雛祭りは盛大に |
雛祭りは盛大に
「フェイトちゃん大丈夫?」
「う・・・う〜ん、ダメかも。何だか頭がぐわんぐわんするよ・・・」
3月3日 桃の節句。一般的に、雛祭りと呼ばれる女の子の日。
最近、日本の文化にますます興味を持ったリンディさんとエイミィさんの計画もあり、ハラオウン家には巨大なひな壇と、豪華でいて雛祭りらしい可愛い料理が用意された。
本当は仲良し5人組が揃うはずだったんだけど・・・はやてちゃんは特別捜査官としてのお仕事、アリサちゃんとすずかちゃんは社交界のパーティーで欠席。
結局、これたのは私とフェイトちゃんの2人だけ。みんなと遊びたい気持ちはあったけど、恋人と一緒にいられるのだから、これ以上望むのは我がままと言うものだろう。
そんな事情もあって、ハラオウン家で開かれた雛祭りパーティーの参加者は少人数となりました。でも、人数を欠きながらも楽しく・・・うん、間違いなく楽しくやってたんだけどね。どこで間違えちゃったんだろう、ちょっと困った事になちゃった。
その変化に1番始めに気がついたのはアルフさん。使い間とその主人は、精神リンクでつながっているから嬉しいとか、悲しいとか感情がすぐに分かるとは聞いていたけど、凄いよね。
勿論、精神リンクなんて無くても、私とフェイトちゃんは心でつながっているけど・・・ちょっと悔しいなぁ。
「ちょっとフェイト、アンタ大丈夫なのかい?」
私と一緒に料理を食べ、楽しくお喋りをしていたフェイトちゃん。さっきからちょっとだけ様子はおかしかったけど、いつも以上に輝く笑顔に釘付けになっていた私には気づけなかった。ほんのりと紅くなったほっぺたに少し潤んできている瞳、それでいて笑顔を絶やさないフェイトちゃんの唇が私に・・・って違う違う。
そうそう、突如割り込んできたアルフさんはあわてた様子でした。
「なぁに、アルフ?どぅか、したの?」
でも、受け答えをするフェイトちゃんはとても緩慢な様子だった。
「さっきからね、嬉しいって感情が山のように送られてくるのはいいんだけど、それに混じって今までに感じたことの無い、不思議な気持ちが流れて来るんだよ」
不思議な気持ちというのが何かは、私には分からないけどアルフさんが言うのだから確かなのだろう。
いつもより上機嫌で浮かれている感じはしてたけど、体の調子が悪いとか、心配事があるとか―――別にそんな様子はない。
「フェイトちゃん、大丈夫?どこか調子でも悪いの?」
そうは見えてもやっぱり心配だから、私はフェイトちゃんに尋ねてしまう。
「だぁいじょうぶだよ、なのは。うふふ、私は今とっても気分が良いんだからぁ・・・ん〜」
と、そのままの勢いでキスをされてしまった。あれ、やっぱり何だかおかしいよ?
「うふふぅ、なのはとキスしちゃったぁ」
「フェイトちゃん?」
笑いながら私にギュッって抱きついてくれるのは嬉しいんだけど・・・胸に顔をギリギリって押し付けるのは止めて欲しいな。
「なのはは暖かいね〜。柔らかいし、だぁいすき。ん〜、気持ちいい」
そのまま押し倒されてしまった。え〜と、私はフェイトちゃんの抱き枕じゃないよ?
