恋姫無双ー異世界からの銃士ー 第3話 |
SIDE 愛紗
―前回までのあらすじ―
黒髪の山賊狩りこと、関羽雲長である私、愛紗は
武者修行で旅をしていた時、不思議な恰好の青年と出会う
彼の名は神宮司撃 私は彼と出会い、ともに旅をする事になった
そしてたどり着いた村で鈴々という子供が同い年くらいの
子供を率いて山賊ごっこをしているのを耳にした
私と撃は鈴々を説得するために山へと入っていった
だが、私たちの後を付けてきていた役人に、子供たちが捕まり、
子供たちを人質に、奴らは私を弄ぼうとした
その時、撃の体から光があふれ、その光は鎧となり
撃を包んだ そして撃はその圧倒的な力で役人9人を
倒したが、撃は気を失ってしまった
撃の纏っていた白い鎧は小さな粒のようになり、消えた
私は唯々驚く事しかできなかった
先ほどの姿はまさに白狼 その戦いぶりは他を寄せ付けぬ
鬼神のようだった そして何より奴は言った
『未来ある子供たち』と 撃の信念は何より気高いのだろう
そして業火の如く燃え盛る怒りの炎もこの世の理不尽を打ち払うほどに
強いのだろう 現に撃は天かける白き鎧を身に纏い、
9人の役人を歯牙にもかけず倒してしまった その力はまさに撃が英雄なのでは
ないのか、とさえ疑うほどだった
私は思った 撃ならば私が仕えるに値すると
私は思った 彼の力と信念があれば世界さえも変えられるかも
しれないと
...だが、喜びも束の間、鎧を外した撃は突然倒れてしまった
愛紗「っ!?撃!!」
慌てて後ろに倒れる撃の体を受け止めた
「撃!しっかりしろ!撃!」
その体を揺さぶるが反応はない、呼吸は...ちゃんとしている
「良かった、息はしている。」
撃を受け止めたまま空を見上げるが太陽はもう沈みかかっていた
もし、このまま撃を抱えたまま下山しては日が完全に沈むまでに
村に戻ることはできないだろう
......やむを得ないか
「おい、お前、張飛と言ったな。」
張飛「な、何か用かなのだ。」
愛紗「頼みがある、今日一晩だけで良い、私とコイツ、撃を泊めてくれないか?」
張飛「な!?何で鈴々がそんな事をしなくちゃいけないのだ!」
愛紗「...頼む。」
そう言って頭を下げる これでもダメなら何とかするしか
女の子B(妹)「親び〜ん、泊めてあげようよ。じゃなきゃかわいそうだよ。」
男の子A「そうだよ、悔しいけど、俺たちを守ってくれたのはアイツなんですから、
せめてそれくらいは...」
張飛「......確かに、みんなの言う通りなのだ。...おい、お前。」
愛紗「...何だ?」
張飛「ついてくるのだ。」
子供たちと一緒に小屋の方へ歩いていく張飛
私は眠った状態の撃を背負いながら小屋の中に入り、床に撃を横たえた
私は張飛と言う名の少女に向き直り、礼を述べた
愛紗「受け入れてくれた事、感謝する、今からでは日が沈み切る前に村には
着けそうにもないからな。」
張飛「礼などいらないのだ。鈴々はみんなの意見を聞き入れただけなのだ。
お前に感謝されるような事はしていないのだ。」
フンっ!と鼻を鳴らしながらそっぽを向いてしまう張飛
「...起きたらソイツの伝えるのだ。...助けてくれてありがとう、って言っていた
と伝えておいてくれなのだ。」
愛紗「わかった。必ず伝えよう。」
張飛「...鈴々は隣で子供たちと一緒に寝てるのだ。ここは好きに使って良いのだ。」
愛紗「...そうか、ありがとう、張飛。」
礼に対して返事もせずに張飛は隣の部屋に入って行った
さて、私も今日はもう寝るとするか
いまだに眠ったままの撃の横に座り、そのまま体を倒して撃に寄り添うように
眠りについた
SIDE 撃
.........俺ってどうなったんだ
