義輝記 星霜の章 その三十八 |
【 別働隊帰還 の件 】
? 司州 河南尹 鶏洛山付近 伊達陣営 にて ?
何進が後ろを振り返り、二人の将を呼ぶ。
何進「さて、鳥巣攻略の話をする前に……阿貴に迷吾よ!」
ーー
阿貴「────はっ!」
迷吾「おうよっ!」
ーー
何進「疲れている所を済まないが、五百の手勢を纏めて、この付近の様子を確認してくれ。 どこか、我らの手助けが欲しいとこがあるのか、確認して欲しい。 その後、休息して体勢を立て直してくれ!」
阿貴「ふっ──心配など無用ですぞ、何進様! 我らの身体の鍛え方は、漢人達と違う事、お見せ致しましょうぞ!」
迷吾「何進兄者はユックリと休んで居てくれ! ───姉者達と仲良くな!」
ーー
桔梗「やれやれ………!」
紫苑「あらあら………うふふっ!」
焔耶「ば、馬鹿───っ!」
ーー
阿貴と迷吾の二人は、かなりの激戦を戦い抜いたらしく衣服がボロボロだった。 しかし、何進の命令に笑いながら請け負い、、元気な自分達の配下を呼び寄せて、左右に別れ偵察に向かう。
桔梗達は、迷吾の言葉に顔を赤らめながらも、兵に休息を取らせ──次の戦いに備えた。 戦いは未だに───決着が付いていないからだ。
ーー
何進「待たせたな。 そちらの兵の動きは大丈夫かね? 話に集中して作戦が失敗したとあっては──天城に顔向けが出来なくなるからな!」
政宗「それは大丈夫。 我らの兵は鳥丸兵だから……鳥丸兵で長になる者に何かあれば、我らに知らせるように頼んであります。 それに、手持ちの水鉄砲で攻撃する簡単な仕事だから、任せたままでも支障は無いかと!」
景綱「些か簡単過ぎるが、この戦は大陸を懸けた対戦。 緊張感を継続させる事も大事だが、適度に休息を取り大局を見極めるのが、最大の私達の役目だと考えている所存! 天城の身命を投じた策、無駄になどしたくありません!」
ーー
政宗達の冷静な言葉に頷く何進。 桔梗達も話を窺いつつも、戦場の様子を気に掛けている様子。
万が一にも、話に夢中になって、敵の接近に気を許す事も無さそうだ!
ーー
何進「…………うむ。 それなら心配いらないな。 では、茨砦攻略の策を話すとするとしよう。 桔梗達も、儂の話に補足があるのなら、遠慮なく付け加えてくれ。 場所が場所ゆえ、掻い摘んで話さねばなるまい!」
「「「─────はいっ!!」」」
ーー
政宗達や桔梗達を左右に並ばせ、何進が話す鳥巣攻略の顛末。
かの砦は、松永久秀の妖術により、急成長を遂げるように細工された植物の壁。 通常、これらの壁は火矢を放てば、早急に炎上するのだが……生身の植物ゆえ水分の蓄えが尋常ではなく、何度も火矢を消されてしまう!
曹操軍配下の桂花が、火矢で攻撃したが………全く燃えずして終わり、後方より晋軍に攻められ、壊滅近い損害を与えられた事は───記憶に新しい!
その砦が────難なくと落ちた。
幾ら、松永が居なくなっても、将や手勢が詰めている場所。
そんな砦を容易く落とした作戦、是非聞きたいという──戦極の姫武将ゆえの好奇心である。
ーー
何進「………知って通り、儂らは鳥巣の茨砦に奇襲を行う為、別行動を起こした。 それは承知しておるな?」
政宗「それは無論──」
何進「しかしな……儂らは初戦で躓き、失敗した──危なく討たれるところだったが、三太夫の御蔭で窮地を切り抜けた。 天城という軍師に頼り過ぎたツケが来てしまったのだろう。 そう考えている……… 」
政宗「……………………」
何進「だがな、その御蔭で隙が出来た。 奴らは──儂らの軍勢が負けて撤退した後、こんなに早く、儂らが再攻撃するとは思っていなかったからだ!」
ーー
綱元「………それだけじゃ、砦を落とせる理由にならないよ? つまり……何か転機になる人が来たのかな。 強力な助けになる相手……だよね?」
桔梗「その通り──まさか援軍が、アノ者だったとはのう………」
◆◇◆
【 茨砦攻略 前編 の件 】
? ?州 烏巣付近 にて ?