「フェ、フェイト・・・その嬉しい気持ちは全開で伝わってくるんだけど、なのはの迷惑も少し考えないといけないよ?」
どうしていいか分からないらしく、あたふたと慌てた様子のアルフさん。
「気にしなくて良いですよ。私もフェイトちゃんに抱きしめられるとその・・・嬉しいですから」
大丈夫だよって意味を込め、両手でフェイトちゃんを抱きかかえる。途端にふわふわと漂ってくる良い香りに、私もくらくらしてきちゃった。
「う〜ん、なのは悪いけど少しそのままでいてもらって良いかい?私、エイミィ達を呼んで来るよ・・・」
アルフさんに連れられたエイミィさんが来るまで私はフェイトちゃんの抱き枕として過ごした。
これはこれで嬉しいね。
◇
因みにフェイトちゃんは酔っ払ってい事とが判明。まさか甘酒で酔うとは思っていなかったので、失敗だね。
・・・あれ?でもフェイトちゃんって、お酒の入っているチョコレートとかケーキとかお菓子類は平気だよね・・・。
その後、酔っ払ってしまったフェイトちゃんをどうしようかとみんなで相談していたら、リンディさん達に緊急の呼び出しが掛かった。どうやら今回はアルフさんにも呼び出されたらしく、みんなで慌ただしく支度をしている。
そこで、私がフェイトちゃんを介抱することになったんだけど・・・。
「なのはさん、フェイトが可愛いからって食べちゃダメよ?」
「リ、リンディさん。そんな事しませんよ!」
もう、リンディさんてば何て事を言うのかな・・・。それに、まだ付き合ってる事は報告して無いはずなんだけど?
「私ぃ、なのはになら食べられてもいいよ?」
「フェイトちゃんまで・・・もうあんまりからかうと怒るよ?」
「だって本当だも〜ん」
そう言ってじゃれ付いて来る様子は猫のようで、いつもとはまた違った可愛さに溢れている。ごめんなさい、前言撤回しても良いですか?
「冗談よ、まさか私もそんな事は思ってないわ。それじゃあ行って来るわね。なのはさん悪いけどフェイトの事、よろしくね」
「行ってきま〜す」
そう告げると、4人は転送ポートへと消えて行った。
それがさっきまでの話で、私は今フェイトちゃんの部屋に居るんだけど・・・
「なのはぁ、着替えるから手伝ってほし〜なぁ」
「なのはぁ、一緒に寝よぉ」
とりあえずフェイトちゃんが絶賛暴走中なの。
なのは、なのはと私の名前を連呼しながらじゃれついたり、抱きついたり、キスしたりする。嬉しいし、嫌なではないけど、いつものフェイトちゃんとはまるで別人で、どう扱っていいのか分からない。
それに、下着1枚でウロウロされたり、抱きつかれたりすると―――その私が理性を保てるか自信が無いよ。
フェイトちゃんの事が大好きで、キスも済ませた仲。正直に言ってしまえば、もっとフェイトちゃんの温もりが欲しい。もっとフェイトちゃんとの仲を深めたい。
柔らかい唇に、ふくらみかけの―――ってダメダメ、そんな事考えてたら、ますます危なくなっちゃうよ。
目の前で無邪気に笑ってくれるのは、私を信頼してくれているからなんだよ。だから、裏切るような真似をしてはいけない。
それに私達はまだ小学生だし、始めちゃったら途中で止まれる自信なんて・・・。
「なのはぁ・・・」
「―――ちょ、ちょっとフェイトちゃん何してるの」
私が物思いに耽っているいる内に、フェイトちゃんは服を全部脱いで裸になってしまった。ついでにそのまま抱きつかれたのだからもう、天にも昇る気持ちなんだけど・・・・。
お、落ち着け私。フェイトちゃんは酔っちゃってるだけで何も考えていないんだから。へんな期待をしちゃだめ。
必死になって理性を保とうと頑張っている私。そんな事など知らない顔で、フェイトちゃんが次の行動に移ってしまう。
「ん〜、ちゅっ」
えへへへ〜と、いつもでは考えられないとろけきった笑顔を見せてくれるフェイトちゃんを前に、私は固まってしまった。
だって、フェイトちゃんが・・・いつもだとキスをした後は真っ赤になって恥ずかしがっているフェイトちゃんが・・・は、裸のままで私に抱きついて・・・そのままキスをして・・・えへへ〜って・・・えへへ〜って・・・ダ、ダメこれ以上されたら絶対に襲っちゃうよ。それだけは絶対にしちゃいけない。初めての時は、もっとロマンチックな場所で、フェイトちゃんと見つめあいながら・・・って、あぁ!何考えてるの!
