恋姫無双 袁術ルート 第十五話 独立 |
十五話 独立
美羽が相国になった。これで一刀たちは洛陽に永住することになる。だが、すぐにと言う訳にはいかない。一度、建業に戻り、街の有力者たちや近隣の豪族たち、そして近隣の村に一刀たちが移住することを伝えなくてはならない。それにいろいろと持っていく物や準備しなければならないものだってたくさんある。そんなこんなで、一刀たちは雪蓮たちと共に一時、帰郷の途中であった。
「それにしても美羽ちゃんが相国なんてね………私たちも必死に探したと言うのに何のおこぼれもないなんてね。」
美羽の自慢話を散々聞かされて、結構意気地になっていた雪蓮。
「仕方あるまい。我らは月たちとの同盟関係と違って、袁術の客将にすぎないのだから。」
雪蓮を落ち着かせているは冥琳。冥琳はごく当たり前の事を言った。雪蓮たちは領土を持たず、美羽の客将にしか過ぎない。月たちは上下関係はあるものの、ちゃんと自分たちの領土を持っている州牧なのだから。要は褒美は美羽からもらえと言う事なのだ。
「ねえねえ、美羽ちゃん♪私たちへのご褒美は?もちろんあるわよね?」
美羽の自慢話にうんざりしているのか……頭に怒りマークをつけながら美羽を威嚇した。美羽はこれにたじろいだ。
「う、うむ!雪蓮たちもよくやってくれたからの!も、もちろん褒美はあるぞい!」
「へえ、何?」
「う〜ん………そうじゃ!特別に妾が大切にしてとっておいた秘蔵のハチミツをやるぞ!どうじゃ、嬉しいじゃろ!?」
「………却下。」
雪蓮の怒りマークは大きくなりばかりだった。さすがの一刀も美羽の空気の読めなさに呆れるばかりであった。
「む、む〜………ならば、妾の写し絵をやるぞ。部屋のでも飾っておくがよい!これならどうじゃ!?」
「ねえねえ、一刀。美羽ちゃんの事、殺していい?」
「………許してやってくれ。」
雪蓮は冗談のつもりらしいが、殺気をダラダラと流すのはさすがに勘弁してほしい。美羽も怯えて声が出せない状態だ。だが、何か閃いたらしく、またとんでもない事を口にする美羽。
「ならば、一刀を一日だけ貸してやるぞ!これならどうじゃ!?」
何言ってんだか、と一刀は思ったのだが、思った以上に雪蓮はこの言葉に耳を傾けていた。
「………一日だけ?」
「むむ〜……じゃあ……二日じゃ!」
「もう一声!」
「こ、これ以上は嫌じゃ!」
「何言ってんのよ。あなたは相国なのよ。相国たるものそんなにケチケチしないものよ。」
何としても雪蓮は美羽を乗せたいらしい。美羽の陥落はあともう少しと言うところで一刀が話に割り込んできた。
「その辺にしてやってくれ。ちゃんと雪蓮たちには褒美があるからさ。」
「え、本当!♪」
「こら、一刀!妾はなんも聞いておらんぞ!?」
「お前に聞いても何の意見も出せないだろ。それに七乃さんも賛成してくれたことなんだから。」
「む〜……」
勝手に決められたことで美羽は少し不機嫌だったようだ。
「褒美って何んなの?一刀。」
「それは、南陽に戻って、みんなの前で教えるよ。」
「ブー!ブー!」
そんなこんなで一刀たち一行は自分たちの領土に戻ってきた。
「おかえりなさい、姉さま。」
「ただいま。何にも問題は起きなかったようね。」
「はい。平和そのものでした。」
蓮華は帰ってきた一刀たちを歓迎してくれた。一刀は建業に美羽と七乃さんを置いて雪蓮たちと南陽に向かった。美羽と七乃さんは洛陽に行く準備をするためだ。
一刀は、これまでの経歴を話した。美羽と月が相国になったこと。帝が変わったこと。一刀たちがここから居なくなること等々。
「しかし、袁術が相国になったとは……大丈夫なのかしら?」
蓮華は心配そうに言った。その気持ちは分からないでもない。
「大丈夫だよ。俺がちゃんと支えるからさ。」
一刀の言葉にみんなは安心しているようだった。それにしても一刀たちは疲れていた。洛陽からここまでかなりの長旅だったのだから。