俺はついさっき、隊長役人を撃ち殺して、変身が解けて、倒れた所までは
覚えている んで目を覚まして周りを見たら俺の右隣で愛紗が寝息を
立てながら眠っていた
俺は彼女を起こさないように起き上がりながら、窓から入る月と星の明かりを
頼りに扉を見つけ、外に出た
そこには満天の星空が輝いていた
どうやら俺は少なくとも3〜4時間は寝ていたらしい
振り返って出てきた建物を見るが、どうやらここはあの張飛って子の
家らしい
おそらく倒れた俺を愛紗がここで看病させてほしいとでも言って説得したのだろう
そう思いつつ周りを見回すが、まだそこに残っていた
それは全部で9個の死体だった
地面は血を吸い赤黒く染まり、目を見開いている死体が転がっていた
撃「......片づけるか。」
そうだ、この人たちを殺したのは俺だ
俺が背負う業だ もう迷うな 戦うしかもう生きる道は無いんだ
時間をかけて林の中まで死体を引きずって行って
適当にあった太さの棒で穴を掘り始めた
SIDE 関羽
私はふと目が覚めた いや、まだ完全には覚醒しておらず
意識もぼんやりとしていた
撃はどうしただろうか?まだ寝ているのだろうか?
気になって横を見るとぼんやりしていた意識がすぐに覚醒した
いない!?撃はどこに!?
辺りを見回すが撃の姿はない
まさか、あの白い姿を見られたから、私の前から消えてしまったのか
一瞬、背筋が凍りつくような悪寒に襲われたが
すぐに撃の頭が置かれていた近くに彼の持つ銃が置かれていた
良かった、これがあると言う事は彼はまだ近くにいるはずだ
安心して窓の外を見るが空はまだ暗かった
起き上がった私は一度伸びをしてから撃を探すために外に出た
外はまだ薄暗いが、周りにあるものはちゃんと見えていた
その時、近くの森の中から何やら物音が聞こえてきたような気がした
気になってそっちに行ってみた
しばらく進むと誰かの人影が見えてきた
私は咄嗟に近くの木の影に隠れて、目を凝らしてそちらを見た
段々暗いのに目が慣れてくるとそれが撃だという事が分かった
私が撃に近づいたとき、撃はいきなり立ち上がり
近くの木のもたれ掛かりながら、まるで体から何かをはい出てくるかのように
思い切り吐き始めたのだった
SIDE 撃
そうだ!思い出せ!俺が殺したんだ!俺が!
もうこの事実からは逃れられない!俺は...人殺しなんだ!
俺はさっきの戦いを思い出して、気持ち悪くなって吐いてしまった
でも、これで良いんだ これが事実なんだ 決意が揺らいじゃいけないんだ
俺は...人を救うために、人を殺すんだ!
SIDE 張飛
鈴々は今日はあまり寝付けなかったのだ
今日はみんなが家に泊って行ってくれたけど、あんな事があった後じゃ
騒ぐ気にもなれなくて、結局すぐに寝ちゃったのだ
でも、鈴々はうまく眠れなくて夜中に起きてしまったのだ
その時、外から物音がしたので出て行ったら
丁度あの白い鎧と不思議な物を使ってあいつらをやっつけた男が
奴らの死体をどっかに運んでいく所だったのだ
最初はてっきり身ぐるみを剥いで金にしようとしてると思ったから
鈴々はアイツの後をつけて懲らしめてやろうとおもったのだ!
...でも、違ったのだ アイツは太い木の枝で地面を掘って穴を作って
その中にあいつらの死体を入れて、土を被せてその上に丸い石を
置いていたのだ きっとお墓なんだと何となくわかったのだ
しばらくすると、あの男と一緒にいた女も来たのだ
ばれない様に隠れてっと
そう言えば、あいつらの名前を聞いてなかったのだ
鈴々は木の影に隠れて女の方から見えない場所でさっきのお墓の方を見ていたのだ
すると今度は男の方が苦しみだして木にもたれ掛かって思いっきり吐いちゃったのだ!
