もまた敬意を表し、文字通り捨て身で向かってくる火龍を振り向き様に一撃で斬り落とした…「この戦いを忘れまい」という想いを剣に乗せて。

その想いが伝わったのかは定かではないが、真っ二つに割れて燃え散りながら俺を通りすぎていく時に「よくぞ超えた、満足したぞ。死合う中で己を高め敵を超える、やはり戦いとはこうでなくてはな」という声が聞こえた気がした。

そして俺は急いでクリエの元に駆け寄ると……

「ふぁぁ……ん?」

さっきまで死にそうだった筈なのに、呑気なあくびをする寝起きの状態のようなクリエがそこに居た。

「ああ……ゴメンゴメン、言ってなかったっけ…時間内に自分の身体に戻れたら、瀕死状態でも治せるんだよ。けど君の身体も治した後だったから手間取っちゃってね〜……ってうわらっホ!?」

説明を聞く間もなく、俺は嬉しさのあまり抱きしめた…あれ?何だかクリエの顔が赤い……まさか病気か!?

「だ、大丈夫か!?顔が凄く赤いぞ!?」

「あ、え、だだだだ…大丈夫だよ!?これは何て言うか……そう!復活した後だったから急に体温が上がったんだよ!今はやりの超回復ってやつ!(どどどどどうしよう!?いきなり抱き付かれるなんて想定外って言うか…お、男の子のにおいってこんな感じなんだ…ってそんな事言ってる場合か!)」

「そんな事言ってる場合か!今すぐ病院に「行くぜ必殺っ!シェアフルバースト・ブレードオオオオオオオオオオオオオ!!!」ッ!?」

聞き覚えのある声がする方に顔を向けると、クラトスが死んだ事で晴れていく風の壁の隙間を通りすぎるように、虹色に輝く巨大な刀身が俺達に向かって振り下ろされていた。

「こここここれってまさか!皆が力を合わせて「脱出するぞクリエ!」ひゃわぁぁっ!?」

狙いが何であれ、このまま此処にいたら確実に魂ごと消え失せそうだったから、急いでクリエを抱きかかえ、振り切られる前に空へと逃げた

 

カッ

 

十分な高度に逃げた後に見下ろすと、眩い光のドームが形成される光景と、光が消えたと同時に跡形もなくなり、あるのはただただ大きく抉れて出来たクレーターだけだった。

その後原因となった5人が事後処理に追われる中、俺はクリエの看病をしていた。

何故か寝言で「オヒメサマダッコ」という単語を連呼していたが、どうやら命に別状はないようだった。

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