真・恋姫SS 【I'M...】16話
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ザァァ……  

 

 

……。

 

 

雨が上がった。

 

俺は雨上がりの荒野で遠くを見ていた。これから何をするべきか。そんな事を考え

 

ながら。

 

いや、することは決まっているのに、そこに向かって足を出せないでいるだけだ。

 

華琳がどこにいるかもわからない。分かったとしても、華琳と会って何を話せばい

 

いのか。

 

母親を失った彼女に対して、俺はなんと声をかけるつもりだろうか。

 

迷っていた。それに……怖いのかもしれない。最初に会ったあの言葉を、今度は本

 

当に言われてしまうかもしれない。

 

―お前のせいだ―

 

聞きたく、ない。

 

それに、あんな顔の華琳を見たくない。

 

目の前で琳音が死んで、あの子はどんな気持ちだろう。

 

華琳は……

 

俺の知っている華琳は……

 

俺の知っている曹操と同じ道を歩いてしまうんだろうか。

 

徐州での虐殺。それ故に、冷酷な野心家だと世間では謳われてしまう。

 

「乱世の奸雄、魏の覇王……曹操……華琳」

 

つぶやいて、自分の思考が止まる。俺は…誰を救いたいんだ。

 

『そんなの、二人ともだろ?』

 

少し前の自分を殴りたくなる。

 

無茶言うな。…俺一人で何が出来るんだよ。

 

何も出来なかったじゃないか…

 

助けられなかったじゃないか。

 

目の前で…殺されたじゃないか…

 

「おい、兄ちゃん。落ち込んでるトコ悪いが、いいモン着てるな。それ俺達にくれ

 

ねぇか?」

 

俺は…俺は……

 

「おい!、アニキが話てんのに無視してんじゃねえ!」

 

「…え?」

 

 

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声が聞こえて、後ろを振り向くと、そこに変な三人組がいた。

 

一人は、なんか偉そうにしてて、一人はちっさくて、もう一人は大きくて。

 

「………なんか、用か?」

 

「ぅ……こいつなんて目してんだよ…」

 

偉そうな奴がそんな事を言った。別にアジア人としては変じゃないと思うが。

 

とりあえず、いつまでも膝を着いているのもあれなので、立ち上がる。

 

ぬかるんだ地面が気持ち悪い音を立てる。

 

「だからその服をこっちに渡せって…」

 

「服……?…あぁ、悪い。これ以外に服持ってなくて渡せないんだ」

 

話に聞いた追いはぎって奴なんだろうけど、なんだろ、そこまで怖いと思えない。

 

戦での兵士の方がずっと…怖かった。

 

「て、てめぇ!アニキが―――」

 

小さいのが何か叫んでいるが、あまり耳に入ってこない。

 

あまり無視してたら、偉そうな奴が「しかたねぇな」とつぶやいて――

 

「がはっ…」

 

急に腹に鈍痛が響く。

 

「服は汚せないからな。手間だが、殴り倒すしかねぇよな」

 

あぁ、そっかこいつら追いはぎだった。やばいかもしれない。こっちは戦闘経験な

 

んてほとんどないし、武器も無い。

 

「ほらっ」

 

「ぐっ…」

 

また、殴られる。

 

あんまりケンカもしたこと無いけど、こんなに痛いもんか。

 

あの人は、もっと痛かったのかな…

 

「おらぁっ」

 

「ぐぁ…」

 

あんなに血がでて…あんなに斬られて…どれほど痛かったんだろう

 

痛みに膝を折る。

 

情けない……

 

助けるとか言っといて…

 

 

 

『一刀は、女の人なら誰でもいいの?』

 

『ちょっと、近いわよ!』

 

『かずと!!起きなさい!!』

 

『おかえり、一刀♪』

 

『かずと…母様が…』

 

 

華琳…

 

 

『真名がないんですか!?』

 

『はい!なんでもお願いしちゃいます♪』

 

『あなたは、私達にとっては天の遣いなのかもしれませんね』

 

『一刀さん…華琳をお願いしますね』

 

 

琳音さん…

 

 

 

 

「おらぁぁっ」

 

「ぐ……」

 

俺は……

 

ならなきゃ…

 

二人だけでいい

 

二人のためだけでいい…

 

「ぅ…嗚呼嗚呼あああああああああ!!!!!」

 

「ぐぁぁっ!」

 

「あ、アニキっ!」

 

体当たりして、相手もろとも地面へと倒れこむ。

 

そのまま相手の腰にある剣を引き抜いて…

 

「あああああああっっ!!」

 

「う、うわぁぁ!!」

 

顔めがけて、剣を突き立てる――

 

ドスッ…

 

「はぁ…はっ…はぁっ…」

 

「ぁ……ぁ…」

 

突き立てた剣は、鈍い音をたてて相手の顔面を回避し、地面へと突き刺さっていた

 

 

「もう…死んだり、殺したりなんて…嫌なんだ…」

 

剣を地面から引き抜いて、立ち上がる。

 

ならなきゃ、いけない。

 

好きな人のために…

 

俺は…天の遣いに…。

 

 

 

 

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「ねぇ」

 

「あん?」

 

「あんた達おいはぎだよね?」

 

「追いはぎって人聞きわりぃな」

 

「なんで、俺飯奢られてるの?」

 

「お前なかなか見所あったからな。」

 

「意味がわからん…」

 

徐州瑯邪の町。

 

そこの飲食店にて、俺は平和に飯を食っていた。

 

何故かさきほどのおいはぎに奢ってもらえてると言う珍事の真っ最中だ。

 

「アニキが子分にしてやるってんだ。ありがたくおもいな!」

 

「いや、別になりたいって言ってないし…」

 

さっきから小さいのがうるさい。というか、でかいののセリフまでチビが喋ってる

 

んじゃないだろうか。

 

「で、ところでお前なんであんなところにいたんだよ。あんなところに一人なんて

 

あぶねぇだろ」

 

「あんたがそれを言うか…」

 

「細かいことはいいんだよ!」

 

細かいんだろうか……。

 

「なんでなんだ?」

 

「…………人を探してる。」

 

一瞬言ってもいいものか迷った。だってこいつら……だし

 

「人?名前は?」

 

「………………」

 

おせっかい過ぎないだろうか。どこまでつっこんでくる気だ。

 

「アニキ…顔、広い」

 

やっと喋ったかと思ったら、お前もおせっかいか。

 

「いいから、名前なんていうんだよ!」

 

なんなんだろう…さっきまでボコボコに殴り倒してた相手だぞ?