SIDE 関羽
愛紗「撃!!」
私は隠れていた木の影から飛び出して撃の方に走り寄った
撃「...愛紗、か...ウグッ!?...オエェェッ!」
愛紗「撃!どうしたんだ!?大丈夫か!」
撃「気にしないでくれ、時期に、収まる...ウプッ!?
ウゥッ!?......ハァ、ハァ、ハァ、ハァ。」
一体どうしたというのだ!撃は大丈夫なのか!?
その時、私は横に土が盛られ、石が置かれた物が9つあるのに気付いた
9つ?......まさか!?
愛紗「撃、お前まさか、これは...」
撃「そうだ、あの役人たちの墓だ。」
近くにあった葉っぱで撃は口を拭っていた
愛紗「なぜそんな事をしているのだ!こいつらには情けは要らん!」
撃「違うんだ、これは俺の覚悟なんだ。」
愛紗「え?」
撃「俺はこれからも人を殺す事になるだろう、だからこそ
俺は誓うんだ。俺は人を生かすために人を殺す、
後戻りは許されない、俺は業を背負うんだ。
前の弱いだけの自分を捨てるんだ。」
そう言って木に手を掛けながら立ち上がった撃
「前の世界にいた俺はただ周りに流されるだけだった。
一人になるのが怖くて、自分の意見を前に出すことも出来なかった、
俺は変わりたいと思った...けど、俺にそんな勇気なんて
無かった。俺は臆病者なのさ。でも、こっちの世界に来て吹っ切れたよ、
だから俺は人の死と罪を背負うって決めたんだ。」
愛紗「この墓は、その決意の表れだと言うのか?」
張飛「......何で、そんな事、してるのだ?」
すると近くの茂みから張飛が現れた
こいつ、ひょっとしてずっと見ていたのか
SIDE 張飛
あの男、ううん、あのお兄ちゃんとっても辛そうなのだ
お墓を作ってる時も、今まで話してた時もずっとずっと辛そうだったのだ
張飛「......何で、そんな辛そうな事をしてるのだ。」
撃「......変わるって、変えるって決めたから。
逃げないで、立ち向かって、俺は俺の道を進みたいから、
だから例え、辛くても、痛くても、乗り越えるって決めたから、
これは俺の偽善なのかもしれないけど......もう、
後悔だけはしたくないんだ。」
このお兄ちゃんは、強いのだ、力とか腕っぷしじゃなくて、なんかこう
心が強いと思ったのだ
「そうだ、まだ張飛ちゃんには名乗ってなかったね。
俺の名は神宮司、字は撃って言うんだ。よろしく。」
愛紗「では、私も、我が名は関羽、字は雲長だ。」
撃「張飛ちゃん、俺たちは君を説得するために来たんだ。話を聞いてほしい。」
張飛「...だめなのだ。助けてくれた事には感謝してるのだ。でも
それとこれは別なのだ。」
愛紗「そうか、では張飛、私と戦え。」
撃「愛紗?」
愛紗「本来なら昼間にやり合うはずがとんだ邪魔が入ったからな。
今は邪魔するものはいない。もしお前が勝てば、私たちはお前の説得を
諦める。だがもし私が勝ったら...」
張飛「勝ったら?」
愛紗「...私たちの話を聞いてくれ。」
張飛「...わかったなのだ。」
愛紗「そうか、では、どこで戦う?」
ちらりと撃の後ろを見る張飛
ここじゃダメなのだ、お兄ちゃんの決意の場、荒らすわけにはいかないのだ
張飛「小屋の前で、元々そこでやり合うはずだったのだ。同じ場所で
決着をつけるのだ。」
愛紗「わかった、行こう。撃、お前はどうする?」
撃「俺も行くよ。」
そしてもと来た道を戻って小屋の戻ったのだ
SIDE 撃
俺達は張飛ちゃんの小屋の前の開けた場所に戻ってきた
俺は戦わないから近くの岩に腰かけた状態で愛紗と張飛ちゃんの
戦いを見守る事にした
張飛「......それじゃ...行くのだ!」
愛紗「来い!張飛!」
先行したのは張飛ちゃんか......押してるな、あんな体なのに
パワーはかなりのものだな 受けた愛紗の手が震えてるし
戦いは、互角だな
パワーだけなら張飛ちゃんが有利だけど
愛紗はこれまで実戦で培ってきた経験と技量がある
こりゃお互いに決め手に欠けてる状態だな
それから大体2時間くらい経ったかな?
