ポケットモンスター トライメモリーズ 第3話 |
リクガに色々教わった後、クウヤはコトキタウンの隣町、トウカシティに来ていた。
そこで目にしたのは「トウカジム」と書かれた施設。
まるで道場を思わせるそのジムの前でクウヤは唖然としていた。
「でっけぇ・・・・ここって多分ルネジムと同じ「ポケモンジム」だよな。
どっちがでかいんだろ・・・」
「ちゃもー」
「どこから入るのかな」
ジムを見て回るクウヤとアーチ。
ふと、話し声が聞こえ耳を澄ます。
声からして男と女2人のようだ。
「ラカイ・・・久し振りだが元気に良い子にしてたか?」
「あたりまえでしょ!」
「久し振りの一家団欒なのね」
「一家?・・・まずっわっ・・・わぁぁっ!?」
ドーン!
ずっとつま先だちをしていたせいか派手な音とともにクウヤは後ろの転んでしまった。
「!?」
「誰かそこにいるのか?」
「あ・・・わわわわわ・・・・」
急いでどこかに隠れようとしたが男性に簡単に見つかってしまった。
「・・・キミは?」
同様を隠せないクウヤ。
赤い服の長身の男に返事しようとしりもちを持ち上げ立ち上がり土を払う。
「えーと・・・オレ、クウヤっていうんだ。
つい最近トレーナーになったばっかで・・・」
「さっきの話・・・・聞いてしまったのか?」
「う・・・うん」
「「・・・・・・」」
二人の間に流れる気まずい空気。
それを遮ったのは一人の少女の声だった。
「ああもう!別にいいじゃない!
彼もわざとじゃなさそうだし!」
「ラカイ・・・」
「クウヤくん!今の話は内緒よ、分かったわね」
「わ、わかった」
顔を出し彼に話しかけてきたのは長い茶髪をポニーテールで纏めた少女だった。
青い目をしており首にペンダントをかけている。
服装からしても、活発な性格だというのがぱっと見てすぐにわかる。
「でも内緒ってどういうこと?えっと」
「わたしはラカイ。
この人はセンリというわたしのお父さん。
そしてこのジムのジムリーダーよ」
「へぇ、ジムリーダーか・・・えぇ!?」
「まぁ、取りあえずあがってくれ」
「お・・・じゃまします・・・?」
「あなた、敬語苦手でしょ」
「あぅ」
そう話を続けながらクウヤはジムの裏にある彼等の実家に上げられリビングまで案内された。
淹れられたお茶に口をつけながら話を聞く。
「それで、内緒にしてほしいってことって?」
「わたしのお父さんがこのトウカのジムリーダーっていったでしょ?」
「うん」
「実はこのことを内緒にして欲しいの。」
「え、どうしてだ?」
変なことをいわれて鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするクウヤ。
「このトウカジムの古くからの慣わし。
跡継ぎの女の子は16歳になるまで家の名を明かしてはいけない。
このジムの娘だというのを明かしてはいけないの」
「へぇっ!?」
なんじゃそりゃ、と言いたげに顔をゆがませる。
「話してもいいのは極僅かな人。
わたしは今12歳だから4年後ね。」
「12歳か。オレと同じだな」
「ちゃも」
「もちろん、知ってしまった人は他人に話してはいけないの」
「そうなのか・・・」
「わかったかしら」
「ああ、わかった!つまりあんたらのことを他の人に話しちゃいけないってことだろ?」
「そう、他人に教えるのはわたし達だけ」
「その約束守るぜ」
「ありがとう、クウヤ君。」
センリはほほえむと彼にあることを聞いた。
「ちなみにキミはポケモンリーグに挑戦に来たのか?