 

「……はぁ」

 

ため息しかでないな。

 

「……曹操、だよ」

 

「は?曹操?……曹操ってお前、今都で噂になってる官軍の出世頭じゃねぇか」

 

「………え?」

 

官軍…?

 

何を言ってる?曹操って華琳だぞ…?出世?

 

 

「え、曹操だぞ?官軍って……あいつまだ子供だろ…?」

 

「なんだ、知り合いなのか?…だが、曹操が子供ってのはねぇな。まぁ、見た目は

 

かなりアレだが、もう10…7,8には成ってるはずだ。」

 

「え…」

 

17,8?どういうことだ?

 

だって最後にあったときでも華琳はまだ10歳行くか行かないか程度だったはずだ

 

 

嫌な予感がした。こちらで数ヶ月過ごしたのに、向こうに戻ったときは7,8時間

 

経過していた。

 

俺が向こうに戻った後、何日経っていた…?

 

「なぁ…このちかくで戦があっただろ。陶謙と曹嵩の…」

 

「は?戦?最近のこの辺は平和そのものだぜ。おかげで平和ぼけした奴らが増えて

 

俺らが儲かるわけだが。」

 

「え……」

 

「だが、そうだな…たしか最後にやったのは俺もガキの頃だったから…たしか7年

 

前か。あの時は祭りみたいになってやがったな」

 

「7年…」

 

 

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俺の言っている曹操とこいつの言っている曹操が同じ人物なら…俺は7年いなかっ

 

たということになる。

 

「華琳……」

 

「あ?かりん?」

 

「お前がその名前をよぶな!!!!」

 

立ち上がり、自分でも、こんなに声がでただろうかと思うほど、大声で叫んでいた

 

 

当然店内での注目を集め、俺は少し気まずくも椅子に座りなおした。

 

「な、なんだよ…真名ならそう言えよ…」

 

こんな奴でも、真名に対しての感覚は同じらしい。

 

「悪い…でも、ほんとに曹操は都で…」

 

「あぁ、まだ都での警備隊の隊長なんて位置だが、ありゃあ近いうちに軽く州牧に

 

はなっちまうだろうぜ」

 

華琳が、あのまま成長していれば、そのくらいには当然なれるだろう。

 

昔を知っている贔屓とかは関係なく、そう思う。

 

実際、史実で曹操は魏の国王にまでなっているんだから。

 

「会えないかな」

 

「曹操にか?」

 

「うん」

 

「そりゃ、無理だろ。大体お前素性を明かすようなもんもってないだろう。そんな

 

変な格好してりゃ、速攻で牢屋行きだ」

 

頭を抱えるしかない。

 

どうすればいいんだろう…。会う事さえできれば…。

 

「はぁ…無理かぁ…」

 

だめだ、考えてもいい案が出ない。

 

「まぁ、そう落ち込むな。俺達も何か考えてやるよ」

 

「……お前らちょっと、おせっかいすぎないか?」

 

「てめぇ!アニキの懐の深さがわからねぇのか!」

 

さっき会ったばかりで分かった方がすごいだろ…。

 

「チビ、おちつけ。とりあえず、お前の名前を教えろ。まだ名乗ってもいないんじ

 

ゃな。」

 

「名前………」

 

「あぁ。」

 

「…一刀だ」

 

「は?一刀?…おかしな名前だなぁ…。俺の事はアニキでいいぞ。他の仲間もそう

 

呼んでるしな。」

 

「あぁ…」

 

何が、どうなってんだか…。

 

いろんなことがありすぎて、ちょっと頭がついていかない。

 

って、これじゃ前と同じだな…。

 

思考での結論に少し自嘲する。

 

「考えないとな…」

 

変なやつらと知り合いになっちゃったけど、とにかく、もう少し、華琳には会えそ

 

うには無い。どうすれば会えるのか…

 

 

「ところで…」

 

「ん?」

 

アニキがかなり変な顔で声をかけてきた。

 

 

「お前金あるか?」

 

「………………………………え?」

 

 

 

説明
16話です。
前から更新があいてしまいました。
申し訳ないです(、、


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コメント
華琳が探している三人でもあるよねww 太平洋術つかってみれば?wwww(JDA)
このメンツで桃園の誓いですね!わかります!劉備アニキ関羽チビ張飛デク(ぇー(ふじ)
アニキがカッk……アニキ〜〜〜〜〜!!wwwww(混沌)
食い逃げコースだなw(ブックマン)
なんか優しい3人組w(YOROZU)
黄色い三連星w(libra)
アニキしっかりwww(狐狗狸)
わぉw まさか盗賊三人組みと飯を食うとは・・・・・・(フィル)
仲間になっちゃうのか?(もっさん)
Σ(゚Д゚;)アラマッ(kuro)
おちたぁぁぁwww(キラ・リョウ)
結局その落ちですかwwwwwww だが・・・・うん・・・・・ここからどうなるのかなwww愉しみやわwwww(Poussiere)
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