もう空も明るくなってきた
...っと、どうやら決着が付きそうだな。お互い疲れてきたようだ
攻撃を上に避けた愛紗が着地した所を後ろから追撃する張飛ちゃん
それを青龍刀の柄の部分で受け止める愛紗
...そろそろか
愛紗「...惜しいな。」
張飛「はぁ?何の事なのだ。」
愛紗「これだけの力を持ちながら山賊ごっことはな。」
張飛「っ!?余計なお世話なのだ!」
愛紗「張飛よ。お前は幼い頃に両親を殺されたそうだな?」
張飛「それがどうしのだ!?」
愛紗「...私も幼い頃に両親を殺された、村が戦に巻き込まれ、
父も、母も、そして兄者も...私は誓ったのだ、
こんな悲しみを繰り返したくない、2度とこんな悲しみのない
世界を目指そうと。」
張飛「それが鈴々と何の関係があるのだ!」
撃「あるんだよ、関係が。」
立ち上がって二人の近くに立つ
愛紗「撃...」
撃「今でも戦乱の世は続いている、もしこの戦乱を止める事が出来なければ
君のように、親を亡くした子供たちが一人で生きていかなくてはならなくなる。
今、小屋で寝ている子達もそうだ。もし、今この時、あの子達の親が住む村が
賊に襲われ、焼き払われれば、あの子達も家族を失う。君のように。」
張飛「...そこの関羽は、家族を殺されたことはわかったのだ...でも!
家族を殺されていないお前になにがわかるのだ!?」
撃「...確かに、俺は親族を殺されたわけではない。」
張飛「なら、偉そうなこと言うななのだ!」
撃「...それでも、もう会う事は不可能だろう。」
張飛「え?」
撃「俺は...遠い遠い国から、この国に飛ばされてきた。
俺は帰り道をしらないから、家族がいる国に帰る事もできない。
もう、死別と言ってもいいだろう。」
張飛「そんな...」
撃「俺は君じゃないから、君の悲しみを完全に理解する事はできない。
それでも君の悲しみの一端くらいは理解できる、
それに、大切な人との別れがどれだけ辛いかも知っているつもりだ。」
言い終えて愛紗の方を見る それに気づいて愛紗もうなずき返してきた
愛紗「だからこそ、私達はこの力を世直しのために使おうとしている。
お前は変えたいとは思わないか?こんな世の中を。」
張飛「ううぅぅぅ...うりゃあぁぁぁっ!!」
再び愛紗を攻撃し始めた だが、先ほどまでとは違い、唯々蛇矛の柄を
青龍刀にたたきつけるだけだった
「そんなの分からないのだ!鈴々はただずっと寂しくて!
でもどうしていいかわからなくて!それで!それで!」
その時、青龍刀が弾かれ、再び愛紗に向けて、蛇矛が振り下ろされそうになった
俺はそれを右手で受け止めた そして空いた左手で張飛ちゃんの小さな体を
抱き寄せた
「え?」
撃「君は今まで一人で頑張ってきたんだね。でも、もう大丈夫だよ。
君はもう、一人じゃないから。」
それを聞いて張飛ちゃんは持っていた槍を落としてしまった
張飛「ぅぅぅぅぅ......うわわわあぁぁぁぁんっ!!」
感極まったのか張飛ちゃんは泣き出してしまった
「ホントに、ホントに、鈴々はもう一人じゃないのかなのだ?」
撃「あぁ、君は一人じゃない、それに君には頼もしい仲間がいるじゃないか。」
そう言って後ろの小屋のほうに視線を移す
SIDE 張飛
ウグッ グスッ 何年振りなのだ 人に抱きしめてもらえるのは
人の肌が温かい事、鈴々はすっかり忘れていたのだ
お兄ちゃんの温かい体に触れてるだけで、また鈴々は泣き出して
しまったのだ〜!