「詳しい話は明日にして今日はもう休みましょう。」
雪蓮の提案に誰もが頷いた。一刀は用意された部屋に行き、床に就いたのであった。
翌朝
「う〜ん!!……よく寝たな。気持ちのいい朝だ。」
一刀はベットからノビノビとしていた。ふと、隣に何か柔らかいものがあるではないか。一刀は不審に思い視線を横にずらした。するとそこには、
「おはよう。一刀。」
下着姿の雪蓮が横たわっていた。
「え、えええええええええ!!!」
一刀は城中に響き渡るような素っ頓狂な声を出した。当然、それを聞きつけた蓮華たちが一刀の部屋に駆けつけた事は言うまでもない。
「な、何をやっているのですか!姉様!」
「うん?添い寝。」
初見の人間はこの状況を見たらただの添い寝だと信じないだろう。なにせ、下着姿なのだから。
「貴様!雪蓮様に何をしたのだ!?」
「何もしてないって!だから剣を首筋に当てるのやめてください!」
一刀の言い訳も伝わる事なく、事態はさらに厄介な方向へと向かった。雪蓮は服を着替え、王の間で、冥琳たちに散々説教をかまされたのである。一刀は言い訳するも雪蓮が、
「昨夜は激しかったわ?」
などと嘘を言うものだから事態は一行に変化しなかった。一刻位、説教は続いただろうか?ようやく雪蓮は何もなかったと真実を口にしてくれた。皆は一刀をボコボコにした後だったからバツの悪そうな顔で謝罪をしていた。
「あはははは!あ〜あ、楽しかった♪。」
一刀にとっては笑えない冗談であったが、雪蓮は軟膏を顔中に付けた一刀の横で笑っていた。今、一刀と雪蓮は城を騒がせた罰として、街に買い物を言い渡された。一刀にとってはいい迷惑である。
「冗談が過ぎるよ。もうあんな冗談はこれっきりにしてくれよ。」
一刀はもういい年の男の子である。そして雪蓮はとてつもない美女だ。そんな美女とベットを共にしていたなんて想像するだけで鼻血ものだ。男の純情を弄んだ雪蓮に対して一刀は怒りを感じていた。
「そんなに怒らないでよ♪」
そう言いながら雪蓮は一刀の腕に手を回してきた。傍から見れば恋人同士にしか見えない。一刀はドキドキしながら街を歩いていた。雪蓮はそんな一刀を見てとても上機嫌だ。
「ねえ、一刀。私たちが出会って結構経つけど、こうして二人だけで街を歩くなんて初めてじゃない?」
いきなり話を変えてきた雪蓮。確かにその通りだ。雪蓮とこうしてゆっくり街を歩いた事は無かった。
「そうだな。お互いに忙しかったからな……」
一刀たちは出会った時の事を話していた。最初は雪蓮のお母さんが亡くなったことがきっかけで出会ったのだ。それから美羽の客将になって、祭りで激闘を繰り広げ、黄巾党を一緒に鎮めたりと昔の話で盛り上がっていた。
「一刀が来てから楽しい事がたくさんあったわね。」
「そうだな。」
一刀は何か雪蓮に対して違和感のようなものを感じていた。なぜいまさらこんな話をしているのだろうと。
一刀たちは頼まれていたものを買い終り、城に戻ろうとしていた。その時雪蓮が一刀の手を握り、
「ちょっと寄り道していかない?見せたいものがあるのよ。」
などと言いだした。一刀は反対したが聞く耳持たずと雪蓮は一刀を引っ張っていった。
そこは城から少し離れた森の中だった。雪蓮は一刀に見せたかったと言うのは花畑であった。とても色鮮やかで咲き乱れる花に一刀は目を奪われていた。
「どう、すごいでしょ。」
「ああ、とてもすごいよ!こんな光景見た事がない!」
ここに妖精がいると言っても信じてしまいたくなるくらいの美しさであった。雪蓮は花畑が一覧できる場所に一刀を連れて行った。そこから見える花畑はまさに絶景と言うものであった。
「少し前に、みんなでこの近くの川で釣りをしたでしょ?その時に見つけた場所なの。」
「釣り?………ああ、あの時か!」
一刀は思い出した。数か月前に美羽と七乃さんを連れて街の視察に出かけた際、雪蓮が突然釣りに行こうなどと言いだしたあの時だ。仕事で来ていたはずなのに、美羽も七乃さんも大はしゃぎで止める事が出来なかった。