《 何進 回想 》
何進「皆、大丈夫か………? 儂が、不用意に攻め立てたばかりに──」
紫苑「それは違いますよ? 私達も間違えていれば、閣下に注進致しますけど……私達も判断に間違いは無いと、思っていた故の行動……」
桔梗「さよう、そのような責任は臣下に任せ、閣下は何事も動じず、戦果を挙げる事に集中されよ!」
何進「だが、儂は……責任を擦り付けたままで、終わらすつもりなど無い! この結果を、次の戦いの勝利に繋げたいのだ! そうしなければ、今回の戦いで亡くなった者に申し訳が立たぬ! それに───」
ーー
儂らは、手痛く叩かれた後に、鳥巣より二里(約800b)ほどまで逃れ、態勢を直しながら考えていたのだ。
今回の初戦で傷付いて手当てを受ける者、運悪く捕捉され殺された者、儂を信じて付き従いし者の想いを無にしてはならぬ!
それに、儂宛ての竹簡に記されていた天城からの秘策を………決めねばなるまい。
颯馬『………この泥団子が、勝敗の有無に結び大事な物。 茨の壁へ投げ込んで刻を待って下さい。 刻を待ち、あと一手放てば……必ず勝てます!』
儂はもう一度、懐より竹簡を取りだし、もう一度読み直した。
連日連夜の働きか……筆の動きが細く字が小さく見える。 黄巾の乱以降から、頻繁に竹簡のやり取りをしていたが、こうも生気が無い筆使いは初めてだ。 策も、儂だけの為に立てている場合では無いのだろう。
ならば………この国で最高位を誇る武官筆頭の儂が、これきしの事で敗北、戦死などすれば………悔いても悔いきれぬ!!
そんな時、儂の耳に──吉報が入ったのだ!
ーー
思春「───何進様、援軍が参りました!」
何進「おお───有り難い! しかし、いったい誰が儂の下に!?」
ーー
真桜「───大将軍のオッチャン! えらい待たせてもぉてぇ堪忍なぁ!?」
沙和「ま、まま、真桜ちゃんっ!? この方は、華琳様より遥かに上の方なの! そ、そんな口を聞いたらぁぁぁぁ───」
何進「────うむっ?」
沙和「────あ、あぁ…………ご、ご免なさいなのっ!! ほらぁ! ま、真桜ちゃんも、早くぅ、早く謝ってえええっ!!!」
何進「おお……これはこれは──『師匠』! 御自身、自ら出張られるとは……この何進──感涙で前が見えませぬ!!」
真桜「何言うとぉんのや! どのみち、こぉんな暗闇の中で、うちの顔が分かるかい! 大将軍のオッチャン………ボケるんやったら、まだ早いでぇ!?」
何進「うぐっ! さ、さすが──真桜師匠、見事なツッコミだ! まだまだ、儂も修業が足らんな………」
沙和「─────ゑっ!?」
ーー
───あの時の感動は忘れる事ができん。 儂のツッコミを指導してくれる『真桜師匠』が、わざわざ不肖の弟子を助けに来てくれたのだ。
師匠のツッコミは、天城のツッコミとは、また違う洗練されたツッコミを行うのでな? この拍子が何とも絶妙で──何? 長くなりそうだから、先に進めろだと? しかし、此処が……わ、分かった!