張飛「うわわわあぁぁぁぁん!寂しかったのだ〜!もう、一人は嫌なのだ〜!」
そんな鈴々の頭をお兄ちゃんは優しく撫でてくれたのだ
撃「今は、好きなだけ泣いていいんだよ。子供は泣いて良いんだ。」
張飛「うん、グスッ。」
撃「泣いて、辛い事を忘れるんだ。」
張飛「うん!...ウ、うわわわあぁぁぁぁん!」
今は泣いて良いって言ってくれたのだ お兄ちゃんは鈴々を包み込んでくれたのだ
お兄ちゃんは、とても温かかったのだ
SIDE 撃
しばらくして、落ち着いたのか張飛ちゃんは岩にもたれ掛かる俺の膝の上にちゃっかり
座っていた
張飛「勝負は...鈴々の負けで良いのだ。」
愛紗「え?良いのか?」
張飛「勝負の最中とはいえ、あんなに泣いちゃったから鈴々の負けでいいのだ。」
愛紗「それか、では、私達の話を聞いてくれるな?」
張飛「...わかったのだ。」
愛紗「そうか、じゃあお前には今日、村でいたずらをした人や庄屋殿に
謝罪をするんだ。...無論、私と撃もお供する。良いな?」
張飛「うん。」
良し、これでOKっと
......いかん、睡魔が
安心したら気が抜けたからスゲー眠くなってきた
愛紗「...それでは...おい、撃、どうした眠いのか?」
撃「わ、悪い、ぶっ通しでいろいろやってずっと闘いを見てたら
眠くなってきた。少しだけ、眠らせてくれ。」
...まずい、もう、意識が......
SIDE 関羽
撃はそう言うと、瞼を閉じて寝息を立て始めた
眠ってしまったようだ しかし...
張飛「じゃあ鈴々もちょっとだけお兄ちゃんと一緒に寝るのだ。」
そう言って張飛は撃の懐で丸くなって、ってちょっと待て!?
愛紗「何でお前がそこで寝るんだ!?」
叫ぶと張飛が煩わしそうにこちらを見てきた
張飛「何でって、鈴々がどこで寝ようがお前には関係ないのだ。」
愛紗「だからって何で撃の上で眠るのだ!?」
張飛「お兄ちゃんは鈴々を優しく抱きしめてくれたのだ!
だから鈴々がお兄ちゃんの傍にいて何が悪いのだ!」
くっ!確かにそうだったが!だが納得できない!
私だってまだ撃に言ってない事があるのに!
と言うかすでに張飛も寝息を立て始めてしまった!
関羽「はぁぁぁ〜」
私もため息が出てしまう 仕方ない
私も少しだけ寝よう
撃の横に腰を下ろし、その肩に頭を乗せるように寄りかかり
私も眠りについた
SIDE 撃
..................どうしてこうなった?
木々の間から差し込む光が俺の顔を直撃して
俺は目を覚ました......起きたのはいいんだが、
ふと下の方から寝息が聞こえてきたと思ったら
張飛ちゃんが胡坐をかいた俺の膝の上で寝ていて、俺の服を掴んでいた
仕方ないと思った時、左肩に圧力がかかっているのに気づいてそちらを見たら
愛紗が俺の肩に頭を乗せながら眠っていた
.........動けない、下手に動くと2人が起きちゃうし
仕方ないからしばらくじっとしたまま昇ってくる太陽を見ていた
愛紗「......う、う〜ん。」
しばらくして、愛紗も目を覚ましたようだ
撃「おはよ、愛紗。」
愛紗「...ご主人様、おはようございます。」
ん?寝ぼけてるのか?