「確かにあの場所から近いけど……こんなに見事な花畑だったら見つけられたと思うんだけど……」
「季節が違かったのよ。今が見時よ。この場所を知っているのは私だけなんだから。」
「いいのか?そんな秘密の場所を俺に教えて。」
「一刀だからいいの。」
………………………
………………
………
一刀と雪蓮は自分たちが出会った頃の話で盛り上がっていた。だが、一刀の中にあった違和感は大きくなるばかりであった。一刀はそれとなく雪蓮に聞いてみた。
「なあ、今日は一体どうしたんだ?今日の雪蓮は何か変だぜ?」
「どうして?何が変なの?」
雪蓮はとぼけるばかりである。
「何がって………突然こんなところに連れてくるしさ………それになんだか無理しているように見えるんだ。」
雪蓮はそれから黙りこくってしまった。一刀はそんな雪蓮を見て何も言わなかった。自分から言ってくれると信じていたからだ。二、三分ほど経っただろうか?雪蓮は一刀の顔を見て真剣な眼差しで見ていた。
「ねえ、一刀。」
「うん?……ん!?」
突然、一刀の視界が真っ暗になった。すぐ目の前に雪蓮の顔があったからだ。雪蓮は一刀の唇に自分の唇を重ね合わせていた。いきなりの事でさすがの一刀もこれには驚いた。
「ん!………んん〜!!……ぷは!……はあ、はあ……雪蓮?」
いきなりの事で一刀は戸惑ってしまった。雪蓮は今にも泣きそうな顔をしていた。
「……雪蓮、どうして?」
「……一刀も洛陽に移っちゃうんでしょ?」
「雪蓮?」
「一刀。私、あなたの事が好きよ。」
「!!」
一刀の混乱は増すばかりであった。いつもこういう冗談めいた事で雪蓮は一刀の事をからかい、遊んでいた。一刀も迷惑と感じながらも雪蓮のからかいをくすぐったいものだと感じていた。だが、ここにいる雪蓮の言葉はからかいなどでは無く本物だと一刀は理解できていた。
「あなたが洛陽に行っちゃったらもう会えないじゃない!」
「……雪蓮。」
「ずっと、ここにいてよ。」
それは懇願であった。だが、そんな事出来るわけがない。それが分からないほど雪蓮は愚かでは無いはずだ。何とも頼りない顔で一刀に迫っていた。
「……ここにいてよ……。」
今にも崩れそうな雪蓮は一刀にしがみついていた。一刀もまた雪蓮の事を抱きしめていた。雪蓮が愛しいと一刀は真摯に思った。今までからかわれ続け、でも他者の事を一番に理解してくれる、みんなのお姉さんキャラだったと思っていたのだが、それは誤りであった。ここにいるのは間違いなく一人の男を愛する女の姿だ。
「………ごめんな、雪蓮。」
この謝罪は何を意味するものなのかは一刀自身も理解できないものであった。雪蓮の気持ちに気付いてやれなかったことへの謝罪なのか?もしくは、洛陽に行かなくてはならなく、二度と会う事もないことへの謝罪なのかは解らない。いずれにしろ雪蓮の言葉を否定するには十分な言葉だった。
「一刀は私の事が嫌い?」
「違う!そんな事あるもんか!」
「じゃ………私と美羽とどっちが好き?」
意地悪でいているのか、真剣に聞いているのかは分からないが、一刀がそんな問いに答えられるわけがなかった。
「そんなの分からないよ!俺は……俺は美羽も雪蓮も好きなんだから!」
実に一刀らしい答えであった。だが間違いなくそれは真実であっただろう。一刀もまた雪蓮を愛している事に間違いはないのだから。一刀の答えに対し雪蓮は、
「………ぷ………あは……あはははははは!」
いきなり笑いだした。この笑いは怒りによるものなのか、悲しみによるヤケクソなのか、呆れたものなのか、一刀は動揺を隠せなかった。
「し、雪蓮?」
「あははは、ごめん、ごめん。一刀がようやく自分の気持ちを正直にいてくれたから……嬉しくって。」
「!!」
一刀は理解した。なんだかんだで一刀もまた雪蓮の事を好きと告白してしまっていた。自分の気持ちをぶつけた一刀はそんな言葉を全く気にしていなかったが、自分の言った言葉を思い出し赤面してしまっていた。いつの間にか雪蓮のペースに乗せられていたと感じてしまった。