些か物足りんが仕方あるまい。 取り合えず、この場に儂のツッコミの師である真桜師匠こと『李曼成』、御友人になる『于文則』が、援軍で来てくれたのだ。 小型の発石車なる奇妙な絡繰りと共にな。
いや……その………天城のツッコミに対して、儂のボケが切れが悪いと……軍師達がな………………そんな話は省けか? し、仕方あるまい。
と、とにかく………儂らの前に、真桜師匠達、いや……人が二人で運べる程の小型化したという発石車が現れたのが、儂らを勝利に導いたのだ!
◆◇◆
【 強襲 の件 】
? 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて ?
周辺は未だに……百万以上の大軍が凌ぎを削っている。
戦況は七割近く有利に洛陽勢に形勢が傾く。
されど──時は止まらず。
ーー
光秀「颯馬、しっかり……しっかりして下さい!!」
愛紗「───天城様っ!」
颯馬「…………………………」
義輝「───いかん! 颯馬、颯馬! しっかりするのじゃ!!」
信長「光秀! 急ぎ、颯馬の脈と呼吸を測れ!!」
光秀「────は、はいっ!!」
ーー
小太郎が華陀を呼びに行き、早く四半刻以上(約30分)が過ぎている。
光秀達は、華陀が間に合わないのなら、中央に陣取る皇帝の側に向かうつもりで颯馬の身を運んでいた。 皇帝の側なら、専属の薬師が居るし、何より颯馬の事を彼女達と同様に心配している君主が……無事を祈りつつ戦っている!
二人が、声が枯れるほど呼掛けながら、颯馬の意識を途切れさせないように慎重に運ぶ。 しかし……颯馬の意識は朦朧としており、頷く事も呼掛けに応じる事も……段々回数が少なくなっていく。
しかし、周辺が軍勢で埋め尽くす中、行く道は限られている。
ーー
光秀「──の、信長様ぁ! 颯馬の心の臓が………かなり弱まっています! 呼吸も同じく───ど、どうすればぁぁぁっ!?」
信長「たわけぇ! 何を泣きそうな顔をしておる! 蘇生術を施せ、決して……決して諦めるではないわぁ!!」
ーー
愛紗「わ、私が………あの様な事をしたばかりに………………」
義輝「過ぎ去った事を、わざわざ思い起こしたところで……何となるっ! 頭を動かし考えよっ! 手足を動かし──颯馬を救う為の行動を怠るな!!」
ーー
凪「何故………天は、同じ天を冠する天城様を苦しめるっ! この方は、忠義に厚く、大陸の平和を願い──御自分の身命さえも策の一部に変えて、敵を阻んだのに! 何故だ、何故だぁ! どうして、そこまで天城様を───っ!!」
半兵衛「天命なんです……大陸という何千何万が存在する世界を、己の身命だけで犠牲に護るというにはねー。 どうしても……必要な苦しみなんですよー!」
凪「ならば、代わりに私が───!!」
半兵衛「………………………それが出来るのなら、この半兵衛さんが、とうの昔に代わってますー! 半兵衛さんなら既に死んでるいる身、これ以上……哀しむ者など誰も居ないんですからー!」
ヒサヒデ「ヒサヒデハ………………………」
凪「天城様ぁあああ────っ!!!」
ーー
皆が心配して、颯馬の側に駆け寄る!
颯馬達を導いた者の一人ゆえ、奇蹟を信じて向かうつもりでいたのだが、それすらも不可能の状態になろうとしていた。
───果たして………風前の灯火である……天城颯馬の命は?
★☆☆
義輝「ええぇーい、小太郎は何をしておるのじゃ! あまりにも時を掛けすぎておる! 早くしないと颯馬の命数が尽きてしまうぞ!?」
信長「待て──義輝よ! あの小太郎が……な、何をするかぁ!?」
突如、癇癪を起こし信長に食って掛かる義輝。 信長が驚き、義輝を押し止めようと声を掛けると、当の義輝が信長の袖を引き抱き寄せる!
