英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 戦争回避成功ルート
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〜トールズ士官学院・1年Z組〜

 

「早いよね……もう自由行動日か。」

「ええ、もう少し先のようなつもりでいたけど……」

「内戦が終結してからエレボニアどころか西ゼムリア大陸には様々な出来事がありましたからね……時間が経つ事を早く感じるのも仕方ありません。」

エリオットとアリサの言葉に続くようにプリネは静かな表情で呟いた。

「その中でも一番の出来事はやっぱ先月に各国が調印した『西ゼムリア同盟』だよね〜。」

「リベール王国のアリシア女王陛下が提唱した『不戦条約』に続く抑止力を持つ新たな平和条約か。」

ミリアムの言葉に続くようにラウラは静かな表情で呟き

「リベール王国、エレボニア王国、レミフェリア公国、クロスベル帝国、メンフィル帝国、ノルド精霊共和国が調印した『国家間で外交問題が発生すれば、必ずその問題を当事者である国家間同士で―――特に武力で解決せず、条約に調印した国家も交えて解決する。』事を謳う条約ですね。」

「『不戦条約』と同様強制力はありませんが、この条約に調印したにも関わらずそれを無視するような事をすれば、その国家は他の国家から白い目で見られ、信用を無くす事になりますからね。」

「しかもゼムリア大陸全土の多くの人々が崇めている”空の女神”―――エイドスさん自身が出席している所で調印された条約なのですから、そう簡単に無視する事はできないでしょうね。」

エマとプリネ、ツーヤはそれぞれ内容を思い出しながら答えた。

 

「あの条約のお蔭でエレボニアは色々な意味で救われたよな……」

「ええ……特に旧二大国―――エレボニアとカルバードに対して戦争を仕掛けたメンフィルとクロスベルから贈与してもらう予定だったエレボニアの領地の放棄する代わりに各国への”信頼の証”として”戦争回避条約”によってメンフィルとクロスベルに贈与されたエレボニアの領地の一部とザクセン鉄鉱山の鉱山権をそれぞれから12、5%ずつ―――つまり25%もの鉱山権を返還してくれるように嘆願してくれて、それらに二大国が応じて領地や鉱山権の一部が返還された事はエレボニアにとっては様々な意味で助かったでしょうね。」

「加えてあの条約がある限り、他国が衰退したエレボニアに侵略しようと考える可能性を大きく減らせられるしな。」

「ヨアヒムの時でもオリヴァルト殿下達の説明をすぐに信じて援軍を出してくれたし、アリシア女王陛下には何度感謝しても足りないよね。」

「ああ……”百日戦役”からまだ12年しか経っていないにも関わらずエレボニアの為に色々としてくれたしな……」

「フフ、アリシア女王陛下の慈悲深さはわたくし達も見習わなければなりませんわね。」

マキアスとアリサは安堵の表情で呟き、ユーシスは静かな表情で呟き、苦笑しながら呟いたエリオットの言葉にリィンとセレーネはそれぞれ頷いた。

 

「というかわたしはあの自称”ただの新妻”が各国のVIPが集まる国際会議に出席した事が今でも信じられない。エイドスの事だから絶対嫌がるかめんどくさがって、出ないと思っていたのに。」

「そ、それは……」

「確かに今までのあのエセ女神の行動や言動を考えれば、驚嘆に値するな。あのエセ女神が国際会議に出席した話を聞いた時は天変地異の前触れかと思ったぞ。」

「”女神”のエイドスなら冗談抜きで天変地異を起こせると思うよ、キャハッ♪」

「エ、エヴリーヌさん。」

ジト目になっているフィーの言葉を聞いたリィンは表情を引き攣らせ、ユーシスはジト目でフィーの意見に同意し、口元に笑みを浮かべて呟いたエヴリーヌの言葉を聞いたツーヤは冷や汗をかいた。

 

「フフ、エイドスさんもきっと混迷に満ちたゼムリア大陸を少しでも良くする為に出席したのだと思うぞ。」

「え、えっと……実はその事なのですがエステルさんからの便りによるとエイドス様に『西ゼムリア同盟』の調印式に出席して頂く為に、当初ご家族であるアドルさん達と一緒にリベール王国内を旅行していたエイドス様にアリシア女王陛下自らがクローディア姫と共に面会して嘆願したのですが、エイドス様は拒否したそうでして。アリシア女王陛下達は何とかエイドス様を説得しようとしたのですがエイドス様は色々と理由をつけて拒否しようとしたそうなのですが……それを見かねたエイドス様のご両親であられるアドルさんとフィーナ様、そしてアリシア女王陛下達に”仲介人”として依頼されて立ち会ったエステルさんが説得して”渋々”出席する事を決められたそうです。」