落ち着け、落ち着け。大丈夫、私は理性をまだ保ってる、保っているの・・・。こんな時こそ心を落ち着けて、お父さんやお兄ちゃんがしているみたいに精神統一するの!
四苦八苦しながら何とか理性を保ち、心を落ち着けた私はやっと目を開くことが出来た。
どれぐらいの時間が経ってしまったのか、私の恋人はベッドの上で可愛い寝息を立てていた。
もぅ、私は寝るどころじゃ無いのに・・・フェイトちゃんは呑気だなぁ。そう思いながらも、温かな気持ちに満たされていく。
冷静になれてほっとする反面、少しだけ寂しくなったのはなんでかなぁ―――
「なのは・・・大好きだよぉ」
フェイトちゃんの微笑ましい寝言。夢の中でも私と一緒に居てくれるのはとても嬉しい。
「私もフェイトちゃんが大好きだよ」
いつもは冷静で物静かなフェイトちゃん。そして、今日の暴走していたフェイトちゃん。
どっちも私の大好きな恋人である事に違いは無いし、大切にしたい守っていきたいと感じる。
いつまでも隣で笑っていられるように、魔法の練習も、局員としての勉強も頑張らなくちゃね。大変な事かもしれないけど、フェイトちゃんの傍にいられるなら私は頑張れるよ。
「なのはぁ・・・」
「なぁに、フェイトちゃん?私はここに居るよ」
答えがないのが分かっていても返事をしてしまう。きっと私はこの可愛い恋人に、溶かされてしまったのだろう。それは、とても素敵な事。
誰かに迷惑を掛けたくない、嫌われたくない。それだけを願い、嘘の笑顔を浮かべていた『高町なのは』はもういない。
ここにいる私は愛しい恋人と一緒に夢を、未来を見つめている、『高町なのは』。
「良いよ・・・なのはなら・・・」
どんな夢を見ているのだろう。夢の中でも幸せそうに微笑んでいるフェイトちゃん、その姿を想像するだけで笑顔になれる。
「私の・・・初めてをあげるぅ・・・」
「ぶっ、フェ、フェイトちゃん?」
い、今なんて言ったの?折角落ち着けた私に、フェイトちゃんは何を言ったの?
心も体も温かいを通り越して、どんどんと熱くなってきている、このままだと危険なの。また、さっきみたいになってしまうよ。そう思い、急いで離れた私を寝言で追撃してくる。
「でも・・・なのはの初めては私のものだよ・・・。うふふ・・・」
フェイトちゃん、本当に寝てるのかな?
言葉もはっきりしていたし、ちょと確かめに行きたい。でも、今近寄ったら間違いなく襲っちゃうし・・・。何たって私の理性は、既に振り切れてしまっているから・・・。
それでも、私は恋人としての意地に掛けて、ここで襲ってしまう訳にはいかないんだよ。
随分と時間をかけて、部屋の隅まで辿り着いた私は正座をして、精神統一を始める。
こうでもしていないと、またいつ危険な状態になっちゃうか分からない。だからといって自分の家に帰ると、気持ちを抑えきれずに飛んできてしまいそう。
離れないといけないのに、離れてはいけない。
守りたいのに、傷を付けてしまいたい。
そんな相反した気持ちとフェイトちゃんへの想いを抱えながら、私は私の想いを貫く為に一晩中正座していた。
大切なものを守る為の、我慢なら平気だよ―――
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魔法少女リリカルなのはシリーズより 【なのフェイ】百合CPです コントラストの続編になります 甘酒でも酔っ払えるんです! |
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