信長「わ、私に──そのような趣味など!?」
義輝「(わらわの真後ろを──)」
信長「────!」バッ
ーー
義輝が、信長の耳に口を寄せ何かを呟いた後、信長と離れた。 信長は義輝の顔に向き直り、軽く頷いて嗤う。
それを見た義輝が、信長に向けて更に大声で叫ぶ!
ーー
義輝「───小太郎は何を油を売っておる! 颯馬が危篤だというにーっ!! ああ──これでは颯馬の命が失われて───!!」
信長「だから待てぇ──義輝! 小太郎程の忍びが遅くなるのは、理由があるのだ! 何処かの馬鹿共が邪魔に入り、此方に来れないよう足止めをされているのかもしれん! 例えば───貴様らの為になぁっ!!」
ーー
信長が、腰に付けている脇差しの付属品──『小柄(こづか)』を直ぐに取り外し、義輝の真後ろの虚空に向かい投擲した!
─────!
狙いは、何も無い空間──周囲の将は義輝、半兵衛、ヒサヒデを除き、疑問符を浮かべるが……小柄は空中で止まる!
空間に細波が現れると、左慈が于吉を背負ったまま、飛び出して来た。
ーー
左慈「…………………俺の気配を見破るとは……人形の分際で生意気な! だが──そんな小道具で、俺を害する事なぞ出来んぞ!!」
義輝「ふふん、わらわに対峙した事───後悔するがよい!」
信長「ようも───我らの前に顔を出した! この第六天魔王の名に掛け、貴様らに目にもの見せようぞ!!」
凪「この大陸の争乱の源、天城様を付け狙う黒幕………この楽文謙の名において、必ずや成敗します!!」
ーー
小柄は、左慈には刺さらなかった。
左慈は、小柄の目標が自分の頭だと分かると、首を傾げる最小限の動きで回避を行う。 その為、小柄は目標であった『左慈』を外した結果になる。
しかし、避けられた小柄は、何処に行ったのか?
それは、目標線上にあった、于吉の額へ刺さっていた。
ーー
于吉「あ、あの…………左慈? 私の額にコレが………生えているのですが?」
左慈「心配するな………俺は大丈夫だ……」
于吉「そ、そうですね……左慈が大丈夫……じゃぁなくて、私が──っ!!」
義輝「…………そこのお主、于吉とやらに刺さっているが──良いのか?」
左慈「ふん、コイツを倒すつもりじゃなかったのか? そんな甘い事をほざいているなら、俺を倒す事など不可能だ!」
信長「いや………な? 甘いではなく………お前達が、そんな簡単に殺られると……黒幕としての威厳とか空気が………」
左慈「それにな………俺達ばかりに目を奪われたら、大事な者を失うぞ?」
「「 ──────!? 」」
凪「────しまった!?」クルッ!
ーー
義輝、信長が──左慈と于吉の事でツッコミを入れていたため、分からなかったが、凪は直ぐに気付き後ろを振り返るっ!!
───そこでは!
ーー
光秀「きゃああああ───っ!! そ、颯馬ぁあああっ!!」
愛紗「天城様ぁあああ──っ!」
順慶「────やっと、やっと………私の手の中に! 颯馬様!!」
ーー
筒井順慶が、颯馬を光秀と愛紗より奪い取り──恍惚の表情で、颯馬を注視していた。
◆◇◆
【 颯馬の運命 の件 】
? 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて ?
凪「────今、助けに参りますっ!!」
義輝「おのれぇ───っ!」
信長「今、助けに向かうぞぉ───颯馬ぁ!!」
三人とも──颯馬の様子に気付き、左慈に背中を向けた!
左慈「───そこまでだ! 『縛』!!」
ーーーー!
凪「───しまった!」
義輝「こ、これが───かの不動金縛りの術………か!」
信長「ふ、不覚! ようも──敵に背を向ける不利を……考えなかったとは! ぜ、是非も無い!!」
ーー
左慈は、冷静に妖術を使い義輝達を足止めする。
悔しげに顔を歪ませる三人の視線には、地面に横たわり……必死に颯馬に向かい手を伸ばす光秀、愛紗の二人の姿! 順慶の顔が、五人の無様な様子を見て、颯馬を得た喜びに更なる拍車を掛けて、笑顔を輝かせた!