ガイウスの言葉を否定するかのようにプリネが苦笑しながら答えるとその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「し、”渋々”って……」

「混迷に満ちたゼムリア大陸が平和になる切っ掛けとなる調印式ですのに……」

「やっぱりそんな事だろうと思っていたよ。」

「”女神”の面汚しだな。」

「アハハ、どうせエイドスの事だからアリシア女王達の嘆願を拒否する時『何で”ただの新妻”の私がそんなめんどくさい会議に参加しなければならないんですか』とか言って、アリシア女王達を困らせたんじゃないかな〜?」

「”困らせた”で済む問題じゃありませんよ、ミリアムちゃん……」

「しかもその拒否の言葉も一言一句間違っていなさそうで、洒落になっていないぞ……」

アリサはジト目になって呟き、セレーネは疲れた表情をし、フィーとユーシスは呆れた表情で呟き、無邪気な笑顔を浮かべるミリアムにエマとマキアスは疲れた表情で指摘した。

 

「ねえねえ、プリネ。エステル達がエイドスを説得したって言っていたけど、エステルがどうやってエイドスを説得したの?どうせエステルの事だから、普通じゃないやり方で説得したんでしょ♪」

「エ、エヴリーヌさん。」

「え、えっと…………『出席しなかったら元の時代に帰るまでずっとエイドスの事を超ひいお祖母(ばあ)ちゃんって言う』という言葉がエイドス様にとって相当効果があったようでして。それだけは止めて欲しいとエイドス様が涙目になってまでエステルさんに嘆願したそうですから、恐らくそれが決定的になったかと思います。」

エヴリーヌの疑問を聞いたツーヤが冷や汗をかいている中、プリネが真相を語るとリィン達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「そ、そんな理由の為だけに……」

「”女神”なのだから恐らく相当な年月を生きて来ただろうに、そこまでして年寄り扱いされたくない思考が理解できんな。」

「ま、まあまあ。エイドスさんも女性なのですし、頭で理解はしていても”一人の女性として”気にしておられるのですよ。」

「くふっ♪”女神”を涙目にさせるなんて、さすがはエステルだね♪」

アリサは疲れた表情で呟き、ジト目で呟いたユーシスにエマは苦笑しながら諌めようとし、エヴリーヌは口元に笑みを浮かべ

「ニシシ、”空の女神”の弱点発見だね〜♪」

「今度会った時エイドスの事を年寄りの人に対する呼び方で呼んだらどんな反応をするか試してみよう。」

「そんな事をして、エイドスさんから”天罰”を降されても知らないからな。」

「エイドスさんは本物の女神様だから本当に”天罰”とかできそうだものね……」

「実際オーロックス峡谷の時に領邦軍に”天罰”としてロストアーツを放った上、アルバレア元公爵にも膨大な霊力(マナ)による攻撃を叩き込みましたし……」

それぞれエイドスに対する悪戯を思いついたミリアムとフィーの話を聞いたマキアスは呆れた表情で指摘し、エリオットは困った表情をし、エマは疲れた表情で呟いた。

 

「ま、まあ実際にエイドスさんが参加してくれたお蔭で、『西ゼムリア同盟』が持つ抑止力が高まったからよかったじゃないか。」

「うむ。理由はどうあれ調印式に出席をして貰い、『西ゼムリア同盟』の抑止力を高めてくれた事に感謝すべきだろう。」

苦笑しているリィンの指摘にラウラは頷き

「でも意外だったよね。あの条約で”戦争回避条約”で贈与されたエレボニアの領地の一部とザクセン鉄鉱山の鉱山権の一部を返還する事になるからメンフィルとクロスベルにとっては損をする事になるのに、どっちとも認めてくれたし。」

「まあ、メンフィルはその代わりに”元ノーザンブリア公国という広大な領地”を手に入れたけどね〜。」

エリオットの話を聞いたミリアムは意味ありげな笑みを浮かべてプリネ達を見つめた。

 

「それは……」

「でもそっちの方が”ノーザンブリア”って所にとってよかったんじゃないの?」

「……『西ゼムリア同盟』の条約内容の中には『”猟兵”達の雇用の禁止』という一文がありましたからね。ノーザンブリアの民達は猟兵達の稼ぎによって生活しているのですから、そのような内容の条約が調印されれば少なくても西ゼムリア大陸ではほとんど活動できない上稼ぎも当然減り生活が更に困窮する事になりますが、メンフィル領となる事でメンフィルの加護を受ける事ができるのですからノーザンブリアが長年抱え込んでいた貧困問題は解決できますからエヴリーヌお姉様の言っている事は間違ってはいませんね。」

