双子物語 番外編 単発6 |
双子物語 番外編6〜クリスマスデート
【春花】
近づくクリスマスのムードがテレビからいっぱい情報が出てくる。
ソファで二人寄り添うように座りながら手を握りながらテレビを見ていた。
ちょっと複雑そうに見ている私に気付いたのか、彩菜が声をかけてきた。
「綺麗だよね」
「そうね…」
「私たちも見にいこっか」
「え!?」
テレビに流れてる、ある都心部のイルミネーションに指を差しながら言う
ものだから私はつい大きめの声が口から出てしまった。
今は私の部屋で二人一緒に過ごしていたからよほど大きな声じゃない限りは
迷惑にはならないだろうけれど、反射的に口を自分の手で押さえていた。
「あはは、可愛い反応」
「もう、冗談だったらやめてよね」
「冗談じゃないよ、本気だって」
私を見る彩菜の目が本気で訴えてくるのが見ているとわかる。
とはいえ、あの中にいくと男女のカップルが大量にうろうろしているのは
想像するに容易い。
「でもちょっと不安かなぁ・・・」
周りの雰囲気に気にしすぎて楽しい気持ちでいられるか不安だった。
女同士でその中で混ざってたら珍しいものを見るような視線で見られそうで怖い。
「春花、そんなに不安がることないって。周りは自分たちのことしか見えてないから。
多少私たちのようなカップルがいても目に入らないって」
「そうかなぁ・・・」
どんどん落ち込む私に彩菜は正面に回って両手で私の手を握って顔を近づけてきた。
ちゅっ
「安心できるおまじない」
「こんなんで安心できると思う?」
「なら安心できるまでずっとする」
ちゅっ ちゅっ ちゅ〜…。
徐々に頭がぼんやりしたところでやめた彩菜が私の耳元で囁くと少し敏感になってる
私の体はびくっと反応した。
「べ、別の意味で・・・安心どころじゃなくなったじゃないの・・・」
「えへへ、春花かわいい〜」
結局彩菜の言う通りに事が進んで、翌日に行くという約束を交わした。
それから何かを思い出した彩菜は。
「あ、そうだ。夜遅くなるなら大家さんに言っておかないと」
そういえば用があって食事しないときは前もって言っておかないと
後で怒られてしまう。食堂のようになっててみんなで食事できる場所があるのは
賃貸系では珍しいかもしれない。
「わかった。後で頼むわ」
「まかせなさーい!」
私に言われて彩菜は嬉しそうに立ち上がり胸の辺りを少し強めに叩くのだった。
***
翌日。同じ場所に住んでる私たちは待ち合わせをすることなく一度自分の部屋で
仕度をして出てきた。
日が沈み、吐息も白くなる寒い時間帯に私たちは手を繋ぎながら歩き出した。
本当は待ち合わせするドキドキ感も少し欲しかったけれど、近いこともあるけれど
万が一すれ違って無駄に時間を遣うのは嫌だったからというのが強かった。
寒いのも彩菜といるとそんなに悪いもんじゃないなと思えた。
隣に大好きな人がいるだけで、安心できるというか。
そんな少しあやふやで言葉にしにくい安心感があった。
長い階段を降りていってすぐにバスが停まっていたので急いで乗って二人
同じ座席に座る。人がほとんどいなかったから一番後ろの長い席に座った。
暗くてほとんど明かりもなくてどこ走ってるかわからない中、夜のバスには
あまり乗ったことないから内心少し興奮していた。
そうやって乗ってるうちに今度は建物の明かりが見えてきて、それからすぐ
駅に着いた。降りた私たちはすぐに駅を通って電車が来るのを待っていた。
待っている間はベンチに座って彩菜が私を包むように抱きしめてくれた。
「春花あったかーい、やわらかいー。いい匂いー」
「ちょっと、彩菜。最後のはちょっとはずかしい」
とは言いつつもこれだけしてくれるとやっぱり嬉しい。人気のない場所だから
できることなんだろうと思って人の多い場所に住まなくてよかったなぁと心底思った。
そうしているうちに電車が着いて私たちは目的の場所に向かうのだった。
ゴトンゴトンと揺れながら電車の中は暖かくなっていて、その心地良さにうつらうつら
しながら寝ないように心がけていると。
「もうそろそろだね〜」
彩菜が嬉しそうにそわそわしながら窓の外を見ていた。
ここまでくればもう暗闇なんてどこもなく、まるで星のような輝きが
町中に広がっていた。
二人でその明かりを見ているうちに目的の駅に辿り着いて、降りて駅を出ると
歩いてそんなにかかることなく目的の場所に着いた。
ざわざわ、ざわざわ。
まるでどこかのテーマパークのように綺麗に飾っていた明かりが周囲の人ごみの
雑音と共に飛び込んできた。