左慈達は、順慶の様子を確認するため、術を使い移動したが……順慶より早く到着し、尚且つ義輝に見破られ姿を現した。
そして、到着した順慶は──左慈達を囮に逆方向に回り込み、油断と颯馬の様子に気を取られていた光秀達を打ち倒し、颯馬を奪い取ったのだ!
ーー
左慈「丁度いい所で出くわしたようだ。 最大の難敵である天城颯馬が……虫の息じゃないか! これなら息の根を止める事など造作も無いな──順慶?」
順慶「………………その通りですわ、老師! これで、颯馬様は私の物に!」
于吉「……………………(# ̄З ̄)」
左慈「────よし、それでは……さっさと、その目障りな奴を殺せ!」
順慶「………………………」
左慈「順慶───どうした!?」
順慶「老師───お願いがあります。 颯馬様を私のやり方で、殺害して構いませんか? 私の死の接吻で、あの世へと送り出してあげたいのです!」
ーー
左慈が『颯馬抹殺』の命令を出すと、順慶は潤んだ瞳を見せながら、左慈に懇願する。
ーー
左慈「ふん、俺には……そんな軟弱な乙女心は知らん! お前が確実に処理するなら、何も言わんし文句も出さない! ────それだけだ!」
順慶「ありがとうございます───老師!!」
ーー
左慈より許可を得た順慶は………颯馬の顔を自分の前に向かせる。
ーー
順慶「颯馬様───この順慶からの……最後の贈り物ですわ………お受けり下さいませ…………」
ーー
光秀「順慶───お願いです! 私はどうなっても構わない! だけど、だけどぉ──颯馬だけはぁ!!」
愛紗「お願いだ、天城様を────!」
凪「その方を───これ以上、傷付けるなぁあああっ!」
義輝「─────颯馬ぁあああっ!」
信長「────半兵衛、久秀………が居ないだと!?」
ーー
順慶は、熱い吐息を吐きながら……颯馬に顔を寄せると────静かに唇を重ねた。 天城颯馬を堪能するかのように、唇を二度と離さないように──熱く強く重ねるのだった。
◆◇◆
【 順慶の想い の件 】
? 河南尹 鶏洛山付近 にて ?
私(わたくし)は、颯馬様の髪をユックリかきあげて、端整な顔を拝見して頂いているわ。 ハァ………颯馬様の寝顔、本当に久しぶりですわね。
日ノ本に居た頃より、数々の激戦を潜り抜けて来た颯馬様の顔は、いつも魅力に溢れ、私を虜にさせて下さいましたが、此方に来てからは、更に輝きを増された様子……これぞ、男(おのこ)の顔。
それに、颯馬様の分厚く逞しい身体を、力一杯抱きしめて分かりましたが、私を抱いて下さった時よりも、一回り大きくなっていますわね。
しかも、余分な肉も付いていない理想的な体型。
颯馬様…………ああ……颯馬様。
私───離したくないですわ。
もう──寂しさなんて……味わいたくありません。
だけど…………
★
颯馬様、貴方の御活躍は……私や久秀、老師達の企みを破り、切歯扼腕させて貰いましたが、その反面──颯馬様が采配を取られ、神謀鬼策を自在に演出する度に、私の恋心は颯馬様へ惹かれて行きました。
決して、あの様々な策は、運だとか、あの女(おなご)共達の内助の功ばかりではなく、確かな裏付けされた颯馬様の実力だということは、私……よく理解しておりますわ。
ただ、残念なのは───颯馬様のお側に、私が控えて居なかった事。
やはり………最初の予測通り、颯馬様の活躍ぶりに尻尾を振る雌犬共が寄ってきましたわね。 これも、颯馬様が颯馬様らしく振舞い、その魅力と活躍を理解したからでしょう。
共に進んで居れば、あんな女達など颯馬様に逢わせる前に、全部、私が始末して颯馬様に近付く事が無いように出来たのに………残念でなりません。
★
颯馬様………あれから、どれだけの日数が経過したのか……覚えていらっしゃいますか? 明晰な頭脳を誇る私でも、既に記憶などしていません事よ。
颯馬様が、久秀と私を置いて………旅立たれた日。
悲嘆と増悪、愛する颯馬様から見捨てられた───忌み嫌う日!