ミリアムに視線を向けられたツーヤは複雑そうな表情をし、エヴリーヌの疑問にプリネは静かな表情で答え

「あの条約によって領地の一部やザクセン鉄鉱山の鉱山権の一部が返還される事もそうだが”百日戦役”の勃発となった原因である”ハーメルの悲劇”と”西ゼムリア通商会議”で猟兵達に”帝国解放戦線”を処刑させてクロスベルの弱味を握ろうとした件、そしてメンフィル帝国との戦争勃発の原因である父―――アルバレア元公爵による”ユミル襲撃”。そのどれも全てが”猟兵”が関わっていた上その全てをエレボニアが引き起こし、リベールに対して返し切れぬほどの”借り”があるエレボニアは反対ができる立場でない所か、どの国家よりも逸早く賛成しなければならない立場だったからこそ、ユーゲント陛下はすぐに調印すべきだと判断されてあの条約をリベールが提唱してから、わずか二日という異例の速さでエレボニアはあの条約に全面的に賛成であるという事を公表されたのであろうな。」

「クロスベルもディーター・クロイス元大統領が自作自演の為に雇った”猟兵”達による襲撃事件がありますから、少なくてもエレボニアとクロスベルは反論しにくい立場である事を理解した上で、アリシア女王陛下は条約内容に猟兵達の雇用の禁止を入れられたのかもしれませんね。」

「それにリベールは元々国内での猟兵達の雇用を禁止していたからね〜。猟兵達を嫌うリベールにとっては猟兵達の国といってもおかしくないノーザンブリアがメンフィルに保護される事で猟兵としての活動をする必要もなくなるから、反論しにくい上実際ディーター・クロイスのせいで経済恐慌が起きた後の今の状況でノーザンブリアを保護できるくらい余裕がある国はメンフィルかクロスベルしかいないから最終的には認めたんだろうね〜。」

ユーシスとエマ、ミリアムはそれぞれの意見を口にした。

 

「ですが幾ら合法的な方法でメンフィル領となった事でメンフィル帝国から加護を受けられる立場になっても、ノーザンブリアの方々にとってはショックな出来事でしょうね……」

「メンフィルが『西ゼムリア同盟』の条約内容を盾にノーザンブリアをメンフィル帝国領化する主張をしたのは、もしかしたらユミルが”北の猟兵”達に襲撃されたからその”報復”かもしれないな……」

「……………ま、でも話によるとメンフィルがノーザンブリアの人達の面倒を見てくれているお蔭でノーザンブリアの人達の生活が随分マシになっているって話なんだから、別にいいんじゃないの?――――サラも全然気にしていないみたいだし。」

「あ…………」

セレーネとリィンは複雑そうな表情で呟き、フィーが呟いた言葉を聞いたアリサはサラ教官の故郷が”ノーザンブリア自治州”である事を思い出し、辛そうな表情をした。

 

「え、えっと……その件は置いておいて、メンフィルとクロスベルも変な事をしたよね。」

「”変な事”というと……―――あ。」

「……………………」

重々しくなった空気を変える為に口にしたエリオットの話を聞いたマキアスは呆けた後静かな表情で黙り込んでいるガイウスに視線を向け

「――――”ノルド精霊共和国”。クロスベル同様領有権問題があった”ノルド高原”を独立させた件か。」

ユーシスは静かな表情で呟いた。

「確か話によるとクロスベルの”二大皇帝”の一人―――ギュランドロス皇帝が自分達やその子供達の代ではノルド高原についての領有権争いをするつもりはないが、自分達の子孫は争うかもしれないから今の内に領有権争いになっていたノルド高原を独立させるべきとの事だったそうだが……」

「しかもそのノルド精霊共和国の”元首”はリザイラ―――ううん、”リザイラ精霊女王”だものね……」

ラウラの話に続くように呟いたエリオットはリィンに視線を向けた。

「ふふふ、呼びましたか?」

するとその時リザイラが転移魔術でリィンの傍に現れた。

 

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と言う訳でリザイラがまさかのノルドの王になっていた事に噴いた人もいるかもしれませんwwそれとこっちのルートでもエイドス、相変わらずはっちゃけています。時間があったらいつかアリシア女王達がエイドスに国際会議に出席する依頼をする話も番外編として書きたいなと思っています。それと西ゼムリア同盟の内容等は本編でも同じの予定です。

説明
第139話
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コメント
ジン様 まあ、一国の王の主になっちゃいましたからねぇ……(sorano)
いつの間にリザエラは女王に昇格してたんだ^^;そしてこれでますますリィンの立場がやばいことになったな。(ジン)
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