「うれしいわ、一刀。好きって言ってくれて。」
「////!」
すでに主導権は雪蓮のものだった。雪蓮は再び一刀の唇に口付けを交わした。一刀も抵抗などはもう無かった。
「ねえ、一刀?………やっぱり洛陽に行くの?」
「ああ、月たちもいるから安心と思うけど、やっぱり美羽の事が心配だからさ。」
二度目の拒否。さすがの雪蓮もこれ以上は何も言わなかった。雪蓮は一刀に背もたれるような形で座っていた。一刀も雪蓮を包み込むように後ろから抱擁をしていた。
「大丈夫だって!暇が出来たら絶対に遊びに行くからさ。約束するよ。」
「本当?」
「本当だって!絶対に行くからさ!そんな顔しないでよ。」
いつもの癖か、一刀は雪蓮の頭を撫でていた。雪蓮は最初驚いたものの、まんざらでは無かった。
「あは♪気持ちいい……一刀、もっと撫でてよ。」
「はいはい。」
そうして一刀たちは幸せな時間を過ごしていた。日が傾き始め、雪蓮が最初に口にした。
「そろそろ戻らないと冥琳がいろいろとうるさいわ。楽しかったけど、そろそろ帰りましょう。」
「ああ。」
そうして一刀たちは手を繋ぎながら戻って行った。だが、手をつなぎながら歩いている所を不運何かどうかわからないが蓮華に見つかってしまった。説教を避けるために早く帰ったというのにまた説教を喰らってしまった。
その夜、一刀は雪蓮を始め、みんなを集めて会議を開いた。劉協様救出作戦の褒美を与えるためだ。
「で、結局褒美って何なの?」
雪蓮は散々じらされていたためか、結構しつこい。
「ああ、実は、建業の太守の後任を雪蓮たちにまかせようと思っているんだ。」
……………………
「「「「「「「えっ!」」」」」」」
「あれ、もしかして足りなかった?」
みんなの反応に少し戸惑ってしまった。もともと建業は雪蓮たちの土地だ。それを横からかすめ取ったのは一刀たちに他ならない。もともとの土地を返すだけでは足りないのかと一刀は思った。だが、みんなの反応は違っていた。
「ちょ、ちょっと一刀!本気で言っているの!?」
「え?本気って?」
「北郷、一体何を考えている。」
雪蓮も冥琳もかなり驚いている。二人だけじゃない。みんなも信じられないような感じで驚いていた。
「何をって………何かおかしなことでも言った?」
一刀は本当に気付いていないようだった。雪蓮たちは客将と言う身分であったが実際は使い捨て同然の部外者なのだ。雪蓮たちもその事を覚悟していた。だから、次に太守になる奴の言う事を必ず聞かなくてはならない。そう覚悟していたはずなのに、一刀は部外者である雪蓮たちに自分たちの後釜を任せると言ってきたのだ。ふつうはあり得ない。冥琳は一刀にこの事を教えてやった。
「俺は雪蓮たちを部外者だなんて一度も思ったことなんかないよ!」
一刀の真剣な言葉に一同は心を惹かれてしまっていた。本当に馬鹿な奴だが器のでかさだけは計り知れないものであった。制圧した降将を本当に自分たちの仲間だと思っていたみたいだ。
「それにさ。以前、雪蓮に言ったじゃないか。時期が来れば孫呉復興に力を貸すって。今がちょうどいい時期なんじゃないかな?」
雪蓮たちに初めて会った時の約束を一刀は覚えていた。その事がとてもうれしくて雪蓮は目頭を熱くしていた。雪蓮だけじゃない。冥琳もみんなも目に涙を浮かべていた。無理もないだろう。実際のところあの頃の雪蓮たちは力が全くなかった。他の諸侯たちに制圧されてもおかしくない状況であったのに一刀たちは客将として迎え、約束をキチンと覚えてくれていたのだから。それが嬉しくて、感動して、みんなは目に涙を浮かべていた。
「どうかな?俺たちの後釜になってくれないか?」
「もちろんよ!最高の褒美よ。ありがとう、一刀。」
雪蓮は一刀の元に駆け寄り、抱きついてきた。
「ちょ!雪蓮!苦しいって!」