撃「おいおい、どうしたんだよ愛紗、まだ寝ぼけてるのか?」
そう言われて、ほけ〜としていた顔がみるみる赤くなっていく
愛紗「......すすすすみません!私ついご主人様の肩で寝てしまって!」
撃「大丈夫だって、だから落ち着けって。と言うか何でご主人様?」
俺、寝てる間に愛紗に催眠術でもかけたのか?
愛紗「あ、いや、これはその......撃、お前に話がある。」
どうやら冷静になったようだ
「私を、お前の家臣にしてほしい。」
前言撤回、絶対まだ寝ぼけてる
撃「はぁ、一応、なんでそうなったのか理由を聞いて良いか?」
愛紗「...出会って間もないお前にこんなことを言うのはおかしいと言いたいのだろう?」
撃「そうは思わないが、俺は理由が知りたいんだ。俺なんて、人が仕えるような
できた人間じゃない、俺なんて、臆病者さ。」
苦笑いがでてきた 正直、誰かの上に立つなんて俺には無理だ
「俺は愛紗が仕えるにたる人間じゃないよ。きっと...」
愛紗「なぜ、なぜそう考えるのだ!?お前は立派な信念をもって子供たちを助け!
私すらも救ってくれたじゃないか!そしてその力はまさに英雄!
お前の持つ怒りはこの世の理不尽すら焼き尽くすほど力を持っているじゃないか!
なのになぜ!?」
撃「......怖いんだよ。」
愛紗「え?」
撃「...誰かが俺を慕ってくれるのはうれしい。...でも、その期待に
答えられる自信が俺には無いんだ。誰かの期待を裏切ってしまうのが
怖いんだ。」
愛紗「お前の、誓いは、嘘だったのか。」
撃「え?」
愛紗「お前は、変わると誓ったんじゃないのか!それは嘘だったのか!?」
撃「違う!それは嘘じゃない!...でも俺にもわからないんだよ!
変わりたいとは思ってる!でも、俺には勇気がないんだ...
頭の中もグチャグチャで、もう訳が分からないんだ。」
結局俺は口先だけなんだ、変わりたいと思っても、乗り越えると誓っても
結局は臆病なまま、いっそ、あの時死んでいれば楽になれたのかもしれない
愛紗「...そんな事か。」
撃「ッ!笑いたきゃ笑えばいいだろ......結局俺はそういう人間なんだ。」
会って1日共にした愛紗だったが、それももう終わりか...
愛紗「...何を勘違いしているかしらんが、私が言ったのは、お前には勇気がない
と言う事をそんな事かと言ったんだ。」
撃「何?」
愛紗「お前のどこに勇気がないんだ?昼間の時、お前が敵の恐怖し
戦意を失っていたら、あぁはならなかった。」
撃「あの時は、無我夢中で愛紗や張飛ちゃんや子供を守る事しか
考えてなかったから。」
愛紗「その誰かを守りたいという考え自体がお前の勇気だ。
撃、お前は自分が思っているより勇敢だと言う事を理解すべきだ。
良いな?」
撃「...わかった。」
愛紗「うむ、わかればよろしい。...それで、私を家臣にしてくれるのか?」
撃「それはそれ、これはこれ。」
愛紗「なっ!?良いじゃないか!」
撃「いやな、せめて立場を変えるって話だ。そうだな〜主と家臣以外なら、
家族とか?でなければ兄弟とか?あれ?愛紗って歳いくつだっけ?」
帰ってきたのは、ビンタだった
「いってぇぇぇぇっ!!」
愛紗「女に歳を聞くものではないぞ!まったく!」
撃「わかったよ。ならさ、兄弟の契りってのでどうだ?
立場は対等、それなら文句はないだろ?」
愛紗「...わかった、それで構わない。」
撃「それじゃ、改めてよろしく、愛紗。」
その時...
張飛「それじゃあ鈴々もお兄ちゃんと兄弟の契りを交わすのだ〜!」
って張飛ちゃん!?いつから起きてたの!?
