適当なもの2 超短編 |
青い空と白い地
「ここはどこ?」
目が覚めた後、僕の視界に移ったのは青色の空だった。
見渡す限り青色に染まっている。
おまけに白い綿のような地面。
どんな人だって「ここはどこ?」くらいは思うであろう。
当然、僕もそう思ったわけだが。
僕は何もすることもなくただじっと空を見つめた。
特に面白いことはない。
僕はどうしたんだろう?
これは悪い夢か?それとも、現実?
それさえも、おぼろげな僕の頭では区別ができなかった。
ちょい、と頬をひねる「イタッ!!」あまり、強くひねったわけではないのに激痛が走った。
多分、夢では無いらしい。
しばらくすると金色の輪を頭の上に浮かばせている男女がぞろぞろとやってきた。
はじめは僕の周りでひそひそと話していた。
しかし、僕はかなり居心地が悪かったので思い切って聞いてみようと思った。
「あのう。」
僕の言葉におじいちゃんらしい人が振り返る。
「なんじゃ」
思ったより普通の人だ。ホッと安堵するもおじいちゃんの頭の上にもぷかぷかと金色の輪が浮いていた。
「ここはどこですか?」
まずは場所を質問してみる。
「ここはのう、普通ならば君のような者が来るところではない。これも、運命かのう。」
さっぱり、わけがわからなかった。
おじいちゃんがぼけている所為か?或いは僕の脳みそが悪いのか?
僕はもう一度聞いてみる。
「ここはどういう場所なんですか?」
よし、今度は完璧だぞ。
おじいちゃんはゆっくりと答えた。
「ここはのう、ワシのような者が生きていく場所じゃ。」
もっと、わけがわからなくなった。
ワシのような者?
それは一体どのような人なのか?
正直言って、僕はこのおじいちゃんから聞くのを諦めた。
僕はおじいちゃんを横目に別の人に声を掛けた。
「あのう、すみません。」
「ん?」
今回、振り向いたのは60代くらいのおばちゃんだ。
見た目は気さくそうな人なので聞いてみる。
「ここはどこですか?」
おばちゃんはその言葉を聞くなり目を細め言った。
「かわいそうに・・・まだ、若いのにねぇ・・・・」
何ですか、その井戸端会議で訃報を聞いたおばちゃんのような反応は!?
さすがの僕もこんな人にはかなまない。すごすごと引き下がる。
いつの間にか、集団はほとんどがどこかへ行ってしまった。
残ったのはさっきのおじいちゃん。
しかし、僕はその状況の中一人で思いふけっていた。
(かわいそう・・・?)
その言葉が脳内に焼き付けられる。
どういう意味だ?僕はもう、わかっているはずだ。
その意味がどういう意味か。
ほら、よくあるじゃないか、映画とかアニメとかで。
死んだ人の頭の上には金色の輪が浮かんでいる。
そう、あの人たちは死んだのだ。
じゃあ、僕も死んだのか?
それは無いと思う。
だって僕はさっきまでピンピンしてたわけだし。
第一、死んだ人の頭の上に金色の輪が浮かんでいるって誰が決めたんだ?
神か?天使か?それとも悪魔か?
答えは一つ。
人間だ。
結局は人間の妄想なのだ。
神も悪魔も天使も。
妄想で空想なんだ。
じゃあ、この世界はなんだ?
そんなの簡単だ。
ただの悪趣味ないたずらさぁ。
後でドッキリカメラって看板を持った人がやってきて「ご協力ありがとうどざいましたー。」とか言うのだ。
悪趣味にもほどがある
それならば、納得がいくあのおじいちゃんもおばちゃんもさくらなのだ。
僕はそう、勝手に思っていると無性に走りたくなった。
どうして走りたくなったかは聞かないで欲しい。
ただ、走ってみたくなっただけである。
遠くまで見渡せる広い世界を走ってみたい。
そういう気持ちがもしかしたらあるのかもしれない。
走って走って僕は見覚えのある白い部屋を見た。
見たといっても走っていると地面が透けて見えたのだ。
白い部屋には飾り気の無いベットといくつかの機械。
僕はそれを知っている。
病室だ。
何故病室が地面の下に写っているかなんて気にもしない
だけど、僕は写っている情景を食い入るように見た。
だってそれは見覚えのある光景だからだ。
ドラマで見たとかバラエティー番組でみたとかそういうレベルではない。
実際に行って、そこの雰囲気を感じた覚えがある。
そこには一人の男が眠っていた。
瞬間的に僕は悟った。
あれは「・・・僕?」
まるで信じられなかった。
どういう仕掛けなのか、場面が変わる。
今度は病室ではなくただの部屋。
しかも、見覚えのある机に見覚えのあるポスターなど見覚えのあるものばかりだ
「今度は僕の部屋・・・・」
それを見ていると何故か悲しくなっていく。
何故だろう?
僕は反射的にその場から飛び出した。
また、走った。とにかく走った。
そして、ようやくたどり着いたのは大きな川。
今までの白い綿のような地面とは違いごつごつとした岩や砂が荒野のように見えた。
実際、荒野と呼んでもおかしく無いだろう。
僕は川岸まで行くと水を飲む。
乾いた喉に潤いが通り抜ける。
ふと、僕は川面を見る。
そこにはいつも鏡で見ていた自分の顔がはっきりくっきり映っていた。
「っ!!」
そこで気づいた。
僕の頭の上には金色に光る輪が浮かんでいた。
わなわなと僕の体が震えだす。
そのとき後ろからおじいちゃんの声が聞こえた。
「やっと、気づいたんだね。君は死んだんだ。」
僕はしばらくの間、その事実を受け止めることができなかった。
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