「姉さま!一刀が苦しんでいます!早く放してください!」
「一刀はシャオのなの〜!」
みんなにギャーギャー言われてブツブツ言いながら雪蓮はやっと解放してくれた。
「これで、雪蓮たちはめでたく俺たちから独立したわけだけど……これからは同盟って形で協力し合っていかないか?」
「もちろんよ。よろしくね、一刀。」
皆はとても喜んでくれていたみたいだ。その夜は宴会が開かれた。みんなとてもうれしいみたいでかなり飲んでいた。止め役の冥琳も祭さんに飲まされ、今はベロンベロンだ。とても幸せな時だった。
「か〜ずと♪何してんの?」
「雪蓮か。少し飲みすぎちゃってね。酔いを覚まさせていたのさ。」
一刀は一人、外に出て酔いを覚ましていた。なんだかんだ言って一刀もかなり飲まされていたようだ。
「それにしてもみんなもずいぶん飲んでいるな。冥琳なんてもう見る影もないくらいよっているぞ。冥琳って結構酒癖悪いんだな。」
冥琳はかなり酔っ払って、みんなに滅茶苦茶な説教をかましていた。正直、何を言っているのか分からない。みんなも酔っているためか、冥琳の説教を笑いながら聞いていた。
「みんな、嬉しいのよ。こんなにも早く夢が実現するなんてね。」
孫呉の夢。それは袁術からの独立であった。
「夢って………ずいぶんと小さくなっちゃったな?いいのか、孫呉の王ともあろう人が?」
一刀は酔っているためか、ずいぶんな口を開く、普段ならどこからともなく現れる思春に脅されるはずなのだが、彼女は今、泣きながら蓮華にしがみついていた。どうやら泣き上戸のようだ。
だが、一刀の言う事ももっともだ。孫呉の夢はこの天下の太平であったはずなのに。
「いいのよ。あなたに出会って教えられたわ。孫呉だけの天下では無く、みんなにとっての天下の方が大事だって気付かされた。……………みんなで仲良く手を取り合って行けたらいいのにね。」
雪蓮は星空を見ながら、決して叶うはずのない理想を口にした。雪蓮は分かっていたが一刀はその理想を肯定した。
「大丈夫だよ。いつか必ず、みんなが手を取り合って生きていく時代が来る。美羽や雪蓮が仲良くなったように。」
雪蓮はキョトンとした。一刀の言葉には何処となく現実味があった。もしかしたら本当にそんな時代が来るかもしてない。そう思えるようになった。
「あはは♪………そうね。美羽ちゃんとも仲良くなれたんだから。」
「ああ。」
「きっと、みんなで協力し合える日が来る。」
「ああ、きっと来る。」
一刀たちは願った。この幸せを他に人達にも与えてあげたいと。
「一刀。」
「なに?」
「好きよ。」
「俺もだよ。」
二人は月の下の元、口付けを交わしあった。もう自分たちの気持ちに嘘は無かった。その日の夜、一刀たちは閨を共にした。願わくばこの二人の幸福が永遠に続きますように……。
次の朝、雪蓮はみんなに召集をかけた。皆は昨夜の酔いが冷めていないらしく、ものすごい顔をしていた。そんな中、雪蓮はツヤツヤとした顔をしていた。
「実はね、私、王を蓮華に譲って一刀についていこうと思うの。」
みんなの酔いは一気に冷めた。一刀もまたとても驚いた。
「姉さま、何を考えているのですか!?」
「雪蓮!蓮華さまの言う通りだ!何を考えている!?」
蓮華と冥琳が同時に口走った。他のみんなも同様なようだ。ものすごい顔をしている。
「え〜……ダメ?」
「当り前だ!」
冥琳の顔はものすごいものだった。まるで般若の仮面を被ってるようでもあった。雪蓮はたまらなくなり、一刀の方を向いて、助けを求めた。
「一刀は私に来てもらったらうれしいよね。」
「い、いや……嬉しいけどさ……駄目だろ。」
さすが一刀もこの言葉だけは反対した。当り前である。ところが雪蓮は、
「酷いわ、一刀!昨夜はあんなにも私の事好きって言いながら何度も私を求めてきたのに………そうやって一刀は一度抱いた女を捨てていくのね!?」
いかにもワザとらしい演技であったが、他のみんなの怒りをかき立たせるには十分すぎた。