もう何ヵ月過ぎたようにも、何年も経過したような……不思議な間隔でした。
悲しき日ノ本での唐突な別れ、恋敵『松永久秀』との共闘、老師達との出会い、大陸各地での活躍───色々と、本当に色々とありましたわね。
でも、私は……どんな時も、どんな場所でも………天城颯馬様への想いを忘れる事は無かったですのよ? 必ず、自分の腕の中に──取り戻して見せると誓っていたのですから!
そして──今、私の腕に颯馬様が──いらっしゃるの!!
あの、颯馬様が───私の腕の中に!
★
─────颯馬様。
颯馬様は、ご存知無いと思いますが……貴方が刺された後、久秀と私は泣き叫びましたわ。 まるで、此の世で唯一無二の宝物を取り上げられた……幼子のように、私達は───貴方の命が消えた事を嘆いたのです。
第三者の女に、貴方の命を奪われて………………初めて颯馬様に対する私の本心を覚りました。 全く………お恥ずかしい限りですわ。
私の本当の願いは、颯馬様と共に生涯を歩みたかった。
颯馬様の一挙一動を、颯馬様の喜怒哀楽を………私も共に………と。
だから───颯馬様! 貴方は生きて下さいませ。
颯馬様の命を簒奪する権利が、今の私にはありますが──私は、そのような事を望みません。 貴方の生きていればこそ、順慶は満足ですわ。
颯馬様の御活躍を───あの世の何処かで……望ませて欲しいのです!
颯馬様、どうか──『生きて』下さい!!
私の力を、生命力を──全部、颯馬様に捧げますから!!
★
老師………私を……仲間に誘っていただきながら……
嘘を付いて…………申し訳ありません……………
私は……………颯馬様に生きて………頂くのが………
一番の選択と………………決めていました。
颯馬……さま。
ご免なさい………ご免な………さい。
………貴方は…………私の事を………恨んでいるでしょうね?
貴方を愛し………側に置きたい為だけで…………私は………多くの命を……吸い尽くしました。
大陸の戦乱を……呼び起こし、あの日ノ本と同じく……戦火を巻き起こした私を! 幾ら……乙女の嫉妬の憎しみと云えど……申し訳ありません。
だけど………私、筒井順慶………は、天城颯馬様を……愛した事………誇りに思います。
それに、こうして……思う存分に力を振るえた事……老師にも感謝しております。
それにしても、まさか……怨敵の久秀と……………手を組み張り合う事になるなんて………ね。
ふふ………久秀ったら…………幸せそうな………死に顔を………して。
ふふふふ……………おかしいったら………ありませんわ。
颯馬……様、颯馬………様。
ああ………颯馬様…………
私は、貴方を……愛して………幸せでした………!
左近…………
…………最後まで……………ありがと………………
ーーーーーーー
ーーーーーーー
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
義輝記の続編、このような結果になりました。
順慶も───次回で皆様の予想……通り?になり、やっと終わりが見えてきました。 来年こそは、完結して終わらせたいと思います。
説明 | ||
義輝記の続編です。 宜しければ読んでください。 | ||
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コメント | ||
スネーク様 コメントありがとうございます! 何時もの事(?)ですよw(いた) 于吉…不憫な…w(スネーク) mokiti1976-2010様 コメントありがとうございます! 左慈達も連戦でしたので、次回で最後の登場にして終息へと向かわせます。(いた) これで後は左慈と于吉を排除するのみ…でも、それが一番難しいか?(mokiti1976-2010) |
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