このジムに来たからそうだと思ったのだが」
「ポケモンリーグって何?」
「え・・・しらないの?」
「うん」
「あっさり頷いたーーー!!」
ラカイはクウヤに大きい声でツッコミをいれる。
ポケモンリーグとは、各地方でバッジを8つ集めその地方のチャンピオンを決めるポケモントレーナーの進路の一つである。
チャンピオンになるには3年に一度開催される各地方の大会で優勝し、現チャンピオンとその部下である四天王に勝ち抜くことが条件だ。
また、大会に出場するにはバッジを最低でも一つは必要であり8つあつめられたらシード権が与えられる。
そのバッジを貰うには決められた特定の街に配置されるポケモンジムのジムリーダーに勝利しなければならない。
ジムリーダーもそういう立場ゆえにそれぞれ得意なタイプを所有する実力者だ。
「ん〜そっかぁ。全然知らなかった」
「まじで?」
「まじで」
一応彼の知り合いにジムリーダーはいるのだがそういうところは全く知らなかったようだ。
「いくら初心者とはいえ、あなたねぇ〜」
「いいじゃないか、ラカイ。
まだ分からなくてもいづれわかる」
「とうさぁん・・・」
センリはラカイをたしなめつつクウヤに訊ねる。
「さぁどうする? ポケモンリーグに挑戦するかい?」
「・・・・そうだな! 面白そうだしやってみるぜ!」
クウヤは楽しそうに笑いながら拳を握り締める。
それを見てセンリはふっと笑い口をゆっくり開ける。
「ならもう少し強くなって腕を上げてから私に挑戦しなさい」
「おぅ!
・・・ラカイ、だっけ? お前もリーグ行くの」
「うん、もうすぐオダマキ博士がここに来る事になってるの!
その人からポケモンを貰ってトレーナー修行に行くのよ」
「そっか!そんじゃオレたち「ライバル」ってやつだな!」
「うふふ、そうね!
でもそうなればあなたとわたしはいつか戦うわ。
生憎だけどわたし、負けるつもりはないわよ」
「オレだって!」
「やる気はかってあげる」
「おぅ!」
早速芽生えるライバル心。
そんな2人の様子を見ながらセンリは引き出しから出したものをラカイに手渡す。
「これは・・・」
「私が昔使っていたバッジケースだ。
イヤなら新しいものを用意するが・・・・」
「ううん!むしろ嬉しい!ありがとう!」
「・・・・そうか、お前が喜んでくれて、私も嬉しいよ」
仲のいい父娘を、クウヤは羨ましそうに見ていた。
「・・・・」
その晩、クウヤはセンリ夫妻の厚意に甘え夕食を頂一晩泊まる事になった。
用意してくれた部屋で1人、アーチと一緒に話し合う。
「オレのホントの父ちゃんと母ちゃんて・・・・ どんな人なんだろうな」
「ちゃも?」
彼の実の両親は行方は定かでない。
まだ幼い頃離れ離れになったため親の顔もロクに覚えてはいない。
こんこん・・・・と扉を叩く音がした。
「わたしだよ、入っていい?」
「ラカイ?どうしたんだ?」
「ううん、ちょっとお話しよっかなーって」
「そっか」
部屋に入ってきたのはパジャマ姿のラカイ。
ふと彼女はクウヤの膝にとまってるアチャモに目を向けた。
「そのアチャモ、あなたの?」
「そうだよ・・・・
あ!ところでさ!」
「なに?」
「なんでこのジムの女の子はジムリーダーの子だということを、16歳になるまでに話しちゃいけないんだ?」
「・・・・・・ごめんね、わたしにもわからないの・・・ただ」
「ただ?」
「この決まりを作ったのは私の曾お爺さんなんだって。
それしかわからないの、ごめんね。
でもどうして?」
「たんに気になっただけ・・・。
でもそこまで長くないんだな」
「そうね」
クウヤは妙に引っかかるところを覚えながらラカイが部屋を出てすぐに眠りについた。
ラカイも部屋に戻るとすぐに寝たが寝る直前までずっと考え込んでいた。
「そういえば、何故なのだろう」と。
「明日、オダマキ博士にポケモンを貰って旅に出る・・・
今はそっちに考えを集中しよう」
翌日、朝食だけ頂くとクウヤは次の街を目指して旅立った。
新たにポケモンリーグへ挑戦するという 挑戦するという、強い気持ちと共に。
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