「なっ!?一刀、本当なの!?」
「貴様!よくも雪蓮様を!////」
「雪蓮お姉ちゃんだけずるーい!!」
「かかかか、一刀様……本当に雪蓮様と……」
「ほう、やるではないか、北郷よ。」
「あら、あら〜。」
みんなの眼には怒りの炎が纏っていた。唯一、何も言ってこなかった冥琳は、
「………………………」
真っ白になっていた。
一刀は短い人生であっと、走馬灯に耽っていた。
リンチは長い時間続いた。冥琳は相変わらず白くなっており、思春にはいきなり切りつけられ、シャオの白虎に噛みつかれ、明命には泣かれ、祭さんには説教を喰らい、穏には誘惑された。蓮華は体から黒いオーラのようなものを出してきて、それに触れると体の一部分が白骨化しだした。
さすがに死ぬだろうと思われたが主人公補正のせいでなかなか死ねない。おかげで心身ともに死ぬ一歩手前まで追い込まれたとき、ようやく終了となった。
皆は、雪蓮を諌めた。さすがに今回の提案には皆は付いてこれなかったようだ。そんなこんなで雪蓮はようやく折れた。
「分かったわよ!じゃあ、蓮華を一人前の王にしてから隠居する。」
この提案がぎりぎりのラインだったようだ。皆にはまだ不満があるみたいだがこれで手打ちとした。
数日後、
一刀は元の人間の姿に戻っていた。主人公補正恐るべきである。都合のいい事に一刀は拷問されていた時の記憶がないらしい。これで心の問題もノープロブレムだ。
一刀たちは移動の準備が整い、雪蓮たちに見送られていた。
「美羽ちゃん、一刀をあんまり独り占めしないでね。」
「嫌に決まっておろう!一刀は妾のものじゃ!」
一刀と雪蓮が閨を共にした事を聞いて美羽はかなり怒った。だが、雪蓮が美羽の言った『一刀を一日だけ貸す』という約束を持ちだしたためにあっという間に舌戦で負けてしまった。
怒りを露わにする美羽に対して雪蓮は何か耳元で囁いていた。すると不思議な事に美羽の怒りは解け、いつもの美羽に戻ってしまった。一体何を言われたのだろう?
それよりも驚いた事がある。美羽は雪蓮たちへの褒美に何を与えたのかを全く知らなかったはずだ。一刀が教えてあげると、
「何じゃ、そんなことか。」
この答えに一刀と雪蓮はもちろんの事、七乃さんまで驚いていた。
「なぜ驚くのじゃ?あそこはもともと雪蓮たちの土地であろう。妾達は洛陽に行くのだからもう返してやってもよいのではないか?」
美羽は全く理解していなかった。一刀が詳しく教えても、
「雪蓮は妾の部下じゃぞ。部外者なぞでは無い。」
なんて事を言った。美羽はおそらく違う意味で言ったのだろうが、一刀と雪蓮はとても感動した。本当の意味で、美羽は雪蓮たちを仲間だと思っていたからだ。雪蓮は美羽に抱きついてきた。
「うっぷ!な、何をするのじゃ!」
「ありがとう。美羽ちゃん。」
雪蓮とは思えないくらいの澄んだ笑顔でお礼を言った。雪蓮も本当に感謝しているようだ。美羽は何が何だかわからなかったがひとまず調子に乗っていた。
「う〜む、よく分からんが…………もっと妾を褒めるがよい!うははははは!!」
「あはは。じゃ、元気でね、美羽ちゃん。」
「うむ、い、一応、言っておくのじゃ………お主も元気で……。」
最後の方は一刀には聞こえなかったが、雪蓮にはちゃんと聞こえたようだった。
そんなこんなで、一刀たちは雪蓮たちと別れ、洛陽へと向かったのだ。雪蓮たちは一刀たちから独立を果たし、これから自分たちの力で街をより良くしていくことになる。
「ところで、お前雪蓮になんて言われたんだ?」
一刀たちは洛陽に向かう途中、ふと思った事を聞いてみた。あんなに怒っていた美羽をなんて言って抑えたんだろうと。
「内緒じゃ♪」
「なんだよ、それ。」
隣で一刀が不満を言っていたようだが美羽は雪蓮に言われた言葉を心の中で復唱していた。
「一刀は本当にあなたの事を愛しているみたいよ。でも、私も負けないから!」
(ふふ〜ん、雪蓮め。妾もお主には絶対に負けんぞ!)