愛紗「お、お前!?いつから!?」
張飛「いつからって、お前がお兄ちゃんの『家臣にしてほしい』って言った
所から大体聞いていたのだ。」
要はほとんど聞いていたという事か
撃「...張飛ちゃん、その事だが...」
張飛「...鈴々なのだ。」
撃「え?」
張飛「お兄ちゃんなら、鈴々の真名を呼んでいいのだ。」
撃「そうか、なら鈴々ちゃん、聞いてくれ。
もし、ここで俺と兄弟の契りを交わした場合、それは俺達と一緒に旅を
する事になる。俺と愛紗は今は世直しの旅、みたいなのをしてるんだ。
鈴々ちゃんも一緒に来るか?」
鈴々「当然なのだ!お兄ちゃんと一緒ならどこまでを付いていくのだ!」
撃「...そうか、心強いよ。これからよろしく、鈴々ちゃん。」
鈴々「よろしくなのだ!」
...ってちょっと待てよ?...もし俺と愛紗と鈴々ちゃんが兄弟の契りを
交わした場合...
撃「なぁ、もし俺達3人で契りを交わした場合、愛紗と鈴々ちゃんって...
姉妹になるのか?」
鈴々「そうなるのだ!鈴々にお姉ちゃんができるのだ!」
愛紗「ちょっと待て!なんでそうなる!」
鈴々「...ダメかなのだ?」
否定されて涙目になる鈴々ちゃん
それを見てたじろぐ愛紗
愛紗「...仕方ない、なってやるさ、お前の姉に。」
鈴々「本当かなのだ!これで鈴々にお姉ちゃんとお兄ちゃんができたのだ!」
飛び跳ねる鈴々ちゃんとやれやれと言った表情の愛紗
俺はそれを見て微笑ましくなった
撃「...兄弟ってのも、悪くない、か。」
その後、起きてきた子供たちと一緒に下山して村に戻り、
俺達3人と子供たち5人全員で庄屋様の家に行き、何とか許してもらった
その後、村の人や庄屋様に見送られ、俺達3人は村を後にした
愛紗「良かったではないか、村の人たちも庄屋様も
快く見送ってくれて、これもお前がちゃんと謝ったからだな。」
鈴々「うん...」
元気ないな、まぁ、察しはつくけど
愛紗「どうした?もう村が恋しくなったか?」
鈴々「そうじゃないのだ。山賊団のみんなが見送りに来てくれなかったのだ。」
やっぱり気にしてるんだな
「きっと鈴々はいい親びんじゃなかったから...」
泣きそうな鈴々ちゃんの頭に手を置いた
「お兄ちゃん?」
撃「そう考えるかどうかは、あれを見てからでも遅くはないじゃないか?
ほれ。」
そう言って山道から見える鈴々ちゃんのいた小屋を指さす
そこでは5人の子供たちが山賊団の旗を振っていた
男の子A「武者修行して強くなってきて帰ってきてね〜!」
女の子A(姉)「私達、親びんが帰ってくるのをずっと待ってるからね〜!」
鈴々「みんな...」
撃「心配しなくても、鈴々ちゃんは立派な親びんだったみたいだね。」
そう言ったら泣き出しそうになってしまう鈴々ちゃん
愛紗「泣くな、旅立ちに涙は不吉だぞ。」
鈴々「な、泣いてなんかいないのだ!」
顔をごしごしと拭いてからこちらに向かって言うけど、
説得力無いよ鈴々ちゃん
愛紗「人と言うのは別れ際の顔を覚えているものだ。
立派な親びんならそんな情けない顔を覚えておいてはもらいたくないだろ?
笑顔で手を振ってやれ。」
鈴々「うん!みんな〜!行って来るのだ〜!」
こうして新たに張飛こと鈴々ちゃんを仲間に加えた俺達は3人となり、
次なる目的地を探し、旅に出たのだった
第3話 END
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第3話です。でもこれでやっとアニメ1話分です。 撃の存在で原作とはいろいろ流れが異なりますが、 それでも楽しんでくれれば幸いです。 |
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