幻想的な輝きに目がくらみそうになる。
人が多いからみんなそれぞれ離れないように腕を組むなり手を繋ぐなりしている。
やはりというかなんというか、男女のカップルがほとんどでそれぞれ初々しかったり
人前で恥ずかしげもなくキスをしていたりして私はそっちの方に視線が泳ぎそうになると
彩菜が私の手をぐいっと強く引っ張って私を抱き寄せた。
「そんなとこ見ないで、ほら。この光景を楽しもうよ」
期間限定の光の祭典。お祭りほどうるさくはないけれど、似たような感覚で
どこかふわふわした感覚が私を包み込んでいた。
そんな私を彩菜はいつもよりも優しく、だけど積極的に私を引っ張りまわしてくれた。
宝石のように輝くイルミネーションの町におしゃれな店が並んで私の気になった
ところから回ってくれる。安いアクセサリーをメインに売ってるところでお互いに
つけて見せ合ったりして高校生の頃の感覚を思い出す。
あの頃よりお金の自由があるからそのアクセサリーをつけたまま購入してそのまま
町に繰り出す。散々歩き回って最後に見たカップルがキスしているのを見て、彩菜も
その気になったのかそのカップルの少し離れた場所の壁に私を押して顔を近づける。
「ちょっと、彩菜・・・?」
「ここで春花としたいな・・・」
「いや・・・だって・・・見てる・・・」
「誰も見てやしないって」
「彩菜・・・」
ん・・・。
どっちの声だろう。口から漏れる声を塞ぐように私たちは唇を重ねた。
繋がった口と口の隙間から白い息と涎がこぼれていく。
繋げてすぐに舌を入れてきた彩菜を私は拒まずに受け入れた。
いつもやることが強引だけどそんな彩菜だから私は愛おしくて仕方なかった。
私ももう彩菜からもらった快楽に溺れて両手を彩菜の背中に回して、もっとキスを
求める。もう顔が火照って頭も働かなくてどうにかなってしまいそうだった。
そして長く続いたような、あっという間のような時間も終わりを告げて
満足して少しずつ熱が引いていった私たちが周りを見ると、変わらない空気にホッとした。
私は彩菜の顔を見ると、彩菜は私を見てくすくす笑っていた。
「ね、みんな自分たちのことでいっぱいだったでしょ」
「そ、そうね・・・」
私たちの関係に誰か見てるんじゃないかと思っていたけどそんなことはなかった。
少し自意識が強かったかもしれない。そう思ったら今度は恥ずかしさがこみ上げてきた。
「そろそろ帰る?」
彩菜の問いかけに私は顔を赤くしながら軽く左右に首を振った。
「あはは、そうか〜。じゃあ近くにホテルないか探そうか」
「うん・・・」
安心したからなのか、それともさっきの熱が残っていたからなのか。
ものすごい中途半端に欲求が残っていて私は続けて彩菜を欲しがっていた。
帰ってしてもいいのだけど、変な物音で迷惑をかけるのも嫌だったから
安心してやれるところに行きたかった。
「さすが雰囲気良いとこに行くと違うよね」
「そうね・・・」
「じゃあ、行こうか。春花・・・」
この神秘的な光景をもう少しだけ二人で見ていたかったのもあるけれど、
ふと携帯で時計を見ると時間がかなり経過しているのを確認して、
泊まれるところがなくならない内に早めに探すことにしたのだった。
途中コンビニに寄って食料を確保した後、彩菜が見つけたラブホテルに私は
ちょっと躊躇しながらも勧めてくる彩菜の言葉に頷いて二人で入っていった。
部屋に案内されて私と彩菜はそれぞれくつろぎながら今日の雰囲気によく浸って
気分よく過ごすことができた。やはりこういうイベント事の気持ちの勢いというのは
すごいものがあるなぁと改めて思うのだった。
そして彩菜の私への愛と私が感じていた気持ちがより深く感じられてよかった。
今日以降、しばらくはこの気持ちが治まらずに彩菜を見るたびに今回のことを思い出して
自分の中で熱くなるのだろうなと確信があった。それはそれで・・・幸せなんだろうけれど。
「ふふっ」
「どうかした?」
「ううん、彩菜のことほんと愛してるなぁって思ってね」
「何、急に」
「愛してるわ、彩菜」
「私も愛してるよ、春花」
ベッドの上で二人はその日一番長いキスをした。
どこまでも終わらないような熱いキスを………。
お終い。
説明 | ||
大学編の彩菜と春花のクリスマスで過ごすお話。どれだけイチャイチャするんでしょうかね。異性カップルばかりの中でいちゃつくちょっとした特別な感覚が余計二人を盛り上げそうです(*´ェ`*) | ||
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