一同の向かう先は洛陽。これからいくつもの苦難が待っている。
あとがき
こんばんわ、ファンネルです。
どうでしたでしょうか?この本編は。雪蓮がほとんど主人公ですがこういった本編を続けながら拠点のような書き方をあと二回ほど続けようと思っています。
せっかく、長編小説にしようと思っているので土台をしっかりしておきたいのです。
皆さんにアンケートがあります。
次回は神楽編か、董卓軍編か、どちらを先にかこうか迷っています。結局、両方書くつもりなので意味はないと思うのですが、なんとなくです。……すみませんorz
では、次回もゆっくりしていってね。
説明 | ||
こんばんわ、ファンネルです。 とうとう十五話になってしまいました。この話は本編に重要な箇所を書きつつ、拠点のような流れで書きました。 この話は、雪蓮のターンです。 最近、美羽の出番が少なくなってきたような気がしますが、ちゃんと出ますよ。だけど今回は雪蓮にスポットを浴びせました。 美羽は次の次の話で活躍すると思います。 では、ゆっくりしていってね。 |
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コメント | ||
白骨化てwww(綿棒) 完全に雪蓮と美羽はマブ状態ですね。本妻と三号さんかな?(二号は・・・)(とっちー) 雪蓮はなにがあってもいきてくれ〜〜〜〜〜〜〜!!(motomaru) 雪蓮生存超絶希望!!!!先のことを今から願う。(雪蓮の虜) 酔いが冷めていない→醒めていない(XOP) 神楽編で(いずむ) 神楽編ですね。種馬根性で帝もとりこに(降下猟兵) 蓮華様は破面だったのかw両方を同時進行…はムリですか?(ぬこ) 神楽編でお願いします(乱) 神楽編…是非に!(摩天楼銀河) 董卓編を!月!月ぇー! しかし本当に美羽の出番がルキ〇並に…(blue) ココはむいむいさんの言うとおり複合編(ハーレムともw)をw(ティリ) 神楽編を、神楽編をお願いしますッ!(フィル) 神楽編希望です(brid) 復興が達成されたことで蓮華を一刀に嫁がせる必要がなくなりましたね・・・惚れている孫三姉妹がどう動くか?(XOP) XOP様、誤字指定ありがとうござます。いつもすみません(ファンネル) 死ぬに死ねない主人公補正生殺しかww 追伸 董卓編で(ゲスト) 神楽編のほうで(YOROZU) 神楽編の方で(拾参拾伍拾) 董卓軍編でお願いします。あいかわらず蓮華の黒いオーラは強力ですねw(ブックマン) 正直、何をいているのか→いっているのか :太守の後取りを→「跡取り」または「後任」(XOP) 是非、月に出番を!!ってことで董卓編希望ですw(リッチー) 外史八千年が誇る種馬占いの結果、神楽編からがより幸せになれるそうなので神楽に |ω・`) (cheat) さすが主人公補正www死ねない、都合の悪いことは忘れる。そんな能力が欲しいですwwwアンケートは董卓編がいいかなぁ。(だめぱんだ♪) おお!!短時間でこんなにアンケートの回答が!今のところ神楽がリードしていますね。(ファンネル) レスピラwwwwwwwww もちろん神楽で!(柘榴石) 董卓軍希望〜♪一刀がいてこそ平和ですね♪(minazuki) 甲乙つけがたし・・ペン倒しの結果神楽先行と天のお告げですw(nanashiの人) 董卓希望、しかし本当に此処まで雪蓮、美羽仲良しルートが実現するとは・・・一刀、恐ろしい子!! 次作期待(クォーツ) 両方でよろしく!(u4dt) もちろん!・・・・・・・・神楽篇からお願いしますwwww しかし・・・・美羽がすんなりやってしまった事が、予想通りであり、予想外でしたね〜w さて、次回はどっちになるのか・・・・愉しみですよ^^w(Poussiere) 神楽でお願いしますΣd(ルーデル) 一刀なんで死なないんだよwwwwもちかっぐ〜〜〜らで〜〜〜〜!!!(混沌) 神楽編で(舜焔) 董卓軍希望!(和田DON!) 今回も面白かったですww次が早くみたくなりましたww(ロケット) そうですね〜神楽が僕的にはど真ん中だったんで神楽編に一票!(ふもふも) 新しさから神楽を希望したいと思います!しかし美羽・・・純粋な馬鹿だなぁw可愛くて仕方がねぇw雪蓮も良い味出してました!次回期待してお待ちします!(sion) YES!董卓で!(風の旅人) 神楽ちゃんでお願いします(最上那智) |
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